捲簾大将 沙悟浄!新たなる旅立ち!
突然物語は沙悟浄と呼ばれる河童妖怪の話に?
まだまだ続く沙悟浄の物語・・・
は~い覚えていますか?
私、河童の沙悟浄です!
早速ですが、少し私の冒険話を聞いてはくれませんか?
えっ?嫌とか言わないでくださいよ~!?
お願いします!すいません。
私、沙悟浄は日本のとある村から夢のお告げに従って、この異国の地(中国)に辿り着いた訳ですが・・・
私は日本からイカダを使って海に出たのです。
それは本当に大変な道のりでした。
最初は持ってきた胡瓜を海水に付けてみたら、とても美味しい事に感激して意気揚々と海に出たのですが・・・甘かった。
いや・・・塩辛かった。
食料は三日で尽きてしまい、太陽に照らされ干からび、
海の荒波でイカダは壊れ、流され流され・・・
気がついた場所は・・・
何処らか解らない見知らぬ部屋のベッドの上でした。
う~ん・・・ここは一体何処なんでしょう?
辺りを見渡すと暖かい日差しに、綺麗なお部屋。
それに桃の香りがほんわかと?
「どうやら気がついたようですね?沙悟浄」
私は突然背後から名前を呼ばれて恐る恐る振り返って見ると、そこには?
少し頬のこけた長い銀髪の男性が椅子に座りながら、書物を読んでいたのです。
いつの間に?
いや?気配がなかっただけで、この人はずっとここにいた?
一体、何者なのでしょうか?
「貴方は?」
「私の名前は恵岸行者!天界の仙人ですよ」
「しぇ?しぇんにん様ですか!」
「はい」
「じゃ?じゃあ…ここは一体?」
「ここは天界です」
天界?天界って神様の住んでいる場所ですよね?
て、事は!!
「えっ?えっ?えっ?私死んじゃったのですかぁ~?」
私はパニックを起こして、悲鳴をあげながら走り回ったのでした。
「うきゃあ!うきゃあ!うきゃあ!私、死んじゃった~!海に飲まれて死んじゃった~何て悲しい人生だったんにょらぁ~」
「静かにしなさい!」
《パシィン!》
恵岸行者様は取り乱す私の頭をハリセンで殴りつけたのです。
い・・・痛い・・・痛い?
痛いって事は?
つまり!
「そうですよ?貴方は死んではいません!」
「えっ?じゃあ?私はどうしてここに?」
そこで、恵岸行者様は私に説明なさってくれたのでした。
『貴方はこれから来るであろう「時」のために!出会うべく運命に導かれし「仲間達」との邂逅ために…今はここで修業するのです!』
「時?仲間?修業ですか?」
この日を境に、意味が分からないまま私は恵岸行者様の下で修業する事にしたのでした。
それから・・・
三年の月日が過ぎ、私の修業の日々も落ち着いて来た頃。
ちなみに修行とは書物を読んだり、神通力を高めたり、自然と調和したり、他にもいろいろやりましたよ?が、やはり私この天上世界では下っ端なので、殆どの時間を家事や掃除等の雑用に費やしていたのでした。まぁ~好きなので構わないのですがね。
そんなある日、私は恵岸行者様に連れられて、神々や仙人様が集まる晩桃会に連れて行って貰う事になったのです。
私はワクワクドキドキ胸キュン好奇心いっぱいでした。
そこは桃で彩られた建物や飾り付け、ご馳走も見た事のないような物ばかり沢山あったのです。
かなり身分の高い方の屋敷なのでの私は見るもの全てに感動していました。
「ふぅわ~!恵岸行者様!凄いです!これは猛烈に凄すぎます!」
私は見た事のない贅沢な世界に、感激で涙目になる。
「これこれ、待ちなさい!先にする事がありますよね?」
「えっ?あ、はい!そうですね」
私は恵岸行者様に連れられて、晩桃会に集まっていた神様や仙人様に挨拶をして回ったのです。
「ボソッ…アイツが…けんれん… ?」
話し声が聞こえた。
誰かが私を見て噂していた?
