それぞれの行く道!それは終幕と始まりの物語!?
三蔵の死
その悲しみを、彼等はどう乗り越えるのか?
・・・・・・?
・・・・・・。
ん? なんじゃ?視線を感じるぞえ?
もしや、お主達…儂の気配に気付いておるのか?
そうか…どうやら…
そういう事のようじゃのう?
どれどれ?
儂の名前は太白金星じゃ。
お主達は何らかの力の作用で儂の見ていたモノを同調して見ていたようじゃ?
何の話か見当がつかんじゃと?
そなた達は三蔵一行の物語を儂の目を通して見ていたのであろう?
それは、夢であったり…
無意識の中であったり…
もしかしたらお主達にも何らかの不思議な力があるのかもしれんのう?
なぬ?
お主達は三蔵一行のその後の物語が気になっておるのか?
ウムム…仕方あるまいのぉ…
これも何かの縁かもしれぬ。
どれ!儂が再び見せてやろうぞ!
ふん!
見よ…儂の杖の先から見える下界の様子を!
はい!どーも私は沙悟浄です。
えっ?
私が今何をしているかですって?
浮いてますよ?
ぷかぷかと…湖の中を~
はぁ~落ち着く…
えっ?
はい!分かりましたよ~
話しますよ~
三蔵お師匠様が亡くなられた後の話ですよね?
はい…
三蔵様が亡くなられた後、一番嘆き悲しんだのは孫悟空兄貴でした。
「さ…三蔵…三蔵…サンゾォー!!」
孫悟空兄貴が号泣している姿を、私達はただ見ているしかありませんでした。
孫悟空兄貴は三日三晩泣き叫んだ後、私達に何も言わずに金斗雲に乗り、そのまま何処かへと飛び去ってしまったのです。
「孫悟空兄貴…」
八戒兄貴は私の肩に手を置き、首を振り言いました。
「行かせてやるらよ…」
「はい…」
孫悟空兄貴はその後、風の噂で聞いたのですが…
悲しみのあまり、泣いて泣いて泣きまくり地上界で暴れまくったらしいのです。
まるで自暴自棄に陥って、誰かに止めて貰いたいかのように…
三蔵様に…
その後、再び天界より討伐に来たナタクさんにより…
「愚か者が!」
孫悟空兄貴はナタクさんとの激闘のすえ、そのまま力を使い果たして石になってしまったと言う事です。
今では孫悟空兄貴のいた場所には岩が積み重なり一つの山となったと言う噂らしいのです。
人々はその山を再び『五行山』と呼んだのでした。
その山は風、雷、炎、雨が激しく吹き荒れ、人間達はもちろん動物をも近付けさせなかった。
まるで近付く全てを拒むかのように…
えっ?八戒兄貴ですか?
あの豚は…
しばらく私と一緒に旅をしていたのですが、二人とも目的もなく…
いたたまれなくなり、今は別々に旅をしているのです。
「お~!めんこいお姉ちゃ~ん!オラと子作りしねぇらか?」
「きゃあ~!」
「そこのお姉ちゃんでも良いらよ~」
「いや~!」
毎日のように女の子のお尻を追いかけ回しているみたいです。
「待て~待て~待て~!」
《ズキン!》
その時、八戒兄貴が頭を抱えて苦しみ出したのです。
「うっ…またら!前に金角児と銀角児に何かされてから、ずっとこうら?なんら?この頭痛は…?三蔵はんの一件から、頻繁に起きる回数が増えているらよ…ううう…」
頭を抱えながらもがく。
八戒兄貴の頭痛の原因は一体何なのでしょうか?
えっ?
もう一人の孫悟空兄貴の事も気になりますか?
そうそう!
そうでした!
私もびっくりしましたよ!
鵬魔王との戦いの最中、銀髪の孫悟空兄貴が再び現れるのですから~
そうなんです。
孫悟空兄貴と鵬魔王の戦いの後に、気付いたらいなくなっていたんですよ?
一体何者で?
何処に行ったのでしょう?
「こらぁ!河童ちゃん!何をサボってるのよ!」
「はっ!ごめんなさ~い!」
私は突然怒鳴られて慌てて返事をしたのでした。
「もう!河童ちゃんが修行して欲しいと言うから付き合ってあげてるんだから!サボっちゃダメでしょ」
「今、行きますよ~!」
私は岩山を駆け上がり登って行く!
私は修行していたのです。
三蔵様が亡くなった後、私もまた自暴自棄になっていたのです。
「あああ…私は何も出来なかった…私は…何も役に立てなかった…私にもっと力があれば!私に…あああ…」
私もまた立ち直れないくらい毎日毎日泣き叫んでいたのです。
「河童ちゃん…」
そんな私の前に現れた鉄扇ちゃんに私はお願いしたのです。
「お願い鉄扇ちゃん!私を男にして下さい!」
「えっ?あっ!突然そんな~嘘?ええっ!?だって!だって!気持ちは分かるけど~」
私のお願いに何故か赤面する鉄扇ちゃん?
