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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
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八百万の神の裏切者・参~ヒノガグツチ~

三蔵の目の前での神同士の戦い!スサノオとヒノガグツチ!


その戦いの行方はスサノオが勝利を得たのだったが・・・


スサノオ達の前に現れた『ひのがぐつち』と呼ばれる男…


八百万の神であり炎の魔神の転生者。



彼の生い立ち…

それは、孤独の中を不器用にも純粋に生きた男であった。



八百万やおろずの神が転生した民は里のしきたりとして夫婦になると、父神イザナギと母神イザナミの『祝福の儀式』を受ける事が決めつけられていた。


それは産みの父母だけでなく、神としての父母との契約を行う意味もあった。


ヒノガの父母もまた、イザナギとイザナミの儀式を行うために、社に向かっていた。

この夫婦は、それはそれは仲が良く里の中でも仲慎ましいと有名であった。

ただ、今の今まで子供に恵まれず、ようやく授かった子供だったため、二人は幸せでいっぱいであった。


社に着くとイザナミとイザナギが笑みを見せて待っていた。


『二人とも、このたびは本当にめでたいですね!』


『私達もお前達の事は心配していたのだぞ?だが、本当にめでたい!』



二人の父母神の優しき言葉に、夫婦は涙して感謝をする。


儀式も終わり、

数日、間もなく妻の身に異変がおき出産が始まった。

だが、思った以上の難産で、出産は困難をきしていたのである。

父は不安と心配で、いてもたってもいられなかったが、



『おぎゃああ!おぎゃああ!』



赤子の泣き声を耳に『産まれた!』と確信して、妻のもとに駆け寄ったのだ。


「でかしたぞ!」


が、そこで目にしたのは…

赤子を抱いたまま息を引き取った妻の姿であった。


出産に関わった女達は言った。妻の出産は困難極まりなく、このままでは母体がもたない。出産を諦めるように告げたが、妻は赤子を優先し出産に踏み切ったのだ。


結果…

赤子は無事に産まれたが、妻の方は…


「うわあああああああ!」


冷たくなった妻を抱きしめ泣き叫ぶ夫に、誰も声をかける事が出来なかった。


その後、夫は妻の忘れ片見である息子と二人暮らしをしていたのだが…



子供が物心ついた頃に…

父親は妻を追って自殺をしたのだった。



最後に…


『お前のせいだからな…』


と、子供に言い残して…



その残された子供がヒノガであった。

ヒノガはその後、引き取り先が見つからず孤児となった。


そこで不憫に思ったイザナギとイザナミによって育てられる事になったのだ。

しかしイザナギとイザナミには、実子である子供が三人いた。

アマテラス、月読、スサノオであった。


ヒノガは生い立ちもあるが、激しい気性の暴れん坊に育っていった。

そんな彼には周りの者達も恐怖し、近付く者はいなかったのである。


ただ一人残して…


それが、


「俺と勝負しやがれ!ヒノガ!負けたら俺の子分にしてやるぜ!」


(またか…)


スサノオの奴だった。





俺はヒノガ!


スサノオは俺より歳は下だが、俺と同じく気性が荒々しい性格で、父神も手を焼いていた。


ただ…


このスサノオって奴には何か不思議と人を惹き付ける何かがあり?

周りの連中も集まって来ていた。


何か…やけにムカつく…


俺は無謀にも喧嘩を売って来たスサノオをボコボコにしてやった。


しかし…


次の日もスサノオはやって来たのだ。



「昨日は腹の調子が、ぐじょぐじょだったんだ!今日こそは!」


まったく懲りない奴だ…


「お前じゃ、俺には勝てないぜ?そんな力任せに頼った戦い方じゃな!」


「………」


スサノオは少し考えた後…


「だったらお前が俺を強くしろ!剣術を教えろ!そしたら、俺がお前をボコボコにしてやるから!」



はっ?

何を言っているんだ?

はっ?