ん?けんれんって?何だろ?
まぁ、良いか・・・
そこに他の仙人様方が恵岸行者様の元へ挨拶に来たのです。
「あの~私、少々お腹が空いてしまったのですが、何か食べても良いでしょうか?」
「仕方ないですね?悟浄、私は少し離れますが、ここでちゃんと大人しくしているのですよ?解りましたね?」
「はい!」
私が一人食事を取りながら恵岸行者様を待っていると、私と同じくらいの歳の神の子達が集まって来たのです。
「おい!コイツじゃないか?噂の河童って?」
「あぁ…間違いない!しかし何でコイツが?」
どう考えても、良く思われていないのが分かる。
だって、長年イジメられて来た経験上、感で解るのです。
あの冷たい目・・・
私を見下し蔑む目・・・
アハハ・・・
最近は恵岸行者様としか接する事なかったから見なくて良かったのにな~
「おい!お前ちょっとこっち来いよ!」
「えっ?あっ、私?私は恵岸行者様からここを離れてはいけないと…あっ!」
しかし私は嫌がるのをお構い無しに、神子の一人が私の腕を引っ張り外に連れ出したのでした。
「何をするんですか?ちょっと?止めてください!」
その後、私は・・・
トイレに顔を擦りつけられ、泥を投げられ、衣服がボロボロになるまで踏みつけられ、蹴られたのでした。
「な…何でこんな事するんですか?痛いです!嫌…止めてください!私が何を?あっ…痛いです!ごめんなさい!」
「コイツ目茶苦茶弱いぜ!」
すると少年神の一人が言ったのです。
「どうしてこんな弱い奴が称号持ちなんだよ!しかもよりによって、あの栄誉ある称号なんだよ?ふざけるなよ!」
称号?
称号とは選ばれた優秀な武神に与えられる勲章でもあり、アザ名なのです。
その称号を与えられる事は武神にとって最高の栄誉なのです。
しかし?どうして私が虐められるのですか?
「アハハハハ!!お前なんかこうしてやる!」
そして、神子の一人が私の髪を引っ張り、頭に何か液体の用な物をかけ始めたのです。
「お前なんかに捲簾大将の称号なんて不釣り合いなんだよ!」
捲簾大将って何?
「何を言ってるのか解らないですよ~」
神子は私の髪を抑えながら、頭に何か液体をかけてきたのです。
「ほらぁ!せめてものお慈悲だぞ?喜べよ!」
私の頭にかけられたのは桃のお酒でした。
「ごほっ!ごほっ!たっ…助け…助けて・・・」
「おい?皆!コイツの頭の皿、目茶苦茶汚いぜ!それに目茶苦茶臭いかも!うわっ…バッチイ~!」
「アハハハハハ!汚い汚い汚い汚い汚い汚い」
薄れゆく意識の中で神子達の笑い声が聞こえた。
どうして私ばかり・・・?
いつもいつも・・・
こんなの・・・
『プチン!』
頭の中で何かが弾ける音がした。
「今・・・何て言いました?」
「何だ?聞こえないぞ?こいつ何か言ってるぜ?」
直後、神子達の表情が豹変した。
いや?豹変したのは私の方?
「私の皿が何だって?あぁ?何て言ったのかと聞いてるんだよぉー!」
『ぐおおおおおおおおお!!』
・・・・・・。
その後の記憶はありません。
ただ、私が目が覚めた時には会場が酷い有り様でした。
神子達はもちろん、大人の神も床で雑魚寝していたのです。
「・・・?」
・・・よっぽどお酒を飲み過ぎてしまったのでしょうか?
