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聖輪奇聞・転生記!~神を導きし救世主~  作者: 河童王子
神を導きし救世主!
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三蔵幼少編・小角の章~幼少三蔵!~

一方的に敗北した三蔵。


捕らわれ牢で一人、考える事は・・・


三蔵の生い立ち、その過去が今語られる。


三蔵幼少編・小角の章 始動!


うっ…ううう…


俺は座主の間で暴れた挙げ句、俺と同じく明王を使役する四人の男達にボコられ、再び身体を拘束された状態で牢屋に入れられた。


全然、身体に力が入らん!

目隠しをされているようだが、多分周りは暗いのだろう。

地下?いや夜なのか?


音一つない…

静かだ…


こんな静かなのは久しぶりだな…

何か疲れて眠くなって来たぜ…


ダメだ…

こんな時は決まってあの頃の夢を見る。


思い出したくもない…

あの日の記憶が蘇る。


嫌だ…忘れ去りたいのに…

俺の消し去りたい過去!



それは俺がまだ幼く“力”と言うものを全く理解出来ぬくらいのガキだった弱き自分。

俺の両親は何処にでもいる普通の両親で普通の一般家庭だった。


唯一違うとしたら俺は幼少にて、親からの虐待を受けていたのだ。


いつからだろう?

昔はそんなんじゃなかったはずなのに…


そう…俺が“力”に目覚めたあの頃から?

俺は幼い頃より不思議な“力”を持っていたのだ。

霊の存在を当たり前のように認識し、見えているのはもちろん、人の死を予言したりしていた。

俺が感情を高めたりすると、近くにあった窓ガラスやカップが割れたりもした。

それに小さな怪我はもちろん。

車に跳ねられて大怪我をしたとしても、次の日には回復していたのである。

こんな人間離れした俺を近所の大人達は『悪魔の子』と呼んだ。


最初のうちは両親も俺を庇ってくれていた…

だが、それが何年も続くと、両親にまで世間からの嫌がらせ…

『イジメ』が向けられたのだ。


世間からの罵声罵倒…


異常なストレス…


次第に両親は病んでいく。


そしてその反動で、



『こんな子さえいなければ…』


『私達が悪魔を産んだ…』



両親は壊れていった。




俺は夜な夜な両親に殴られ、蹴られ…

ある時は火を点けたタバコを腕に押し焦がされ、激情した時に椅子を叩き付けられた事さえあった。

俺の身体はいつも青痣だらけだったのを覚えている…

普通なら、死んでもおかしくないだろう。

いや…実際何度と死にかけたことか…

だけど、俺はこの異常な回復力で生きていた。



俺が口に出来たのは、生ゴミ…

親が残した残飯のみ。


俺は死にたくなかった…

まるで獣のように生ゴミをあさりながら生きながらえていた。




あの頃の俺[…僕]は…




「僕が悪いんだ…僕が悪魔の子供だから…僕が…悪いんだ…」




僕は両親からの暴力を受けながらも、死に対してとてつもなく恐怖を感じていた。

それと同時に唯一生きる支えもあった。


死にたくない…


死にたくない…


僕はまだ死ねない…


まだ?なぜ?ただ…死にたくないんだ。


どんなに苦しくても辛くても…


僕は死ねない…


死んじゃいけないと…


あの子と約束したから!





あの子とは夢に現れた子。

夢で現れた少女との約束を守るために僕は生に縋りついた。


あの日、いつも通り両親からの虐待を受けていた。

が、その日は違った。

父さんが金属バットを買ってきたのだ。

父さんは楽しげにバットを素振りした後、脅える僕に向かって降り下ろす。


それは今までにない衝撃だった。

二、三回の打撃で骨にヒビが入り、内出血で肌が異常な変色を見せた。


痛い痛い痛い!!!


が、その後、降り下ろした金属バットが僕の額を割ったのだ。

それは痛みを通り越し、身体中の血の気が一瞬で引いていくのを感じた。

足下には止まらずに流れる流血が溜まり、僕はその上に崩れ落ちたのだ。

薄れ行く視界の先には、何事もなく父さんと母さんが夕食を食べていた。


もう…やっと…


『僕は楽になれる』



僕は生死をさ迷った。


深い暗闇の中で、

僕は骸骨のような化け物に追われた。

今思えば死神だったのかと思える。

その時、死神から僕を救い、現れたその少女は言った。


『生きてください…』


「僕は死にたい。僕は誰にも望まれていないのに…」


『望まれていないなんて悲しい事は言わないで…』


「でも…父さんも…母さんも…」


『例え、世界中で誰も貴方を望まなくても!私だけは!私だけは貴方を望んでいます!私は貴方に生きて欲しい!お願い!生きて…』


「!!」



それは夢?