はっ…はは…


「あははははは!」



面白い奴だった。

この俺に興味を抱く事は勿論、その言動は至って本気なのだから。

それから俺とスサノオは一緒につるむ事が多くなったのだ。


一人で孤独だった俺に、初めて出来た繋がり(友)だったのかもしれない…


それから成長した俺は更に強くなる事に執着していく。

それしか、俺には出来なかったから…


強くなってどうするかって?

俺は、この力で!!


いや、何でもない…


直に俺は自分の強さを里の連中にも見込まれ、里を守る護衛長にまで昇進した。



「なぁ…ヒノガ?本気かよ?父神に逆らうなんて止めろよ!」


「止めるな!スサノオ!俺がこの里を!世界を変えてやるんだ!」



そう言って俺は父神イザナギと、この里の…世界の行方について言い合った。

だが、感情的になった俺は誤って、母神であるイザナミを傷付けてしまったのだ!

それが原因で俺は神としての力を奪われ、里から追放されたのだ。


命を奪われなかったのは父神と母神の情けだったのかもしれない…


それから数年が過ぎたある日…

里に怪しい奴らが入りこんだのだ。


そいつらは…

カミシニと呼ばれる異端者、神を狩る者達であった。


カミシニの連中が里に来たあの日、俺も里にいた。

怪しい連中が里に入って来た事に気付いた俺は、奴達を尾行していたのである。


だが、俺は足が震えて動けなかったのだ…

奴らに恐怖したのだ!


俺は自分が情けない…


強くなったと思っていたのに、足が前に出ない?


くそぉ…!


だが、俺は恐怖しながらも奴らの後を追った。


着いた先は父神のヤシロであった。

黒服の連中が消えたのを確かめた後、俺が中に入り込んだ時には父神イザナギが黒服の連中と争った後であった。


イザナギは己が化け物へと変わる事を避けるがために…

愛する妻をイザナミを追って自害した所であった。

俺は父神イザナギに駆け寄った。


「父神!」



抱き寄せる俺に気付いた瀕死状態のイザナギは、まだ微かに意識があったのだ…


『ひ…ヒノガか?そうか…お前…』



俺は一瞬頭に過ぎったのは、里を追放された俺が裏切り、奴らを引き入れたと思われる事だった…何故なら…この里には、誰かが里の結解を内より壊さぬ限り外部の者が入って来られないのである。つまり何者かが奴等を招き入れたに違いなかったのだ。


里の裏切者?

ち…違う…俺じゃない…


しかし父神の言葉は俺の予想を裏切った。


『ありがとう…』


「エッ?」


父神イザナギは俺に言った。



「お前には…酷い事を…したと思っている…だが、それはお前を…思っての事だったのだ…」



どういう事だ?

何を言っているんだ?



「ふふ…しかしお前は…私の意図も知らずに…里を出た後も、これまで…私に力を封じられたその身で…幾度と里に外部からの襲撃があったのを一人で…里の者に気付かれる事なく…撃退してくれていたのだな…」


知っていたのか?

そう。俺はこの里を外から守っていた。

たとえ追放されようと、この地が俺の故郷である事に変わりなかったからだ。



「お前は…前世の神だった時…生まれて直ぐに己の炎で、母神の母胎を焼いてしまい、二度と子供を作れない身体にしてしまった。前世の私はそれを怒狂い、その場でお前の首をはねたのだったな…だが、私は転生した後…それを悔やんだのだ。生まれて直ぐに…その持って生まれた力により母神を傷付けた事は…事故!炎の力を制御出来ぬ赤子なのに…それなのに…私はお前の命を奪ってしまった。お前は転生した後も…歴史を繰り返すかの如く…産みの母だけでなく母神イザナミをも傷付けた。私は考えたのだ…二度と同じ過ちを繰り返してはならないと…」


「………!」


「私は…お前に…今度こそ、その命ある限り生きて欲しいと…私はお前の力を封じ…人として…生きて…生きて欲しかったのだよ…」


「なっ?そんな…」



俺は…目から涙が溢れていた。

俺は父神に怨まれていると今まで思っていたから…


でも、違ったのだ!!

俺は愛されていたのか?