困った皆様ですね・・・。
と、私は解釈いたしました。
それからどうも私が記憶をなくしている間、長老神様の大切になさっていた晩桃会に飾られていた【瑠璃の盃】という貴重な品物を割ってしまったらしいのです。
私はお咎めとして天井界に住めなくなってしまったのでした。
「仕方ありませんね…私も手を尽くしたのですが…沙悟浄!お前は運命のその日まで地上界で時を待つのです!でも、決して修業を怠けてはいけませんよ?良いですね?」
「は…はい…」
その時の恵岸行者様の額にはタンコブがあったのですが、一体どうしたんでしょうね?
そして私は地上界に(追放?)落とされたのでした。
う~ん?ここまでの私の話を聞いた感じだと、私がただの役立つとしか思えないですって?
うむむ…仕方ないですね~では、私の活躍話をもう一つお聞かせしましょう!
・・・ハイ?
どうでもいい?
飽きた?
すみません・・・後々の話もありますので、お願いしますから無理して聞いてください。
それは、私が天界から地上界へ落とされ、一人旅をしていた時の話です。
私は旅の疲れを癒すために、流砂河と呼ばれる川で泳ぎを楽しんでいたのでした。
すると、上流から・・・た?大木が流れて来て!
「うぎゃあ!」
鈍い音とともに頭に激痛が走りました。
「おっ?お皿にヒビが?あっ…気が…遠くなっていく~…クラクラ~」
その直後でした。
「猿!ここが流砂河か?」
「ああっ!でも、一体ここに何があるんだ?ん?」
「オラは腹が減ったらよ~」
二匹の妖怪を連れた御坊さんが通りかかったのです。
何かを感じたのか?猿が黙り、辺りを見渡し始める。
「妖気?三蔵!近くに妖気を感じるぜ!」
「ああっ…気付いている!」
「ん?また追っ手の妖怪らか?」
その時です!河の中心に巨大な渦潮が起こったのです。
「誰だ!?隠れてないで出て来い!」
猿の言葉に渦潮から妖怪が飛び出して来たのです!
「エケケケ!なんれすかぁ~お前らなんか~でえ嫌いれ~す!」
「何だコイツ?酔っ払っているらか?」
「珍しいな…ありゃ日本の河童だ!」
「河童?しかしよ?これじゃ河を通れねーぞ?」
「馬鹿か?通れないなら、猿!お前が何とかしろ!」
「まったく猿扱いの荒い奴だ!仕方ないな…おい!河童!河から出てこい!この孫悟空様が相手になってやる!」
しーーん……
「くそ!シカトしやがって!おい、豚!お前が河に飛び込み、奴を陸におびき寄せろ!」
「おぃ!オラかよ?何でオラが!」
「お前は天界にいた頃は、天の川を守る水の総大将だったんだろ?」
「そりゃそうらけどよ~」
「天下の水の総大将が河童に負ける訳ないよな?それに比べ俺様は石猿だ!水が苦手なんだよ~!」
「本当らか?」
「さっさと行け!」
孫悟空(猿)は、八戒(豚)を蹴り飛ばし河に落としたのです。
「まったく豚使いの荒い猿ら!仕方ねーらな…」
八戒と呼ばれる豚の妖怪は、河の中をスイスイと潜って行く。
意外に泳ぎは達者のようですね?
八戒は潜りながら河童を探していた。
「お~い!河童ちゃんよ~?この八戒様が退治してやるらよ~!」
すると背後の河の底から何かが光り?
それは凄い勢いで八戒目掛けて突進してきたのです!
『一撃必殺!』
直後、河童の渦を巻く攻撃が八戒を河の外へと弾き飛ばしたのです!
「あぴょ~ん!」
陸まで吹き飛ばされ息をきらす八戒は、
「ダメら~やられたらぁ~!」
「ハイ!もう一度!」
再び孫悟空に蹴られて川に突き落とされたのでした。
はっきり言って酷い・・・
「マジらかよ?くそ~!」
また川に潜り河童を探す八戒・・・が、また吹っ飛んで行く!
「ふぅぎゃあ~!」
そんな役に立たない八戒に孫悟空は痺れを切らしたのか?