気付くと、僕は生きていた。

全てが夢?

しかし生々しく残っていた流血の後が、自分が生死をさ迷った現実のみを教えてくれた。



僕は自分の血で汚れた床を拭きながら、自分の身体の傷が癒えている事に気付く。自分でも化け物だと思える回復力だった。

けど、そのお陰で僕は生きていたのなら…

夢の中のあの子との約束が守れたと…

ほんの少し嬉しい気分になれた。


例え、それが…

僕の願望が見せた夢だったとしても…




それから数年、僕は生きていた。


その日は僕の10歳の誕生日だった。

変わらず僕は身体を震わせながら、手錠で両手を繋がれ部屋の中で疼くまっていた。


そうだ…

家を出よう…

いや?逃げ出そう!


俺は両親の目を盗んで、手錠を壊し家を飛び出したのだ。


何年ぶりだろう外に出たのは?


強引に手錠を壊し無理に抜いたので、手首からは血が滲んでいた。

けど、問題はない。

だって!ようやく自由になったんだから!

それに放っていても怪我は治るのだから…



僕は隣町にあった大きな公園に潜り込んだ。

そこには森のように木が沢山あって、子供が隠れるにはちょうどよかった。

夜になると、人目を気にしながらトイレの個室に入り、寒さを凌いだ。


トイレにあった鏡に僕が写った。


汚らしい服装…


痩せ細った身体…


それが今の自分…


その日は公園のトイレの中で野宿をし朝を迎えたのだ。

お金もなく、ただ公園の水だけを無我夢中で飲んでいたのを覚えている。


昼時になると、同じ歳くらいの子供達が公園に集まって来た…


そんな時見たのは子供連れの親子だった。

手を繋ぎ、信頼しきった親子が互いに顔を見合せ笑っていた。


お父さんとお母さんと…


ごく普通の当たり前の光景。


だけど…


何だろう?目から涙が溢れる…


何て楽しそうなんだ?


何て幸せそうなんだ?


何て…


羨ましいんだ…



どうして僕には…


ないんだろう?


望んではいけないの?


欲しいって思ったらいけないの?


家族が欲しいって…


優しいお父さんとお母さんが欲しいって…





それから間もなく、僕は両親が捜索依頼を出した警察によって家に連れ戻された。


僕はただ無言で連れられて行った。


誰からも虐待の言葉は出なかった。


しかし・・・


その時の僕には、異変が起きていたのだ。



そう…

僕の心に…

鬼が棲みついたのだ!


その晩…

僕にとって思い出したくもない惨劇が起きた。




そこに僕の家の近くを通り掛かった二人の男が立ち止まる。

その二人は僕の家を険しい顔で見上げていた。

僕の家を中心に魑魅魍魎が集まり、妖気が渦巻く魔家と化していたのだ。


「これは一体!」


「恐ろしい魔物の気配を感じて来てみたら」



その時家の中では?

逃げだした僕をいつものように父さんが殴っていた。



「ダメじゃないか?逃げるなんて、なんて悪い子なんだ!どれだけの大人に迷惑かけたと思っている?本当に悪い子だ!お仕置きが必要だな?」



僕は顔面を何度も殴られた後、父さんはあの金属バッドを掴み上げる。

まるで狂喜な父親の表情…

助けて貰いたい母さんでさえ、その状況を見て笑っている。


おかしいよ…


違う…違う…

これは間違っている…


そうだ!

こんなの間違っているんだよ…だったら…


終わらせてやる!


父さんの撲り付ける金属バッドが止まった。

僕が父さんを睨みつけていたのだ。



「なんだその目は?アッ!それが父親に向ける目かぁ?」



初めての反抗だった。

怒り狂う父さんは再び金属バッドで撲りつけて来たのだ。


違う…

お前なんか…


「お前なんか!お父さんじゃなぁい!」



叫んだと同時に自分の中で何かが弾け飛んだ。

同時にガス代から炎が噴き出し、炎は次第に部屋中を覆い包んでいく。


「あ…あはは…僕は悪くない…仕方ないんだ…」



その時…

部屋の中が悍ましい妖気に包まれた?


「何…これ?」



僕は目を疑った…

部屋の壁に…いや?至る場所から魑魅魍魎が現れ始めたのだから…


「何…?何なんだよ…これは…」



部屋の壁や床が魑魅魍魎に埋め尽くされていき、気が狂ったかのように奇声をあげる両親。


炎に包まれたそこは……

まさに地獄絵図と化していた。


何が起きてるんだよぉ…?

