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探偵はトイレで高笑う

早森琴音は、ビルの見取り図を眺めていた。


「ビルと言うのは、いくらでも宝を隠すスペースがある。問題はそれがどの段階からか。設計段階からなにかを隠すつもりだったら、可能性が多過ぎて絞り込むのが困ります。

ただ、そうでなく。出来上がったビルに、何かを隠すとなれば、それは絞り込める」


「うん。じゃあ今回は?」

「ビルの設計と建築は大手。恐らく設計段階では考慮されていない」


「じゃあこことか?」

「うん。そうですね。何回も取り出すタイプの宝ではないですから、そのスペースは考えられます。後は実際にビルを見回って、設計図ではあるはずなのに無いスペースとかを見回りますか」


「うん!」

======================



琴音は、事前調査で、ビル内に隠された宝を探しているという話を掴んだ。


しかし、そのビルは老朽化が進み、解体予定だったのだ。

しかし、その解体予定をまたずして、その企業は探し回っていた。

「ビルを解体すれば必ず出てくる話でしょう? 重機で壊す前に、手で内装とか剥がせばいい。その作業ですら壊れかねない、脆いものなのですか?」


疑問は尽きない。

たが、調査の中で理解した。


「金が無いのか~」

倒産寸前。その為宝のありかを必死に探していた。


「依頼人が私に頼むのはあり得ないけど、一応調査しますか」


そうやって調べているうちに、風村から

「なんか、琴音に頼むか悩んでるらしいよ」

と連絡がきた。


「あらま。金銭面がヤバいから、私には来ないと思っていたのですが」


「琴音は、見つかった財宝の何割と言う契約もしている。見つからない宝よりも、減った財宝の方が良いんじゃないかと」


「なるほど~。まあ依頼が来たら受けますよ」

「ああ、正式に来たら回す」

======================


それから二週間。

ついに、その会社は決断した。

このままでは倒産は免れない。

解体をする費用ももはやない。



「クライアント。初めまして早森琴音と申します」

「御高名は聞いております。実はこのビルの中に、先代の隠した宝があるのです。ただ、それがいくら探しても見つかりませんで」


「ビルの設計図と合わせて確認されましたか?」

「ええ。探せるところは探しましたが……」

琴音はその部屋をぐるりと見渡して。


「まあ、大体分かりました。行きましょうか?」

「え?どちらに?」


「宝の在処です」



驚くクライアントを横目に、誰もいないビルを歩く。


「今日は会社はお休みなのですね」

「そうですね。今日は誰も来させていません」


琴音はなにかを考えた後


「宝の基本はですね。手元にあり、見つかりにくく、出すのはともかく、確認するのは容易な場所です。なにしろ、宝の価値があればあるほど、それが大丈夫か? 盗まれてないか? と心配するのは人として当たり前の話です」


「なるほど。それでは先代の宝も……」

「ここです」


そこは

「は?」


そこは

「これは、トイレ?」

「ここ、先代の社長さんしか使ってはいけなかったトイレでは?」


「そ、そうです! 先代の間は絶対に使わせませんでした!」

「お掃除も先代しかされなかった」


「ええ! 前時代的な考え方で。トイレ掃除は自分でやれと。自分も率先して専用のトイレを掃除していました」


「ここに宝を隠していたから、人を入れたくなかっただけです」

「しかし、ここも探しましたよ? 棚や天井など……」


「結構面白いもので、人には共通の死角があります。これもそうですね。天井を探すのに、その下を見ない。同じように空間はあるのに」


「え!?」


「用を足しながら、確認してたんでしょうね。取り出す必要もない。宝が無事だと確認出来ればそれでいい。なので、ここ」


琴音はタイルを外す。


「おお! こ、ここに! 宝が!」

「旧札ですね」


中身はビニールにくるまった札束だった。


「お宝の場所はこちらです。見つかってなによりですわ」


琴音は気持ちよさそうに笑っていた。

=====================



「振り込み無いんだよな」

「結局倒産したみたいですよ、あの会社」

「その金どーしたんだよ。その社長?」


「旧札だから、換金する時に色々言われますからね~。どう考えても脱税ものですし、まあアレですから。持ち逃げでは」


「嫌だねぇ。まあ恐喝してみるよ」

「お願いします」


琴音は風村の事務所を出ると


「本当はお宝は、もう一個あるんですけどね。あのビルはしばらくあのまんまだし」


琴音は、誰もいないビルで察したのだ。

このクライアントは、見つかった財宝を隠そうとすると。

本来ならば手伝いで誰か呼んでもおかしくない。


そもそも、宝探しも、社長と役員の一部しか行っていなかったのだ。


「倒産に伴いビルは競売にかけられる。その後見つかった宝はどうなるんですかね? 社員の皆さんに配られるといいですね」


琴音は笑っていた。

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