「しょうがねぇな~!」
河童と八戒が戦っている間に孫悟空が飛び込んで来たのです。
あれ?泳げなかったのでは?
嘘?
つまり面倒臭がっていただけなんですね。
「こいつ!なかなかやるらよ!」
「みたいだな?うりゃあ!」
「一撃必殺!一撃必殺!一撃必殺!」
「あぐわぁ!コイツ水の中だと動きが捕らえられねぇ!おい!豚いくぞ!」
「おぅら!」
交戦する三匹・・・
ですが、決着は!
「必殺!一撃必殺は何度も使ったら一撃必殺じゃないぞ~アタック!」
「ぎゃわぁ~!」
訳の分からない孫悟空と八戒のダブル攻撃が河童を陸まで吹き飛ばしたのでした。
そして孫悟空と八戒に三蔵のいる場所まで引きずられる河童。
「まったく!手間とらせやがって!」
「三蔵さんよ?コイツどうするら?」
「いっそう丸焼きにして食っちまうか?」
「それ、良いらな?」
恐ろしい事を言っている孫悟空と八戒に対して三蔵と呼ばれるお坊さんは黙っていました。
「・・・・・・」
「丸焼き!丸焼き!河童の丸焼き!」
河童を料理しようと喜ぶ孫悟空と八戒。
『いっただきま~す!』
ああ・・・可哀想な河童さん・・・
みなさん、さようなら~
そして私の旅はここで・・・
新展開を迎えるのでした。
実は三蔵様一行がこの地に来る前に、こんな事があったのです。
三蔵様達が旅でこの流砂河近くまで来た時、
上空が光り輝いたかと思うと、空から雲に乗った者が降りて来たのです。
「待ってください!」
「ん?何だ?」
現れたのは、どうやら仙人のようでした。
「お前は?」
「私の名前は恵岸行者。仙人です」
「はっ?その仙人が何の用だ?」
「この先にある流砂河に、沙悟浄と呼ばれる私の弟子がいます。その者は捲廉大将の称号を受け継ぎし妖怪なのです。三蔵殿?宜しければ沙悟浄を、貴方の従者にしてはいただけないでしょうか?」
「そいつが俺の探している三人目の従者なのか?」
「そうです」
二人は何か意味深な言葉を交わすと、
「ふむ。良いだろう」
「あれ?やけに素直だな?三蔵の事だから、てっきり何か見返り要求すると思ったぞ?」
「オラはそれより腹が減ったらよ~」
「黙れ!俺が決めた事は絶対だ!つべこべ言う奴はぶん殴る!」
そのやり取りを見て恵岸行者様は軽く頷くと、その場から消えていったのでした。
『頼みましたよ・・・』
とまぁ~こんな事があったのです。
そこで気絶していた河童・・・もう良いですかね?
私が目を覚ましたのでした。
「ありゃ?ここは何処ですか?」
すると目の前にいた僧侶様(三蔵様)が、真面目な顔をして私達を呼んだのです。
「聖天大聖・孫悟空!」
「ほっ?」
「天蓬元帥・猪八戒!」
「なんら?」
「捲簾大将・沙悟浄!」
「へっ?えっと?はっ…ハイ!」
「俺達はこれから天竺を目指す!俺と共に来い!」
「お?お~う!」
この日より私は三蔵様と二人の兄弟子と一緒に旅をする事になったのでした。
めでたしめでたしですね?
はい!
以後、お見知りおきを~
次回予告
沙悟浄「これにて三蔵様一行が揃ったわけですね?いやはや~まさかの主役交代ですか?私、照れますね~」
孫悟空「馬鹿言ってるんじゃねえよ!主役は俺様だぜ!」
八戒「そんな事より、次の話はどんな話らか?」
沙悟浄「どうも車遅国でとんでもない事が起きてるみたいなんですよ」
孫悟空「そんじゃ!次話は車遅国編だぜ!」




