ハンよ生きろ!!三蔵の浄火の炎!
ハンを狙った侵入者は仲間であるはずのバサラ。
三蔵と蛇塚はそこでハンの義手の恐るべき秘密を聞かされたのだ。
だが、その真実を知ったハンは、三蔵達の目の前で白い化け物へと変貌していったのだ。
俺は三蔵だ!
俺達の目の前で狂気に陥ったハンが白い魔物へと変わっていく?
「ハン!どうしたんだ!?」
「本当に魔物になっちまった…嘘だろ!?」
魔物と化したハンが俺達に向かって襲い掛かる。
『ガアアアアア!』
俺と蛇塚はうろたえていた。
「止めろ!正気になれ!ハン!」
「どうなってんだよ?憑依とかとは違うようだぞ?」
俺達はハンの攻撃を躱しながら説得するが、ハンは聞く耳を持たずに暴れまくる。
「仕方ない!」
すると蛇塚が両手を合わせて掌から金の錫杖を出したのだ?
「手を貸せ!三蔵!」
「まさか、ハンに攻撃するつもりなのか?」
「まぁ見てろ!」
蛇塚は錫杖を空に掲げると金の錫杖が空高く伸び始め縄のようになっていく。蛇塚は縄と化した錫杖を回転させながらハンに向けて投げつけ絡めたのだ。
「三蔵!そっちを持て!」
「なるほど!」
俺は金の縄を掴み取ると、
蛇塚と二人でハンの周りを回りながら縛り上げていく。
「とにかく動きを止めないとな!」
「髪の毛一本程度だが、見直したぜ?」
「てめぇに見直される義理はねぇ!」
俺と蛇塚は顔を見合わせて睨み合う。
「あ~ムカつく!」
「お互い様だ!」
「真似すんな!」
お互いに言葉が被ってしまった。
「童貞野郎!」
「スケコマシ!」
お互いの怒りの拳が互いの顔面にヒットする。
「…………後にしよう」
そこにバサラが割って入ってきたのだ。
「漫才は終わったか?」
「漫才じゃねぇよ!てか、ハンはどうなっちまったんだ?どうやって戻すんだよ?」
「…………」
「何か知っているなら教えてくださいよ!」
「…残念だが、一度魔物に堕ちたら…」
『二度と元には戻れない』
「!!」
そんな…馬鹿な…??
一度魔物に堕ちたら二度と元には戻れないだと?
「そんな…」
すると、魔物と化したハンが蛇塚の作った気の縄を引き千切ろうとしていたのだ。
「グゥウ!いつまでも長くはもたないぜ?」
どうする?くそぉ!
その時、バサラがハンに向かって近付いて行く。
「おい!どうするつもりだ?」
「残念だが…助からないのであれば魔物として退治せねばなるまい…」
「バサラさん!」
蛇塚はハンを押さえつつ、バサラの行く手を塞いだのだ。
そこに…
「俺がやる!だから、銀髪!お前は邪魔をするなぁー!」
俺はバサラを制し、代わりに魔物と化したハンに向かって行く。
「三蔵!何か考えでもあるのか!?」
「…………」
俺の考え…か…
俺は大徳との修業の中で『気』の使い方だけでなく明王の力の使い方も学んだ。
そこで大徳との修行中での会話を思い出す。
「三蔵!お前は不動明王の力を何処まで使えるのだ?」
「何処までって…炎を出したりとかだろ?あぁ…そう言えば昔、明王と俺が一つになったりしたような感覚があったな?合体みたいな?」
と、言っても…
ヤオヨローズとカミシニとの戦いの最中に一度だけだったがな…
二度だったか?
「ふむ。恐らくそれは明王合身だな…」
「明王合身?」
「うむ。明王から力を借りるだけでなく、その魂を通わせ、身も心も一つになる事で人の身で神となる融合技だ」
「けど、その後もいくら試しても二度と出来なかったぜ?」
「ひと時でも、その力の片鱗をかいま見たのであれば話は早い」
「どういう事だ?」
「キッカケは既に身についているって事だ!それに我々は皆、自由に合身出来るのだぞ?」
「!!」
「で、話は戻るがお前の不動明王の炎には二つの炎があるのは…知ってはおらんだろうな?」
「確かに知らん!」
「威張るな!」
大徳が俺の頭をこずく。
てか、一回一回殴るなよ…
暴力…反対…!
「では教えてやろう!お前の炎には…」
俺は大徳の言葉を思い出していた。
俺の炎には…
「全ての魔を滅っする『退魔の炎』と…」
そして…
「魔に堕ちた魂を浄め鎮める『浄火の炎』があるのだ」
俺は瞳を綴じて集中する。
「馬鹿か!確かに魔物や魑魅魍魎に身体を奪われたのなら、浄火の炎…それで戻せるかもしれん!しかしこれは、細胞レベル…魔物の細胞と人間の細胞が融合したものなのだ!浄火や退魔とは話が違うのだぞ!」
分かっているさ…
しかし、相手が神魔の類いなら消し去る事が出来るはずだ。
不動明王の浄火の炎と、この神魔をも消し去る…
このカミシニの血の力。
『降魔の剣』が組み合わさればな!
俺の掌から炎を纏う剣が現れる。
「ウオオオオオオ!」
それは、降魔の剣!
その炎は、真っ赤に燃え上がっていき次第にその炎がぼやけ始め青白い炎へと変わった。
これこそ!
