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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
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鬼を素手で殺す男!!

三蔵は己に近い何かを大徳に感じ、


その過去話を聞くのであった。


大威徳明王を魂に宿す大徳力也は、三蔵の前で己の過去を話し始める。


それは大徳がまだ明王と契約をする前へと遡る。






夜分遅く…


数々の腕の立つ退魔師が数人がかりでも手こずる凶悪な悪鬼が封印していた寺から逃げ出し、苦労のすえ総本山から武装した僧侶達が束になって取り囲んでいた。

が、その悪鬼の狂暴さに捕らえる事が出来ずにいた。


すると鬼を囲む僧侶達の間を割って入り、そこに一人の男が立ちはだかったのだ。


悪鬼は現れたその男に、今にも襲い掛かろうとしていた。男は二メートル近くある大柄な体型で、ボサボサな髪を掻きながら悪鬼に対してぼやいていた。



「面倒くせぇな~!父上がどうしてもって言うから来てみりゃあ…大した事なさそうな奴じゃねぇかよ?暇潰しにもならねぇぜ」



いくら大柄の男とはいえ、悪鬼はその倍以上の化け物である。鋭い爪に、丸太のような太い腕。生きた凶器が、男に向かって振り下ろされたのだ。


「潰された!」



その場で見ていた僧侶達全てが一瞬そう思い、目を覆った…が、直ぐにその目の前で起きている状況に唾を飲み込む。


男は悪鬼の振り下ろされた腕を片手で受け止めただけでなく、もう片方の拳で悪鬼の腹を殴りつけたのだ。強烈な一撃に悪鬼は悶え疼くまる。


さらに男は、すかさず悪鬼の背後に回り込み…

悪鬼の首を自分の腕で締め付けたのだ。


グググ…


その後、強烈な異音が響き渡った。

悪鬼の首がへし折れた音である。


その一部始終を見ていた僧侶達に震えが走る。

それは悪鬼よりも、目の前にいる人間の男に対してであった。


人間が凶悪な悪鬼を?


しかも素手で絞め殺すなんて?


しかし男の事は噂では知られていた。

男はかなりの有力寺である大徳寺院の三男坊であり、その名を…

『大徳 力也』と言った。



だが、その名よりも知れ渡る名があった。


鬼を素手で殺す男…


通称…『鬼殺しの力也』



男は鬼の屍の後始末を見ていた僧侶達に任し、置いておいた一升瓶の酒を口に含むと豪快に飲みながら帰って行ったのだ。






俺、大徳力也・20歳…



『その頃の俺は…力が全てであると信じていた馬鹿者だった。


あの忌まわしき出来事が起きるまでは…』




俺は鬼を退魔した後、自分の寺に戻った。

俺は裏口の門から中にはいる。

俺は、この寺では存在が許されていなかったのだ。

代々、この大徳の家系は寺を継ぐ長男以外は、裏の世界へと配属される、

つまり長男以外は、いつ死ぬか生きるか分からない裏家業


『退魔行』


そんな世界へと放り込まれてしまうのである。


しかし、俺にとって…

そんな裏の世界は捨てたもんじゃなかった。

頭を使うシキタリやら、形式やら、型にはめられた表世界より、裏の…

ただ、鬼や悪霊の奴達を己の力量だけで始末する。

『それだけ』の裏世界の方が俺には性分に合っていたからだ。


俺が自分の部屋に戻ると、兄貴が睨みつけながら俺の帰りを待っていた。

兄貴は左目が不自由で、眼帯をしている。


「力也!お前はまた鬼を残酷に始末したのか?何度言えば分かるのだ!鬼も元は人間のマイナスの魂から産まれた者!静め、清め、荒魂を浄化してこそ本当の退魔なのだぞ!」


「あん?だから、俺は直々に素手で始末してやったんじゃねぇか?」


「素手とは…確かにお前の並外れた力は退魔行には欠かせぬ…そのお陰で力ない僧侶達もどれだけ救われたかも分からない。だが、お前は自らの力に溺れ過ぎている…このままでは、お前は… 取り返しのつかない事に・・・」


