車遅国最終決戦!三蔵一行大暴れ!
車遅国の三国師に無理難題を押し付けられ大ピンチの三蔵だったのだが、そんな三蔵を救ったのは役立たずの沙悟浄だった。
俺は三蔵だ・・・
俺は妖怪達(三国師)の罠にかかり、無理難題を押し付けられていた。
そんな俺を救ったのは?
「三蔵様?少し良いですか?」
沙悟浄は俺からナイフを手渡されると、そのナイフで自分の腕に傷をつける。
すると、傷は見る見るうちに消えていった。
「妖怪ならこれくらい当たり前ですよ?まぁ、確かに痛いですけどね…」
そうか・・・
つまり、妖怪達に人間の使うような普通の武器は通用しないのだ。
それは例え首を切り落としたとしても同じ事。
妖怪とはそういった驚異的な生命力を持った生き物なのだ。
そんな再生力の強い妖怪を倒すには、武器に霊力や妖力を注ぎ込むか、その武器に特別な神力の加護が必要なのである。
だから俺も特別な力の込められた『降魔の剣』を手に、妖怪相手に戦っているのだ。
しかし・・・
この兵士達のざわめきようときたら・・・
「まさか!」
「国師が妖怪だったなんてありえない」
「国師はこの国の救世主だぞ?」
「救世主が妖怪だったなんて!」
まったく、この国の奴達は馬鹿ばかりか!
車遅国王は頭を抱えながら悩みこんでいた。
「どういう事だ?車遅国の救世主が妖怪だったなんて…」
すると、
『説明してやろうか?』
突然、聞き慣れた声が宮殿中に響き渡ったのだ。
「遅いぞ!」
そこに現れたのは孫悟空であった。
羊力大仙は突如現れた孫悟空に向かって叫ぶ。
「何だお前達!」
すると何かが飛んできて、羊力大仙と虎力大仙の足下に突き刺さったのである。
「なっ?」
「それは!」
それは…骨?
「なかなか美味だったらよ!コラーゲンたんまり得られたら~!」
それは鮫の骨?投げたのは八戒だった。
「ムシャムシャ…美味かったら~」
「ああ!なかなかこっちじゃ食べられないもんだしな!」
孫悟空と八戒は襲い掛かる鮫を返り討ちにし、食べてしまったのだと言う。
「お前達、モタモタしているんじゃねぇぞ!」
「悪い!三蔵!それより、この地下にはな…」
「解っている!」
そう。この車遅国の地下にあるものとは、
「地下?地下がどうしたのだ?」
「国王!聞いてはなりませぬ!」
聞き出そうとする車遅国王を羊力大仙が止める。
だが、俺は嫌がらせの如く説明してやったのだ。
「この地下には塩岩石がたんまりと埋められてあるのだ!」
「塩岩石?」
そこの沙悟浄が追加で説明に入る。
「はい!塩分が含まれている石なんですよ!」
「塩分とは?それでは…まさか?」
「その通りです!そんなのが地面に埋められていたなら、大地は枯れてしまうのは当前ですよ!」
「そんな物がいつの間に?」
その回答は孫悟空が告げた。
「何処かの誰かがこっそり埋めていたんだろうな?本当、地道にな!地道に…地道に…涙が出て来るよな?」
「変な同情はよしてくれ!地道の何が悪い!私達の努力を笑うとは許せん!」
「あっ…馬鹿!」
「あっ…」
羊力大仙が口を滑らせ虎力大仙と羊力大仙が口を塞いでいたが、もう遅い!
すべてが判明したのだった。
国師は間違いなく妖怪で、しかも国が枯れた理由も、この妖怪達の仕業だったのだと・・・
「この国に妖怪だなんてぇ~!!!しかも、よく見れば国師達の頭が鹿!虎!羊ではないかぁー!」
車遅国王が悲鳴をあげると、一緒になってざわめく兵士達。
「おせぇーよ!」
鹿力大仙、羊力大仙、虎力大仙は全てが明るみになって強硬策にでたのだ。
「くそ…こうなったら…この国の人間もろとも…」
妖気が充満して異様な空気が人間達を震えさせる。
「なぁ?国王さんよ!こいつ達を始末したら、いくら出す?」
「おお!この妖怪達を退治してくれるのか?報奨金はいくらでも出す!だから頼む!」
「ふっ…オッケーだ!お前達、行け!」
俺は交渉成立と孫悟空達に命じる。
「了解だ!」
「やっぱしオラ達がやるらな?」
「わ!私には無理ですよぉ~??」
羊力大仙は孫悟空と、虎力大仙は八戒と、鹿力大仙は沙悟浄に襲い掛かる。
「うおおお!死になさ~い!」
「死ぬのはてめぇだ!」
羊力大仙が刀で襲い掛かって来ると、孫悟空は如意棒で応戦する。
「貴様など頭から喰らってやるわぁ!」
「ブヒィ!こっちが逆に喰ってやるらよ!」
虎力大仙と八戒もお互いの刀と刀が激しくぶつけ合っていた。
最後に・・・
「この~待てぇ!」
「うきゃああ!助けてくださぁ~い!」
鹿力大仙に追われて逃げる沙悟浄・・・
何をやっとるんだ!
