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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
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甦る悪夢と小角の過去??

不動明王召喚の儀式に呼ばれた三蔵達だったが、


儀式は失敗し、器になるはずの不動鷹仁が死んだ。


残された三蔵達は??


俺は三蔵だ…


なっ…何てこった!!



俺達は不動鷹仁と呼ばれる男の身体に、不動明王と呼ばれる魔神を封印するために儀式に呼ばれた…が、その儀式は失敗に終わったのだ。



不動鷹仁は死に…


今、俺達の前には…


不動鷹仁の燃え尽きた残骸の中から炎が立ち込め、辺り一帯に炎が燃え移っていき、俺達は炎の中央に閉じ込められたのだ。


そして俺達の目の前に炎に包まれた何か?

何かが現れたのだ!!


それは次第に人のような形を成していく?


起き上がるように…

立ち上がるように…


そいつは、俺達の前に現れたのだ。


そいつは俺達が呼び出した…


魔神…


鬼のような形相…

炎に包まれた身体…


『不動明王』


だが、そいつは神などと呼べるような生易しい『モノ』じゃなかったのだ。

『それ』は俺達に対して悪意を剥き出しにしているのが分かる…


そりゃ、そうだよな~


寝ている所を無理矢理起こされ、人間の身体に強引に封じられそうになったのだからな…


俺でもキレるさ!


しかし、このままでは…


俺は目の前の魔神に身構えたのだ。

凄まじい圧力に押し潰されそうになりながら…


くそぉ…

それにしても熱いぜ!


そりゃあそうだ…

辺り一帯、炎に覆われ…

お…おお…われ…?


「あっ!!」



その時、俺の身体に異変が起きた。


「おぃ?どうした三蔵!」



晴明の呼び掛けに対して俺は顔を俯かせたまま動こうとしなかった。

まるで硬直したかのように微動だにしない?

その時、目の前の魔神から炎の玉が幾つも出現し浮かび上がると、四方八方に放たれ飛んで来たのである!

躱している仲間達の中で目の前にまで迫って来る火の玉に、俺は身動き出来ないでいた。


「三蔵!伏せろ!」


火の玉が俺にぶつかる瞬間、晴明が俺を庇って体当たりして来たのだ。



「何をしているんだ!しっかりしろ!」


『!!』


その時、晴明も俺の異変に気付いたのだ。


俺の顔は蒼白に…

頭がグルグルと回っているかのように焦点が合っていなかったのだ?

足が震え、身体が硬直している…

一体、俺の身に何が起きたというのか?


こ…呼吸が苦しい?

息が出来ない?

い…意味…解らねぇよ…



「三蔵…お前どうしたんだ?オィ!三蔵!」



その時、一瞬我を取り戻した俺が見た光景は…


炎に包まれた光景…


見た事がある。


何かが焼き焦げたような…

異臭…

これも知っている。


それは、先程の魔神から放たれた火の玉を躱しきれなかった者が、炎に包まれ、断末魔をあげて肉が燃え焦げる臭いであった。


…これも知っている。

…これは?

…そうだ…あの日!!



「三蔵!三蔵!しっかりしろ!」



晴明の俺を呼ぶ声が、まるで雑音が流れるかのように俺の耳を通過していく…

俺の目はただ一点を見て…

放心状態のまま…

身体から寒気が走り…

そして、再び身体が小刻みに震え出したのだ。


「あああああ!!」



そうだ…覚えている。


これは、あの日の…

あの忘れ去りたい日の…


再来!!


乗り越えたかと思っていた。

乗り越えられたかと思っていた。

今の今まで、思い出す事もなかったから…


だけど、それは?

ただ…

ただ、自分の心の奥に押し込めていただけ…


閉じ込めていたものは…

いつか、何らかのキッカケで開いてしまう事がある。


なぜなら…

それは、ひと時の忘却…

あの日の現実から目を背けていただけなのだから…


あの『時』から…

何も先に進んでいなかった。


俺の中の時間は止まったままだったんだ。


強くなれたかと思ってた…

身も心も…


だけど、何も変わってはいなかったんだ!


あの日…

炎の中で…

燃え盛る炎に包まれる両親を目の当たりにして…



『親殺し』の『罪』を…


その身に背負った幼き自分から。


ただ、泣いているしか出来ない…

無力な自分と…。



全身から全ての力が抜け落ちたかのように、俺はその場に倒れる。



うっ…


肉(人)の焼き焦げる臭いに俺は嘔吐した。


死体やグロイ残骸など見慣れたはずなのに・・・


苦しい…逃げ出したい…

早くこの場から立ち去りたい…


俺は目の前の戦いを放棄し、身体を震わせながら、その場に蹲ってしまったのだ。


「三蔵…お前?」



だが、そんな俺の状態を他所に、再び魔神の炎の玉が俺達に向かって飛んで来たのだ。


しかし何故、炎の玉を?

