貫かれた心臓!?裏切りのバサラ!!
ハンを殺した五人の襲来者に三蔵の怒りが爆発する!
しかし、その者達は仲間であるはずのバサラに似た容貌だったのだ?
俺は三蔵だ…
俺の目の前で、ハンが殺された。
俺はハンの首を地面に置くと、
「…後で埋葬してやるからな?だから、待っていろ!…お前の恨みは必ず俺が…」
『ハラシテヤル!』
怒り狂う俺達の前に現れた敵達は、銀色の髪、右目が青、左目が緑、少年なのか青年なのか?
美しい容貌の…って、まるで俺達の知っている奴にそっくりだった。
そう…
俺達と共に中国に来た金剛夜叉明王のバサラに!
「ば…バサラさん?あいつ達とはお知り合いかなんかっすか?」
「…………」
「何とか言えよ!奴らと仲間かどうか聞いてるんだ!もし、そうなら…お前もただではすまさん!」
「…………」
俺達の問いに無言のバサラに対して、さらに疑心暗鬼になる。
それに、この男は何故にこんなに詳しいのだ?
何かを知っている事は間違いない。
すると、奴らの話す声が聞こえて来たのである。
「なぁ…あそこの一人…まさか?」
「間違いないと思う!あいつの瞳と、髪の色…」
「でも、試してみないと分からないよ?」
「じゃあ、僕がヤルよ!」
「抜け駆けずるい!」
「お前は他の奴らにしなよ?早い者勝ちだからね!」
「仕方ないなぁ…」
敵の二人が、俺達に向かって襲い掛かって来たのだ。
「今は目の前の敵に集中だ!奴らが来るぞ!」
「分かってらぁ!」
奴らの一人が一瞬にして俺達の間合いに迫り、攻撃を仕掛けて来る。
何て速さだ!?
コイツら何なんだ?
人間の動きじゃねぇぞ…
銀髪の刺客の短刃が俺の首筋を狙って突き出されたが、そこを蛇塚の錫杖が弾き、その錫杖を回転させながら敵の足元を掬い上げるように攻撃に転じる。
だが、その攻撃は残像を追うだけで素早い動きで難無く躱されたのだ。
俺も蛇塚に合わせるように同時攻撃を仕掛けるが、それでもこの銀髪の襲来者には傷ひとつ付けられないでいた。
何て野郎だ…
俺だけでなく蛇塚の攻撃まで…
本当に化け物だ!
一体、マジに何者なんだ?
そこに刃物がぶつかり合う音が響き渡る。
それは敵の短刀とバサラの短刀がぶつかり合う衝撃音だった。
二人とも人間離れした素早き精密な動きで、攻撃防御を繰り出していた。
当たれば両方とも致命的になりえる攻撃を、顔色を変えずに…
両方とも化け物染みているぜ。
「ボサッとするな!気を引き締めないと、いつまでも守ってやれねぇぞ?」
「誰が守ってくれと言ったよ?」
俺は蛇塚に負けじと更に神経を集中させる。
敵の動きは確かに速いが、俺も大徳との修業でパワーアップしているんだ!
俺は次第に敵の動きに慣れ始めていく…
俺と蛇塚は次第に敵を追い詰めていた。
と、思ったのだが
「ふぅ~思ったより、やるじゃないか?アハハ!だったら、もう少しスピード上げようかな!」
ナッ!何だと!?
更にスピードが上がるのか?
くそったれ!
俺達の戦いを見ていた残りの奴らが話始める。
「あいつ…もしかしてさ?『セカンド』じゃないか?」
「セカンド?でも、セカンドは大分前に全滅したって話だよ?」
「一人くらい生き残りがいても、おかしくないんじゃないかな?」
「じゃあ…」
「『お父様』に会わせてみたら、喜ばれるんじゃないか?」
「そうだね…仮にも僕達と同じ兄弟なのだから」
すると、バサラと戦っていた奴が攻撃の手を止めた。
「どういうつもりだ?」
そいつはバサラに無防備に近付くと、耳元に何かを囁く。
「分かった…」
するとバサラもまた攻撃を止めて、俺達に向かってゆっくりと歩いて来たのだ?
「バサラ…さん?」
「どういう事だ?」
バサラは自分の持っていた短刀を背中にしまうと、突然俺達に向かって襲い掛かって来たのだ。
咄嗟に俺と金髪野郎は金の錫杖を構える。
バサラは目にも止まらぬ速さで俺と金髪野郎の錫杖を素手で叩き落とし、その錫杖を足で蹴り上げて取り上げると、
「なぁ!?」
「あっ!」
躊躇なく俺達の心臓目掛けて俺達から奪った錫杖を突き刺したのだ。
「ぐわああああ!」
「ぬあああああ!」
そんな…馬鹿な!!
こんな簡単に?
