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探偵は砦跡で高笑う

連続更新はここまで。このあとは文字通り不定期更新になります。

「アハハハハハハハ!!!クライアントの皆様、お待たせしました!!!!」


オープンカーの助手席に仁王立ちしながら早森琴音は高笑いしていた。


しかし、そのクライアント達は一様に深刻な顔をしている。

「早森さん、何卒よろしくお願いします。もう、高名な早森さんしか縋る人がいないのです」


「クライアント、お任せください。私に失敗はありません。お宝は必ず見つけ出しますわ」

笑顔で頭を下げる琴音。


そして

「では早速(とりで)に行きましょう」



砦。

戦国時代、戦闘拠点として築かれたもの。

城とは用途が異なる。


戦闘拠点だけではなく、城が落ちた際の緊急避難の場所としての隠し砦のような使われ方もあった。


だが、江戸時代の一国一城令や明治維新などで、砦跡は残っていても、砦そのものは殆ど残っていない。


ここは世間から隠された、隠し砦。

砦と呼んでいいのかは難しい。

何故ならば、砦を構成する建造物は殆ど残っていないのだ。


正確に言えば砦跡。

だが、クライアントは「砦」と呼んでいた。

何故ならば


「砦内部はまだ無事なのです。罠も含めて」



所有している山に砦の跡らしきものがあるのは分かっていた。


だが、取り立てて騒ぐものでも無かった。

砦跡なんてありふれているし、場所も不便だから観光名所にもならない。


放っておこうと放置されていた。


それが変わったのが去年。

インターネットには様々なマニアがいる。


その一つが「城塞跡(じょうさいあと)マニア」

そういうマニアは過去にもいたのだろう。

黙って山に入った人間もいたらしい。

だが、それは騒ぎにならなかった。


このネットでのマニアは問題になった。

死んだのだ。

この砦跡地で。


それなりに有名なサイトの為、ニュースにも取り上げられた。

しかし、私有地への無断侵入な上に、砦跡近辺は崖が多く、侵入禁止の警告が多く貼られていた。


もし、所有者側に警告が無かったり、危険を放置していれば問題になったが、一連の行動により土地所有者の過失は問われることは無かった。


そして、ここで思わぬことが明らかになった。

侵入者が死んだ理由。


落盤(らくばん)だったが、これは意図的に起こされたのだ。


罠。


中に侵入しようとした警察官も被害にあいそうになるほど、重厚な罠が仕掛けられていた。


警察は「入口を封鎖するように」と土地所有者にお願いをして引き上げた。


あくまでも死因は偶発的な落盤による死とされた。


もし、これを明らかにすれば、無謀な若者が再侵入を目論むかも知れないからだ。


罠がある。

何故あるのか。

なにかを守る為だ。



土地所有者である野崎家は家族会議を行い、様々な手段を考案し実行した。


罠を突破しうる、サバイバルが得意な傭兵部隊をお願いしたが、すぐに引き上げられた。

「かなりマズい罠がある」として


海外で有名な部隊も呼んだが、やはりだめだった。

ある程度突破しても、罠を複数破壊しただけで終わってしまう。

「山を焼け」など過激なことを言い出したので帰ってもらったりもした。


そんな事をしていれば、周りにバレる。


あの砦跡には、なにか凄いものがあるのではないか。

それを守る罠で、あのネットの管理人は死んだのではないか?

と。



既に十数人単位で、山への侵入は確認されるようになった。

警察も大々的な警告を出し、侵入を確認したら、即通報、補導を繰り返していたが、騒ぎは大きくなるばかり。


あの砦跡を爆破かなにかで破壊しよう。

という提案がなされた。

警察もそれを勧めてくれた。


しかし

「罠の先にはなにがあるのだ」


これが気になる。


そして、宝探しでは失敗がないと評判の早森琴音が呼ばれた。



「クライアント、場所は事前情報で聞いておりますが、現地でもう一度確認したいです。こちらが入口ですのね」

「そうです。ここから入って真っ直ぐいくと…」

「恐らくですが、その真っ直ぐとは、こちらの方角ですね?ふむ。で、ここに最初の罠がある、と。うんメモ通りだ」


琴音はスマートフォンを見ながら呟いていた。

「早森さん、スマートフォン繋がりますか?このあたりは電波が…」

「ああ、データはメモリに入れています。それに私はネットがあまり好きではないのです」

そう言うと


「ああ、この木の下あたりが、外国人部隊が最後の罠を破壊したところですね。うん」

「早森さん、中には入られますか?」

「いえ、それは最後です。本当の入口を探さないと」


「は!?本当の入口!?」

「はい」

クライアント達を見渡す琴音。


「皆様が傭兵や海外の方々を呼んだのは間違いではありませんでした。彼らの行動が無ければ、この答えに至っておりません。皆様の議論、決断、投資に心から敬意を評しますわ。皆様はとても優秀な方々です」


