三蔵の涙?お釈迦様に願いを!
蠍子精から解毒剤を手に入れ三蔵も元気になり、再び旅に出る俺様達であったが・・・
俺様と三蔵は光り輝く道の上を歩いていた。
ただ、真っ直ぐ・・・
その道の向こうに見える更に神々しい光に導かれながら。
その光は俺様達を優しく温かく包み込む。
ああ・・・
これは安らぎ?心の中が洗われるようだ。
俺様達はただ・・・
その先の光へと向かって行く。
「三蔵!あれ?」
「ああ…あの先だな…あの先に…」
俺様達の目の前には神々しい光りを発する巨大な扉がそびえ立っていたのである。
「猿よ!」
「おぅ!任せておけ!」
俺様は怪力で巨大な扉をこじ開ける。
扉の先には更に光り輝く階段があり、俺様と三蔵はその階段を昇っていく。
ん?
突然、目の前から強烈な光りが発光し、その視界を奪われたのだ。
視界が戻ると俺様と三蔵は光の中で宙に浮いていた。
更にその先には何処まで続くか解らない光り輝く大地…
「伸びろ!如意棒!」
俺様は如意棒を地面?に突き刺し、最大限に伸ばしながら光り輝く大地の果てを見たが、その境界線は何処にもなかった。
「ダメだ!何も見えないぞ?三蔵!」
「そうか…ん?」
その時、また強烈な光りが俺様と三蔵を覆ったのだ。
『うぐわあああ!』
何が起きたのだ?
再び視界が戻り、俺様は三蔵の気配を感じて近寄ると、
ん?三蔵?どうした?
三蔵は目を丸くして上空を見上げていたのだ?
ん?一体何を見ているのだ?
いや、何があると言うのだ?
俺様は三蔵の見ている先を見たのである。
そこには…
巨大な神の姿があったのだ!
『よくぞ現れた…三蔵に孫悟空よ…』
その声の主…いや…その存在はまさしく神!
『釈迦如来』その者であったのだ。
「しゃ…釈迦…如来だと!?本物なのか?」
「俺様もコイツとは始めて会うぞ!」
「おぃ、猿?こっちに来い!」
「ん?何だ?」
俺様が三蔵に近付くと俺様に手を差し出したのだ?
ん?握手か?
俺様も手を差し出そうとした瞬間、
「いたたたた!」
三蔵は俺様の頬を力任せに抓ったのだ。
「やはり夢じゃないのか?」
「馬鹿か!自分の頬を抓るのが普通だろうがぁ!」
俺様は泣きながら三蔵に怒りをぶつけた。
「しかし…」
無視か?無視かよ!
「どうした?何か腑に落ちないのか?」
「俺達は今まで確かに旅をしていた。その途中だったはずだ…」
どうやら三蔵の奴は、目の前にいる釈迦如来を疑っているみたいだな?
その心を読んだのか?釈迦如来が語りかけて来たのだ。
『私を疑っておるのか?そうか…無理もありませんね。では、一つ力試しをして証明してみせましょうか?』
「ん?力試しだと?」
『そうです。では、猿の者よ!そなたは私の掌から出る事が出来ますか?』
「はん?何を言ってるんだ?そんなの…」
と、俺様が言いかけた時だった。
俺様は気付いたのだ!
俺様が気付かぬうちに、釈迦如来の掌の上に立っている事に??
「なんじゃ~こりゃあ~??」
俺様は一瞬びっくらこいたが、すかさず冷静さを取り戻し正気となる。
確かに馬鹿げたデカイ掌だが、簡単だぜ!
「よ~し!訳わからんが、やってやろうじゃねぇーかぁ!」
俺様は空に向かい叫んだのである。
「来い!金斗雲!」
俺様は金斗雲に乗ると、直ぐさまその場より遥か遠くの果てまで飛んで行ったのだ!
何処まで飛んだのか?
俺様はそろそろ良いだろうと思った所で一息つく。
「おっ?あんな場所に!」
俺様の目の前には聳え立つ巨大な五本の山があったのだ。
俺様はその山に近付くと、此処まで来た記念にと自分の名前を山の中心に刻んだ。
「よし!それじゃあ、三蔵も待っているだろうし戻るか?」
俺様は再び三蔵のいる場所にまで戻っていく。
「ただいまだぜ!調子に乗って、ちょっと遠くの果てまで行って来てしまったぜ!」
俺様は目の前にいる巨大な姿の釈迦如来を指差し、
「おい!釈迦よ!俺様はお前の掌どころか、遥か先の世界の果てにまで行って来たぜ!」
俺様は自信たっぷりに叫んだのである。
しかし、俺様にとって予想だにしない言葉が釈迦より返って来たのだった。
『ホホホ…小さき猿の者よ…遥か先の世界の果てとは…?貴方は何を言っているのか?果て?はてはて?ホホホ!』
「何を言ってやがるだと?嘘だと思うなら証拠だってあるんだぜ!」
『証拠とはこれの事ですかな?』
俺様は釈迦の差し出したソレを見て目を丸くしたのだった。
それは、釈迦如来の五本の指?
