表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/45

探偵は花畑で高笑う(後編)

早森琴音は事務所にいた。

「ふむ。そんなに大変な案件じゃないような気がするんですが」

「そんなことありませんよ。琴音さんは優秀だから」


風村探偵事務所。

琴音はよく顔を出しているので、顔馴染かおなじみなのだが


「おおー。すごーい。地図がたくさーん」

地図をキラキラした目で見る瑞希。


「ええ。それは私が風村にお願いして買ってもらったやつですね」

「地図見てるねー」

「ええ。そうしていてください」


琴音は書類に目を通す。

大体状況は把握した。

だが


「まあ、女でしょうね。これで見ると」

飯村英二というファイルには、そのひとなりが記されていた。


「依頼人の要望も10:0じゃないし。そこそこのところで妥協案だせば済みますね。まあ、とっととやりますか」


琴音は書類を閉じると

「瑞希、一緒に帰りましょう」

「うん!もう終わったの?」

「ええ。簡単ですわ。明日から少し出かける事が多くなります。良い子でお留守番してくださいね」


「ええー。一緒にいたいよー」

「ダメです。宝探し以外はね。まだ早いです」

「むう」


「これで、人の弱み握る快感とかに目覚められても困るのです。瑞希、良い子で待っていてください」

「うん。わかったよ」

瑞希は渋々とうなずく。


「素晴らしいです。大丈夫ですよ。瑞希ならそのうちなんでもこなせるようになります」

=====================



翌日の学校。

早森瑞希は不満だった。

「むう。お姉ちゃんがいないお家に帰ってもなぁ」

暇なのだ。


琴音がいれば、常にお喋りをしている。

琴音は優しく、なによりも頭が良かった。

会話をしていて、なんのストレスも無いのだ。


「1人で図書館行こうかな?」

そう思っていると


「あれ。みずき君、なにしてるの?」

クラスメイトの内海雅うちうみみやびが話しかける。


「帰ってもやることないから困ってるの?」

「じゃあ二人であそぼー」

いつも雅は、瑞希に話しかけては玉砕の日々を送っていたが


「いいよー」

「わーい!」

初めて、瑞希は、雅のお願いにこたえた。



公園。

「なにして遊ぶ?ちゅーしよー?」

「ちゅーって遊びなの?」

「ううん。ほんき」

「じゃあしない。遊びしようよ」


微妙にすれ違った話をしながら、二人は公園でベンチに座って話をしていた。


「微妙に寒い」

「なにか飲む?」

瑞希は財布をだす。


「いいなー。みずき君、お金持たせてもらってるんだ」

「うん。お姉ちゃんが、持ってなさいって」


二人でコンビニに行き、買い物をすると

「みずき君、好きな人いるの?」

「おねえちゃん」

「むう」

即答されて不満そうにする、雅。


「おねえちゃん、綺麗なの?」

「綺麗だと思うけど、優しくて、頭いいから好き」


二人はたわいもない話をしながら、夕方になり別れて帰った。

=====================



「ただいま、瑞希」

「お姉ちゃん!おかえりー!」

帰ってきた琴音に飛びつく瑞希。


「良い子で待っていましたか?」

「うん!暇だから、クラスの子と話してた」

「あらあら。良いことです」

琴音は瑞希の頭を撫でる。


「明日で終わります。良い子で待ってください」

=====================



琴音は証拠を整理していた。

「まあ、こんなもんでしょうね」

飯村英二の弱みは握った。


あとは

「さて、あとは交渉するだけですね」



国定公園の花畑で人を待つ琴音。

すると待ち人は来た。


「飯村英二さん」

ベンチに座ったまま声をかける。


「……?どこかで会ったかな?」

「相続の件でして」

「弁護士か何かか?それにしては幼いが」


「そんな上等なものではありません。お兄さんの栄一さんとの配分のお話でして」


「なんの話か分かりませんが、話なら正式に……」

琴音は写真を見せる。

すると飯村の顔が青ざめた。


「栄一さんに対して、女性関係を理由に遺産配分に対して意見書を出されています。ですが、同じことをされているようでは、色々これからの交渉は辛いでしょう」


「し、しかし!兄貴は強姦だろ!あれは女に金をバラまいて不起訴にしてもらっただけだ!俺は違う!」


「お金で関係を黙ってもらう行為には変わらないかと」

また新しい写真を見せ付ける。

そこには、女性に金を渡すシーンが写っていた。


「別に遺産を諦めろ。という話ではなく。意見書を取り下げるだけです。大したことではないかと」

「断れば?」

「遺産配分の場でこれが流れるだけですね」


「それに応じたところで、この写真は……」

「意見書取り下げれば、そもそもこんな写真、問題にはなりませんよ。遺産配分で、兄を女性関係で糾弾きゅうだんしながら、本人も同じことしている。というだけですから。実際、双方合意があるのでしょう?」


「……分かった。これは貰えるのか」

「どうぞ」

「意見書は取り下げる」


話は終わった。


そして琴音は独り言を言う。


「これは独り言ですが、あの女の人は色々マズいですよ。この意見書もあの人の提案でしょうが」


飯村は立ち止まる。

「当初遺産配分の、2億相当のなにが不満なのですか?当初は納得されていたばすです」

琴音は歌うようの言う

「あの女性、溝口さんの借金と、男性関係を探ることをお勧めしますよ」


「探偵か」

「そうです」

「分かった。考えておこう」

琴音は書類を見せる。


「これはサービスです」

怪訝けげんそうな顔でその書類を見ると、奪う。


「保険金かけられてますよ。自覚ないと思いますけどね。あと、これあなたの遺書。これまた知らんと思いますけどね」


震える飯村。


「お金が集まる所には、ハゲタカがたかりますよ。気をつけてくださいね」


琴音は笑いながらその場を去った。



帰り道。

「あら。瑞希」

公園を通りがかると瑞希と少女がいた。


「みずき君、明日も会える?」

「明日はおねーちゃん帰ってくるから無理」

「えーーーー」

女の子はがっかりしている。


仲良くしているようだ


「瑞希」

「わあ!お姉ちゃん!」

「……わあ、綺麗な人」


「瑞希のお友達ですか?なかよくしてくださいね」

「は、はい」

「お姉ちゃん!終わったの?」

「はい。私にすれば、楽な仕事です。明日から元の生活に戻りますよ。ああ、その前に明日は風村に報告しないとですね」

「わーい!」


琴音に抱き付く瑞希。

それを少女は羨ましそうに見ていた。

=====================



「依頼人からお礼の連絡が来たよ。意見書は取り下げられたと」

「それはなによりです。こういうのは、他に敵が出来たら、どうでも良くなりますからね」


風村の見舞いに来た琴音と瑞希。


「しばらくは、事務所は開店休業だ。まあ金はあるからな。今のうちに事務員には休暇だすさ」

「ええ。ゆっくり休むことも大事です」


「しばらく仕事の紹介も出来なくなるな」

「そういう時もあります。事前調査はいくらでもやることありますからね」

琴音は微笑む。


「まあ、あの依頼人の弟さんから、そのうち依頼ありそうですしね。意外と宝探しの需要って多いのですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