本当に、まったく使えない奴だ!
さっき、少しだけ見直した俺が馬鹿だったぜ!
仕方なく俺は降魔の剣を手に鹿力に向かって行く。
「ウヌオオ!人間の分際で!」
「俺を怒らせた事、後悔させてやるぞ!」
「頑張ってくださぁ~い!三蔵様~!」
柱の陰に隠れて応援する沙悟浄に俺は呆れて何も言えなかった。
とりあえず、
あいつには後で仕置きが必要だな・・・
三ヶ所で激しい戦いが始まったのだった。
交戦の中、俺達の強さに押されていく羊力大仙、虎力大仙、鹿力大仙は揃って法術を使う。
「我等が使うは!」
『五雷法の術』
「自然を操る我等『三大仙』の秘奥義なり!」
『五雷法の術』とは雷、風、土、炎、水の法術の事である。
俺達に向かって火炎放射や、水弾が飛んで来る。
躱そうとすると、風の壁がこちらの動きを邪魔して身動きを塞がれた。
そこに天井から暗雲が出現し雷を降らせて来るのである。
「クソォ!厄介だ!どうする?」
「どうするも何もどうするらよ?」
意外に強い三大仙の攻撃に防戦でやっとの俺達、
「おい!お前達!耳を貸せ!」
俺は孫悟空達を呼ぶと作戦を伝えたのだ。
「よっしゃあ!」
「行くらよ!」
「あっ…はい!」
作戦は伝わった。
後は俺達の反撃の時間だ!
「行くぞ!」
俺の掛け声で三人が同時に動き出した。
「何をするつもりだ?」
「こちらも負けられませんよ!」
『五雷法の術!』
三大仙達は再び雷、風、土、炎、水の法術で襲って来る。
いつまでも調子乗るなよ!
「うおおおおお!」
俺の身体から不動明王が出現して業火が噴き出すと、八戒と沙悟浄が水術で防御の壁を作る。
奴達の五雷法の術から俺と孫悟空の身を守るために。
「守っているだけでは、私達には勝てませんよ!」
「うぐぐ…黙ってろ!見せてやるぜ?石化術!猿硬!」
」
最後に石猿孫悟空は己の身体を硬直させて石化していた。
「行くぞ!孫悟空!」
「来いやぁ~!」
俺は自分の業火を三大仙にではなく孫悟空にぶちかましたのだ。
石化した孫悟空は俺の炎で燃え盛り高熱を帯びていく。
「行くぞ!」
俺の掛け声で八戒と沙悟浄が頭を抱えて伏せると、俺は不動明王を使って手にした炎の縄を孫悟空に縛り付けたのだ。そして高熱を帯びた孫悟空を振り回す。
『うおおおおおお!』
俺は振り回した孫悟空を三大仙に向けて投げ飛ばしたのだ。
「合術・炎上硬砕!」
炎を纏った火炎弾と化した孫悟空は、三匹の妖怪に向かって飛んで行き、
「えっ?えっ?えっ?えええええ??」
見事に衝突したのであった。
その勢いは止まる事なく城の壁を大破させ、車遅国の城が崩壊していく。
その崩れ落ちる城を王や兵士達は、口を広げて茫然と見ていたのだった。
数分後・・・
崩壊した城の中央には三匹の妖怪達が目を回してひっくり返っていた。
「ホニャララ~」
同じように目を回している孫悟空。
そんな孫悟空を八戒と沙悟浄が抱えると、
「生きてるみたいらな…」
「孫悟空兄貴…痛々しいです…」
どうやら、無事らしいな?