炎の魔神は自分に施された結解がまだ生きていたため、その場から動けなかったのだ。

しかし、時間の問題だろう。



今のうちに逃げなければ…

遠くに行きたい…

この場から早く立ち去りたい…



「クソッ!」


向かってくる炎の玉に対して、身動き出来ない俺の代わりに晴明が庇いながら結解を張っていた。術札を前方に向けて宙に四ヶ所浮かばせると、光の線が伸びて行き繋がり防御の壁となる。

だが、その炎の威力は凄まじく、他の術者達の張った結解が弾かれ炎に包まれ飲み込まれていく。一瞬で肉はただれ、身体が炭のように焦げながら悲鳴をあげる様は…


あの日と同じ、再び見る地獄絵図の様であった。


「あああああ…」


俺は蹲ったまま、目を綴じて耳を塞いでいた。


見たくない…

聞きたくない…


嫌だ!嫌だ!

もう嫌だ!



「うわああああ!」



その時、俺を庇っていた晴明が炎の威力に押し負けて吹き飛ばされたのだ。

晴明は壁に頭を強打して動かなくなってしまった。


「せ…晴明?」


助けなきゃ…

ダメだ…身体が震えて…

力が出ない…


立ち上がる事さえ…

友を…

友を救うために前に出る事すら出来ないなんて…


俺はこんなに弱かったのか?

こんなに無力だったのか?


こんなに…


その時、俺の目の前に再び業火の玉が向かって来たのだ。


動けない…

逃げれない…

ダメだ…

そうだ…もう諦めよう…

無理だったのだ…

最初から…


僕は生きていては、いけなかった。


目の前に迫った業火に俺は全てを放棄した。


生きる事すら虚しい…



肉が焼き焦げる音が…

臭いが…

俺を包み込む…


だが、熱くなかった?


えっ?


「しっかりせぃ!三蔵!」



その時、俺は目前の状況に目を見開いたのだ!



「お…お…づぬ?」



小角が、俺を包み込むように抱きしめ、魔神の放たれた業火から守ってくれていたのだ。


が、しかし…

その背中は焼き焦げ致命傷な火傷を負っていたのだ!


「大丈夫か…?さ…三蔵?」


「お…小角…な…何故?俺なんかのために…?俺は…俺なんか死んでも良かったのにぃ!!」


「…死んでも良い命など…儂は知らぬのぅ…」


「違う…俺は…俺は…父さんと母さんを…」



この時、俺は自分自身が何を言っているのかも分かってはいなかった。

気が動転していたのかもしれない…

ただ…過去への断罪…

自分自身への…罰



「何も言わずしても分かっておる。大丈夫じゃ…オヌシには乗り越えられるはずじゃ…儂にも…そう!儂にも出来たのじゃからな…」



「な…何を言っているんだよ?分からない…分からないよ…小角!」



その時、俺は背後から凄まじい邪念を感じたのだ。

俺が振り向いた時…


えっ?


そこにいたのは、小角の使役している二体の鬼神であった。


『前鬼』『後鬼』


そうだ!この前鬼と後鬼なら、あの魔神をどうにか出来るはず!



「お前達の力を貸してくれ…小角が酷い状態なんだ!」



が、その鬼神達は俺と小角に向かって殴り掛かって来たのだ!?


「えっ?」


身動き出来ない俺に対して、小角は俺を抱きしめながら飛び上がり躱す。


どういう事だよ?

何故、前鬼と後鬼が攻撃を?


その時、小角が口にした。


「儂の死期を感じて、契約の呪縛から解き放たれおったのか?こんな時に…」


「どういう事だよ?」



前鬼と後鬼は、遠い昔…

小角が封じた凶悪な二体の鬼神の魂を使い、その力を使役するために自分の護神にしたという。


それが何故?

その時、俺の耳に聞こえて来たのは前鬼と後鬼の声だったのだ。




『…チカラナキ…ニンゲン…ブンザイ…デ…』


『ヨクモ…ワレラヲ…イママデ…ゲボク…トシテ…ツカイヤガッテ…』


『…ユルサヌ…ユルサヌ…ニクキ…ニクキ…』



その時、前鬼の角が光り輝き銀色へと?

後鬼の角もまた金色に輝いたのだ!?

一体、こいつ達はどうなってしまったのだ?


前鬼と後鬼は小角を指差し名前を叫んだのだ!



『憎き…フォンよ!!』



フ…フォン?




誰だよ?そいつは!

人違い?いや?

今、小角に向かってフォンと言ったのか?

フォンとは小角の事なのか?



ダメだ…全然頭が働かない…何なんだよー!


次回予告






三蔵「全てが謎だった。


この日の出来事を、全て理解出来たのは・・・



ずっと・・・


ずっと先の未来


いや?


あの旅の・・・

あの出会いが教えてくれた。


小角・・・俺は・・・


ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!


不動明王の業火よ!願わくば俺の悲しみをも消し去ってくれ!」

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