「俺がどうなるって言うんだよ?」


「いずれ身を滅ぼしかねんと言っているのだ!」


「心配ありがとうよ!でも、問題ねぇよ!」



兄貴は俺に背中を向き、もう一言を問い掛ける。



「お前にとって、力とは何だ?何のための力なのだ?」



俺はひょうひょうと答えた。



「力とは!力とは己を証明するための手段!俺は強い!力こそ、全てだ!」


「己の力に溺れてしまえば、いずれ大切なモノを失うぞ…」



そう言って兄貴は出て行ったのだ。



「ケッ!何を失うって言うんだよ?力があれば何でも手に入るんだよ!」




二番目の兄貴…


大徳高良コウリョウ


兄貴もまた並外れた霊能力のある者だった。


が、しかし…


退魔行に一度失敗した際、逃げた化け物が仕返しに来て兄は左目を化け物にえぐられたのだ。

それ以来、臆病風にふかれちまったに違いない!


「ふん!俺は、あんたとは違うよ!」



俺は帰ったばかりだったが、兄貴の言葉にムシャクシャしながら再び寺を出て行った。


こんな時は酒を飲んで、気晴らしするしかない…


寺を出ると、空は明るくなっていた。


「朝酒かぁ…」



俺は行きつけの飲み屋をはしごして、酒を飲み歩いた。

で、気付いたら公園でイビキをかきながら眠っていたのだ。


「もう昼か…頭がいてぇ~」



『お前にとって、力とは何だ?何のための力なのだ?』




兄貴の台詞が頭に過ぎる。


何のための力か…


俺にとっての力は、生きていくための力さ?


日の当たらない場所で生きていくための力…


己が俺であるための手段…


それが俺の存在意義。


それ以上でも、それ以下でもない!




俺は公園の時計を見て、今の時間を確認する。



「なぬ?もうこんな時間かぁ?やべえ…間に合わん!」



裏世界に生きる俺は、夜の世界を生きているのである。

昼は普段寝てるか酒を飲んで過ごす訳だが、今日はと言うと少し違った。

俺はその足で近くのスーパーに駆け込み、でかい袋に何やら詰めて、身支度をする。


そのまま俺の出向いた先はと言うと?

俺はスーツに着替え、頭に虎のマスクを被る。


「やぁ~!」



俺の恥ずかしい挨拶に、何処からか俺の姿を覗き見ていた子供達が集まって来た。

突然騒がしくなる俺の周りは、無邪気な子供達で群がっていた。


「アハハハハ!お前達!元気にしてたか?」


「は~い!」


ここは俺のいる寺から少し離れた場所にある小さな孤児院であった。

なぬ?何故に俺がこんな場所に来たかって?


そこに一人の若い女性が走って来たのだ。


彼女の名前は…


『沢田菜々子』


この孤児院の先生である。


俺は…


「やぁ!な…なな…きょ…さん!」


「力也さん!いらっしゃい!また来てくれたんですね?」


「力也?何を言ってますか?わ!私は!通りすがりの…タイガーなマスク男ですよ?アハハハハ!」


「は…はぁ…力也さんって、いつも面白いですね?」


「そ?そうですか?あんまり言われた事ないんで…アハハ…」


「それに毎回いらっしゃる度にわざわざ子供達のためにプレゼントまで戴いて、子供達も喜んでいます。本当に何てお礼を言えば…!」


「ありがとうございま~す!力也おじちゃん!」


「アハハ…お兄ちゃんと呼ぼうな?それに、タイガーなマスク男だぞ?俺は!」


「クスッ!…本当に力也さんて子供好きなのですね?」



すると子供たちが奈々子さんの袖を引っ張り答えたのだ。



「先生?違うよ?力也お兄ちゃんは、菜々子先生が好きだから来てるんだよ」


「えっ?」



なっ!?


俺はすかさず子供達の口を塞ぎ笑ってごまかしたのだ。



「何を言っとるのかなぁ~?あはは」



この孤児院は両親を魔物に殺され、身寄りがなくなった子供達を預かっているのである。


そして、この孤児院の唯一の先生であり、保護者が菜々子さん…



菜々子さんは…


俺の人生に咲いた…




花だ!


花なぁんだぁ~!



次回予告


三蔵「何なんだ?この展開は??


まさかの惚気話なのかーーー??」


大徳「ははははは!これからが見せ場なのだ!ふむ。」

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