追跡 『大』バトル!お前は誰だ!?
鼠親分を倒したのもつかの間、何者かの放った毒針により三蔵が倒れた。
しかしその矛先は最初、八戒に向けられていたのだ?
三蔵に毒針を放ち、雲に乗って猛スピードで逃げる謎の妖怪野郎!
どーも孫悟空です!
悪いなぁ…
今、取り込み中なんだよ!
俺様は金斗雲を呼ぶと、逃げて行った謎の妖怪を追っていた。
「待ちやがぁれぇ~!」
しかし、何故だ?
あの野郎…
最初に三蔵じゃなく、八戒の奴を狙いやがったようにみえたが?
アイツに恨みがあるのか?
いや…
それに、アイツの匂い以前、何処かで嗅いだ事があるぞ?
それもここ最近?誰だ?
「考えても無駄だ!とにかく捕まえて、ぶん殴ってから聞き出せば解る!金斗雲よ!猛烈にスピード上げやがぁれぇ~!」
俺様の金斗雲が更にスピードを上げて行く。
「クソォ…孫悟空の奴!まだ追って来やがる!このまま返り討ちにするか?いや…逃げます~!逃げます~!逃げてやるぜぇ!何せ俺は完璧がモットーだからな!」
謎の妖怪もスピードを上げて逃げていく。
「さぁ!逃げ…どぶぅ!」
謎の妖怪がスピードを上げたその瞬間、目の前から別の黒い塊が突っ込んで来て、顎にカウンターを受けたのだ。
「なっ…何が…?起きた…??」
意味が解らずにスローモーションで後ろに身体が反れた先には…
「うおおおお!」
「うぎゃあ~!孫悟空!」
俺様が如意棒を振り上げ、思いっきり謎の妖怪の奴を叩き落としたのだった。
謎の妖怪は自分の雲から叩き落とされ、地面に直撃して気を失った。
(う…う~ん…)
数分後、謎の妖怪が目を覚ますと、自分の身体が身動き出来ない状態だと気付いた。
そして、目の前には?
「あっ…」
「まさか、てめぇだったとはな!」
「うっ!動けない?うぁ?あれ?あわわ~」
気絶している間に、俺様が奴の身体を地面に埋め、頭だけを外に出した状態にしておいたのだ。
「観念してもらうぞ!九頭馬!」
「ウググ…」
三蔵に毒針を打ち、逃げ出した妖怪の正体とは?
以前、三蔵と俺様の前に現れた刺客の妖怪。
あの不死身の『九頭馬』だったのだ!
「てめぇ!孫悟空!俺に何しやがる!ここから出しやがぁれぇ!」
俺様に頭を踏まれて悔しがる九頭馬。
「そんな状態で誰に大口を叩いているんだ?おい!九頭馬!コラァ?」
「ウググ…」
その時、九頭馬に向かって怒鳴り付ける者がいた。
そいつは俺様と九頭馬の先回りをして、九頭馬にカウンターをくらわせた者…
黒豚妖怪、八戒だった。
「お前、最初三蔵ではなくオラを狙っていたらな?何故オラを襲ったのら!?」
「きぃ…きさま!俺を忘れたとは言わせないぞ!」
「何ら?お前…何処かで……会ったらか?」
どうやら、この八戒と九頭馬は因縁があるようらしいな?
八戒は九頭馬の事を思い出していた。
それは八戒が霊感大王の屋敷に呼ばれて、御馳走を平らげている時であった。
「あっ?思い出したら!確かこいつは…御馳走を食ってるオラの前に現れた奴ら!」
(そうら!オラに向かって『ちび豚』と罵り絡んで来たんらったな?らが、オラは無視して飯を食い続けていたんら)
「おい?ちび豚よ!貴様は何故行かなかった?」
だが、八戒は九頭馬を無視して飯に夢中であった。
「この黒豚野郎がぁ!」
無視されて頭にきた九頭馬は八戒の首を掴み上げようと近付いた時、
「それ以上近付いたら、二度とお天道様見れなくなるらぁぞ!」
逆に八戒の鬼気迫る気迫に気圧され身動きを止めた九頭馬だったが、直ぐに冷静さを取り戻して再び八戒につかみ掛かろうとしたのだ。
その時!
『動くな!九頭馬!』
そのやり取りを見ていた混世魔王が九頭馬を止めた。
「なっ?どういう事だ?混世魔王!俺がこんなチビに負けると言うのか?」
「いや…そうは言わん…ただ足元をよく見てみろ!」
「足元だと?」
『!!』
九頭馬も気付いたのだ。
自分の足元に落ちているウンチを!
「なっ…いつの間に!?」
そう!後一歩!
後一歩足を踏み出していたら…
九頭馬はウンチを踏ん付けてしまっていたのだ!
ウンチを踏んだ者なら解るであろう。
その感触と臭い…
何とも言えぬ気持ち悪い違和感を!
そして、その後から始まる仲間達からのイジメ!
「危なかったらな?もう少しでお天道様を見て歩けなくなる所だったらよ!」
そう言って、八戒はその場を後にした。
八戒は九頭馬の事を思い出すが、何故恨まれているのかサッパリだった。
「おっ?お前はあの時の図々しい妖怪らか?それが、何故オラの命を狙ったのら?」
すると九頭馬はふつふつと怒りを込み上げながら言ったのだ。
「貴様のせいだ…俺が仲間達からあんな屈辱を浴びせられたのは…」
「どういう事ら?」
「…だのだよ」
ん?聞き取れなかったぞ?
「えっ?何だって?」
「だから…だのだよ…」
「だから、何らと言うのら?ハッキリと言うら!」
「だ~かぁら!踏んだのだよぉ!そこの豚野郎の撒き散らしたウンチを!ベットリと!」
へっ??
