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探偵はステーキハウスで高笑う

早森琴音と早森瑞希は悩んでいた。

「どこがいいですかねー?」

「うにゅう。ハンバーグが多いのがいいなぁ」


瑞希が来てから、今までのデリバリーだと塩分の取りすぎが心配になり、栄養士が管理するという触れ込みの宅配弁当に変えたのだが


「こんなに種類があるとは思いませんでした。色々試して、納得のいくところに決めましょう」

「うんうん」


宅配エリア対応可能な場所だけで10種類もある。

基本は美味しいのだが

「なんか、きゅうしょくみたいでやだ」

と瑞希が言うので、色々試していたのだ。


「わたしはご飯にこだわりはありませんが、栄養は考えるべきですね」



日曜日。依頼も無いので、二人はいつものように調べ物をしていたのだが

「瑞希、たまには運動しないといけませんね。今日はこのあと公園に行きますか」

「うん!いいよ!」

二人は仲良く公園に向かう。


「瑞希はなにか好きなスポーツとかあるのですか?」

「うーん……あんまり好きなのないなぁ。サッカーはよくやらされるけど」

「身体を動かすと脳の動きも良くなります。たまには良いものですよ。あ、鉄棒がありますね。やりますか」


二人は鉄棒で遊んだり、シーソーで遊んでいたりすると


「……あれ?早森君じゃないか」

中年の男性が声をかける

「あ、せんせー」

「こんにちわ。瑞希の学校の先生ですか?」

「ええ。鈴原と言います。瑞希君のご家族ですか?」

「はい。姉です。鈴原先生ですか。瑞希から聞いたことがあります」


「そうですか、そうですか。瑞希君の事は長い目で見守ろうと思うんですよ。学校のことでなにかあればすぐ連絡をください。でもね、あなたとの笑顔を見て確信しました。学校での事は気にしないでください。必ず教育するべき時が来ます」


「なにもかもご存知のようで有り難いですわ。瑞希への教育方針には感謝していましたの。大切に触れてくださるようで。是非これからのそのような大きな、暖かな目で瑞希を支えて下されば」


鈴原は、学校で孤立している現状は気にするなと言って、琴音はそれに対して感謝をしていた。


「瑞希、学校での困り事があれば鈴原先生に頼みなさい。この人は頼りになります」

「うん!分かった!」


「ありがとうございます。うん。良い笑顔だ。急がなければ、その笑顔はみなに向けられます。教育にもっとも必要なものは忍耐なのです。急いですべてを詰め込もうとするのは自己満足です。瑞希君、ゆっくりでいいんだ。なにか困ったらすぐ来なさい」


そう言って鈴原は去った。


「ことね、あの先生はね。ぼくにちょっかいかける先生を止めてくれたりしてるんだー」

「瑞希、あの教師は優秀です。バカな教師など相手にせず、なにか困れば鈴原先生に言いなさい。解決してくれるでしょう。しかし幸運ですね、瑞希。ああいうマトモな教師はあまり会えないものですよ」

