金剛夜叉明王・バサラ!!
座主により洗脳を解かれた№6はお父様の目の前で魔神の力を解放させた。
俺はバサラ…
俺は昔、No.6と呼ばれる戦闘マシーンだった。
俺はお父様の命令で、日本の密教集団のリーダー座主の暗殺を命じられた。
俺は一人日本国に向かい、座主のいるアジトに忍び込む。
簡単な任務…そう思っていた。
だが、俺は失敗した?
それどころか座主はお父様が施した強力な暗示(洗脳)から俺を解き放ったのだ。
俺は…再びお父様のいるアジトの隠れ家に戻った。
そこで俺はお父様の目の前で、己の命と引き換えに魔神の力を解放させ暴走させた。
組織のアジトを炎で包み研究していた全てを燃やし尽くした。
そして俺は…俺の姿は荒ぶる鬼神へと変化していた。
変化?いや、俺は身も心も魔神に捧げたのだ。
それが契約…俺が明王と交わした契約は、
『我が身と魂と引き換えに、俺の憎む者を全て消し去ってくれ!』
俺は今…魔神に身も心を捧げ鬼と化した。
そう…金剛夜叉…名前の如く殺戮の夜叉へと!
夜叉と化した俺は、手当たり次第に研究所にいた人間達を、己の爪で切り裂いていた。
逃げる者、怯える者、無抵抗な者、泣きながら許しをこう者関係なく!
一人残さず…殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺す!殺した!
俺の仲間のため…
いや、兄弟達の怒り苦しみ、悲しみ、無念…
俺の魂を使って全てを消し去ってくれ!
ついに夜叉と化した俺は、最後まで逃げていた『お父様』を追い詰める。
『止めろ!お前にその力を与えてやった恩を忘れたと言うのか?私はお前の父だぞ?言う事を聞け!化け物がぁ!!』
何が力を与えただ…
勝手に与えて…そのために、何人の兄弟が死んだと思うのだ?
何が父だ!お前は鬼だ!悪魔だ!
お前が悪魔なら…俺はお前を狩るための…
夜叉となってやる!
俺の振り上げた爪が、目の前で怯えるお父様を切り裂いた。
やった…やったぞ…
皆?俺は…お前達との…約束を…復讐を…果たした…ぞ…
『ガアアアアアアア!』
夜叉と化した魔神の雄叫びが響き渡った。
終わった…
が、俺はその後も…破壊行為を繰り返していた。
壊滅した組織の建物を跡形もなく壊し続ける。
そこに人間の理性なんてものはなかった…
獣の如く…本能の赴くがまま…目に見える形ある物を、手当たり次第に壊し続けたのだ。
いけない…このままでは、破壊は組織だけに留まらず無関係な人間達にも被害が及んでしまう。
止めなければ…
俺は魔神の中で抗おうとしたが、既に俺の身体は魔神に乗っ取られていた。
これじゃあ…同じじゃないか?
何にも変わらない…誰か…止めてくれ…
俺はもう殺したくないんだ!
誰か…誰か俺を殺してくれぇー!
その時、俺の両腕に何かが絡み付いたのだ?
一体、何が!?
更に両足にも何かが絡み付き、俺の身動きが縛られる。
それは光輝く縄?
見ると、俺を囲むように武装した僧侶達が俺の前に現れたのだ!?
『前軍、右に移動!後軍、左に回り縄を地に縛り付けるのだ!』
的確に指示をする赤い髪のリーダー格の男?
間違いない…あの者達は、日本で戦った僧侶達!
俺は光の縄で身動きを抑えられたのだ。
この者達は俺を追って…?
そうか…なら、都合よい…このまま俺を…
『殺してくれ…』
そこに、再び俺の前に現れたのだ。
それは14、15歳くらいの髪の長い女。
顔を晒していたから逆に驚いたが、間違いなく日本で出会った娘…
『座主』に間違いなかった。
座主はお父様からの呪縛から、俺を解き放ってくれた恩人…
そうか…お前なら、この命…狩られても良い…
お前にしか任せられない!
俺は覚悟した。
座主である娘は、身動き出来ない俺の額に手を置く。
暖かい光が俺の中に注ぎ込まれてくる?