その指には確かに書かれていたのだ!
『孫悟空様此処に参上!』
と・・・
あれは間違いない!
俺様が先ほど世界の果てにある山だと思って、刻んで来た文字に間違いなかったのだ。
『解ったか?お前は遥か先の果てまで行ったと言うが、それは私の掌の上を飛び回っていただけに過ぎなかったのですよ?』
「そ…そんな馬鹿な!」
こりゃ間違いないぜ・・・
こんな桁外れの奴は見た事がない!
どんなトリックを使ったのだ?
いや?
これこそ超越した神の力と言うのか?
確かにコイツは神々の頂点に君臨すると言われている釈迦如来だと認めるしかなかった。
「どうやら間違いなさそうだな…」
釈迦如来と信じた三蔵に、
『さあ、三蔵に猿の者よ…お前達は数々の試練に打ち勝ち此処まで来た!その褒美にお前達の望みを言うのです!』
釈迦如来は願いを言うように告げたのだ。
「望み…だと?」
「何だかよくは分からないが、望みを叶えてくれると言うなら願ってもない申し出じゃないか?なぁ?三蔵?」
ん?
どうした?
三蔵の様子がおかしいぞ?
「!!」
その時、俺様は確かに見たのだ。
三蔵の頬を流れる雫を?
それは間違いなく『涙』だった。
三蔵が涙って?
いったい、どうしてしまったんだ??
「本当に願いが叶うのだな?」
『どんな願いも叶えましょう!そのために貴方は旅をして来たのだから。さぁ!願いを言いなさい!』
「俺の…俺の願いは……」
話は戻り、俺様達が釈迦如来と遭遇していた頃・・・
「どういう事ら?突然前方から強い光を浴びせられたかと思ったら、三蔵はんと猿の奴がオラの目の前から消えたらよ?」
辺りを探し回るのは、黒豚妖怪の八戒であった。
「どういう事ら?まったく解らんらよ!」
八戒は三蔵に仲間になるように言われ、断っては見たものの、
気になって後をつけて来ていたのだ。
「ん?」
その時、何者かがこちらに近付いて来るのを感じて岩影に隠れる。
相手の顔を覗くように顔を出す八戒。
「なんら?あいつは?三蔵と猿の仲間らか?」
そこに現れたのは、人間の僧…?
その者は、何もない空間に手を翳すと、瞳を綴じて念仏を唱え始めたのである。
同時に何もないはずの空間に光りの壁が出現したのだ!
「なっ?なんら?なんら?」
すると人間の僧は最初から気付いていたかのように、隠れている八戒を呼んだのだ。
「八戒!そんな所で隠れていないで、出て来るが良い!」
「ハッ?」
八戒は自分が隠れている事を気付かれ、
いや!それ以前に自分の名前を突然呼ばれて警戒しつつも、その僧のいる場所に現れたのだ。
「なんらお前?三蔵の仲間らか?」
「三蔵?…ああ…あの僧の事か…別に私はあの僧の事はどうでも良いし、知らない男だ。私が用があるのは孫悟空の方だよ?それに八戒、お前にもだ!」
「オラにも?お前が何を言ってるらか解らないらよ?」
「まぁ、良い。それより急がねばなるまいな…」
「急ぐ??そうら!三蔵はんと猿が突然消えたらよ!何か知らないらか?」
「あぁ。今、その三蔵と孫悟空は、ある妖怪の罠に落ちて精神世界に閉じ込められ抜け出せなくなっているのだ!」
「んなっ?妖怪の罠らと?何者らか?」
「その妖怪の名前は『黄眉大王』」
「黄眉大王?」
その時、八戒はその名を何処かで聞いたような感じがした。
いや、間違いない!霊感大王の所にいた妖怪の一人?
「しかし、たかが妖怪の術なんかが、あの凄腕の三蔵はんに通用するらか?あの三蔵は並大抵の修行僧じゃないらよ?」
すると僧は険しい顔で告げたのだ。
「黄眉大王の精神術は神をも謀る!」
「!!」
神をも謀るとは?
