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探偵は交差点で高笑う

吉野原准一(よしのはらじゅんいち)はモテる。

セッ○スの相手に困ることはない。


今日もスマホの電話帳から適当に名前を選んで、少女を呼び出してやっていた。


「じゅんちゃん♪ひさしぶりだからぁ♪もっと、もーっと、いっぱいしよー♪」

少女は准一に甘えながら、裸で抱きついている。


准一は既に少女に興味を失いスマホを弄っていたが

「ちっ!風村がまた動くのか」

頭を抱える。

風村が関わる事件は全ておかしくなる。


警察にも「風村をどうにかして拘束か、監視できないのか」とお願いしていたのだが、そんなことは不可能だった。


風村は准一の敵。

だが、風村と仲良くしている少女、早森琴音の存在がより心をかき乱す。



琴音と会ったのは偶然だった。

未解決事件の解決に訪れたある島の屋敷。

そこに、フェリーの矛先で仁王立ちで高笑いしながら来た少女が琴音だった。


琴音はその島の別の屋敷の宝探しに来ていた。

燃えるような真っ赤なドレスに、整えられた長い髪。


その瞳に圧倒的な知性を秘めて、その屋敷の宝をあっさりと見つけ出した。


野次馬気分で見物していた准一は、その琴音の解決した後の態度に衝撃をうけたのだ。



その宝の発見に愕然とし、何故これが見つけられなかったのかと震えるクライアントを馬鹿だと見下し、自らの優秀さを誇る態度。


警察に囲まれて、不自由な気持ちを抱いていた准一にとって彼女は自由の象徴だった。


聞けば同じ年だった。



それ以降、彼女に対する執着を強くしていた。

だから弄ぶ少女も、どこか琴音の雰囲気がある長髪が多かった。


「…琴音か、また会いに行くか」

「…ことね?」後ろの少女が首を傾げる

「いや、少しやる気が湧いてきた。もう少し遊んでやるよ」

「うん♪」

================================



琴音への依頼は常に風村経由ではない。

琴音は有名になっていたので、直接の依頼もある。


琴音は常に、誰かが宝を探していないか調べている。

だが、琴音自らが調べるのは、あくまでも新聞や週刊誌で取り上げられるような資産家レベルに限定されていた。


なので、このような依頼だと、頼まれてから調べることが多くなっていた。



(つぼ)ですか?」

「はい」

琴音は探偵を名乗っているが、特に事務所があるわけではない。


なにしろまだ女子高生だ。

そのためこういうクライアントとの打ち合わせは、風村の事務所の一室を借りておこなう。


仕事であるため、いつもの華美(かび)な衣装をしている

「そうなんですよ。家のどこかにあるそうなんですが、いくら探しても出てこなくてですね」


困り顔の依頼人。


「大変に失礼なお話なんですが、そのお家はよほど広いのですか?」

壺の大きさに関わらず、通常の家ならば、探せば見つかるものだ。


「はい。田舎の本家でして」

見取り図を琴音に渡す。


「なるほど…これは広い」

部屋は何個もあった。しかし

「それにしても、壺が見つからないという規模ではないでしょう?実はここには無いのか、とか、探し方を疑ったほうが…」 


「ええ、実はですね。早森さんにお願いする前にですね、遺品整理をする業者さんを呼んで入ってもらったんです」


「ええ」

遺品整理の業者は、その家の隅から隅まで確認をする。

その業者が並べた遺品の中には

「その壺は無かったと」


遺品整理の業者の名刺を見ると


「大手ですから、雑な仕事をする業者じゃありませんし、騙して壺を盗む真似も考えにくいですね。単純に通常の探し方では見つけられなかったと」


「そう思ってます。それで、宝探しで有名な早森さんに」


「私は、そこに間違いなく壺があれば探せます。しかし、無いものは探せません」

「それを確かめて頂きたいのです」


「待ってください。御存知のように、私の依頼料は決して安くはありません。私に失敗はありません。行けば満額ですよ?」


「そ、それでも。確認したいのです」

琴音は考え込む。


「…その壺は…」

「はい」

「誰があると仰ったのですか?」

「本家に住んでいた祖母です。祖母は私を可愛がってくれました。祖母がわたしに嘘をつくとは思えません」


「その壺はなんとお伝えられたのですか?」

古備前(こびぜん)の壺だと」

「古備前…」琴音が顔をしかめる

「他には?」

「え?古備前の壺としか」

「古備前の壺と言っても時代によって価格は全然違いますし、大きさも形も違う。作者からなにからなにまで。多分素人が見たって区別つきませんよ、それ」


唖然とした表情の依頼人。

「遺品整理業者が並べた中に壺はありましたか?」

「はい。30個ほど。しかし、どれも古備前ではないと…」

「遺品整理業者が?」

そんな判定を大手の遺品整理業者がするのか?と疑問に思ったが


「いえ、鑑定に出したんです。すると全部偽物だと…」

「全部偽物!?」琴音は食いつく


「あ、いえ!違いますよ。古備前の偽物があった訳じゃないんです。全部違う種類の壺で、なおかつ偽物であったと…」


「30全部偽物なわけ無いじゃないですか!?この古民家で、多くの美術品があったのでしょう?偽物を意図的に集める目的でもなければ、一つぐらいは安物でも本物は紛れ込みますよ!」


