明王五人、いざ!中国へ!
大徳の修行を終えた三蔵は、ようやく晴明の待つ遺跡へと向かう事になったのだが、まさかその場所は中国だった。
よ…よぉ?俺は三蔵だ!
なんだかんだで俺は…今、中国に来ている。
まぁ、ここに来るまでの経緯を話せば長くなるのだが、俺の顔に痣、頭のタンコブがズキズキと痛む。本当、何処から話すかな?
え~日本を出る前日の夜、俺は金髪野郎[蛇塚]から呼び出されて、人目のつかない寺の裏まで行ったのだ。
そこで俺が来るなり金髪野郎に、いきなりぶん殴られたのだ。
「てめぇ!俺を呼び出しておいて何をしやがる!?」
「………」
蛇塚は肩を震わせながら俺を睨みつけていた。
「何をしやがるだ!だって?コラァ!てめぇが何をしたか分かっているのかよ!!」
蛇塚の奴は怒り心頭で俺を指さし怒鳴る。
「だから!何が何だってんだよ!?」
「きぃ…キサマ!!座主…いや!お前は卑弥呼様に何をしたかと言っているんだぁーー!」
はっ?それはきっと、この金髪はあの件の事を言ってるのだと察した。
こいつらのリーダーである座主…
座主は実は女で、めちゃくちゃ美しい女だった。
そこで俺は…
その座主…名前は卑弥呼らしいな?
勢いで…ヤッちまったんだった。
「しらばっくれんなよ?俺は…卑弥呼様付きの侍女に聞いたんだよ!」
すると蛇塚は、再び俺に殴り掛かって来たのだ。
俺は…
「てめぇには関係ないだろうがぁ!」
「関係あらぁー!」
拳と拳がぶつかり合い、お互い弾き飛ばされながら体勢を整え、再び突進する。
「売られた喧嘩は買うのが俺の性分だ!」
「その性根!俺が叩き潰してやるぜ!」
俺の上段蹴りを金髪野郎は身を下げて躱しつつ俺の顔面目掛けて拳を繰り出す。
俺は蹴りあげた足を戻しつつ回転して、左腕で受け止め弾き返した。
更に、金髪野郎の拳が俺の眼前に迫る。
この金髪とは以前にバトッた事があったが、あの時はどうやら手を抜かれていたようだな?
今は殺気が籠った鋭い攻撃が俺を襲う。
俺も負けじと拳を繰り出し返す。
ウッ!
瞬間、俺の拳を掴まれ力が抜けたかと思うと、足場が消えて視界が逆転したのだ?
投げられた?
合気か!
忘れてた…この銀髪野郎は合気を使うんだったな!
俺は地面に叩きつけられる直後に上手く受け身をとり、後方に飛びながら距離を取った。
ん?金髪野郎がいない?
後ろか!
俺は振り向かずに、真後ろから感じる気配目掛けて回し蹴りを食らわしたのだ。
金髪野郎は予想外の俺の攻撃にも動じないで、同じく蹴りで返して来た。
お互いの蹴りと蹴りが衝突し、凄まじい衝撃が俺達を中心に走った。
やっぱり…強いぜ…この金髪野郎は…
が、俺も奴の動きについていけてる!
大徳との修業の成果か?
「てめぇ…マジに何がしたいんだ?」
すると、金髪野郎は肩を奮わせ言った。
「俺は…だったんだ…」
「はっ?」
そして、まさかの衝撃的な言葉が返って来たのだ。
「俺は…卑弥呼様を…」
『お慕い申して…いた…のだぁーーー!』
…はい?
えっと?こ…こいつ…まさか!?
嫉妬なのかぁ~??
そっか、そっか~なるへそ!
俺は頷きながら納得し、
「そっかぁ…そりゃあ~悪かったな?アハハ…え~すまねぇ!すまねぇ!」
「何を笑っている?」
「だ・か・ら~!俺が、あの女に手を出した事を怒っているんだろ?でも、もう過ぎた事だしよ~!マジに悪かったよ?大丈夫だ!俺のお手付き後で悪いが、今からでもアタックしろよ?てか、お前はもう告ったのか?いや、その様子じゃまだだよな?いやぁ~青春!青春!」
「………」
「しか~し!良い女だったぜぇ~!思い出しただけで…へへへ!」
「卑弥呼様に対して下品な想像するのは止めろ!やはり貴様は…救世主なんかじゃない!ただの、チンピラだぁ!」
「チンピラだと!?せっかく俺が同情してやっているのによ?ふざけんな!」
「ふざけてるのは、お前だぁー!!」
と、再びバトルが始まろうとした時…
『お前達!いい加減にしろ!』
突然現れた三千院が、俺と蛇塚を止めたのだった。
結局、因縁残しつつも金髪野郎とは決着がついていないまま今に至る。
そう言えば…
金髪野郎が立ち去る時に三千院に気になる事を漏らしてやがったな?
確か~?
「三千院さんが一番あの野郎を恨んでいるんじゃないですか?」
「どういう意味だ?」
「本当なら…不動明王は貴方の師が!」
「その話は止めろ!」
三千院の叱咤に蛇塚は黙り込んだのだった。
三千院の師?
