探偵は海底洞窟で高笑う
早森琴音は、早森瑞希と共に旅行に来ていた。
「うみー」
「ロマンですね!海岸に眠っているお宝とか!」
今回は依頼ではなかった。
自分達で調べているうちに見つけた宝なのだが
「瑞希の勉強の為です。たまにはこういうのも良いでしょう」
宮崎県延岡市浦城町。
ここは倭寇として名を馳せた海賊がいたとされた水城があった。
前回の城の調べ物をしているうちに、連鎖的にこの宝の話が引っかかったのだ。
「町では元々有名なのですよ。16世紀に滅ぼされた松田氏。これが抱えていた財宝があると」
「でも出てこないの~?」
「ええ。財宝の噂は多けれども、実際に見つかるケースは多くない」
「むう。でも琴音は見つけたの?」
「確定ではないです。五分五分です。それに、もう盗られてた後みたいなオチも十分有り得ます。そのための勉強です」
琴音は水着を下に着込んでいた。
「瑞希も水着になってからウェットスーツを着てください。予想する場所は、潜らないとたどり着けません。やり方はこの前訓練したとおりです」
2人は事前に酸素ボンベを使った潜水の訓練講習を受けていた。
「うん!」
2人は酸素ボンベを付けて海に潜った。
水中、琴音は瑞希の手を握りながら、少しずつ進む。
すると、すぐ目的の洞窟を見つける。
瑞希を導きながら洞窟に入る。
奥に入ると坂になっており、水が無くなっていた。
手で瑞希を制して、胸から酸素濃度計を取り出し計測する琴音。
確認すると、まず自分がマスクを取り慎重に呼吸する。
「大丈夫なようです。瑞希、マスクとってください」
「うん!ここにあるのかな!?」
「ここは水中洞窟。時代と共に海面があがり水没した洞窟ですね。慎重にいきましょう。私より先行しないでください。いつでもマスクは付けられるようにしてください」
「うん!」
琴音は濃度計を確認しながら慎重に進む。
計測器は、酸素以外にも、二酸化炭素、一酸化炭素など、呼吸障害を起こすものの表示もできた。
数字を確認しながら進むと
「ふむ……盗られた後と考えるべきですかね、これは」
「わあ!ドクロだぁ!」
明らかな死体がある。
しかし、骸骨を見て琴音は反応した。
「なぜ骸骨化?虫などの生き物なんてどこにもいないじゃないですか?潮がここまで来ていて、海の生き物に食べられたのですか?その割にはその痕跡も……」
ドクロを触る。
「昔は潮がここまで来ていた。と言う割には整然と並びすぎている。潮が来たならもっと雑然としませんか?」
「お姉ちゃんどうしたの?」
「このドクロ、怪しすぎませんか?」
「うん?」
「低温多湿、生き物がいないここで、なぜ骸骨化するのか?ミイラ化というか、死蝋、湿地遺体というか。細菌だけで、ここまで完璧に白骨化は考えにくい……」
すると、琴音はドクロの下に埋もれていた床に触れて叫んだ。
「はい!?そんな、16世紀にこんな仕掛け?」
琴音は恐る恐るドクロを掲げる。
すると、張り巡らされていたらしいロープが一気に引っ張られる。
そして、岩の上からなにかがゆっくりと降りてきた。
「わ!琴音!凄い!なにかが降りてきた!」
「……信じられません。昔の方はなにを考えて、こんな仕掛けを……いや、というか、なんで500年残っているんですか?どんな頑丈なロープ?」
琴音は色々疑問符だらけだが、降りてきた宝を慎重に探る。
すると
「……明の時代の物ですかね?あ、明銭」
明の時代の銅銭。
倭寇の主な戦利品だ。
「本当に凄いですね!予想された場所にちゃんとありました!」
琴音は笑う
「しかし、生き物が変にいないのとか気になります。だから酸素濃度も測っていたのですが……」
すると
持っている濃度計からブザーが鳴る。
「!!!???瑞希!!!マスクを被りなさい!!!」
「はい!」
瑞希のマスクを付ける手伝いをしながら、自分も急いで酸素マスクをつける。
そして改めて濃度計の数字を見ると、極端に酸素濃度が減っていた。
(瑞希!帰りますよ!)
(うん!宝は?)
(私達には不要です!)
ボンベを付けたまま会話をし、そのまま海に戻った。
旅館に戻った2人。
「お姉ちゃん、なんだったの?」
「分かりません。あの宝が降りてきたから酸素濃度が減ったのか、それとも一定時間いたら酸素濃度が減るほど狭い空間なのか、はたまた、潮の満ち引きに左右されるのか……」
琴音の予想は最後だった。
でなけれは、あの生き物の少なさは説明出来ない。
「ある特定の時間でなければ死ぬトラップだったんですかね?色々不思議です。でもあのドクロはフェイクでしょうしねぇ」
「謎がいっぱいだね。お姉ちゃん」
「はい。でも、宝はそこにあった。予想が当たったから満足ですよ、わたしは」
「うん!良かった!」
2人は仲良く旅館の料理を食べていた。