「私は強くなりたいのです!今度は大切な者を守れるくらいに…」
「えっ?…そうね?アハハ…そういう事ね?良いわ!私が修行つけてあげるわ!私は厳しいわよ!」
「お願いします!」
そして今は、鉄扇ちゃんの下で修行の毎日なのでした。
強くなりたい…
強さって何だろう?
強さ…
自分自身の強さ…
身体的にも…精神的にも…強くなりたい!
それは、大切な者を守りたいから!
大切な者を失いたくないから!
誰かを守るために強くなる事が、私自身のためなのだから!
強くならなきゃ…
守られるだけの存在なんて駄目なんです!
甘えたくない!
だって、私には…
まだやれる事がきっとあるはずだから!
やらないで…
後悔して…
言い訳して…
そんなのは違う!
弱いと自分自身で決めつけてはダメなんです!
やって!行動して!努力して!頑張って!がむしゃらに、とことんがむしゃらになって!
その先に…きっと自分の追い求める強さがあるのだと信じて…
だから私は…
場所は代わり、再び儂が語るとしようかの?
「どうやら三人は、己自身との戦いをしているようじゃ…」
どれ…
これは、三蔵殿に口止めされていたのじゃがな?
儂は桃源郷の後に一度、三蔵殿と会っているのじゃよ。
それは、鉄扇が玉面との復讐をなそうとしていた時の話じゃ!
儂は沙悟浄の造った結解の中で横たわる三蔵殿に近寄っていく。
『あんたは…確か?』
「久しぶりじゃのう?三蔵殿…やはり、こうなっておったか…」
『ふっ…情けない姿を見せてしまったようですな?太白金星殿…』
「まったく…無茶をしおるわい。じゃが、儂はそなたが孫悟空達の師で良かったと思っておる」
『ん?』
「そなたは身体が動かないままでも、意識を飛ばしながら弟子達を見守っていたのじゃろう?」
『ご存知でしたか?』
三蔵殿は身体に無理をして、霊力を使いながら意識を飛ばしておった。
それは、孫悟空が蚩尤の城で紅孩児に熔岩に突き落とされた時…
また、八戒が金角児と銀角児に薬を飲まされた時…
三蔵殿は孫悟空を叱咤し、励ましておった。
八戒が金角児と銀角児によって死のどん底に落ちる間際に、その封印を一次的に解いたり…
「そんな事を繰り返していたら、そなたは肉体だけでなく…その魂までも削る事になると言うのに…」
心配する儂に三蔵殿は言った。
『俺は後どのくらい生きていられるのだ?知っているのなら教えてくれないか?』
「な…何を?生きたいだけ生きれば良かろう?」
『茶化すな!俺は残された命で…あいつ達に出来る事を残してやりたい…伝えてやりたい。それが、これからアイツ達が乗り越えなければならないであろう…険しい茨の道へと巻き込んだ…俺の役目なのだから…』
「!!」
『そして…これが、俺が友に出来る唯一の…』
儂は気休めになるかもしれぬが、三蔵殿に儂が造った霊薬を与えた。
「この薬で三蔵殿は後一年は生きていられよう。しかし、力を一切使わなければの話じゃぞ?
力を使えば使うだけ、その命は削られていくのじゃ!」
それが、儂が三蔵殿を見た最後じゃった。
どうじゃ?
これが、この転生記なるそなた達が見ていた物語の結末じゃよ…
ナヌ?納得出来ないと申すのか?
まだ、謎が解決されておらんじゃと?
三蔵殿が何処から来たのか?
最後の願いが何じゃったのか?
八戒の失われた過去に、謎の銀髪の少年の事?
更に金蝉子や、他の神々の意味深な言葉の数々…
そうじゃのう…
確かに明かされていない事ばかりじゃ…
じゃが、この転生記なる物語も今話で終わり…
じゃが、お主達が望むのであれば、
きっとその縁が新たな物語へと導くであろう!
転生記の新章なる物語を!
じゃが!
その前にお主達は知っておかねばならないのじゃ…
この転生記なる物語の前に起きた…
この物語に関わりし三人の過去に起きた激しくも悲しい戦いの歴史を!
この先の未来は…
蟹の味噌汁…
神のみぞ知る?
いや、神ですら知らぬ物語が始まるのじゃ。
先ずは、あの男の物語を・・・
『神を導きし救世主』
とくと待つが良いぞよ?
次回予告
それは…
過去、現在、未来…
その先に迫る破滅の時。
そこに現れる『神』と呼ばれる者達がいた。
神々は世界の破滅の終末に挑んでいく…
が、破滅の勢いは凄まじく神は一人一人、闇の中へと消えていった。
唯一の救いである神が倒れ、この世の生きとし生ける者達が絶望を予感した。
その時何処ともなく…
一人の人間が光の中から現れたのだ!
その者は金色に輝く十二人の使徒を従え…
世界の終末に光明を照らしていく。
『希望』を『未来』に繋げるために…
その者…
神でも人でもなく…
人でも神でもありし者!
この世の終末を前にして人々はこう呼んだ。
神を導きし救世主と!
『転生記』⇒『神を導きし救世主』