不動明王?
何の話だ?
で、その後…その話をこっそり大徳に聞いてみたら、思いがけない名前が出て来たのである。
「うむ。三千院の師は、お前も知っていよう?不動鷹仁殿なのだ」
なっ?
不動鷹仁…
俺が不動明王と契約した日…俺の前に不動明王との契約しようとして失敗し、死んだ男…
「あの不動鷹仁が三千院の師だって~!?」
そんなかんなで…
気まずい空気の中…
俺達は、いざ中国へ!
いや、無理!無理…俺は泳ぐ!
中国まで泳ぎ切ってやる!
そこに大徳が…
「まったく…いつまでも聞き分けのない奴だ!」
と、言って俺の頭にゲンコツを一発食らわしたのだ。
俺は白目を向き気絶して、目覚めた時には日本を離れ異国の地である中国にまで来ていた。
ぼやけた頭で、飛んで行くヘリコプターを見送り、俺はまったく記憶がない事に不安を感じる。
俺…大丈夫なのか?
頭…大丈夫なのか?
本当に…大丈夫?
そんな経緯で俺と三千院、大徳、蛇塚にバサラは揃って中国までに来たのだった。
場所は中国にある、とある寺院…
人が近寄らぬ険しい山奥にその寺院はあった。
そこは中国の魔物退治を生業としている中国裏総本山があったのだ。
俺達は一度、中国の総本山の長の前に呼ばれ、現状の状況を聞かされた。
晴明が遺跡で消えた後も再び魔物が表に現れ、近辺の村を襲っていると言うのである。
遺跡は確か…晴明が結解を張ったのでは?
どうなってやがる?
まさか晴明の結解が、こんなに早く消えるなんて…
そこで俺達は遺跡近くの村に向かう事になった。
「早速、遺跡に連れて行って貰おうか?」
「まぁ、待て!遺跡近くの村から案内人が来る事になっているのだ」
「案内人?」
「うむ。唯一の遺跡から生き残り、我々に報告に戻った僧侶はあの後意識を失ってしまい、未だに目覚めない状態だったからな?我々も遺跡の詳しい場所は分からぬのだ」
「そんな…」
と、そこに薄汚いガキが俺に向かって近付いて来て、打つかって来たのだ。
「気をつけろ!」
俺はすかさず生意気なガキの襟を掴み、自分の足元に転ばした。
「いってぇ~!」
尻もちをつくガキに大人げないと蛇塚が俺を責める。
「おぃ!子供に何をしてんだよ!?」
「よく見ろよ?このガキが…」
すると、ガキの懐から財布が落ちたのだ。
「俺の財布を抜きやがったんだ」
「なっ!?」
俺はガキの襟を掴み上げ拳を振り上げる。
「こういうガキは…一発殴って…」
「わっ!わっ!わっ!たんま!たんま!悪かったよ!」
「いや、許さん!」
俺の目はマジであった。
俺はガキには容赦しない性分なのだ!
「わぁ!てめぇ!殴ったら遺跡の場所案内してやんないからなぁ!」
何ぃ?
俺はガキを離すと、ガキは尻から落ちたのだ。
「くそぉ!ちょっと悪ふざけしただけなのに!」
「ガキ!遺跡の道案内ってどういう事だ?」
「ケッ!」
俺が再び拳を握ると、
「わっ!わぁ!冗談だよ!俺がお前達を案内してやるように言われて、村からやって来たハンって言うんだ!嘘だと思うなら、この寺のお偉いさんに聞いてみろよ!」
「どうやら本当らしいな…」
「まさか子供とは…」
三千院も大徳も子供が案内人とは思っていなかったらしい。
「しかし、俺から財布を抜こうなんて、ふざけたガキだぜ!」
と、そこに…
「おぃ!おぃ!ちょっと待てよ!何を話して話しているんだ?」
意味を理解していない蛇塚に大徳が説明している。
ん?ああ…
「三蔵!お前は中国の言葉が分かるようだな?」
「ん?ああ…それがどうした?」
「何!」
「意外だな」
蛇塚は驚き、三千院は感心していた。
「えっ?」
そうなのだ…
俺は別に気にしていなかったのだが、俺は全国語話せるのだ!
まぁ、見知らぬ部族とか知られてない言葉は別として、昔、小角が必要になるからと語学だけは徹底的にやらされたんだったなぁ…
「なんかムカつく!」
「小角殿は何でもお見通しのようだな…」
蛇塚は嫉妬し、大徳は頷いている。
もしかして…俺って…凄いのか?
凄いみたいだな?
「やはり俺、天才!」
「調子乗るな!」
は…はい…
俺は再び、大徳に頭を殴られたのであった。
そんなにゲンコツを容赦なくされていたら、俺、いつか頭…
悪くなるんじゃねぇか?
心配だ…
そして俺達はは、道案内のハンに連れられて、遺跡近くにある村に向かう事にしたのだった。
次回予告
三蔵「やはり勉強はやっていて損はないよな?
そもそも俺は頭は悪くないのだぞ?
学校には行ってなかったから、どれくらいかは分からないがな?
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
晴明!ようやくお前のいる所にまで来たからな!
待っていろよなーー!!」




