ガッツポーズ!それは成長の証!!
邪神復活の儀式はカミシニと呼ばれる謎の一味によって潰された。
しかし、その者達はこの世界に闇を引き込む者であった。
小角は玄三と晴明に未来を生き抜く力を授け与える事を心に誓う。
おぅ!俺、玄三だ!
半魚人との出来事から五年の月日が経ち、俺は15歳になっていた。
あれから俺と晴明は小角の厳しい修行を終えて、立派に逞しくなったのだぞ?
エヘン!
で、俺と晴明は今、小角に連れられてめちゃくちゃデカイ寺に連れて来られた。
小角が言うには、ここで大掛かりな呪法の儀式が行われると言うのだ。
そうそう!俺の一人称が僕から俺に変わったんだぜ?
いつまでも僕ちゃんじゃ男らしくないからな!
因みに晴明の奴はと言うと・・・?
「小角様?こちらで何が行われるのですか?」
「直ぐに分かるぞい!」
晴明は自分の事を「私」とか言うようになって、ますます女みたいなんだ!
いや?オカマだな?
それにしても…
そこには小角や俺達だけでなく、見るからに腕のたちそうな…しかも裏世界で名のある呪術者連中が集まって来ていた。
「なぁ~小角よ?はやく教えてくれよ~!一体全体何が始まるって言うんだよ?」
「確かに。ここにいる者達を見て、ただ事じゃないのは分かりますけど…」
「フォッフォッフォッ!直ぐに分かるぞょ~」
俺達が集められた場所は『不動武闘院』と呼ばれる寺であった。
すると、その寺の中から僧侶がぞろぞろと姿を現したのである。
本当に何が起きると言うのだ?
中央の男?
多分あいつが、この集まりの首謀者だろうな?
見るからにエラソーで威圧感のある神主が、この寺に集まりし者達を物色し始めたのである。
すると…
「お前!それに、そこのお前!後はお前とお前!前に来い!後は帰って良い!」
神主は四人の男を前に出るように命じた後、残りの者達には帰るように伝えたのである。
「待ってくれ!せっかくここまで来たのに、これでお払い箱かよ!」
名を呼ばれなかった修行僧が声を荒げて反論する。
「今、呼ばれた四人は私から見て腕が優れていると分かる猛者だ!後はカスばかりのようだな?さっさと帰り一から修業し直せ!」
「なっ!?」
修行僧は頭にきて突っ掛かろうとしたが、そのムカつく神主の威圧感に負けてスゴスゴと逃げ帰ったのだった。後に残された者達も納得いかないと愚痴りながらも、仕方なく帰って行く。
残された者達は男に呼ばれた四人と…
「おい!さっきから聞いていたら、おかしくないか?」
「何だお前は?ん?」
すると、神主は俺の後ろにいる小角の存在に気付き、
「まさか!そこにいるのは役行者殿ですか?」
「久しぶりじゃのう!不動鷹仁殿!」
不動鷹仁と呼ばれる神主は小角と顔見知りらしかった。そしてこの日本の五本柱とされている裏武闘寺院の一つ『不動寺院』の長であり、この日本国を裏から護り続けている由緒正しき名主であった。
「で、そこの若い二人は何者ですか?役行者殿!」
「フォッフォッフォッ!小角で良いぞよ。儂とお主の仲ではないか?こやつ達は儂の弟子じゃよ!今宵行われる呪法の護人として連れて参ったしだいじゃよ」
「お弟子をとられていらっしゃったのですか?あの小角殿が?」
不動鷹仁と呼ばれるムカツク男は俺と晴明を再び物色した後、
「はっはは!冗談が悪すぎますよ!日本きっての…いや?世界を探しても最高呪術者である貴方ならまだしも、そのような得体の知れない子供に今宵の大事な儀式を手伝わせるなんて!」
何だ…コイツ?やけにムカつくぞ?
はっ?つまり俺を見下した上、ガキ扱いか?
