地下遺跡を駆け抜けろ!!
遺跡の地下牢で脱出に手こずる中、三蔵は牢屋にあった水晶を触った後に突然の眠りについた。
そこで三蔵は不思議な男と出会ったのだ。
俺は三蔵だ!
俺と蛇塚、バサラは敵の罠にかかり暗闇の地下廊に閉じ込められていた。
そこで、俺は夢の中で変な野郎に出口を教えてやると言われ、騙されて霊力をごっそり奪われたあげく、いろいろ連れ回されたのだ。
だが、男は言った!
晴明がまだ生きていると?
俺の中で希望が見えてきたのだ。
いや?ここから出られなきゃ意味ない!と、再び消沈した所に三千院と大徳が地下牢の壁をぶち壊し現れたのだ。
三千院、大徳、すまん!
すっかり存在を忘れていたぜ・・・
俺と蛇塚、バサラは三千院にこっぴどく説教された後、大徳が持って来た俺達の装備を装着し、戦いの準備を始める。
「さぁ~て!これからが本当の戦いだぜ!」
俺と、三千院、大徳、蛇塚、バサラは気を掌に集中させ金の錫杖を出現させると遺跡の中を突き進む。
「てっきり、やっこさん達が罠を仕掛けてくると思っていたんだけどなぁ?」
「油断するな!蛇塚」
「あっ、はい!三千院さん」
「そうだぜ!それに罠なんてあったら、ポチッ?って音がする変なボタンがあるのがお約束だろ?」
俺が勢いで壁に向かって指をさすと、ポチッと、音がした。
ん?今、何か押した感触が??
「おぃ?三蔵!今、ポチって?」
俺が押してしまった壁にあったボタンは、侵入者を知らせる警報装置だった。
同時に今まで歩いて来た通路が徐々に崩れ落ち始めたのだ。
「あっ!?これで、後戻りは出来なくなったな?」
「何を冷静な事を?この馬鹿三蔵!」
「なっ・・・何て巧妙な罠!」
「何処がだ!馬鹿馬鹿三蔵!」
「すまねぇ・・・」
「気にするな!もとより進む道は前進あるのみだ」
「なはは!話分かるじゃねぇかぁ?三千院。よし!突き進むぜぇ!」
「調子のるな!三蔵!」
大徳が俺を睨む。
完全に俺の調教役になってるな~
「過ぎた事を気にしない!前進!前進!」
「しかし、そうは簡単にはいかないみたいだぜ?」
「ん?」
見ると、通路全体から邪悪な妖気が漂って来たのだ?
「今度は敵のお出ましのようだな」
バサラの言う通り、通路の奥、壁から、天井や床から悍ましい魑魅魍魎が出現し、俺達に向かって濁流のように襲い掛かって来たのだ。
「ひたすら前方に向かって駆け抜けるぞ!」
俺達は三千院の指示に従い、五人同時に駆け出す。
さらに床や壁から『目』が現れ、俺達の動きを見始めたのである。
壁からは『手』や『口』が俺達を捕らえようと掴んで来る。
何なんだよ?とんだリアルお化け屋敷だぜ!
「ぐわあああ!」
俺の足を掴んだ『手』がそのまま巨大な『口』の中に引きずり込もうとする。
すかさず大徳が錫杖で俺の足を掴む『手』を突き潰す。
「油断するなと言ったはずだぞ!」
「あ、ああ!」
俺達は金の錫杖の音を鳴らしながら、遺跡の通路を駆けて行く。
錫杖の音は震動が波紋のように広がって俺達の霊力を放っているのである。
並の悪霊なら近付けやしないのだ。
まぁ、雑魚に無駄な体力も時間もかけられねぇしな!
早く、行かなければ・・・
俺は夢の中で会った男の言葉が頭に過ぎる。
この先に、晴明が俺を待っているはずなのだから!
俺達は錫杖の音に耐えて襲いかかる魑魅魍魎を、金の錫杖で殴り付けながら薙ぎ倒して行く。
とにかく走れ!
一度でも足を止めたら悪霊の勢いに飲まれ、俺達は行き場をも塞がれてしまう。
駆け抜けろぉー!
俺達はそこで、通路の先にある広い空間を見付けたのだ。
「さて、何が待っている事やら!天国か?それとも?」
「行けば分かる!」
俺達は見える広い空間へと飛び出したのだ。
「ありゃりゃ!どうやら地獄の一丁目だったようだぜ!」
部屋全体に溢れる程の化け物、魑魅魍魎や魔物の群れが待ち構えていた。
千、二千、ダメだ・・・数えきれん!
「・・・・・」
「どうやら」
「八方塞がりのようだな?」
「で、どうするよ?」
「決まっているだろ!」
「だな!」
バサラ、大徳、三千院、俺に蛇塚は足を止めずに渦中に飛び込むと、
『行く手を邪魔する奴は、何であろうと殴り飛ばすのみ!』
俺達は錫杖を構え、襲い掛かって来る化け物共に向かって行き蹴散らしていく。
しかし、この数は半端ねぇなぁ~
魔物の牙や爪が、容赦なく向かって来る。
どれだけ躱しても、殴り倒しても、全然キリがねぇ!
