真の力炸裂!!これが俺達の力だ!!
地下遺跡を進む五人!!
バサラはサードの妖精達が魔物と知り、三蔵達に戦いの合図をしたのだ。
俺は三蔵だ!
三千院、大徳、蛇塚、バサラ、そして俺は、サードと呼ばれる妖精達と戦っている。
人間離れしたスピード
それは俺達を苦しめ、圧倒しているように思えた。
が、その妖精が魔物と妖精との融合体である事を知ったバサラは、俺達に向かって叫んだ。
「皆!もう手加減しなくて良い!こいつ達は間違いなく敵だ!」
俺達はバサラに頼まれていた。
「皆、頼みがある。あいつ達を説得したい!あいつ達が俺と同じく洗脳されているなら、俺は・・・俺は・・・助けてやりたい」
俺達はバサラの気持ちを汲んで、バサラに猶予を与えたのだ。
バサラが説得してダメだと分かったら、俺達は躊躇なく敵を殲滅すると。
そしてついに俺達は目の前の妖精達を排除するべき『敵』として認識した。
「ハン!待たせたな?ようやくお前の仇を討ってやれるぞ!」
「はぁ~??お前、何を言ってんの~?お前なんか僕達にかかれば虫けら以下なんだぜ?お前なんか一瞬だ!一瞬で殺せるんだ!」
「やってみろよ?」
俺は人差し指を自分に向けて妖精を挑発する。
「調子こいてるんじゃねぇよ!死んでから後悔しやがれぇ!」
妖精が短刀を構えると、俺の目の前から姿が消えていた。
超スピードで俺の間合いに迫り、短刀が俺の首を捕らえる。
妖精が俺の首目掛けて短刀を振り切った時、全てが終わったと思った。
だが、妖精の短刀は空を切ったのだ。
「なっ?何!」
動揺する妖精は直後、背後から現れた俺に、
「先ずは一発ぶん殴る!」
俺の拳が妖精の顔面に直撃し、妖精はその勢いで壁にまで吹っ飛んだ。
直撃した妖精は壁に埋もれつつ、信じられない顔で俺を見ていた。
一体何が起きたのか分からない顔だな?
「もう、手加減はしねぇ!これが俺の・・・俺達の本当の力だ!」
三千院、大徳、蛇塚も同じく妖精のスピードを凌駕していた。
これが大徳との修業で身につけた奥義さ!
錫杖の修業から、それは己の肉体へと身体に『気』をコーティングしていく。
体内で膨張していく気を回しながら溢れ出す力を体内に押し止めコーティングしていく。
それは皮膚に!肉に骨に!至る所に!細胞レベルまで!
溢れ出す力と支える力!
この力の調和が、新たな領域へ神に近付く力を俺に与えるのだ!
この気のコントロールを肉体で自在に回せるようにすれば、驚異的な破壊力だけでなく、身体を羽のように軽くして飛び上ったり、駆ける動きは雷光の如く動けるのだ。
次第に俺の身体が光り輝いていく?
さらに俺の気と不動明王の気を融合させていく。
「この奥義を、『神魂闘気』と呼ぶ!」
「何何だよー!」
妖精が再び俺に向かって来たが、奴の攻撃は俺には当たらなかった。
俺は妖精の攻撃を紙一重で躱していた。
俺・・・自分でも信じられねぇくらいに強くなっていたのか?
あれだけ苦労した妖精の動きが子供をあやすようだぜ!
修業中にも感じてはいたが、大徳や他の連中が馬鹿げた力だったから、イマイチ実感持てなかったが今なら確信持てる。
「俺は強い!」
俺は錫杖で目の前の妖精をぶっ叩く。
「がはっ!」
再び床に埋もれるようにぶっ倒れる妖精。
もう、俺の相手ではなかった。
「ありえない・・・人間ごときが・・・人間なんかが・・・人間なんか!」
すると、妖精の様子がおかしい事に気付いた。
次第に妖精の身体から異様な妖気が高まっていく?
更にその変化は奴の身体をも変化させていった。
「見せてやるよ!俺達の本当の力・・・本当の姿を!」
「何だと?」
「ウゴゴゴゴゴ!」
妖精の身体が変わっていく?後頭部がエイリアンのように膨れ上がり、牙が海豹のように伸びていく。爪が鋭利な刃物のように凶器と化し、胸と肩、下半身の筋肉が異常に膨張しながら、その異形な姿を現したのだ。
そこには、今までの美しい少年のような妖精の姿は残ってはいなかった。
例えるなら妖精獣と言ったところか?
