五大明王！？
三蔵に恨みを持つ安部晴明。三蔵と晴明のバトルの最中、
二人は乱入して来た四人の男達に気絶させられ拉致されたのだった。
俺は三蔵だ！
俺は過去に因縁のあった晴明と戦っていた。
そこに四人の乱入者が現れて、俺は不覚にも当て身をくらわされ気を失わされちまったのだ。
今の俺はと言うと…
身体を拘束された挙げ句に牢屋に入れられていた。
くっそぉ～！！
どうやら俺の身体には術封じの札か何かが施されているのだろう。
全然、身体に力が入りやがらねぇ～
それもこれも！！
俺は拉致されたあの後、頭巾で顔を隠した四人の男達に連れられて『座主』と呼ばれる黒幕のもとへと連れて行かれたのだ。
俺は力を封じられていたため、黙って言う通りにしているしかなかった。
とにかく…
俺をこんな目に合わせた親玉を見ておかないとな！
そんで、ぶん殴る！
俺は目隠しをされていながらも、周りの気配を探っていた。
つまり、人間の発する“気”を感じとっていたのだ。
ざっと２０人か？
このぐらいの数なら何とかなりそうだな？
広間らしい場所に俺は座らされると、背後から目隠しを外される。
そこには顔を頭巾で隠した俺を殴った四人の男達を中心に、修行僧が数十…
何？？２０人どころじゃねぇぞ？？
１００人はいるぞ！
コイツ達の何人かは“気”を隠していやがったのか？
ここにいる全員が、ただ者じゃねぇって事か？
そこには広間を埋め尽くさんばかりの猛者達が集まっていた。
それにしても何なんだ？この集まりは？
その時、誰かが口に洩らした言葉が耳に入った。
『この者が救世主？』
救世主？
何を言ってやがる？
救世主って何だよ？
それに…
さっきのムカつく四人の男達の中心にいるアイツ…
そいつも同じく頭巾で頭を隠して顔が見えないが、間違いなく相当な力を持ってやがるぞ？
奴が黒幕で間違いないな…
「！！」
と、視線を感じた俺は座主の頭巾の奥から見える眼が見えたのだ。
同時に俺の脳に直接座主の思念が入って来たのである。
「何ぃ？…うぐわぁあああ！」
そこで、俺は事の次第を知ったのだ。
「なんだこれは？」
それは神託？世界の破滅？滅びゆく世界？
十二の楔と、導く者？
そして救世主？？
俺が？
未来(？)のビジョンが終えた後、
「ハァ…ハァ…何なんだこれは？」
混乱する俺に、四人の男の一人が説明する。
「座主様の送ったビジョンが伝わったであろう？お前には直接伝えた方が分かると思ってな」
「何を馬鹿げた話をしてんだ？漫画やアニメの見すぎと違うか？馬鹿げてるぜ！それに俺が救世主なら、やけに手厚い御挨拶だよな？」
「どうせ口で説明してもお前は付いて来なかっただろう？」
そりゃあ～そうだが…
「だがよ？救世主だか何らか知らないが俺には関係ないね！」
「そうはいかん！お前には立派な救世主になってもらう予定だ」
「胸糞悪い！勝手に俺の人生を決めるんじゃねぇよ！それに…」
「？」
俺は拳を握った。
「俺に喧嘩を売ったらどうなるか教えてやるよ！きっちりのしつけて、落し前つけさせて貰うぜぇ！」
俺の身体から凄まじき勢いで霊気が解放したのだ。
俺の力を封じ込めるために身体中に貼り付けられた術札が燃え上がっていく。
「俺を止めるには物足りなかったようだな？」
そして俺は座主に向かって駆け出す。
「いっぺん殴らないと気がすまねぇ！」
すると座主を守護していた四人の男の一人が俺の前に立ちはだかり道を塞ぐ。
「面倒くせぇ～！先ずはお前からぶん殴る！！」
俺の拳がその男の顔面をとらえ…
「えっ？」
視界が回る？
「うぐわぁあ！」
俺は突然背中に衝撃を受けたのだ？
何が起きた？
俺は自分を見下ろしている男を見上げ理解した。
俺はこの男に投げられたのだ！
しかし何だ？
俺の拳は空を切り、奴とすれ違い様に身体が浮かび上がって気付いたら地面に倒れていた？？
これはまさか！
「合気ってやつか！」
合気とは自分の力を最小限に相手の力を利用して倒す技なのだ。
俺は直ぐ様立ち上がり、その合気を使う男を睨みつけた。
「いてぇ～な！！」
頭巾でこいつの顔は見えないがムカつく奴だ。
絶対に俺を鼻で笑ってるに違いないぜ！
うぎゃ！めちゃ腹が立つ！
先ずはコイツから先にぶん殴る！
ぶん殴ると言ったらぶん殴ってやるー！
俺は先に合気男に飛びかかったのだ。
俺の繰り出す拳は奴に当たらずに、幾度と空を切る。
全く当たらねぇ？？？
ん？うっおお！？
俺の身体が再び宙に浮かび上がったのだ？？
投げられたのか！？
「フッ」
なっ？コイツ、今確かに鼻で笑いやがったぞ？
無性に怒りが込み上げた。
クソッ！うりゃあ！
「！？」
俺は咄嗟に身体を翻し地面に衝突するのを防ぎ、
そして合気男の身体を掴み逆に投げ返したのだ。
が、合気男もまた身体を翻し防ぐ…