「ふぅ~これにて一見落着だな…」
ん?
周りの様子が変だぞ?
「三蔵の旦那?ちょっとヤバイでないらか?」
「何?」
あっ、確かに・・・
城を破壊され、怒り心頭でこちらを睨みつけている車遅国の皆さん?
アハハ・・・
どうやら少しやり過ぎたみたいか?
俺は一呼吸した後、
「お前達!ずらかるぞ~!」
「お~!」
「ひょお~!」
一目散に車遅国から逃げ出したのだった。
これが車遅国で起きた俺の災難だった。
その夜・・・
俺達は野宿をしていた。
クソォ!
俺の怒りが納まらない!
考えてみれば、妖怪を倒してやるとは言ったが、城が崩壊しないとは言ってないぞ!
逆ギレで、イライラMAX百パーセントの俺に、孫悟空達は距離を取って近付いて来ないでいる。
きっと、八つ当たりされるのが解っているのだろう・・・
だが、流石に理由もなく奴達を殴る事は出来ん。
近付いて来れば難癖付けて殴るだけだ!
あああ・・・
余計に腹が立つ!
俺は懐からタバコを取り出す。
(確かまだ一本残っていたはずだったな・・・)
取り出したタバコは濡れていた。
そうだった!
確か洞窟にいる時に沙悟浄の水術『河童の川流れ』で、水の中に・・・
うぐぐ・・・
最後の一本を!
ん?
そう言えば…奴がいない!
このイライラの元凶の半分・・・
沙悟浄!
何処だ!?一発殴ってやる!
ちょうどそこに沙悟浄が現れたのだった。
「あの~三蔵様?」
「・・・」
俺は考えていた。
こちらに来た瞬間にぶん殴る!
理由なくぶん殴る!
とにかくぶん殴る!
八つ当たり?
理不尽?何それ?
知らん!
俺に殺意が芽生えた。
その殺気を感じた孫悟空と八戒が、物陰に隠れながらこちらを覗いているのが見えた。
何をやっとる!
「あの~こんな物を作ってみたのですけど…もし宜しければ…」
ん?
何だそれは?
沙悟浄が俺に手渡した物、
それは!?
マイルドヘブンと書かれた手作りの箱、それに中にはタバコの筒が入っていたのだ!
「お前!何だこれは?」
「あっ…見よう見真似で作ってみたのですが…」
「・・・」
見よう見真似だと?
俺はそれを手に取る。
偽物と解っているだけに、余計に虚しくなった。
「!!」
まさか!馬鹿な?これを河童が?
なんと!!
俺はそのタバコに見えるソレに、試しに火を点けて吸ってみたのだ。
これは!
味!匂い!感触!
間違いない!
まさしく俺の愛用の『マイルドヘブン』じゃないか??
しかもよく見ると、その出来栄えは本物と一寸と変わらないと来たもんだ。
俺は手を震わせながら沙悟浄に問う。
「お…お前…これは?」
「え…ええ…三蔵様が命の根源とおっしゃっていたので…ああ!足りない材料は似た物で代用したのですが、多分…そんなに違いないかと…」
「お前、何故こんな事が出来るのだ?」
「えっ?ええ…私…こういった事が趣味で…薬草とかの調合とか大好きなんです。あっ?気に入らなかったですか?すみません!ごめんなさいです!」
そうかぁ・・・
はっ…ははは・・・
俺は怯える沙悟浄の頭を撫でてやったのである。
「えっ?」
そして俺は沙悟浄に言ってやったのだ。
「お前は俺にとって大切な仲間だ!これからもよろしくな!沙悟浄!」
「えっ?あっ!はっ、はい!私!これからもがんばります!」
その後・・・
俺の機嫌もおさまり、
その姿を不思議がって覗いている孫悟空と八戒をよそに、
プカプカと愛用の『マイルドヘブン』を吸っているのだった。
これにて、俺の波乱の一日が終わったのだ。
あ~美味い
次回予告
三蔵「車遅国編も無事に終わったようだな」
孫悟空「三蔵!大変だ!」
三蔵「どうした?」
孫悟空「今聞いたのだけど、次の話は八戒と沙悟浄の話なんだってよ!」
三蔵「そうか?なら、俺達は楽していようか・・・うん。タバコが美味い」
孫悟空「やる気ねぇな?お前・・・」
八戒「そんなこんなで、」
沙悟浄「次話は私達の過去を少しだけお話致しますね~」