他の妖精達も、同じく妖精獣へと変わっていく。
「殺してやる!人間!これが俺達の本来の姿だ!本当の力だ!」
妖精獣は今まで以上のスピードで襲い掛かって来たのだ。
「しゃらくせぇ!」
俺は錫杖を構え、妖精獣に向かって振り下ろし向かい討つ。
だが、俺の錫杖が妖精獣に直撃した瞬間にへし折れたのだ??
「んな!何て硬さだぁ!それに・・・」
見た目通り、力もスピードも上がってやがる。
「ギャハハハ!無駄だ!無駄だ!もうお前はミンチ決定!!お前もあのガキみたいに首を切り落として、俺が直接お前の首を喰ってやるよー!」
「ハ・・・ン・・・」
俺は、俺は必ずお前の仇を討つ!
俺は真言を唱えていた。
『ナウマク・サマンダ・・・バザラ・ダン・カン!』
すると俺の折れた錫杖が炎に包まれていき、次第に業火となって錫杖の形を変えていった。
燃え盛る炎を纏った炎の剣へと!!
「これが俺の切り札、降魔の剣だぁー!」
俺は降魔の剣を振り上げると目の前の妖精獣に向かって一気に振り下ろした。
「うぎゃあああ!」
俺の降魔の剣が、妖精獣の肩を切り裂いたのだ。
妖精獣は強固な身体へとなって油断していた。
だが俺の剣で傷をつけられ、妖精獣は『有り得ない』と悲鳴をあげながら怯えて、
俺に懇願する。
「殺さないで!殺さないで!ごめんなさい!ごめんなさい!」
そんな妖精獣に、俺は・・・
「悪いな?」
「・・・?」
「俺はご立派な正義のヒーローだとか、優しい勇者様みたいなのとは縁遠い存在なんだ」
「・・・そんな!?」
俺の目が冷血になったと同時に、妖精獣を降魔の剣で一刀両断にした。
『ウギャアアアアア!』
燃え盛る妖精獣が断末魔をあげて炎に包まれて消滅する。
やったぞ!ハン!
お前の仇は俺が討ってやったからなぁ!
そして、お前達の村を苦しめていた奴達の陰謀も俺が必ず終らせてやるぜ!
だから、迷わず成仏してくれよ?
俺が妖精獣と戦っていたその時、他の四人も妖精獣と戦っていた。
俺は降魔の剣なんて反則武器があるが、あいつ達は苦戦しているんじゃ?
いや?有り得ない・・・
正直、あいつ達の本気なんて俺でも知らないのだからな?
だが、悔しいが、今の俺より格段に強いのは分かる。
場所は代わり、そこでは妖精獣が蛇塚に襲い掛かっていた。
蛇塚は気を鎮めていた。
妖精獣の猛攻を、紙一重で躱しながら間合いをとっている。
すると蛇塚が、ゆっくりと手を動かしたその瞬間、
妖精獣が一回転し蛇塚の足元に倒れ伏した。
妖精獣は何が起きたか分からないだろうな・・・
それは蛇塚の繰り出した『合気』なのだ。
「力もスピードも関係ねぇ!大切なのは間合いと、呼吸だ!」
倒れた妖精獣は直ぐさま立ち上がり、蛇塚から距離をとり間合いを取る。
獣「グルル!どうやら接近戦は分が悪いようだな?ならば、これならどうだ!」
妖精獣の十本の爪が伸びて蛇塚に向かっていく。
「遠距離も当たらなければ同じだ!」
蛇塚は左右に揺れるように動きながら妖精獣の爪を躱す。
まるで妖精獣の攻撃を先読みしているように?
蛇塚は妖精獣の呼吸を読み取り、攻撃のタイミングを見計らっている。
つまり、拳銃を向けられた時に銃先や弾道、タイミングさえ解れば簡単に躱せると言う理屈だ!
蛇塚は普段の性格が幼く、ガキで、嫉妬深く、好きな女に告白も出来ない童貞野郎だが、戦いになると異常に冷静で・・・
以前、戦った事のある俺だから言えるのだが、戦いのペースを奪われるのだ。
『静』と『動』
蛇塚に合わせて『動』で戦えば『静』で投げ飛ばされ、『静』で戦えば、荒々しい『動』で仕掛けてくる。やりにくいったら、ありゃしねぇ!
きっと妖精獣も完全にペースを奪われてやがるだろうな?
再び投げ飛ばさる妖精獣。
「さてと、そろそろ終わりにしよっかぁ?」
そんな俺達の戦いを見ていた『お父様』と呼ばれる男は、
「馬鹿な??妖精獣が人間なんかに?人間なんかに倒せるはずがない」
するとお父様と呼ばれる男は、待機していた全ての妖精達を呼びよせたのだ。
何処に隠れていたのか?