「退魔浄火炎だぁー!」
俺は魔物と化したハンに向かって、浄火の炎を纏った剣を振り下ろしたのだ。
「おおお!」
が…炎に包まれたハンには何も変化がなかった。
「…大袈裟な割に何も変化ないぞ?」
「だから言ったのに…呪いの類いじゃないのだと…」
蛇塚とバサラは多少、期待もしていたようだが、現実問題無理だと諦める。
…いや!まだだぁー!
「うぐおおおおおおお!」
俺の炎がさらに炎力を増していく。
「無駄と言っているのに…」
「待ってください!バサラさん!三蔵の様子が!?」
「!!」
その時、
「ハンよ…負けるな…
確かに…結果的に父親を殺し…辛いのは分かる。
痛いほど分かる!だが、お前が死んで…父親は喜ぶのか?
お前は生きなくてはダメだ!生きていれば…必ず…
償えるはずなのだから!!
今、死んだら…お前の父親は無駄死にになってしまうんだぞぉー!!
その瞬間!
俺の身体から薄白い炎が噴きだし、俺の眼が?
俺の眼が『金色』に輝いたのだ!
『ナウマク・サマンダ・バサラ・ダン・カン!不動明王浄火炎』
俺の振り下ろした剣から放たれた浄化炎が、魔物のハンの身体を覆い包み隠していく!
『フギャアアアアア!』
次第に魔物の白い身体が炎に巻き込まれつつ灰となって崩れ落ちていき、
そして、その中から…
俺が…人の姿になったハンを抱き抱えて出て来たのだ。
「あの野郎…本当にやっちまいやがった…」
「ありえない…いや?これが救世主の力なのか?救済の力なのか?」
俺の腕に抱えられたハンが意識を取り戻し目覚める。
「大丈夫か?ハン…」
「あぁ…俺…俺…あんたの声が…聞こえてた…響いてきた…俺…生きて、償うよ…父さんの分も生きて…俺…うっうっ…」
俺は頷き、笑みを見せた。
「俺!生きてて良いんだよな?」
俺は…
「当たり前だ!俺だって…俺だって!生きているのだからな!」
そう言って、俺はハンを抱きしめた。
俺自身…自分にそう言い聞かせているのだから…
その時、
「三蔵!危ねぇ!」
えっ!?
蛇塚の声に俺が振り返ろうとすると、何かが俺の真横を通り過ぎたのだ?
冷たい風が吹いた…
俺は…何が起きたか分からなかったが、再びハンを見た時、
ハンは涙を流して…
「やっぱり…ダメみたいだ…神様は…俺を…許してくれな…かっ…たよ…」
ハン…お前何を言って?
「!!」
するとハンの口元から血が流れ、ハンの首が…
ゆっくりと…俺の足元に落ちたのだ。
「あっ…ああ…!?」
足元には黒い刃のチャクラムと呼ばれる輪の形をした武器が突き刺さっていた。
これが…ハンの首を切り落としたのか!?
いや、ハン…ハン!
「うおああああ!」
俺は転がったハンの首を抱きしめ咆哮する。
これから…これからだったのに…せっかく助かった命だったのに!!
そして俺は武器が飛んで来た方向を睨み付ける。
一体、何処の野郎がぁ!
許さねぇ…許さねぇー!
ゼッテェーにぶっ殺す!
蛇塚とバサラもその方向を見ていた。
そこには村の四方を囲む結解の一つがあった。
チャクラムが飛んで来たのは、その結解の柱の上から。
柱には白いマントを被った者達が五人?
冷たい視線でニヤつきながらこちらを見下ろしていた。
「奴らかぁ!」
今直ぐにでも掴まえ…て
えっ?ナッ!!
俺の間合いに、その中の一人が突っ込んで来たのだ!
速い!
「君…素人だね?クスッ…君も死んだら?」
その瞬間、俺の怒りが爆発し目の前の白いマントの男目掛けて、炎の拳で殴りつける。
が…俺の拳は空を切り、逆に俺はソイツが突き出した刃に貫かれる!?
ヤバイ…殺られる!
そこに、
「危ねぇーー!」
蛇塚が間一髪、錫杖を投げたのだ!
蛇塚の錫杖は白いマントの突き出した刃を弾き、その隙に俺は距離をとって離れる。
俺の横には蛇塚が新たに作った金の錫杖を構えていた。
「礼はいらねぇ!」
「たりまえだ!」
「可愛くねぇ!」
「てめぇに可愛いがられたくねぇよ!それより…」
「あぁ…奴らツエ~な?」
俺達の目の前には、既に白いマントを被った怪しい五人組が揃っていた。
「何者だ!面くらい見せやがぁれぇー!」
俺は五人組に向けて不動明王の火炎放射を放ったのだ。
五人組は炎に包まれたが、動じる事なく燃え盛るマントを投げ捨てる。
そこに現れたのは銀色の髪に、右目が青…左目が緑…まるで人間離れした美しい少年達が現れたのだ。って…コイツ達…!?
俺と蛇塚は二人一緒に振り返りバサラを見た!
「…………」
一体全体…どういう事なんだ?
そっくりじゃあねぇかよ?
バサラの姿に何もかも?
いや、それよりも…
こいつ達全員絶対に許さねぇ!!
ハンの仇は俺がとる!
次回予告
三蔵「せっかく救えたと思ったのに・・・
許せねえ!!
しかし、こいつ達は何者??
何故、バサラにクリソツなんだ??
訳わかんねーぞ!!
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
ハンの仇は俺がとる!」




