絶望?絶望!絶望!?
ヤオヨローズの裏切者である月読に連れ去られてしまった三蔵とクシナダの運命は?
よぉ…三蔵だぁ…
うっ…ああ…!
あっ…頭…いてぇ~
確か…俺は?
俺は今まで起きた出来事を思い出す。
カミシニとヤオヨローズとの戦争に巻き込まれ、そこで、俺は…
スサノオとヒノガの一騎打ちを見ていた。
すると突然、後頭部に強い衝撃を受けたかと思ったら意識が無くなったのだ。
いや!
俺は薄れゆく意識の中で、スサノオ達のやり取りを聞いていた。
そうだ!
ヤオヨローズの裏切り者…
そいつは!!
瀕死のヒノガより語られた真実とカミシニ達の本当の目的?
しかしヒノガがそれを伝える直前に、スサノオの目の前で何者かに胸を撃ち抜かれ殺されてしまった。スサノオが振り向いた先には、兄の月読が気絶したクシナダと俺を抱き抱え、宙に浮かび上がっていく。
八百万の神の裏切り者は月読だったのだ!
「オィ!馬鹿兄貴?どういうつもりだぁ!」
激怒するスサノオに対して月読は笑みを見せていた。
「そう怒らないでくださいよぉ~スサノオ~!」
「月読…テメェが何故?」
「何故?…う~ん…敷いて言えばね?これが世の中を渡る大人の上手い処世術って事ですかね~」
「ふ…ふざけるなぁー!」
スサノオは月読に向かって飛び上がり、斬り掛かる。
が、スサノオの剣は空を斬ったのだ?
斬った月読は幻?
「ざぁんね~ん!勾玉…消幻!」
「クッ!」
が、スサノオはその斬り掛かった勢いのまま、さらに月読に向かって斬撃の刃を放つ。
「まったく…こちらにはクシナダさんと三蔵君がいるのを忘れてますね?頭がカッとしていると、目の前が見えなくなるのは昔からですねぇ…冷静に対処しないと!」
月読はさらに数十人に分身したのである。
スサノオは着地したと同時に、風の刃を撃ちまくる!
その斬撃が月読の幻を一体一体消していった。
「私は誰にも捕らえられませんよ!」
『勾玉…闇喰!』
するとスサノオの周りを闇が覆い隠していく?
「グッ!やべぇ!」
この闇は捕らえ覆い隠した者を喰らう。
「終わりですよ?」
その時、月読の後方から声が!
『月読!アンタ…実の弟に闇喰までぇ使うかぁ!本気かぁ?本気なのかぁー!』
それは激怒したアマテラスであった。
「姉さん!」
瞬間、アマテラスの身体から凄まじい閃光が放たれた。光は月読の分身体を消し去り、更にはスサノオを覆い隠す闇をも消し去ったのだ。
「月読!お前の力は私には効かないわ!」
「さすが姉さん…しかし!」
すると月読が東京タワーを指差したのだ。
「?」
一番最初に気付いたのはリキッドであった…
「東京タワーって赤だよな?何故、目の前の東京タワーは…黒なんだ?」
「えっ?」
すると東京タワーの頭から次第に黒いものが剥がれ落ちるかのように、赤い本来の姿を見せていく?その…降りて来た黒い何かとは?その黒い正体は東京タワーを囲む程のカミシニ達だった。
東京タワーからカミシニの大群が舞い降りて来る。
そして油断していたヤオヨローズ達に向かって襲い掛かって来たのだ!
「まだ、あんなにいたのかぁよ!」
「クソォ…罠か!奴等の狙いは俺達を呼び寄せ一網打尽にする事?全て罠だったのかぁー!」
リキッドとスサノオが見上げると、
月読を避けるかのようにカミシニ達はスサノオ達に襲い掛かっていく。
月読はそのまま…
混乱の中、俺とクシナダを掴みながら闇の中へと消えていったのだ。
攫われたクシナダと俺に、東京タワーを覆い隠す程のカミシニ達の大群に襲われるヤオヨローズとスサノオ…俺達は…このピンチをどう切り抜ければ良いのだろうか?
俺は全てを思い出し現状の状況整理する。
ここは?
俺は意識を取り戻した事を周りの奴らにばれないように、辺りに意識を集中させた。
一人…二人…嫌な気が八人?
他にも控えている気を感じるぞ?
いや、決して一人一人が弱い訳じゃないと思うが、他の気が半端ないのだ。
それに…
俺の隣に意識を失っていると思われるクシナダの気を感じる。
どうやら、気絶しているようだな?
なるほど…
俺とクシナダは裏切者の月読の野郎に拉致られて、奴等のいる東京タワーのてっぺん(展望台)に連れて来られたようだ。
しかも、身体を縛られてないのは油断か?
違う…奴等にとって俺は脅威に成らざる存在としか見られてないのだ。
その証拠にクシナダの方は身体を縛られて倒れていたからだ…
くっ…くそ!
なめやがって!
