麻里奈のボヤキ
異世界某所。
「……ねえ、ヒロリン。聞いてもいい?」
「なんでしょうか?まりんさん」
「私たちがこっちにいる間は、元の世界では私たちはいなかったことになっているのだよね」
「はい、そのとおりです」
「逆に、この前みたいに元の世界に戻ったときにはこちらには私たちがいなかったことになるのだよね。その間はこっちで待っていたまみたんたちの記憶から私たちは消える」
「そうです」
「元に戻ってくると、記憶も戻る」
「そのとおりです」
「記憶は戻ればそれでいいけど、こちらの世界で失われた時間で私は何をしたことになっているの?短時間だし今はいいけど、もし元の世界に戻った時には問題が起こりそうだけど。色々と」
「まあ、なんとかなります」
「ならんよ。その間に試験があったりしたらどうするの?零点だよ」
「対処法は大きくわけてふたつあります。面白い方とまじめな方。どちらが聞きたいですか?」
「面白い方と言いたいけど、ここはまじめな方」
「こちらに飛ばされたところからやり直すことになります」
「でも、そうなると時々戻っていた時と整合性が取れなくなるような。極端な話、やり直したときに外国に行ったら同じ時間に日本にいた私はどうなるの?」
「大丈夫。古いデータは消去されます」
「う~ん。なんか納得できないけど、とりあえずわかった。ついでに面白い方も聞いておこうか」
「こちらは、最初に転移したときから戻ってきたところまで私の主観で適当につくりなおして時間に張りつけます。もちろん記憶も。ですから、こちらも問題ありません」
「おおありだよ。プライバシーの侵害じゃ」
「大丈夫です。記憶の改変もおこないますから」
「ちなみに、元に戻ったらこっちでの記憶は?」
「消すつもりです。私が」
「でも、この前アップルパイを買いに行ったときには恭平も覚えていた……もしかして、今までもあったの。私が覚えていないだけで」
「ないです。記憶を消したのはまりんさん以外だけです」
「本当に?それにしてもすごいね。魔法って。いや、ヒロリンがすごいのか」