「え?ええ!?」

「その業者は誰の紹介ですか?その遺品整理の会社?」

「いえ、兄の紹介で…」

「お宝はそこにありますね」

琴音。


「そ、そんな」

「写真は撮られてます?」

「え、ええ。これです」

写真を眺めた琴音は


「古備前の壺で該当しそうなのはコレですね」

「え?こんな薄汚いのが?」

頭を抱えそうになる琴音


ああ、馬鹿の相手はしたくない。

そんな苦悩を出しながら


「古備前だけで言うならば、本当に偽物かも知れません。おばあ様がどこまで正確な鑑定されていたのかは分かりませんし。しかし、全て偽物という鑑定は疑わしい。取り返されればいい。多分お兄さんのところにありますよ、それ」


「あ、ありがとうございます!早速問い詰めてきます!」

「あ、そうだ。念の為聞きますが、お兄様のお名前は?もしかして大前智さんですか?」

「え?兄を御存知でしたか?」

「ええ。それなりに有名です。」

「そうですか!それで、御礼は…」

「お話しか聞いていませんから、サービスで」

「ありがとうございます!それでは!」



琴音は溜め息をつくと

「かぜむらー」

「聞いてたよ」風村が苦笑いしながら部屋に入ってくる。


「新たな依頼人ゲット」

「いやいや、ありがたい話だ。琴音が来てから千客万来だよ」



大前智(おおまえとも)は粗暴で有名な経営者だ。

その弟とは知らなかったが。


「智は間違いなく弟をぶち殺しますね」

弟は人が良すぎる。適当にあしらえば誤魔化せると思ったのだろう。だが、そうならなかったら?


「智に売り込んでいくさ」


「しかし、祖母から言われた古備前の壺を調べるぐらいのことは普通しませんかね?」

調べ物が好きな琴音から見ると信じがたいほどの馬鹿。


風村は苦笑いして言った。

「そういうもんさ。人間は」

================================



精神的に疲れた琴音はそのまま街に行く。

普段と違い、派手で目立つ格好の琴音はモテる。

ナンパもされるのだが、無視して歩く。

すると


「琴音!」

ラブホテルから出てきた准一とバッタリ会う。

「わたしに挨拶する暇があれば、隣の彼女に愛でも囁け」

「彼女じゃないよ、セフレだよ」

朗らかに笑う准一。


隣の少女は少し不満そうにするが黙る。


「私は依頼が空振りで不機嫌なんだ、帰れ」

「あれ、依頼成立しなかったの?」

「馬鹿の相手は困る。壺を探せという依頼だったが、話を聞いたらとっくに騙されて持っていかれた後だった」

「あははは、困るよね、そういうの」


そう言うと、少女の方に向き

「なに嫉妬してんの?琴音とお前じゃ価値が違うんだよ」

「じゅ、じゅんちゃん」

「安心しろ。俺と琴音はそういう関係じゃない。セッ○スならいくらでもしてやるよ。孕みたければ孕んでもいいぞ」

「しょ、しょんなぁ♪う、うん、でも嬉しい♪」

あっという間に機嫌が直る少女

「痴話喧嘩なら余所でやって」

「ああ、ごめん。また風村が動くらしいじゃないか」

「ええ。私の件でね」

「そうか、止めたいんだがな」

「まあ、今回の件は風村に義理もないから教えてあげる。大前智とその弟の諍いよ」


「…ああ、やばいな。やつか」

少し顔を曇らすが

「じゃあそう言うことで。おとなりの彼女、発情してるわよ。ラブホに戻れば?」


「じゅ、じゅんちゃん、あのね、もし、じゅんちゃんがいいなら…」

「ああ、どちらにせよ、今からじゃ警察に行っても意味はない。孕ませてやるよ。香菜」

「う、うれしい♪いっぱい○○して♪」 

琴音はその間に離れた。

================================



正直琴音にとっては風村は、単に便利な道具だ。

思い入れも余りない。

毎回貸し借り無しで対応している。


准一に対してもそうだ。

基本はうざがっているが、警察と繋がっている情報網は魅力だ。

たまに情報を得たりしている。



琴音にとっては

「ああ!馬鹿のお宝を横から攫って絶望した顔が見たい!!!!!」

それ以外はどうでもいいこと。


渋谷の大通りで、危ない言葉を叫びながら、高笑いする少女に周りはざわめくが、またいつもの喧騒に戻った。

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