俺はこういったエラソーで高慢な奴をみると無性に殴りたくなる!
何故だろう?
しかし、小角の手前この寺で暴れる訳にはいかないよな?
やっぱし…
「おい!お前よ?おかしくないか?いくらガキでも俺はお前が見立てたそこの奴達より腕が立つぜ?」
俺は鷹仁に食って掛かったのだ。
「ふっ…世間知らずの小わっぱが!どうやら役行者殿は弟子にそういったマナーを教えるのは苦手らしいようですな?そもそも己の力量も分からないと早死にするぞ?あははは!」
ナッ?コイツ…
「じゃあ~よ?どうしたら俺の力を認めるんだ?それともお前に一発くらわせれば分かるかな?おじさん?」
「お…おじさんだと?この私に向かって!まったく…本当に言葉を知らぬ小わっぱだ!そうだな。そこまで言うのであれば、私が認めたそこの四人の男達の誰かに勝てたら考えてやっても良いぞ?」
「約束したぜ!このまま見下されて終わるのは腹が立つ!やってやるぜぇ!」
「少々痛い目をみて後悔するのだな?はっはは!」
「待ってください!」
と、そこに今まで黙って聞いていた晴明が、話に割って入ってきたのである。
「私も、その挑戦に参加する権利を戴きたい!」
「ん?」
新たに名乗りをあげたもう一人の弟子の存在に、不動鷹仁は少し違和感を感じたのだ。
(コイツ…今まで、気配を消していたのか?まさかこんな子供が?
それに、どこかで見た記憶が…まぁ、試して見たら分かるだろう)
「良かろう。お前も好きにするが良い!」
「ありがとうございます。この連れと同等に扱われたのが、少々腹がたったので…」
「ムカッ!晴明!ちゃっかり嫌味を言いやがったな?しかも俺に!」
「まったく…いつからここはガキの遊び場になったのだ?」
呆れる不動鷹仁は首を振っていた。
「さてと…どいつがやる?俺はどいつでも構わないぜ!」
俺は四人の男達に叫んだのだ。
四人の男達もまた不動のクソ親父と同じく、俺を見下した顔をしていた。
「待て!私から先に行く!」
「あんだと?俺が先だ!」
「お前の後は場が乱れるから嫌だ!後にしろ!」
暫く口論した後、お互い譲らず最後はジャンケンで決めた。
で、結局…
「私が先ですが、どなたが相手してくださいますか?」
晴明の丁寧な口調に四人の修行僧の一人が前に出る。
「私が相手しよう!心配するな?子供相手だ!手加減はしてやるからな?」
「心配なさらずに!最初から全力でどうぞ?」
「ふふふ。自信過剰は、そっちのガキと同じようだな?生意気な!」
男はゴッツイ筋肉の鎧に高位な修行僧の身なりをしていた。
その手には独鈷杵と呼ばれる鉄製の武器を持って構える。
「さてと…少し子供のお遊びに付き合ってやるか…」
そこに小角が前に出たのである。
「儂が試合を立ち会ってやろうかのう」
小角を中心にその修行僧と晴明が距離を取った後、お互い顔を見合っている。
「始めぇよー!」
小角の掛け声とともに晴明が指を前に差し出し、五芒星を描く…
「では、軽くひねって…やろ…う…」
「!!」
すると修行僧は気付く。
自分の足が?いや?全身が動けない事に。
これは金縛り?
見るといつの間にか修行僧の足元には術札が散らばっていたのだ?
「ば…馬鹿な…いつの間に??」
驚いた拍子に転げて倒れる修行僧が顔を上げると、目の前にはいつの間にか晴明が無表情に短刀を向けていたのだ。
「まだ、やります?」
《ゾクッ…!》
その冷たい視線に修行僧の全身に鳥肌が立つ。
そして今になって、この晴明の力量を把握したのであった。
「ま…参った…」
「そこまでじゃ!勝者!安部晴明!」
その時、その場に残っていた者達がざわめいた。
それは、少年の力量…
相手に何もさせない圧倒的な勝利…
いや、それよりも…
『安部晴明』と、言う名前にだった。
この少年は間違いなく、あの伝説の呪術師の転生者なのであると!
