成長しようぜ!玄三と晴明繋がれた絆!!
晴明の生い立ち、
そして玄三と晴明は謎の集団の怪しげな儀式を前にして、玄三を庇った晴明が傷付き倒れたのだった。
僕は玄三!
僕は自分の失敗から傷付いたダチ(晴明)を守るために単身半魚人達の前に立ちはだかったのだ。
「来るなら来い!」
しかし、僕には戦う武器は残されていなかった。
唯一の術札が暴発してしまい、このザマなのだから…
くそっ…
僕は拳を握っていた。
勝てないまでも一矢報いてやる!
そんな僕に向かって半魚人の一匹が奇声をあげて襲い掛かって来たのだ。
「ヒィギャア!」
「うわあああ!」
僕は無我夢中で、自分に向かって来た半魚人に殴りかかったのだ。
流石に僕にだって分かっているさ…
いくら小角から格闘技を学んだとはいえ、所詮は十歳ちょいのガキのしょぼいパンチなんか…
効くはずなんか…
あれ?
僕に殴られた半魚人が目の前から消えて、壁際まで吹っ飛んで行ったのだ!?
どういう事?
その時、僕は自分の拳が光り輝いている事に気付いた。
これは『気』なのか?
人間が誰しも体内に持つという未知のエネルギー…
極限に追い詰められた事で、僕の中に眠っていた力が目覚めたというのか?
はっ…ははは…そうか…
更に左右から襲い掛かる半魚人の攻撃を僕は上段受けと足捌きで躱し、気を籠め握り締めた拳で殴り飛ばす!その時、僕は悟ったのだった。
とにかく、煩い奴は殴って黙らせる!
そうすれば道は自ずと開かれる?
それが、生きるために必要なのだと学んだ。
まさに教訓だった。
子供ってこうやって大人になっていくんだなぁ~
僕は一つ大人の階段を登れた気がした。
※その後、大人になってもこの教訓を信じて疑わず、後の三蔵の曲がった(?)人間形成を作り上げる出来事であった。
「これなら、いける!」
半魚人達は警戒しつつ僕を囲みながら次第に距離を縮めて来たのだ。
とにかく捕まったらダメだ!
走って、動いて奴達を撹乱させるんだ!
僕は半魚人達の攻撃を紙一重で躱しながら、すんでの所で殴り付ける。
「うっしゃあ!」
僕の拳で殴り飛ばされた半魚人が天井高くまで飛んでいった。
よ~し!
この調子でどんどん…
あっ!
その時、半魚人の一匹が倒れている晴明に近付いている事に気付いたのだ。
そうは、させるか!
僕は直ぐさま落ちていた石を手に取り、晴明に迫ろうとしている半魚人に向かって投げつけたのだ。
僕の投げた石は霊気を纏い半魚人の顔面に直撃すると、その場で一回転して地面に顔面を打ち付け伸びてしまった。
これは??そうかぁー!!
殴ってもダメなら、石を使って黙らせる事が出来るのか!
僕はここに来て、物を使う事を学んだのだ。
そして僕は、また一つ歪んだ大人の階段をのぼって行った。
『まさか…』
『あんな子供が?』
一部始終を見ていた男が僕の戦いぶりに驚愕していたのだ。
その男は、この集団のリーダーであり司祭であった。
「馬鹿な…我々の計画が…あんな子供に…」
我々とはダゴン秘密教団。
『深きもの』
「こんな事が許されてたまるか…」
司祭は懐から瓶を取り出したのだ。
それは先程、男達が飲んだ謎の液体?
邪教徒達はその液体を口にした途端に、半人半魚の化け物へと変貌した。
司祭は瓶を握りしめ躊躇っていた。
(まさか、あの『者』達より手に入れたばかりで、直ぐに使う事になろうとは…神を人に…
人を神に…禁術より造られし『錬魂の雫』を!)
司祭は、その錬魂の雫なる液体を飲み干したのだった。
次第に司祭の身体は人の身から、半人半魚?違う!
蛙の頭を持ち、その身体は膨張しながら、十メートル近くまで巨大化したのだ。
その姿は見るに悍ましき化け物へと変貌していったのである。
その変化に気付いた僕は目を丸くしていた。
「ありえねぇ…」
僕は直ぐ様落ちていた石を拾うと、気を籠め、さっき同様で化け物に向かって投げつけたのだ!
「これでも、くらぇー!!」
が、弾丸の如き飛んで行った石は、その化け物に直撃はしたものの、傷をつける事すら出来なかった。
「ば…化け物め…」
そこに…
「どうした?怖じけづいたのか?」
「えっ?」
声のした方を振り向くと、そこには額から血を流した晴明が起き上がっていたのだ。
晴明は辺りを見渡し状況を把握する。
(ここに倒れている化け物達は、玄三一人でやったのか?僕を庇いながら?)
「晴明!立って大丈夫なのか!?」
「馬鹿か?ゆっくり寝てられる状況じゃないだろ!」
「そりゃあ…そうだけど…起きて直ぐに、また寝る事になりそうだぞ?今度は二度と起きられないくらいにな?」
「安心しろ!僕は寝付けも良いが、いまだかつて寝坊した事がないのが自慢なんだ!小角様がいらしたら直ぐに起きるさ!」
「微妙な自慢だな?てか、何処にそんな余裕があるんだよ?」
「つまり!まだ活路があるって事さ!」
「!!」
活路って?この状況でか?