錫杖は俺と蛇塚の心臓を正確に貫き、そのまま俺達は崩れるように倒れる。
それを見ていた五人の襲撃者達は、
「お~!本当に殺りやがったぜ!」
「しかし、やけに簡単過ぎじゃないか?」
その言葉に対してバサラは顔色変えずに言った。
「ならば、こいつ達の首を切り落として持って行けば信じるか?」
バサラの手が背中の短刀に触れる。
「結構だよ!流石に心臓を貫かれたら人間なんか生きちゃいないだろ?」
そしてバサラはその襲撃者と一緒に闇の中へと消えて行ったのだ。
場所は村から離れ、場所は例の晴明が消えた遺跡の入り口?
入り口は開かれていた。
晴明が身を呈して張った結解が消えているのである。
一体…何故?
一体…誰が?
何のために…!
晴明の結解は超高度な結解であったはず…
それがいとも簡単に無くなっていた?
ハンの村を襲った襲撃者達は遺跡の中へと入って行く。
やはり遺跡と関係ある者達だったのか?
遺跡は最初入り口が洞窟のようになっていたが、洞窟の奥に扉があり、地下へと続く通路があった。中は神殿のような造りであった。
長い通路を進むと奥深くにある豪華な広間にてその者達はいた。
白衣を着た中年風の怪しい男が二人?
食事をしながら何やら会話を弾ませていた。
「それにしても、この遺跡は我々の想像力を搔き立てますなぁ~」
「本当に…」
「そう言えば、この前…遺跡の入り口に人間の張った結解があったが?」
「我々には問題あるまい?神の力は我々には無力なのですから!」
「それはそうですが、その侵入者の仲間が、またこの遺跡に土足で入り込むのでは?」
「なるほど…そうですな…あんまり我々の研究の邪魔をされたくないのは確か…しかし、愚かにもこの遺跡に入り込む馬鹿な人間がいますかね?この魔物が蔓延る地獄の一丁目に?」
「しかし、先の人間達も私達のもとへと入り込んで来ましたよ?彼に遺跡の周りをもう少し厳重に警護してもらいますかね?」
その者達は『カミシニ』と呼ばれる者達。
カミシニの頭脳と呼ばれたクロウリー博士と、シュタイン博士であった。
彼達は日本国の東京タワーで起きたヤオヨローズとの戦いの後、中国に渡り、以前より調査していたこの遺跡で何やら恐るべき実験をしていたのだ。
「そういう訳なのですが、警護の方をお願いしても宜しいかな?」
クローリーの視線の先には数十人の左右の瞳の色の違う、銀髪の若者達を従えた髪の長い男が椅子に座して頷いたのだ。
『良いだろう…』
男は40代半ばの赤い魔術師のような装いの威厳ある男であった。
付き従うは村を襲った者達と同じく銀髪、左右の瞳の色が異なった異種的な少年、若者達。
彼等は自分達の主人に対して億さないカミシニの二人に対して気分を概していた。
「あいつら!お父様を使うなんて許せないな!」
「正直邪魔だし、殺さないか?」
『お父様』と呼ばれた男は銀髪の若者達をなだめる。
「ふふふ…あの者達はこの遺跡には欠かせぬ人材だ。丁重に扱うようにしなさい?」
銀髪の若者達は『お父様』の言葉に完全服従するかのように頭を下げる。
また二人のカミシニ博士は、この『お父様』と呼ばれる男から多大な研究資金を援助してもらう事を条件に、この男に研究の幾つかを提供していた。
そこに…
「お父様!村に行った者達が戻って来たようです!」
「確か村に送った実験体の魔物が戻らぬから偵察によこしたのだったな?」
すると、奥の入り口から数人の人影が入って来る。
村から戻った五人と…もう一人?
「その者は?」
そこに戻って来た少年達が説明をする。
「それがお父様!村で面白い男を見つけたので、連れて参ったのですが」
「面白い男とは?」
「それが…セカンドの生き残りみたいなのです!」
「何?セカンドだと!」
その男はマントを頭から被っていた。
「ほぅ…セカンドとは…どれ?マントを取り、私に顔を見せてみよ?」
すると、そのセカンドと呼ばれる男は静かに答えた。
「お久しぶりでございます…お父様…まさか、生きていらしたとは思いませんでしたよ?」
「何を言っておる?お前は何者だ?」
セカンドと呼ばれた男は被っていたマントを掴み、
「再び、お父様にお会い出来るなんて…どれだけ、神に感謝するべきでしょうか?」
男はマントを右手で払い落とすと、その顔を晒したのだ。
「!!」
「貴方を再び、この手で殺せる機会を与えてくれた事」
バサラは背中の鞘にある短刀を二本掴むと、
「私は感謝する!」
『お父様』と呼ばれる男に向かって飛び出していた。
次回予告
三蔵「あれ?俺、死んじゃったの?」
バサラ「安心しろ?」
三蔵「えっ?だよな?やっぱり生きてるよな?」
バサラ「俺が言ったのは、今後は俺が主役を任されるから迷わずに成仏するがよい!と、言う意味だぞ?」
三蔵「のおおおおおおおおおおおおおおおお!!」