「うん!分かった!」



二人はそのあとショッピングモールに行った。

「洋服とか余分に買っておきましょう」

琴音は洗濯もしない。全部宅配クリーニングに出していた。


そのため、余分に服を買っているのだが

「瑞希、なにか好きな服ありますか?」

「とくになーい」

「そうですよね、私もそうですし、適当に選んで貰いますか」


子供服専門の店に行く

「あれ?琴音。子供服とかあったお店あったよ」

「ああ、瑞希。あれは量販店で、自分達で見つけたり出来るならあそこでいいのですが、私達みたいに人に選んで貰うならば、ちゃんとそういう店に行かないといけないのです」

「なるほどー」


「いらっしゃいませ」

二人は高級そうな店に入ると

「この子の服一式を5着ほど見繕みつくろってほしいのです。予算は五万円で」

「まあ!分かりました。どういったシチュエーションの服ですか?」

「はい。余所行きの正装一着、普段着三着、部屋着一着」


「そうですか、とりあえず色々バリエーション揃えますね、そこから選びましょうか」


店員と琴音は楽しそうにしながら、色々選んでいると

「ことねー。おなかすいたー」

瑞希は飽きたように言う。


「あら、時間が経つのが早いです。人の服を選ぶのは楽しいのですね」

「ええ。わたしもそれでこの職業ですよ」

笑う店員。


「瑞希、ではここまでにしましょう。店員さん、今選んだもの全てください」


「予算を少しオーバーしますが」

「かまいません。また来ますわ」

「ありがとうございます!」


「あの店も良いですね。また行きましょう」

「ハンバーグたべたーい」

「ええ。そうしましょう。ステーキのお店がありましたね。そこで食べますか」



「ハンバーグおいしー」

「はい。このお店も良いですね。今日はストレスが無いですね。優秀な人達ばかりだと良いのですが」


すると

「無いじゃ済まないんだ!絶対に見つけ出せ!!!!!」

「し、しかし、ですね、あれだけ探して出てこないのですから……」

「しかし、じゃない!出てくるまで社員全員で探し尽くせ!!!」


溜め息をつく琴音

「バカはどこにも湧きますね」

「こんなお店で大声出して恥ずかしく無いのかなー」

「本当ですよ。バカはそこから分からないからバカなんでしょうね」

二人は、バカバカ言いながらお肉を食べていると。


「なんだ!そこのガキ!バカとはなんだ!」

あまり大きな声で話していたわけでは無いのだが、聞こえたらしい。


琴音は溜め息をつくと

「バカだからです。こんな店で騒がないでください」

「お前に何がわかる!我が社の大切な書類を、こいつの会社が無くしたのだ!」

「そんなのステーキハウスでしなくていいでしょうに」

「腹が減ったらなにも思いつかんのだ!」


「ああ、それは分かります。で、そこの人。無くしたシチュエーションを教えてください」

「え?え?」

「うるさいから黙らせますよ。私は宝探しのプロです。話を聞くだけで場所は分かりますわ」


「宝探しのプロ!?なんだそれは?」

「あなたに言っていません。それで、どこで預かって、どこで見失ったのですか?」


「ええっと、受け取ったのは、たしか……」

「たしか?」琴音は怪訝な顔をする。

「お前の会社の応接室だ!何度も言ったろう!」

「す!すみません!はい。応接室です!」


「それで、いつまで認識して、いつから無くなったと?また移動させた認識は?」

「え、ええっと、多分……」

「多分?あの、あなたが預かったのでは無いのですか?」


「いや、こいつに渡したのだ!間違いない!それが無くしたと言い出して……」

「普段からこんな感じなのですか?」

「ああ。まあそうだな」


「だったら簡単ですよ。応接室に置きっぱなしでしょうね」

「は!?はあ!?こいつは会社をあげて探したと」

「こんなあやふやな答えをする人を信じてどうするんですか?多分会社に伝えた内容があやふやで、全然違う書類探していると思いますよ。いいですか、単純に、何月何日に使用した応接室に置きっぱなしの書類無かったか?と聞けば良いんです。今会社に電話されればいい」


「は!はい!」

その男は電話をすると

「あ、前林です。あの、応接室に置きっぱなしだった書類の行方って分かる人は…あ、佐藤さん、そう佐藤さんに代わって……あ、佐藤さん、この前使った応接室に置きっぱなしだった書類」

「日付を言うべきですよ」

「10月7日だ」

「じゅ、10月7日に使った応接室に置きっぱなしだった書類ないかな…え?書類置き場に?そこに封筒ある?あ!そ、それだ…うん。宛先は……」


「ほ、本当か……バカなのか…」

怒鳴っていた男は頭を抱える。

「曖昧な解答から気付くべきでしたよ」

「そうだな。バカを変に信じたワシもバカだ。いや、怒鳴ってすまなかった。助かったよ」


「静かに食べられるならばそれで良いのです。それでは瑞希、デザート食べますか?」

「おごるよ。ワシも反省をした。頭ごなしに怒鳴るのではなく、ちゃんと冷静に聞かねばな」


前林に振り向くと

「あればいいんだ。怒鳴ってすまなかったな」

「こちらこそ、本当に申し訳ありませんでした」

二人は頭を下げあっていた。



揉めていた男二人は先に店を出た。


「バカが多いなぁ。ことね」

「悪いことをしましたね」

「うに?なにが?」


「あの怒られた人は、ああいう怒鳴るタイプに会うとパニックになるんでしょう。だから、あんなに解答が曖昧だった。これを機会に見放されて、離れれば良かったんです。変に挽回してしまったから、まだ付き合い続けないといけなくなります」


「でも反省してたよ?」

「無理ですよ、瑞希、大人はね。変わりません。またあのおっさんは怒鳴るし、あの人はパニックになる」

琴音は溜め息をつくと


「バカには関わらない。それがお互いの為なのです。今回みたいに、悲劇を長引かせてしまう。瑞希、先ほど会った鈴原先生とよく相談してうまくやりなさい。私は人の不幸など気にもしませんが、わざわざ不幸にする気もありません」

「うん」


「瑞希、私達はね。異常なんですよ。異常者なんです。だからね。それに相応しい過ごし方があります。気をつけましょうね。お互い」

琴音は笑いながら、瑞希を抱きしめていた。

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