だけど、晴明の言葉は何だか心強く感じた。
すると晴明が突然纏っていた陰陽師の衣装を脱ぎ始めたのだ。
色白の肌…綺麗だ…
ハッ!不覚!
また少年BL設定直行かよ!無し!無し!
やっぱり今のなし!
僕は自分の頭をポカスカ叩いた。
「ハァハァ…」
晴明の息が荒くなっていく?
それもまた…そそる…
ん?
ポカスカ!ポカスカ!
…………。
すまない。
本題に戻そうか?
「聞け!僕の魂にはイニシエの契約により、十二体の鬼神の魂が宿っているんだ!」
「十二体の鬼神?」
「そう!今の僕の力で使役出来るのは、調子が良くて二体が限界だろう。だけど今の状況を打破するには…此れしかない!」
『十二体の鬼神を一度に解放する!』
晴明の身体から、十二の痣が皮膚を色濃く変色し浮き出て来たのだ。
そして苦しそうに僕に言ったのだ。
「頼む…お前の力を貸してくれないか?」
エッ?今、何て…?
あのプライドの塊みたいな奴が?
僕をいつも見下してばかりいる晴明が?
僕に『頼む』だって?
ふっ…ふふふ、良いだろう!
貸してやんよ!
僕は晴明の指示に従いつつ、晴明背後から肩に手を置き全身全霊の霊力を送ったのだ!
「うおおおお!」
「!!」
(こいつ…霊力が並外れているのは気付いてはいたが…これほどまでとは!)
「これならやれるはず!よし!」
晴明は目の前に五枚の術札を放ると、その術札は空中に浮かびながら止まる。
まるで見えない壁に貼付けられたかのように…
五枚の札は五芒星を形作ると、突然光り輝いたのだ。
そして五芒星により出来た空間の歪みから、異形なる鬼が?
いや!鬼神が少しずつ抜け出して来たのだ!
「何だ?この凄まじい力の波動は?まさかあの二人のガキが造り出したと言うのか?有り得ん!」
僕と晴明に身の危険を感じた司祭は、術を完全に発動させる前に始末しようと襲い掛かって来たのだ。
「クッ!間に合わないか?」
「諦めるな!今、僕がありったけの力を送る!だからお前は術に集中するんだぁー!」
「げ…玄三?」
晴明は僕に言われるがままに術に専念した。
あの晴明が僕を信用しているのだ!
へっ…
その期待に応えなくちゃ…
男じゃ…いや?
ダチじゃないよなぁー!
その瞬間!僕の身体から自分でも信じられないくらいの凄まじい力が解放された。
その力は僕の掌から背中越しに晴明に注ぎこまれていく!
この力は一体?
司祭はその時、晴明の後ろから力を送っていた僕の方を見て、その動きを一瞬止めた?
「なんだ…なんだ?あの後ろのガキの…あのガキの眼はぁあああ!」
何を言っているのか?
司祭だけが見たのだ。
僕の眼が金色に光輝いている事に!?
その一瞬の躊躇に、僕と晴明はお互いの力を同調させ、目の前の化け物(司祭)に向かってありったけの力を解き放ったのだ!
「うおおおおおおおおおおおおおおお!」
その瞬間!
晴明の身体から十二個の光が飛び散って行く。
その光りは次第に異形の姿へとなって現れたのだ!
『十二鬼神』
僕達の前に現れ、晴明の指示に従い守護する十二体の鬼神。
その恐ろしくも醸し出す威圧感は心強くも感じた。
それが十二体も?
まさに壮観であった。
晴明と僕で呼び出した十二体の鬼神は、身動きを止めていた司祭が変貌した化け物に向かって襲い掛かる。晴明が念で十二体の鬼神を指示しながら操り、僕はひたすらに晴明に力を注いでいた。
「行っけええええええええええええ!」
連携された動きで鬼神達が司祭に襲い掛かる。
鬼神の化け物染みた力が司祭の腕や足、身体を無惨に引き裂いていき、最後の鬼神が司祭の頭を掴むと…
「うぎゃああああああああああああ!」
司祭の断末魔が洞窟内に響き渡った。
その後、洞窟の中は不思議と静けさが残ったのだ。
洞窟には残された僕と晴明が意識を失い倒れていたのだった。
そして…
倒れた僕と晴明の手はどちらからともなく、固く握られ繋がれていたのだ。
繋がれた『絆』
それは、僕と晴明にとって初めて出来た…
『友達』であり『繋がり』であった。
あ、小角以外でだった!
あれ?そういえば…
小角は何処に?
次回予告
三蔵「はぁ~??誰が歪んでいるって??
それにしても俺と晴明がこんなにピンチだったと言うのに、小角の奴は何していたんだよ!!
と、実は小角もまたとんでもない事に巻き込まれていたんだぜ?
ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!
どんな困難も乗り越えるぜ!!」