妖精獣と化した妖精達がウヨウヨと俺達の前に現れる。
まさか妖精獣と化した妖精サードを人間に倒され、焦りを感じた『お父様』と呼ばれる男は待機していた妖精達を全てこの場所に集める。
「チッ!面倒くせぇ!」
妖精サード達は異様な妖気を高め人間型から化け物、妖精獣へと変わっていく。
一体相手なら何とかなるが流石にこの数はマズイぞ?
俺は降魔の剣を構えて、敵の動きに警戒した。
その時!
物凄い轟音が響き渡ったのだ。
こりゃあ~大徳の奴だなぁ?
派手にやってやがるぜ!
大徳は拳に霊気を籠めると、背後から巨大な霊体の腕が現れ、妖精獣に向けて大技を放つ。
『明王の拳!』
妖精獣は巨大な神圧の拳で、吹き飛んで壁に激突する。妖精獣の身体中の骨が砕ける音がしたが、その生命力は凄まじく、みるみると再生していく。
だが、大徳の攻撃も止まらなかった。
上空に霊体の拳が出現すると大徳の握られた拳に合わせて上空より明王の拳が振り下ろされたのだ。妖精獣は轟音を立てて、ぺちゃんこに潰され完全に動かなくなった。
「ふむ。流石に一発では倒せなかったか?」
何て破壊力だ・・・
俺達が破壊出来なかった地下牢の壁をぶち壊したのも間違いなく大徳に違いない。
「囲まれたか・・・」
三千院は三体の妖精獣に取り囲まれて言った。
「我は天才なり!」
ん?戦闘中に今、何か言ったか?
取り囲む妖精獣が叫ぶ。
『ふざけるなぁー!』
そして、俺も・・・何だ?そりゃあ~!
三体の妖精獣は連携された素早い動きで、左右全面から三千院に迫る。
「危ねぇ!」
助けに飛び出そうとする俺だったが、バサラが俺を呼び止める。
「心配するな。三千院は紛れも無く天才だ!俺達の中では一番の実力者だろう。俺達は自分の戦いに集中しろ」
「なっ!?」
俺とバサラの周りにも新たな妖精獣が囲む。
確かに他の奴の心配している余裕もなさそうだぜ!
三千院に攻撃しているはずの妖精獣達は困惑していた。
三体がかりの攻撃が、一人の人間に攻撃が全く当たらない?
いや、かすりもしないのだから!
「どうなってやがるんだ?僕達の動きより速いなんて!」
「確かに化け物の姿になって動きも力も上がったようだが、無駄な体型で動きが単調になってしまったようだな?手に取るように動きが見える!」
「ばっ?馬鹿な!だけど俺達の爪には強力な毒が染み込んでいるんだ!僅かにでもかすれば!!」
すると三千院の錫杖が突然光り輝き妖精獣の視界を奪い、三体同時に突き出した爪がお互いの身体を貫き、自分達の毒で倒れていく。
「精進せよ!」
「三千院よ?そいつら、もうくたばってるぞ?」
「残念だ・・・」
圧倒的な強さの三千院。
しかし、まだ妖精獣はウヨウヨといた。
いくら俺達が優勢でも、こんなにいたら・・・
「一気に片付けるぞ?大徳!」
「ふむ。久しぶりの連携か?」
何をしでかすつもりだ?
俺はつい二人の戦いぶりに目を奪われていた。
二人の霊気が高まっていく!
『オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・ハッタ!』
『オン・シュチリ・キャラロハ・ウン・ケン・ソワカ!』
二人が真言を唱えると先ず大徳の右手が光り輝き出す。それは凄まじい神気が大徳の拳に集中しているのだ。神気とは神の使う気!それを人間である大徳の霊気と融合させ、一撃必殺の大技を繰り出そうとしているのだ。大徳は空手の型のような姿勢で構えると、足元から地面が揺れ出し、床が盛り上がって来たのだ。
『明王・金剛掌打!』
大徳の掌打が迫り来る妖精獣達に放たれた時、凄まじい衝撃が向かいの壁に大穴を開け、その場にいた残りの妖精獣達は跡形もなく粉々に消えていく。
一撃!
まさに一撃で、70体もの妖精獣が消滅した。
だが、その身体能力で逃げ延びた妖精獣達もいた。
大徳の大技に危機感を感じだ妖精獣の何匹かが上空へと飛び上がり難を逃れたのだ。
「後は任したぞ?三千院!」
「既に準備は出来ているさ!」
大徳の目配せに三千院も大技の準備をしていた。
三千院の背後から出現した明王の巨大な腕が、これもまた三千院の前に現れた光り輝く弓を掴む。
『降魔の天弓!』
三千院が光の弓をしならせると背後の明王も同じ動作をする。
同時に三千院の眼が紅く輝き出したのだ。
『魔眼・鷹の目!』
魔眼解放と同時に巨大な紅に輝く矢が現れ、妖精獣に狙いを定めると同時に射られた。
無数に放たれた紅の矢が逃げ延びた妖精獣達を貫き消滅させていく。
ん?ハッ!