こんな俺を?


俺は…

愛されていたのか!


あっ…ああああ!!


俺は産まれて初めて泣いた。



父神イザナギはそんな俺の手を握り、



「我が息子…ヒノガよ…最後に…この情けない我の頼みを聞いて…くれるか…?」



俺の事を…息子と…呼んでくれるのか?


「なんだ?父神!何でも言ってくれ!」



すると父神は俺に勾玉を託した。



「お前の幸せを願ったはずの私が…こんな事を頼むのは間違ってはいると思う…再びお前に戦いの道に…汚れた道に歩かせる事を…申し訳なく思う。恨んでも良い…だが、頼む!」


「案ずるな!父神よ!俺は戦う事でしか、父神に報いる事が出来ないのだからな!」


「ありがとう…ヒノガ…」




そして、父神は俺に抱かれ息を引き取ったのだ。

父神が最後に俺に頼んだ事は…俺にカミシニ内部に潜り込み、奴らの動向や目的を調べる事だった。


俺は…

俺の戦いで、八百万の里を滅ぼしたカミシニの連中に復讐をしてやる!



そう…何故、俺が強さを求めるか…だったな?


俺は、ただ…認めて貰いたかったんだ…


里の皆に…父に…母に…


だが、もう手遅れ…


いや、それでも俺は戦う!


この八百万の…同族としての血が、カミシニの血より勝っている事を証明してやるのだ!


それが唯一俺を愛してくれた父神への…


恩返しなのだから…






ヒノガから語られた真実…


そしてヒノガはスサノオの手を握り、告げた。



「スサノオ…聞け!」


「ヒノガ!喋るな!」


「俺は奴らに潜り込むために、カミシニの血を受け入れた…そのために俺は血の呪いによりカミシニのリーダーであるアライヴには逆らえなかった!だから、俺は仲間である同族を何人も手にかけたんだぜ?忌まわしき血が俺の意識を乗っ取り、逆らわせてくれないのだ…俺はお前達みたいに、この忌ま忌ましい血に勝てなかった…」


クシナダが一瞬目を背けた。


「だから、俺は…同族である…いや?友であるお前の手で、俺を裁いて欲しかったのだ…」


「喋るな!今から治療してやる!」


「俺は…もう…助からねえよ!それよりも聞け…スサノオ…」



俺は薄れる意識の中で、震える手で、懐から勾玉を取り出しスサノオに手渡したのだ。



「これは?」


「父神イザナギからの遺品だ…お前に渡してくれと…」


「父神が?」


「それに、もう一つ…気をつけろ…お前達の身近にスパイがいる…誰かは分からなかった。だが、お前の間近にそいつはいる…」


「スパイだと?」


「そいつが…里を裏切り、奴らを…里に招き入れたのだ…」


「!!」


「最後に…カミシニの…アライヴの本当の目的は…赤い雨を降らせる事じゃない…本当の目的は…」




俺がカミシニの目的を話そうとした瞬間、胸が貫かれ焼き焦がされる痛みが走った?


「グッハァ!」


「なっ!」


俺は何者かに心臓を撃ち抜かれたのだ。


スサノオが飛んで来た方向に振り向くと…



そこには…


クシナダと、人間の男[三蔵]がいた?



「まさか…お前が裏切者なのか?」



瞬間、クシナダが倒れ?

三蔵も突然、首に衝撃を受けて目の前が真っ暗になり意識を失い崩れ落ちた。



そんなクシナダと三蔵を担ぎ、空中に浮かんでいく者がいた?

周りにいた連中が、その状況を把握出来ない中でアマテラスが一番先に全てを理解した。



「嘘よね?あんたが…里を裏切った…の?」




裏切り者は、クスッと笑みを見せた…

そして、同じく理解したスサノオは叫んだのだぁ!





『ツクゥヨォミィー!』



次回予告


三蔵「ついに一言も俺の台詞がなかっただと?


しかも、次の話は名前すら出ないだと???


もしかして、俺は嫌われているのか?


目に見えない何かに??」

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