八百万の里の悲劇【前編】
三蔵は八百万の神の転生者である者達と関わりを持ったのだが、
そこで、スサノオの言葉に腹を立てるのだったが・・・?
ううう…ん?あれ?
ハッ!
俺は眠っていたのか?
目覚めると同時に俺は飛び起きて周りを見回した。
俺は三蔵…俺は…?
あっ…そうかぁ…
くそぉー!
俺は自分が使い物にならないと言われて頭に来て、スサノオの野郎に殴り掛かったんだった。
だが、俺は逆にボコボコに返り討ちにされたのである。
何度と向かって行っても相手にならなかった。
「まさか…この俺が子供扱いかよ…」
俺が意識を失う寸前にスサノオの言った台詞が…
いや?忠告が頭を過る。
「気付いていると思うが俺にも奴達と同じ忌まわしい血の力を使う事が出来る!俺の前でお前の力は無力だ!」
「ぐぅ…」
俺の攻撃はスサノオの剣に阻まれ、俺の扱う神の…不動明王の力さえも無効化されたのである。
その後の俺は、スサノオの奴にボコボコに殴られたのだった。
「己の無力さを知れ!俺が奴達だったら、お前の命は既にないのだからなぁ」
そう言い残して、スサノオはクシナダの腕を掴み、意識を失い倒れたままの俺を残して去って行ったのだ。
「くそぉー!」
再び俺は無力感に陥った。
そこに…
「あんまり、落ち込まなくても良いわよ?」
「あれはあれで、スサノオの優しさみたいなもんだと思いますしね?不器用なやり方ですけどね」
俺を励ますように現れたのはアマテラスと月読であった。
「お前達…!」
「あんた?あんまり気を落とさないでね?スサノオ相手じゃ人間じゃあ、最初から勝ち目なんてないのだからさ?」
「後は私達に任してくださいね?私も本当は嫌なんですがね…正直めんどくさいし…あっ!私もスサノオ君に任せてみようかな?うん!そうしようか!」
「こらこら!」
てっ!二人で漫才こいてるんじゃねぇよ!
てか、勝てない勝てないとか、余計にへこむぜ…
「なぁ?教えてくれよ!お前達は何故…何故カミシニだったか?奴達と戦っているんだ?何のために…?」
「………」
「………」
俺の問いに二人は無言になった。
そして口から出たのは…
『復讐よ…』
そう言うと、アマテラスは俺に奴等との因縁話を聞かせてくれたのだ。
彼達の身に起きた八百万ヤオヨロズの里の悲劇を!
それは今から300年も昔に遡る。
そこには神の転生者である八百万の神の集落があった。
転生者の民は神だと言っても、長命と過去の記憶こそあれど、その生活は人間と差ほど変わりなかったのである。
それでも、普通の人間達とは違う彼達は、誰も寄り付かないような土地に人間が入り込めない結解を張って住み着いていたのだ。
彼達は限られた世界で、同族同士助け合いながら細々と生活していた。
そんな穏やかな日々…
突然、奴達は外の世界からやって来たのだ!
奴達は離れた場所から八百万の村を覗き見た後…その村の住人達が、ただの『人間』でないと確信を持つと実行に移す。
彼達は…
何の目的で、この里に?
その頃、里では…
「そんじゃあ、俺は行くからなぁ!」
若きスサノオは父神であるイザナギを前にして旅に出る挨拶をしていた。スサノオはちょうど今より里を離れ旅をしようとしていたのだ。
「俺は、こんな小さな村に収まる器じゃねぇ!もっと世界を知りたい!」
スサノオはそう言うと、止める父神イザナギと母神イザナミ、兄弟のアマテラス、月読を残し社を去った。すると、スサノオが出て来るのを待っていた里の子供達が集まって来たのだ。子供達にとって、スサノオは憧れの対象なのだ。
「スサノオの兄ちゃん!また、旅行くの?いつ戻る?」
「分からねぇな…風に、雲に聞いてくれよ!」
「風も雲も喋らないよ?スサノオ兄ちゃん馬鹿?」
「うるせぇ!お前達には、まだ分からないだけだ!」
「お土産宜しくねぇ~!」
「あぁ!任せろ!じゃあな!」
スサノオは子供達に手を振りながら、里を後にしたのだった。
村の結解を出て、一人で道を歩いていると…
正面から顔を隠した黒服のコートの男達が、こちらへと数人歩いて来た。
(なんだ?こんな陽の出ている時に暑苦しい奴達だ…だが、人間が立ち寄らないこんな場所に何のようだ?)