「空気投げ？貴様も合気を使うのか？」
「空気投げ？何だそれは？俺はお前の真似をしただけだぜぇ？金髪兄ちゃんよ！」
「コイツ…一度見ただけで…ん？金髪？アッーー！」
「ふふふ…それがお前の素顔か？」
俺の手には合気男が被っていた頭巾を持っていたのだ。
俺は奴を投げる瞬間に、顔を隠していた頭巾を奪ってやったのさ！
「いつの間に？」
ソイツは歳は俺と同じくらいか？
意外と若い…
全体の髪は短いが後ろ髪は紐で縛っている。
何より印象的なのは髪色が金髪かよ！
間違いない…
「お前は僧侶じゃねぇ！ただのヤンキーだ！」
「テメェに言われる筋合いじゃねぇー！いや？そうじゃない！俺はヤンキーじゃねぇーよ！」
「オィ！ヤンキー！お前に用はねぇよ！俺はあの座主って奴をぶん殴りたいだけだからな！」
「ふざけるな！座主様には指一本触れさせねぇ！この俺！蛇塚軍斗様がな！」
「…様？お前、今、様とか言った？ケラケラ！自分自身に様付けか？子供だなぁ…笑っちまうぜ！」
「なっ！」
蛇塚と名乗った男は俺に向けて中指を立てたのだ。
「少しヤキ入れてやるぜ！」
やはりヤンキーじゃねえか？
それにしても何だろう？
無性に腹が立つ。
ん？今誰か同属嫌悪とか抜かさなかったか？
「とにかく！俺はこれ以上に面倒事はゴメンだ。先ずは金髪、お前をぶん殴る！次は座主って野郎を殴る！そんで俺は帰る！それで万事解決だ！」
「どうやら貴様には教育が必要だな！」
「貴様に出来るか？この俺を相手になぁー！！」
俺は指を交差させて印を結ぶと気合いを発した。
『ウオオオオオオオ！ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン！』
俺が真言を唱えると、俺の背から炎がほとばしり、その炎の中から魔神の姿が出現したのだ。
「現れろ！我が守護神・不動明王よ！」
俺の背後に現れた炎の魔神・不動明王の力の波動が広間に広がっていく…
俺と合気男？金髪野郎との戦いを黙って見ていた奴等が「おぉー！」と目を奪われて驚いていた。
そして目の前の金髪野郎も、
「…………」
……ん？黙ったまま？
「どうだ？恐怖で何も言えないか？ん？」
その時…
奴から聞こえたのは？
真言だった？
『オン・アミリティ・ウン・ハッタ…』
そして奴は言ったのだ…
「お前だけが神の力を使役出来ると思うなよ！」
「何ぃー！？」
その時、俺は奴の背後から凄まじい力の波動を感じたのだ！？
「ま…まさか！？こんな事…ありえない…」
しかし信じられない事に奴の背後から俺と同じく魔神が出現したのだ。
それは俺と同じ不動明王？いや、違う！
「驚いたか！」
奴の背後から現れた魔神の姿は一面八臂、身体は青色く、何匹もの赤い蛇が身体を巻き付いていた。
「これぞ我が守護神」
『軍荼利明王だぁー！！』
※グンダリミョウオウ
「軍荼利明王だと？」
驚く俺の前で、座主の側近として座していた残りの二人の頭巾を被った男達からも、同じような力の波動を感じたのだ。なぁ？嘘だろ？？
マジかぁーー！？
そこから現れたのは…
顔、腕や足が六臂、髑髏を連れた首飾りをつけた魔神
『大威徳明王』
※ダイイトクミョウオウ
三面六臂に五つの目をした、まるで悪鬼の如き…
『金剛夜叉明王』
※コンゴウヤシャミョウオウ
最後に座主の側近にいたリーダー格の三千院が真言を唱えると、
『オン・ソンバ・ニソンバ・ウン・バザラ・ウン・ハッタ！』
三面八臂、正面の顔は三つ目の魔神、
『降三世明王』
※ゴウザンゼミョウオウ
俺の召喚した不動明王を中心に、四体の明王が囲み出現したのだ。
そして三千院は俺を指さして告げた。
「三蔵！お前の不動明王と、我達を守護する四体の明王合わせて五大明王と呼ぶ！」
「五大明王だと！？」
「三蔵！お前は俺達の仲間だ！俺達とともに世界を救おう！」
仲間だと？仲間…
ふざけるな、ふざけるな！
「ふざけるなぁー！俺に仲間なんて必要ねぇー！」
俺の不動明王の放つ業火が広間全体を覆うほどに燃え広がる。
「クッ！バサラ！大徳！」
その後…どうなったのかと言うとだな？
俺は背後に気配を感じたかと思うと強い衝撃を受けた。それは大徳と呼ばれる男が背後から突然俺の首もとに当て身をくらわせられ、再び意識を失ったのだ。
俺ってば、やられてばかりだよな。
やんなる…ぜ…
次回予告
三蔵「なんか・・・納得出来ない展開なのだが、今回の話までがこの神を導きし救世主って物語の序章編だったわけよ！」
三蔵「で、次の話からいよいよ新章が始まるぜ！その名も！
幼少編・小角の章！
はぁ～しかし、思い出したくもない俺の過去を根掘り葉掘り
勝手にばらすんじゃねぇーよ！
そんな野郎は！ナウマク・サマンダ・バザラ・ダン・カン！
我が守護神・不動明王の業火で焼き入れてやるぜ！」