逃げようとするが身体が震えて動かない?


あああ…


そこに父さんが金属バットを持って近付いて来たのだ。


やめろ…やめろ…!

父さんの振り上げた金属バットが僕に迫った時…


「もう、やめてぇー!」


僕は燃え盛る炎を操り、父さん向けて放ってしまったのだ!


炎に包まれる父さん…


「うがああああ!」


ああぁ…


仕方ない…仕方ないんだ…

僕は膝をつき自分に言い聞かせた。

そこに近寄る人影…


「ハッ!」


僕はその人影に向かって再び炎を放ったのだ。


(ニゲテ…)


「えっ?」



今…何て?その人影は炎に包まれていく。


あれは…か…母さん…?


今、何て言ったの?



魑魅魍魎の笑い声…


燃え盛る炎…


気が狂いそうだ…


これは夢だ…悪夢なんだ!

僕は頭を抱えながら蹲るように発狂する。



「うゎああああああ!」



夢なんだ…


ああ…ああ…はは…


はは…ははは…


仕方ない…仕方ない…


僕は悪くない…


殺らなきゃ…僕が殺られていたのだから!


僕は…悪く…ない…




その時!


部屋の壁が桁ましく砕け二人の男が入って来たのだ。



『臨兵闘者解陣烈在前!』

『滅法!』


一人の男が九字の印を唱えると、爆風とともに辺り一帯の魑魅魍魎達が一瞬にして消え去った。

そして僕もそこで意識を失った。



どれくらい経っただろう?

起きた時、僕の頭の中は真っ白だったけれど、少しずつ自分の犯した事を思い出していった。


お父さんとお母さんを僕が殺した?

だけど、あれは仕方なかったんだよね?

何度も何度も言い聞かせる。



俺が目覚めた場所は見知らぬ寺の布団の中だった。

多分、意識を失った自分を、部屋に入って来たあの二人のお坊さんが救い出してくれたのだろう。


何だろう…

まだ頭の中が白い…

僕はふらつく身体に無理をして寺の中を歩いていた…


そこに灯りが見え中から声が聞こえて来たのだ。

間違いなく、助けてくれた二人だった。

僕は二人に近付き部屋に入ろうとした時、中の二人の会話が聞こえて来た。



「それにしても凄まじい魑魅魍魎の数でしたね…」


「うむ。長い間にこの一帯にいた悪霊達が、あの家に集まって来たのだろう」


「それも、あの少年の力ですか?」


「恐ろしい程の…今だかつて見た事がない程の力だ…驚異的な…霊媒体質。霊媒体質?…そんな生易しいものじゃ…家の中を地獄の空間と繋げ変える程の魑魅魍魎を呼び込むなんて…」


「それがあの悲劇をうんだのですね」



何を言ってるんだ?



「あの少年の両親、間違いなく悪霊に心を支配されていましたね…」


「力を持った子供への不安や世間からの重圧に耐えられなくなった心に、悪霊が目をつけたのだろう…」


「そうとも知らずに…あの少年は自分の両親を恨み、手にかけてしまうなんて…酷すぎる…」


「酷な話だ…せめてあの少年には真実は…」




僕は物音を立ててしまい、二人のお坊さんは僕の存在に気付いた。


「!!」



嘘だ…


嘘だ…嘘だ…


父さんも…母さんも…


僕が憎らしいから…僕を殺したいほど憎んでいたからじゃないの?


そうじゃなきゃ…

僕がした事は?何だって言うんだよ…


僕の力が呼び寄せた悪霊の仕業だって?


お父さんとお母さんをあんな風にしたのも…


僕のこの忌まわしい力のせいだって言うの?


そして…僕が…父さんと母さんを…


こ…ろ…した…!!!



「うわぁあああああああああああああああああああああ!」




発狂し再び倒れる僕。

そして、その日を境に僕は心を閉ざした。



次回予告


三蔵「ハア~病むよ・・・グレるよ・・・マジに!」


三蔵「あっ!因みに。幼少期の俺は玄三と言う名前なんだぜ?覚えておいてくれよな?で、次回予告なのだが・・・」




俺は・・・


あの人に出会えたから、今の俺があると思っている。


俺の恩人であり、師であり、


かけがえのない存在・・・



小角!!



この老人との出会いが俺の道を開いたのだ。


さあ!俺の過去をとくと読みやがれ!


ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン!

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