俺達は数に圧され次第に少しずつ後退する。
俺達は後退しながら、次第にお互いに背中を任せるように輪をつくっていた。
気付くと俺達は誰からともなく唱え始めていたのだ。
『臨!兵!闘!者!皆!陳!烈!在!前!』
魔を払い除ける九字の印!
手指で印を結び、神の持つ力を引き出している。
『臨!兵!闘!者!皆!陳!烈!在!前!』
次第に発する声に力が入っていく。
俺達の身体から膨れ上がる『気』が、重なり合い融合していくのを感じる。
なんだ?この感じは?
俺は無意識に・・・この四人に背中を任せていた。
信頼しているのか?
いや、今はそんな事はどうでもよい!
今はこの場を切り抜ける事が最優先だぁ!
『臨!兵!闘!者!皆!陳!烈!在!前!』
俺達五人の気が完全に融合した時、三千院が金の錫杖を天井に掲げ叫んだ。
『明王合気術・烈波浄火光!』
三千院の錫杖が俺達の気を一点に集め、神々しい光が部屋全体を覆ったのだ。
その光を浴びた魔物達が閃光に飲まれ、一匹一匹と消え去っていく。
光が落ち着いた時、そこには、俺達だけが残っていた。
あれだけいた魑魅魍魎や魔物達が一瞬で跡形もなく消え去り、部屋全体には清浄な気が立ち込めていた。
「ぷはぁ~!」
「三蔵、まだ安心するのは早い!」
「あぁ・・分かっているよ」
俺が睨みつけた先の部屋の奥から足音が聞こえて来たのである。
そこから現れたのは?
「・・・騒がしいと思ったら、あの廊から抜け出して来たのか?」
そいつは五人の妖精達を引き連れた『お父様』と名乗る男だった。
つまりバサラの宿敵だ!
「お父様!始末しますか?」
「ふぅ~あんまり騒がれたら地下で行われてる実験にも支障が出るかもしれんからな~早急に始末してしまうのが良かろう!奴等を消してしまえ!我が息子達よ」
「分かりました。お父様!では!」
瞬間、お父様の傍にいた五人の妖精達の姿が、目の前から消えた。
「奴達が来るぞ!」
「分かってらあー!」
俺と四人は、向かって来た五人の妖精に対して反応する。
妖精達と俺達がぶつかり合う!
「うりゃああ!」
「らぁあああ!」
「ふん!」
「ハアアア!」
俺に向かって来た妖精は間違いない。
コイツは覚えている。
「あれ?お前は村にいた人間だな!弱いくせによくここまで来れたな?」
「テメェ!」
俺は目の前の妖精に向かって錫杖を振り払うが、妖精は軽々躱して俺の錫杖の上に着地した。
「ハンの仇とらせてもらうぜ!」
「まったく懲りずにしつこい人間だ!」
コイツはハンを・・・ハンを殺した奴だ!
そして、バサラと妖精がぶつかり合っている。
「くっ!止めろ!俺は同じ妖精であるお前達を殺したくない」
「何を言っているんだよ?馬鹿じゃないの?死ぬのはお前だよ?」
バサラはサードの妖精に対して説得するが聞く耳をもたない。
お互い己の持つ黒い短刀を手に取り、刃と刃がぶつかり合い、金属の激しい音が響き渡る。
「俺は・・・お前達を救いたいのだ!それが、死んでいった妖精達の願い!もう二度と同じ過ちを!悲劇を繰り返したくない!」
そんなバサラに対して妖精は言った。
「はっ?お前、何を言っているんだ?」
「?」
「僕達とお前達失敗作のセカンドを一緒にしないで欲しいなぁ?たかが妖精と人間の融合体のくせに」
「それは、どういう意味だ?」
「だから~!お前達失敗作セカンドと気高い僕達サードとを一緒にするなって言っているんだよ!」
そして、明かされたサードの正体!それは、
「僕達はな!人の姿は知っているが、魔物と妖精との融合体なんだからさぁ!」
「!!」
さらに・・・
「もう一つ教えてやるよ!俺達との主食が何か知っているか?人間だよ!お前達人間!所詮人間なんて僕達の餌に過ぎないんだよ!」
その言葉を聞いてバサラは目を綴じて言った。
「それを聞いて安心した。これで心おきなく・・・お前達を殺れる」
瞬間、妖精の視界からバサラの姿が消えていた。
「えっ?」
すると妖精の後ろにバサラが現れたのである。
「あれ?いつの間に?あれ?あれ?あれ?」
妖精はバサラの姿を見失った瞬間、視界が地面に向いていたのだ?
妖精の首は床に転がり、胴体から血が噴き出す。
そして崩れるように倒れたのだ。
バサラは短刀についた血を払い、俺達に向かって聞こえるように叫ぶ。
「皆!もう手加減しなくて良い!こいつ達は間違いなく敵だ!」
その言葉を合図に、俺達の目の色が変わる。
そうか。なら、俺達も手加減無しだ!
俺達の本領を見せてやるぜ!
次回予告
三蔵「次話は俺達の本気が見れるぜ?
ハン!俺はお前の敵討ちを忘れちゃいねえ!
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
ガチだぜ!!」