目を丸くして唖然とする俺様と八戒。
つまり…そういう事か?
こいつは八戒の撒き散らしたウンチを踏んだお陰で、仲間達から村八分にされたと言う訳か?
それで逆恨みを?
「それからと言うもの、俺は仲間の妖怪からも後ろ指さされ!部下も一人二人去り…せめて三蔵と、そこの孫悟空を倒して名声を取り戻そうとしたが…敢えなく敗れ去り、俺の居場所は何処にもなくなってしまったのだ。だから恨みをこめて毒針を使い、そもそもの原因であるそこの豚野郎を始末するはずだったのだ!だがそれも予定が外れ…その結果、三蔵が倒れたって訳さぁ!まぁ、奴にも恨みあったし災い転じて福と為すって事か?アハハハハ…」
「そうか…そんな事でお前は?」
俺様が殺気立つ。
「へっ?俺は被害者で…可哀相な…妖怪であって…」
俺様の殺気に、身動き出来ずに怖じ気付く九頭馬は怯えていた。
「テメェは…かつてない地獄を今から味わうだろう!」
「ヒィィイ!」
九頭馬は脅えながら悲鳴を上げる。
八戒「待つら!猿!」
孫悟空「止めるなよ!」
そこに八戒が俺様を止めたのだ。
まさか同情とかしたんじゃないだろうな?
「コイツを始末するのはオラだ!」
見ると、八戒の頭上には巨大なウンチが浮かんでいた。
次第に浮かぶウンチは九頭馬の頭上へと移動していく。
「う…嘘?や…止めて…止めてください…ごめんなさい…助けてぇ~!」
「ふふふ…もう一度、糞まみれになってみるらか!?」
「ごめんなさ~い!何でもしますから、許してくださ~い!」
九頭馬は、もう泣きべそ状態になっていた。
一度ならず二度も糞まみれになるのも地獄だが、それ以上に仲間達からウンチを踏んだ事でイジメられた事が辛かったのだろう。
「では、三蔵に撃ち込んだ毒針の解毒剤を貰おうか?」
「えっ?…それは…ちょっと…」
「あん?どういう事だ?」
焦らす九頭馬にイライラし始める。
「やはり、ウンチまみれにしてやるらよ!」
「すみません!すみません!違うんです!説明します!」
九頭馬は説明した。
毒針はある女妖怪から貰ったのだと…
その妖怪は毒針を操る妖怪で、不死身の九頭馬でも敵わない相手だと言う。
「つまり、その女妖怪から解毒剤を手に入れれば良いんだな?」
「そのようらな?」
「ん?お前も行くのか?」
「当たり前ら!オラは受けた恩は必ず返すらよ!オラを庇って受けたんら…今度はオラが三蔵の旦那に恩を返さなきゃ、胸張ってお天道様の下を歩けないらよ!」
「ふ~ん…お前!なかなか良い奴だな?」
「うるさいら!」
俺様と八戒が先を急ごうとすると、
「こらああああ!待ちやがれ~!!」
ん?あれ?
どうやったのか?九頭馬が地面から抜け出していたのだ。
「がはははは!ここから抜け出せたのなら、貴様達に負けるものかぁ!」
突然、強気になる九頭馬…
確かにコイツの強さは厄介だ!
クソ…これから解毒剤を取りに行かないといけないのに面倒臭い!
すると八戒が俺様の肩に手を置く。
「さぁ、解毒剤を取りに行くらよ?」
「しかし九頭馬の野郎が!」
八戒が背中を向けたその時、
「死にさらぁせぇ!!」
九頭馬が武器を振り回しながら襲い掛かっ…
《ズボオオ!!》
て、あれ?
九頭馬の奴が目の前から消えたぞ?
いや…
よく見ると九頭馬は落とし穴に落ちていたのである。
この落とし穴いつの間に?
「な?何だぁ?こりゃあ??く…臭い…苦しい…身体が動かない!」
「こんな事もあろうかと、準備しといて良かったらよ…お前?不死身なんらってな?だが…その落とし穴に敷き詰められた特製のウンチはお前の身体を…」
すると九頭馬の身体が固まり始めたのである。
「うっ?嘘?嫌!」
「ウンチ?確かにこの落とし穴めちゃくちゃ臭うぞ!」
八戒はキメ顔で答えたのだ。
『お前はもう…社会的に死んでいる!!』
「うぎゃあ~!こんな最後はいやぁ……」
九頭馬はウンチまみれになって、硬直しながら動かなくなった。
なんて悲惨な最期…
(へへへ…コイツ…なかなか頼りになる奴だな)
そして、俺様と八戒は九頭馬に毒針を渡したと言う女妖怪のいるらしい場所に向かって飛んで行ったのだった。
待ってろよ!三蔵!
その頃…
「うっふ~ん…」
「あん…」
何か魅惑的な声が?
まるでサーカス小屋のような建物の中から、女の声が聞こえる。
「何かしら?今日の運勢めちゃくちゃ良いわぁ~」
そこには踊り子のような色っぽい紅色のスケスケの衣装を纏った褐色肌の女が、化粧をしながら水晶を眺めていた。
「ウフッ…何か良い事ありそうな気分…かも!」
魔性の女が毒瓶を振りながら、妖しい笑みを浮かべていたのだ。
次回予告
孫悟空「まさか九頭馬が犯人だったとはな~恨みとは怖いもんだぜ!と、そんな事より次は謎の女妖怪だって?いったいどんな奴なんだ?」
八戒「女!むふふ・・・楽しみら~」
孫悟空「お前・・・もう帰れよ・・・」