「黄眉大王の術は相手の精神に入り込み、その者の持つ夢を叶えさせる!」
「ん?夢を叶えるなら別に構わないのではないらか?しかも夢の中でらろ?」
「もしもお前の夢が叶ったらどうする?」
「ん?嬉しいらよ?」
「その後は?」
「その後は…また他の夢を探すらな?」
「もしも、その夢が自分にとって、自分の全てを!命を懸けるほどの夢だとしたらどうだ?」
「!!」
「その思いが強ければ強いほど、この黄眉大王の精神術は効果的だ。夢を叶えさせ、油断し腑抜けになった所を始末する。相手にばれる事なくな?」
「…姑息らが…確かに効果的らな…それにしても詳しいらな?お前?」
「以前…襲われた事があるのだよ。あの黄眉大王に…」
「そうだったらか?大変だったらな?で、どうすれば良いのら?何か方法があるんらろ?」
「この術は、願いを言ったら最後!二度と生きて精神世界から出て来る事は出来ない。だから、その前に本体を叩くのだ!」
「でもどうやるのら?」
「今から奴の世界をこじ開ける!お前も手伝え!」
「・・・オラもらか?」
と、とんでもない事実が解ったのだが、俺様も三蔵もまだその事を知らないでいた。
「どうしたんだよ?三蔵?」
どうも三蔵の様子がおかしい?
「ああっ…ああ…」
「おい!三蔵!」
三蔵は何か所々に言葉を発していた?
尋常じゃないのが解る!
「…お…俺は…」
「オイ!釈迦如来!どういう事だ?三蔵の様子が変だぞ?」
「そうですね・・・三蔵は今、過去の記憶の中で本当の願いを見付けているのです。問題はありませんよ?猿の者よ!さぁ、貴方の願いは何ですか?早く言いなさい!ほら!ほら!ほら!」
「だって、こんなに苦しんでいるんだぞ?」
「問題はありませんって言ってるだろ?じゃなくて、言ってるでしょ?さぁ!貴方の願いは?」
「そうなのか?本当に大丈夫なんだな?」
「はい!大丈夫です。だから、貴方の願いを言いなさい!さぁ!さぁ!さぁ!」
「俺様の願いは…」
俺様が願いを…言おうとした時だ!
突然、俺様のいる空間がボヤけ出して、歪み始めたのである。
「なっ…何が起きてるのだ?釈迦如来!」
ん?
見ると、俺様の前にいた釈迦如来の顔までも歪み始めているではないか?
これって?
その時だ!
何処からか声が響く?
「八戒!あそこだ!」
「うらぁー!」
「ウギャア~!」
突如光に覆われていた空間がガラスが割れたかのようにひび割れ弾けたかと思えば、そこから現れた八戒が釈迦如来の顔面を殴りつけたのである。すると釈迦如来の姿は黄色い眉毛の老人の姿へと変わっていったのだ。
いや?違う!あの釈迦如来は本物でなく、妖怪が化けていたのじゃないか?
「ふにゃらぁ~」
釈迦如来に化けていた黄眉大王はムササビの姿に変化して逃げて行った。
「何だ?あいつ!一体全体どうなっているんだ?」
その時、俺様の肩に八戒が手を乗せて答えたのだ。
「危なかったらな?詳しい話は後で説明するらよ!」
そう言うと、
俺様と八戒はまだ現状を把握出来ずに茫然としている三蔵を連れてこの場を去ったのだった。
場所は変わり、
暗闇の中を飛んで逃げるムササビが木の枝に止まった。
黄眉大王の奴だ!
「後少しだったのに邪魔が入りました~こうなったら再び力を回復させて逆襲です!」
再起を決意する黄眉大王の背後から、
「そうはさせないぞ?黄眉大王よ!」
「誰だ?お前は?」
そこに現れたのは、俺様と三蔵を救った謎の僧が宙に浮きながらその場にいた。
「お前の力には興味がある!戴くぞ!」
「はい?何を・・・??」
直後、黄眉大王の身体を光り輝く巻物が輪になって包み込んだのだ!
『緊操の縛!』
「うわわわわああああああ!」
黄眉大王は吸い込まれるかのように、巻物の中へと封じられてしまったのだった。
「よりにもよって、釈迦に変化するとはな・・・」
僧は自分の顔を隠すように頭からかぶっていた僧衣を脱ぎ捨てて、
そこから見える美しい金髪は、神々しく光り輝いていた。
その者は、見た目まだ若い青年。
その瞳は厳しく、
何かを秘めているように感じられる。
「孫悟空、八戒…それに三蔵か。ふふふ・・・ふふふはははは!」
闇の中を謎の青年の笑い声が響き渡った。
次回予告
孫悟空「俺様、マジで終わるのかと思ったぞ!ビビらせやがって黄眉大王の野郎!後、助けてくれた奴って何者だ??それにしても三蔵の願いって何だったのだ?」
ここでニュース速報!
孫悟空「え?マジ??次話から主人公と話が変わるって?まてまて!何のことだよ!知らねえよ!却下だぁーー」