そんな中…奴らの会話が聞こえて来た。
「ちょっと!何なのよ?あんた!突然やって来て、ブラッド(クシナダ)と変なガキを連れて来て私達の前に現れてさ?確かあんたってヤオヨローズの月読じゃない?良い度胸ね?」
「まぁ~落ち着いてください!あんまり眉間にシワよせて怒ると、早くお婆さんになってしまいますよ?輪廻!」
「うるさい!シワなんてないわよ!てか、歳とらないし!わざと言っているでしょ?あんたから殺すわよ転生!」
「それは恐い恐い!」
あの声は間違いない。
以前、新宿でやり合ったタキシード姿の転生ってカミシニと、ゴスロリ娘の輪廻ってカミシニだよな?確か?そこに月読もいるのか?
「アハハ!夫婦漫才みたいですね?お二人共!仲が良くて羨ましいですよ~」
「そう見えますか?」
「はい!」
「きっと、貴方の目はふしあなですね?クスッ!」
「あらら~ふしあなだったりしますか?眼科行かないといけませんかね?」
「私の眼鏡を差し上げましょうか?」
「ありがとうございま~す!でも、度が合いますかね?」
「心配ありません!私の眼鏡は最初から度なんかありませんから~!私のは立派な伊達眼鏡ですよ?」
「それはお洒落さんですね?転生さんは!」
すると転生と月読は眼鏡を選びながら語り始める。
「て、何を意気投合しているのよ!あんた達!敵同士でしょうが!」
何か…あの輪廻って娘に少し同情するぜ…
そこに…
「輪廻…彼は敵ではありません」
一瞬で寒気が走った!
まるで心臓を鷲掴みにされた気分だ!
だが、俺だけでなく他のカミシニ連中にも緊張が走ったのを感じた。
間違いねぇ!
こいつが親玉か??
「アライヴ様!」
間違いない…
カミシニのリーダー…
アライヴって奴だ!
「どういう事ですか?こいつが味方って?」
「ふふ…貴方達も何度か会っているでしょ?ねぇ…シャドウ!」
「ですね!」
アライヴは月読の事をシャドウと呼んだのだ。
「シャドウって?あんたがシャドウなの!」
「この姿でお目にかかるのは初めてでしたね?私がカミシニの七賢者のシャドウこと…月読です!以後、宜しくお願いしますね!先輩方?」
「貴方、面白い方だったんですねぇ?いつも無口でしたから気付きませんでしたよ」
「普段は分身体が来ていたので喋れなかったのです。貴方こそ、キャラ被りしますね~アハハ!」
まさか月読がカミシニの幹部だったなんて。
「いや!…こいつ達…面倒臭過ぎる!ダブルでうざったい!」
そこにアライヴとは別に何か震えあがるような者が現れた。
恐らくコイツがカミシニナンバー2のデッドマンって奴か?
「おい!自己紹介はもう良いだろ?それより月読!お前が連れて来た奴の事だけどよ?ブラッドは分かるが、何だ?こっちのガキは?」
それは俺の事か?ヤバい…ヤバい…ヤバい!
俺に注目して来たぞ??
「ちょっと面白い人間でしてね!ホムンクルスさんを倒したのも、この若者なんですよ」
「あっ…あいつ負けたの?しかも、こんな人間のガキに?キャハハ!」
月読に説明されて輪廻も俺に興味を抱く。
そしてアライヴとデッドマンも俺を見下ろしていた。
「どうやら神を魂に宿しているみたいですね?」
「で、どうするんだよ?」
すると月読はとんでもない事を抜かしやがったのだ。
「この人間を…」
『私達の仲間にしたいのです…』
…なぁ?何だと!?
「彼をカミシニにしたいのですが宜しいでしょうか?」
「ハァ?何を言っているんだよ!それに直に赤い雨が降るんだぜ?そうすれば、運良ければカミシニになれるだろ?」
デッドマンの言う通り、血の雨が降れば俺もカミシニになるのか?
「それでは少し惜しくて…私は…アライヴ様の直接の血で、この若者をカミシニにしたいのです。ダメですか?」
その言葉に周りの空気が変わったのだ?
どういう事だ?
「それは…彼が私達と同等のカミシニになれる器だって事ですか?」
「それは分かりません。まぁ、無理なら仕方ないのですけど…面倒臭いですしね?」
「アライヴの純正の血は強力だ!もし並程度のカミシニになれる可能性があっても、身体が耐えられなくて死ぬぜ?」
「それなら、それで構いません。ただし万が一にも?いえ…億万が一にも生存出来たなら?」
月読の提案にデッドマンは渋るも、アライヴは興味を持ち始める。
「私達と同じく王の資質を持った最強のカミシニになれるでしょう。今、カミシニで王の資質を持っているのは僅か数人…」
「無理だな?無駄無駄!止めようぜ?」
「………」
「ふふ…月読、貴方が何を考えているかは分かりませんが、ブラッドさんを連れて来た事の褒美として許可しましょう!それに、彼女にも再び血の洗礼をしなければなりませんからね?」
すると、アライヴが自分の指を切り血を垂らしたである。
それを白衣を着たカミシニの男が二つの試験管で受け取る。
「これで良いですか?シャドウ?」
「有り難き幸せでございます!アライヴ様…」
月読は膝をつき礼をしたのだ。
「では、直ぐにこの血を彼等に注入致しましょう」
白衣を纏った博士みたいな格好の男が、アライヴから流れた血を試験管から注射器で吸い出している。
「そうそう。転生に輪廻、君達には一つ仕事をして来て貰いたいのです」
「なんなりと仰せ下さい」
転生と輪廻はアライヴに仕事を与えられ、その場から気配が消えた。
てか、それどころじゃない~
って、やべえ!