俺は気付いた。
三千院の背後から襲い掛かろうとした妖精獣が矢に貫かれ消えたかと思うと、その妖精獣の背後にもう一匹の妖精獣が隠れ潜み背後から三千院に襲い掛かって来たのだ。
危ない!!
だが、俺の心配は全く必要なかった。
三千院は気付いていたかのように身体を回転させ、背後から襲い掛かる妖精獣の攻撃を躱すと同時に至近距離から既に準備を終えていた矢を射る。
一瞬だった・・・
戦場は静まり俺達の前には数いた妖精獣の動かない屍が転がっていた。
だが、三千院の魔眼って何だ?
眼が紅く輝いていたようだが?
充血とは何か違うようだぞ?
「終わったのか?」
「いや、まだ残っているようだ」
バサラの視線の先には妖精獣が一匹残っていた。
そいつは蛇塚が相手にしていた妖精獣だった。
残った妖精獣は目の前に転がっていた妖精獣の屍を拾い上げると、吸い上げるように喰いだす。
「ゲッ!共食いしやがったぞ!」
すると妖精獣はみるみる巨大化したのだ。妖精獣の身体は元の十倍近くになっていた。
いや!体格だけじゃない!当然攻撃力も防御力も桁違いだ!?
「これは!」
「上等!後はこいつだけのようだな?」
「やれるのか?」
「俺をナメてるのかよ?」
蛇塚は一人、巨大化した妖精獣にゆっくりと向かっていく。
いったいどうするつもりだ?
いくら何でも一人で戦うつもりなのか?
妖精獣の巨大な腕が蛇塚に振り下ろされた時、蛇塚は焦る事なく躱し、軽くその腕を触るとまるで人形を倒すかのようにひっくり返した。
合気か!?
「合気に力は関係はない!大切なのは呼吸とリズム!そして、相手の軸さえ崩せば簡単に倒せる」
妖精獣は起き上がろうとする。
「と、言っても転がすだけじゃ、この再生力のある化け物を始末出来ないがな」
蛇塚は自分の手首を噛むと、手首から血が垂れ落ちる?
「お前、何を!?」
「まぁ~見てろよ!」
垂れる血が異様な動きをし出すと、まるで蛇のように蛇塚の両腕に巻き付いたのだ。
「俺の血は少し特別でなぁ?魔を喰らうのだ!」
蛇塚の背後に巨大な大蛇のオーラが現れ、
『ヘビメタル・インパクト!!』
妖精獣に向けて放たれたのだ!
巨大な妖精獣は大蛇に飲み込まれ、その血に蝕まれるように消滅した。
「ケッ!余裕だぜ!」
辺りには妖精獣の死骸が転がっている。
残ったのは俺達五人と、あのバサラの宿敵である『お父様』なる人物のみであった。
お父様と呼ばれる男に向かってバサラが近付く。
「後はお前だけだな?お父様!いや?魔術師・ラスプーチンよ!」
ラスプーチン?
「ラスプーチン。帝政ロシア末期に現れた人物だと聞く。シャーマンだと言う説もあるが、それが奴か!」
「正しくは転生者のようだな」
大徳と三千院は博識だな~
お父様・・・
いや?ラスプーチンの転生者は頼みの妖精獣を全て消され、自分の目の前に現れた元妖精のセカンドであるバサラに対して狼狽していた。
「くっ・・・父であるこの私に向かって何て事を・・・お前達の産みの親に逆らいおって!」
「何がお父様だ!何が産みの親だ!ふざけるなぁ!お前が俺達に何をした?俺達はお前を許さない・・・絶対に許さん!」
「だったら・・・」
ラスプーチンは懐からリモコンのような物を取り出し手に取ると、
まだ何か策を隠し持っていたのだ。
「お前達の力は捨てるには惜しい。そうだ!サードを失った代わりに、私の直属の配下になってもらおうか!」
ラスプーチンがリモコンを押すと、
「何を・・・うっ・・・なっ!」
バサラの身に何か異変が起き始めたのだ?
いや?それは俺達にも起きていた。
今、俺の目の前には・・・立っていたのだ。
まさか?
「お・・・小角?」
次回予告
三蔵「俺の前に現れた小角・・・
そして、他の連中の前にも?
そして、新たな脅威が俺達を襲う!!」