それなら、この力量は頷けられる。
「この少年…転生者だったのか?しかも、あの安部晴明とは驚いた」
不動鷹仁は晴明を見て…
「少年…いや、安部晴明よ!お前にこの度の務めを任せる。宜しく頼むな?」
「はっ!お任せくださいませ!」
晴明は軽く頷いたのであった。
「では、これにて終わりとする」
を?を?を?
「待て待て待て!まだ俺が終わってないだろ!」
「………ん?お前もやるのか?」
「あったりまえだろ!」
「まさかお前もまた名のある転生者なのか?」
「俺は転生者なんかじゃない!だがな?俺は晴明より強いんだぜ!」
「それは本当なのか?」
不動鷹仁は晴明を見ると首を振っていた。
「嘘八百だ!」
「晴明!お前を先に殴っても良いんだぜ?」
「返り討ちにされたいか?」
再びいがみ合う俺と晴明。
「これこれ!玄三!やるのか?やらないのか?ハッキリせい!」
「やるに決まってるだろ!さぁ!殴られたい奴は前に出やがぁれぇ!」
「ふん!小僧!俺が相手だ!」
その男は、山伏の姿の修行僧であった。
「さっきから聞いていたら生意気なガキだ!俺が少し教育してやろう!」
「教育してやるとは生意気な大人だな?その生意気な態度、俺が調教してやるぜ!」
「んな?!このガキがぁ!」
俺の言葉に、山伏僧は腹を立てた。
「やれやれじゃ…」
再び小角は中央に立ち、今度は俺の勝負の合図をしたのだった。
「始めじゃー!」
俺は腕を一回転回して気合いをこめる。
「では、いってみますかぁ~!」
「俺はガキ相手にも手を抜かないぜ?」
山伏僧が錫杖を構えて突進して来る。
俺は自分の首にかけていた数珠を手に取ると、
「俺の必殺技!喰らいやがぁれぇ!」
俺は数珠に気を籠めて山伏僧に狙いを定めたのだ。
『数珠連弾!』
俺の掌から弾かれた数珠は、まるでマシンガンのように山伏僧に向かって行った。
「ナッ!」
咄嗟に飛んで来た数珠を躱した山伏僧の後ろで、岩石が砕け散ったのだ!
「何て破壊力だ…」
「まだまだ!」
俺の手から放たれた数珠はビリヤードのようにぶつかり合い、その軌道を変えていく。
そして、数珠は再び山伏僧に向かって行ったのだ!
「馬鹿な!?」
驚きながらも慌てて、再び数珠を躱して飛び上がった山伏僧の眼前には…
「うりゃあああ!」
俺が先回りし、渾身の拳で顔面を殴ってやったのだ。
これにて、勝負有り!
俺はガッツポーズで、己の勝利を証明したのだった。
「驚いた…戦い方は荒いが面白い小わっぱだ。良かろう!小僧!お前に儀式の援助を頼むぞ!」
「任せておきな!」
それより…
「ところでよ?儀式って何をやるんだ?」
「ん?貴様は知らずに来たのか?」
「ああ…」
そして語られる儀式の内容。
「では、教えてやろう!お前達にやってもらう仕事とは…」
・・・仕事とは?
それは、俺だけでなく冷静な晴明までも驚愕させたのだ!
『我が寺院の守護神!不動明王の召喚だぁ!』
次回予告
玄三「え~実は、次話に重大な発表があるのだ!
そう・・・俺が俺でなくなるような?
まるで、嫁に嫁ぐ・・・そんな感じみたいな?
まあ、そんな感じかな?
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
俺!変わります!」