「な、なにを突然」

「いくら想像で絵を埋めても、埋め尽くせないなにかはある。下には構造物がある。そして、何百年と経過しているのに、罠までが健在。となれば、相当に頑丈なもので周りを囲っている。石でしょう。木やなにかなら、とっくに崩壊していてもおかしくない。穴は残ったとしても、落盤の罠まで健在だなんて有り得ない」


電磁波(でんじは)による地下レーダ探査も呼ばれたそうで。でも無駄だったでしょう。あれは木の根っこなどにも反応する。そして、木の生い茂った森の下を調べるのは困難だ。振動波(しんどうは)探査のほうが可能性はありますが、崩壊されても困りますからね」


そして

「外国人部隊はあと少しだった。罠の数をそんなに複数作ってどうしますか?罠は宝を守るためでしょう?そんなにいっぱい罠ばかりかけたら、肝心のお宝を取るのが大変でしょうに。例え解除方法があったとしても、あの数は異常です」


琴音は微笑み

「あっちは外れと考えるべきです」

「は、はずれ!?」

「ありがちな話ですよ?複数の道を用意して、片方には罠ばかり。」


「大体おかしいと思いません?いくら地盤沈下かなんかか知りませんが、堂々とし過ぎてる。隠し砦、しかもお宝の隠し場所でしょ?」


そして

「うん、ここだ」

スマートフォンと実際の地面を見比べた琴音が言った


「この下!?」

「はいです。ここ掘れば入口が出てきます」

「ど、どうして、そんなことが!?」

「この山、昔と比べて全体的に沈んでるんですよ。下に頑丈な構造物があるところだけ沈みにくくなっている」


スコップを手に持ち

「元々も、入口を土で隠していたんでしょうね。あのでっかい入口はフェイク。なんか目印もあったんでしょうが、400年も経てばそんなものは捜すだけ無駄ですから。良かったですね、山が沈んで」


「では(かず)さんよろしく」

「おう!」

琴音のオープンカーの運転手が、超小型のハックフォーに乗ってきていた。

「い、いつの間に!」

「手で掘るのも辛いですから」

山道だが、かなり小さい重機のためか、登れてこれたようだ。


土を掘り始める

「そんな深く無いはずですよ」

そう言うと

「なにかに当たったぞ!」

「あら、早い」


琴音はスコップでその固い構造物をスコップでいじると

「見つかりましたわ。この下に、お宝がございます」

そして高笑いをした。



入口を開けると縄ハシゴはあったが

「400年前のものですよ?止めるべきです」

琴音が言い、持ち込んだロープで降りる。

酸素濃度などを測れる濃度計を持ち込んでおり、測りながら進むと


「わお」

思わず声をあげる琴音。

そこには

「ま!まさか!本当に!!!」

「ほ、本物か!!!」


金判。室町、戦国時代に流通していた金の通貨だった。


「私的には重要な古文書があったけれど、保管状態が悪くてボロボロでした。みたいなオチを予想していたんですが…」

横を見ると


「ああ。それもあるんだ」

ボロボロになった古文書を見る。

そして

「お宝は見つけだしました。なによりですわ」


驚喜するクライアント達の騒ぎの中、彼女の高笑いが響いた。

================================



「これで10人死んだぞ」

「バカなのかな?」

「戦国時代の金30億円相当のお宝が見つかったんだ。まだあるかも知れないと疑う連中がいてもおかしくはあるまい」

いつものコーヒーショップで風村と会う琴音。


あれから、罠が仕掛けてある方の砦跡や、宝があった穴のところに大量の人が押し寄せたのだ。


所有者は警備員を雇って止めたが、それでも深夜侵入などで、死者は増え続ける。


「もう無いよ。爆破しろって言ったのに。警察がバカだからさ」

「状況証拠に必要なんだろ」


爆破を検討したのだが、宝が実在したことから、警察は爆破に二の足を踏んだ。また権利者の間でも「まだあるかもしれない」と議論になって、そのままになった。



「バカは死ななきゃ直らないってね。しかし、今回は俺の仕事にはならなかったな」

「毎回って訳にもいかないね。流石にね」


今回のクライアントは仲間割れで殺人を起こすなど愚かでは無かった。


そして

「まあ、今回は楽しかったですよ。こういう遺跡探検ものって、宝探しの王道って感じしません?」

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