スサノオは擦れ違い様に黒服の連中の気を探る。
(どうやら人間のようだな?村に入り込もうとする魔物や何かなら、俺が始末してやろうと思ったが取り越し苦労だったようだ…)
スサノオは異様に感じつつも、その者達と通り過ぎたのであった。
「さてと…今日が俺の新しい旅立ちだ!」
スサノオは八百万の里から離れた山を越えていた。
そしてスサノオは後にした里の方角を見たのだった…
「なっ…何だ!!ありゃあ!?」
そこでスサノオは見たのだ!
八百万の里の上空が異様な赤い雲に覆われているのを!!
(ゾクッ…)
スサノオはとてつもない不安に襲われた。
(なんか、やべぇ…)
スサノオはいてもたってもいられず、直ぐさま里に引き返した。
(一体何が??何だよ?あの異様な赤い雲は!!里は大丈夫なのか?皆は無事が?)
スサノオが里に向かっている時、里の者達もまた空を見上げ、得体の知れない恐怖を感じていた。
「何だ?あの空は…」
「あんな雲、見た事がないぞ!」
「それより…何だ?この悪寒は?」
里の入り口にまで来たスサノオは里の結解が壊されている事に気付いた。
「!!」
(間違いねぇ…何かとんでもない事態が里に起きてやがる!)
スサノオは走った。
(何だ?何だ…胸がざわめく…)
ポタ…ポタ…ポタポタ…
(ん?雨か?)
スサノオが顔に付いた雨を拭うと、その雨はまるで血のようにべとつく赤い雨だったのだ。
「赤い…雨だと?気持ち悪い!」
スサノオが辺りを見渡すと、里全体に赤い雨が降り始めていたのだ?
訳も分からず、スサノオは父母神と、兄弟のいる社に向かった。
社に着いたスサノオは…
「お前達?無事か!空が変だ!様子が変なんだ!」
叫ぶスサノオの声に幼い子供が泣き叫ぶ。
そして…
その子供達の目の前には、父神であるイザナギが倒れていたのだ。
「父神!」
スサノオは横たわるイザナギを抱き抱えるが、時既に遅く父神であるイザナギは生きてはいなかったのだ。
「グググ…」
スサノオの背中が怒りで震え上がる。
「誰が…誰が!父神をこんな目に合わしたんだぁー!」
スサノオの叫びに、その場にいた子供達は更に泣き叫んだ。
(そうだ!!)
スサノオは社の中央に置かれている水晶の前に立つと、水晶に手を翳して神力を籠める。
「真実を…真実を俺に見せろ!」
すると水晶が輝き出し、その中から映像が映し出されたのだ。
そこにはイザナギとイザナミの姿があった。
それに…
スサノオが里から離れる際にすれ違った黒服の男達の姿が映し出されたのだ。
(…奴達か!奴達が父神をこんな目に合わせたのかぁ!)
更に水晶は真相を映し出していく。
「貴様達は何者だぁ!」
イザナギは自分の背後にいる、イザナミと里の子供達を庇っていた。
「ふふふ…神の転生者みっけ!悪いが、神は全て消えてもらうぜ!」
「何だと?さぁせぇるかぁ!」
イザナギは両手を交差させると神通力を高めていく。
『そぉいやぁあああ!』
イザナギから放たれた神通力が雷となって、黒い格好の男達に向かって放たれたのだ。
が、その凄まじいはずの神雷は男達の目の前で消滅した。
「なぁに!?」
(…今、何が起きた?私の神雷が消えただと?あの者達が何かをしたようには見えなかったが?)
「悪かったな!お前達(神)の力は、俺達には効かねぇんだよ!」
すると黒服の男の一人がイザナギ達に向かって…
「死んどきな!」
男は懐から液体の入った瓶を取り出すと、イザナギとイザナミ達に向けて投げつけたのだ。
すると瓶が割れて中の液体が飛び散る。
(毒薬?それとも??)
