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探偵はセグーの堤防で高笑う(前編)

早森琴音は見舞いに来ていた。

「琴音。イリーガルな連中からの依頼メールが殺到してるんだが」


風村の見舞いに訪れた琴音への第一声がこれ


「また愉快な話ですね」

「アルジェリアのテロ組織の話が広がってるらしいな。と言っても、その連中のお仲間にだが」


「アルカイダ系でしたっけ?」

「ああ、そうだ。イスラムのテロ組織は複雑怪奇で解説する気もおきないが、基本的に、違うテロ組織系列との仲は劣悪だ。ISILとかな。

それはともかく、その国際テロネットワークのアルカイダの中で、琴音の評判が大きくなって依頼が来てる。それも五件も」


「私は宝探しさえ出来ればなんでもいいですが、あんまり関わるとヤバそうな人達ですね」

「そうだな。宝の資金がなにに使われるか考えると本来は関わらないのが一番だ」


「じゃあそれでいいのでは?私も海外の調べ物は時間が取られるので色々アレですし」

「ああ、で、相談なんだが。断りの挨拶を入れはするんだが、万が一に備えて調べ物だけしてもらえないか?」

「そういうことですか。なら構いませんよ」


「ああ、よろしく頼むよ。しかし、最近はイリーガルな組織依頼が多いよ。俺にも暴力団からの依頼が来ててな」

「まあ、仕事が仕事ですからね、ある程度は仕方ありません。とりあえず依頼メールを転送してください」

「あいよ。よろしくな」



琴音はそれから、アラビア語の翻訳家と契約し、必要な本の翻訳をお願いしていった。

少しずつ調べ物を積み上げていくうちに



「マリ共和国とインドネシアで見つけました。ただインドネシアは海の底っぽいので実質無理です。マリ共和国、ガーナ王国の秘宝が現実的ですか」


「マリ共和国って砂漠の国か」

「この前行ったアルジェリアの近くの国です。今回のガーナ王国の秘宝自体は古い話ですが、隠されたのはそこまで古くはない」


「しかしアフリカなのに文書が残っていたのか?」

「風村、中世以降はイスラム文化の方が文書残ってますよ。ガーナ王国自体はイスラムの国ではありませんでしたが、イスラム文化との交易が盛んであったため文書が多く残っています。もっとも、隠された時期は大分先です。

19世紀のトゥクール帝国の話。

ヨーロッパの列強が進出してくる中、抵抗をした国です。

そのトゥクール帝国はガーナ王国の秘宝を手に入れていた。

それを隠したものが、まだ出てきていない」


「聞いたこと無いな、その帝国」

「でしょうね。まあマリ共和国の人から見たら、日本の室町幕府と言ってもさっぱり分からないでしょうから、似たようなものです。

んで、風村。これどうします?黙っておけば良いですか?」


「ああ、断りの返事をしたら、丁寧な文章が返ってきたよ。別に無理にやる必要はないさ」


「ええ。ではそういうことで」



家に戻ると「お姉ちゃん!お帰り!」

「瑞希。ただいま。いい子にしていましたか?」

「うん!」

瑞希の頭を撫でながら

「私も臆病になりました。ちょっと前なら受けてましたけどね。まあ、今が正常なんですよ。きっとね」



一週間後

メールで病院に呼び出された琴音。


「テロ組織の一人が捕まって、財宝の話を当局にゲロったらしい」

「また根性ありませんね。テロ組織なのに」


「んで、マリ共和国の在日大使館と、在マリの日本大使館から問い合わせ来てな」


「断ったから問題無いのでは?」

「小言は言われたよ。すぐそう言うのは通報しろとな。ただ、それよりも、実際にそんなものあるのか?と言われてな」


「なるほど」

「もしあるならば、テロ組織の前に回収したいと」

「テロ組織に逆恨みされません?」

「ガードはされるし、まあ日本にマリ共和国のテロ組織来ないだろうし」

「アルカイダでしょう?危険では?」


「そこの組織はかなりアルカイダ内でも浮いているそうだ。崩壊寸前らしいぞ」

「まあ海外の宝探しは楽しそうですから良いですよ」


「ああ。安全には十分気を使ってもらうようにお願いするよ。どちらにせよ、俺の怪我が癒えてからだからな」



マリ共和国。バマコ・セヌー国際空港。

「瑞希。大丈夫ですか?」

「ふらふらするよー」


途中の乗り継ぎでホテルに泊まったものの、殆どが飛行機だったので、瑞希はふらふらしていた。


当初琴音は瑞希を置いて行こうと思っていたのだが、一週間以上いなくなると伝えたら泣きながら付いていくと言ってきかなかったのだ。


「とりあえず大使館から依頼された案内人が来る」

風村は退院はしたが、まだ本調子ではなく、サポーターを付けていて、機敏には動けていなかった。


「瑞希、これは翻訳機です。基本はフランス語で通じますから、この機械で、大抵はなんとかなります」


「ありがとう!お姉ちゃんと風村は?」

「私達はフランス語なら使えます」

「ふえー」


「琴音、案内人が来たぞ、さあ行くか」



マリ共和国、セグー。

かつてのトゥクール帝国の首都。


ニジェール川のほとりにある大きな街。


「んで、どこらへんだ?」

「有りがちな話です。100年以上見つからない宝は、人の盲点に隠している。

ニジェール川氾濫に備えた堤防の下にあります」


「堤防ねぇ。じゃあ重機ないとダメじゃないか?」

「いえ。それは最後の手段です。というか重機ないと取れない宝って、困るじゃないですか。隠した側が。宝を隠す人って、基本的にはそのうち取りに戻るのが前提なんですから」


「で、取りに戻れないまま終わったと」

「そういうの多いですよねー」


琴音は堤防に上がると


「絶対にここに隠したと確信したあとに、もし、ここに隠すとしたら、どこに隠したか?

隠した側の発想をすればいい。そうすれば、自然と分かります。ここで言うならば、不自然な形を探せば良いんです」


ある部分を指差し

「宝を埋めたが故に、不自然に盛り上がる部分がある。それを隠したが故に、変になる。あそこに宝があります」

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