やべえ!やべえ!マジにやべぇぞー??
俺は焦りに焦っていた。
クシナダはまだ意識が戻っていないみたいだし、
こうなったらやぶれかぶれに暴れてやるか?
それしかないぜ!
「これから始まる祭の前の余興には面白い見世物かもしれませんね。そこの人間の君も、さっきから意識を取り戻したようなら少しくらい抵抗してみたらいかがですか?」
なぁに~?
気付かれてたのか!?
俺は観念して立ち上がる。
「どうやらお前が親玉のようだな?それに見覚えのある奴達…えっと新宿で会った奴らか!後は…とにかく恐そうな奴らが殺気だって寝起きには目覚めが悪いぜぇ!」
俺は強がってみせたが、勝てる気がしねぇ…
こいつ達…化け物揃いだ…
とにかく逃げなきゃ?
この場を炎で吹き飛ばして、その隙にクシナダを連れて逃げるしかない。
俺は炎を拳に集めて一気に吹き飛ばそうとした!
が…
俺の考えを読んでいたのか?
俺の背後に回り込んだ赤髪の男デッドマンが俺の腕を絡めて、その場に叩き潰したのだ。
「うぐわぁああ!」
「何だ?つまらねぇな!もう終わりか?」
「くそぉ!」
何て馬鹿力だ?
スサノオ並みか?
俺が力を籠めた時、鈍い音が聞こえた。
それは、デッドマンの奴が躊躇なく俺の腕をへし折った音だった。
「うぐわぁあああ!」
俺の叫びに気付いて、クシナダが目を覚ます…
「三蔵さん!」
クシナダもまた理解したのだ。
今起きている救いようのない絶望的な状況を…
「アライヴ様!私はどうなっても構わない!だから、その人は助けてあげて!」
「ふふ…そうはいきません…遅かれ早かれこの東京には血の雨が降る。そうなったら、そこの人間も助からないでしょうからね」
アライヴの合図で、押さえ付けられた俺とクシナダに、注射器を持った男が近付いて来たのだ。
ヤメロ…ヤメロ…
ヤメロー!!
『止めやがぁれぇー!』
その瞬間!
俺の身体から炎が噴き出し、そこから不動明王が出現したのだ。
一瞬、炎が辺りを覆っていく…
「不動明王!そいつをぶち殺せぇ!」
そして親玉のアライヴに一矢報いるために襲いかかると、
アライヴは自らの血で造った槍で不動明王ごと俺は貫かれ串刺しにされた。
「うぎゃああああ!」
俺の胸から血が噴き出した!
「三蔵さーん!」
まさか…俺…こんな場所で死ぬのか?
こんな簡単に??
死ぬのか?
薄れゆく意識のなか…
注射器を持った男がブツブツ言いながら俺の腕に注射器を刺した。
「まったく…もう死ぬ人間に貴重な血を使うなんて勿体ないですね~」
続けてクシナダにも注射器が迫る。
クシナダもまた抵抗したが身動き出来ず…
その後…
彼女の悲鳴が響き渡ったのだ。
俺は…
何か身体が変だぞ?
身体の中にカミシニの血が入っていくのを感じる?
熱い…いや?
熔けそうだ!!
既に痛みで麻痺していた身体に激痛が走ってくる??
身体が血に蝕まれて…
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
俺もまた激しい激痛に激しくのたうちまわる。
俺とクシナダは一体どうなってしまうのか?
このまま死んでしまうのか?
また、タワー下で数え切れないカミシニ達と戦っているスサノオ達はどうなったのか?
更にもう一つ…
今、仲間に力を送るために代々木公園にてライヴを行っているウズメの身にも、迫り来る脅威が迫ろうとしていた。
「どうやら、あそこみたいね?」
「人間達が都会から離れ、この場所に集まっているとは…」
今、代々木公園に…
転生と輪廻が、ウズメに迫ろうとしていたのだ。
次回予告
三蔵「カミシニの血を打たれて苦しむ俺とクシナダ!
無数のカミシニ達の大群を相手に戦うスサノオとヤオヨローズの仲間達!
そして、仲間達に力を送るために一人の戦いをしていたウズメのもとに、
カミシニの転生と輪廻が向かっていたのだ!
一体、どうなる?
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
俺達は絶対に負けないぜ!!」