液体はイザナギと背後に隠れていたイザナミ達にも飛びかかる。
「イザナミィー!!」
イザナギがイザナミに振り返ったその時!
「油断大敵だぜ?神様よ?」
黒服の投げた剣がイザナギの背を串刺しにしたのだ。
「うぐぅわあ!」
それを見るなり黒服の男達は妖しい笑みを見せて、それ以上何もせずにその場から立ち去って行った。
「!!」
スサノオの怒りが社を震わせる。
が、映像はまだ消えてはいなかった…
イザナミが黒い男から放たれた液体から子供達を庇っていたのである。
子供達の無事な姿を見て…
「よ…良かっ…良かっ…た…」
「イザナミ!」
イザナギは身体を貫かれながら、イザナミに近寄っていく…
イザナギが苦しむイザナミを抱き抱えるとイザナミの身体が痙攣を起こしながら震えていた。
「だ…大丈夫か!イザナミ…?」
すると、イザナミはイザナギを突き倒したのだ?
「に…逃げ…逃げ…あがが…」
イザナミに押し離されたイザナギが見たものは…
「い…イザナミ?お…お前…!」
心配した子供達が震えながら助けてくれたイザナミに近付こうとする。
「イ…ザ…ナミ?お前達!待てぇ!イザナミに近付くでない!」
イザナギの目の前で、イザナミの姿が見るも醜い化け物へと変貌していったのである。
「わ…私の愛するイザナミが…化け物に!!」
「ぐきゃあああああああ!」
イザナミはその姿だけでなく、既に中身(心)まで化け物になっていた。
助けたはずの子供の一人を掴みあげると胸が開き、牙の生えた口が開くと丸飲みの如く喰らったのだ。
「あ…あああ…」
イザナギは胸に手を置き涙を流しながら神気を高めていた。
「愛する…イザナミ…
誰よりも優しく…
愛おしい…イザナミ…
私は…
そんなお前の…
そのような姿…見とうない…」
イザナギは手にした剣を天井に翳すと、化け物と化したイザナミを一刀両断にしたのだ。
「私も…今、直ぐに…直ぐに…」
そのままイザナギは己の剣にて、自分自身の胸を貫いたのであった。
「願わくば…
また生まれ変わる事が出来たのなら…
再び共に…生きようぞ…
そして、我が子達よ…
我が同族の無念…晴らして…おくれ…」
そこでイザナギの魂は消え、水晶は映像を止めた。
「グググ…」
スサノオは水晶を握り潰した。
その荒魂は怒りと同調し…
「うがあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
怒りに吼えたのだ。
その殺気は社を震わせ壁や床に亀裂が走った!
「奴達…何処へ行った…?
まだ、いるはずだ…
ぜってぇに…許してたまるかぁーー!
俺が…てめぅら全員血祭りにしてやるぜぇーー!」
スサノオは、直ぐさま意識(念)を外に飛ばしたのである。
すると黒服の男達が里に入り込み里の者達を襲っていたのだ。
「待ってろよ!今、俺が行くからな!」
スサノオの身体から荒ぶる気が高まっていく…
「俺のシマで、好き勝手しやがって!奴達…生かして帰さんぞぉ!必ず父神と母神の無念晴らしてくれるわぁ!」
スサノオは置いてあった神剣を手に取り、社を飛び出して黒服の男達のいる方角へと向かう。
…続く。
次回予告?
三蔵「マジかよ・・・
こんな事があって良いのかよ・・・
おっ・・・俺!俺!
冗談だよな?そんな話信じられるかよぉー!!」
アマテラス「あんた…同情してくれるんだね?」
三蔵「えっ?あっ…?いや?あの~!俺の出番が冒頭だけだっておかしいだろ?
俺、主役だぜ?こんな扱い有りかよ!」
アマテラス「人の過去話を真面目に聞けぇ~!」
三蔵「だって・・・」
アマテラス「だってじゃない!もう良いわ!神様権限で次の話に三蔵は出してあげません!」
三蔵「そっ・・・そんなぁ~~~!」
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン・・・
俺が・・・主役なのに・・・