一体…何を?
すると、俺の身体から無数の光の玉が放たれたのだ?
これは…何だ??
その光を見ていると不思議と涙が溢れ出していた。
光は四方に浮きながら俺と座主である娘との周りを囲む?
娘は目を綴じて言葉を口ずさんでいた?
あれは、お経?娘の経に、次第に力強い念が籠められていく。
閃光が放たれ包まれていく?
俺と娘と宙に浮かぶ光の玉だけになった時、光の玉から声が聞こえて来たのだ?
『ごめん…苦しめて…』
この声は!!
聞き覚えのある声だった。
俺が顔を上げると、そこには死んだはずの…
死んだはずの兄弟達が立っていたのだ!
次第に光の玉は形を成していく。
それは間違いなく…
「…No.1?それに、No.28!No.13に14まで?」
他にも…他にも…
「…お前達?…お前達なのか!?」
俺は涙が止まらなかった。
今まで溜め込んだ感情が涙となって溢れだしていた。
するとNo.1が前に出て言った。
『ごめんな…お前にばかり重い大役を任してしまって?でも、お前は俺達の無念を…復讐を最後まで叶えてくれた…ありがとう…』
「俺は…俺は…」
『だけど…もう苦しまないでくれ?俺達は…俺達はお前が壊れないように…お前の魂(心)だけは壊れないように……って、お前の魂を支える事しか出来なかった。それが逆にお前を苦しめていた事にも気付いていた。だけど、お前だけは二度と…心を失って欲しくなかったから…俺達は…』
俺の心が消えていなかったのは、お父様が仕掛けた罰じゃなくて?
お前達が俺の心を壊さないようにしていたからだったのか?
いや、それよりも…お前達は、ずっと俺と一緒にいてくれたのか??
『No.6…もうお前は自由だ…後は、お前のために生きて欲しい…』
『俺達の分まで…』
すると周りに浮いていた光が、一つ一つ…空に向かってゆっくりと浮いて行く?
No.28が…No.12、13が俺の近くに寄り添うように近付くと、宙に向かい浮かんでいく。
全ての光が空に向かって、天へと昇っていく…
「待て!俺も!俺も連れて行ってくれ!」
俺の叫びに対して、最後に残ったNo.1が首を振り言った。
『俺達はいつまでもお前と共にある…』
そして全ての光(魂)は、天に召された。
残されたのは、元の姿に戻っていた俺と…
座主の娘だった。
俺は娘の前で方膝をつき、頭を下げていた。
そして俺は、座主の娘に、
「…俺を貴女の配下に入れてくれ!それが、俺だけでなく……
友を!兄弟を!苦しみの連鎖から…呪縛から解き放って下さった貴女への恩!
返しても返しても返しきれるとは思わないが…
俺に出来る事はただ戦う事だけ…俺は、貴女のための剣になろう!
俺は…この命ある限り、この力を!この魂を貴女に捧げると誓う」
そして俺は復讐劇は終わったのだと、そう思っていた。
そう思っていたはずなのに、あの男は再び俺の前に現れたのだ!
まだ、俺の復讐は終わってはいなかったらしい。
今、俺の前では蛇塚と三蔵が俺の話を聞いていた。
二人は立ち上がると、
「ふぅ~なるほどね…ふぅ…なるほど…」
「そんな事があったんすか…」
二人は突き刺さっていた金の錫杖を引き抜くと、
『その復讐!俺達が果たさせてやるぜぇー!』
なぁ…妖精の兄弟達…
聞いてくれ?
今、俺の近くには…
俺の…俺達の話を聞いて…
『涙』を流して…本気で怒ってくれる…
友がいるみたいだ…
次回予告
三蔵「久しぶりに登場の俺!三蔵だぜ?まったく、バサラに次回予告を任せると、一言二言で全然仕事しないからな?俺が再び、担当だぜ!」
男『ふん!まだ青臭いガキが調子に乗るなよ?』
三蔵「なぁ?誰、お前??」
男『次の話は俺が登場だ!
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
この物語は俺が乗っ取る!』
三蔵「あっ!俺の台詞泥棒!!お前は一体、何者なんだよ~??」




