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探偵は弟子の前で高笑う(前編)

吉野原准一は、家庭裁判所にいた。

強制認知調停で呼び出されたのだ。


准一はモテる。

寄ってくる女性をむげにはしない。

すぐ寝る。


そして、避妊なども最初しかしない。

その結果、准一は二桁を超える少女を妊娠させていた。


年齢的に結婚も出来ないし、本人もする気はない。


おろす事を進める親も多かったが、少女全員

「准ちゃんの赤ちゃんは産みたい」

と拒絶。


その結果

「責任とってくれ」

と親から要望が舞い込みまくり、認知調停の裁判だらけとなっていた。


「准ちゃん、ごめんね。お父さんがね、どうしてもって。嫌いにならないで」

「嫌いになんかならないよ。僕が悪いんだから」

にこにこする准一。


当人の少女たちは准一を慕ったままだ。

なので、准一は調停後に、またこの少女達と寝たりもしている。


反省などしない。

准一にとっては別にどうでもいいのだ。



未成年との淫行は、条例に違反する。

例え相手が未成年でも実は適用されかねない条例なのだ。


親の一部はその条例を持ち出し、警察に相談したりもしたが、准一の立場もあり、一つも通らなかった。


未成年と未成年の性交で条例違反という前例など殆どないという理由で。


だが

「あのね、准一。いくらなんでもだ。19人孕ませるのは無しだと思うよ」

署長が溜め息。


「自分で自覚してますよ。病気ですね、これ」

「本当にそうだ。いろんな意味で治療しなさい。いくらなんでもここまでやれば目立つ」


警察は准一の存在を隠したがっていた。

殺人事件の推理の天才。


その場にいなくとも犯人と犯行を当ててしまう。

警察は彼を頼り、実績としてもかなりな成果を残していた。


だが、高校生に推理を任せるというのは非常に世間体が悪い。


准一は警察の秘蔵っ子だった。

その秘蔵っ子がおんな孕ませて問題になっているのだ。

署長はいつも頭が痛い。


「准一は他は真面目なのにね」

「僕は女の子を妊娠させないとまともな推理が出来ないんですよ」

「バカ言え」

溜め息。


「せめて、避妊はしろ。ピルとかなら融通したろ?」

「ええ。何回か有効利用しましたよ?」

にこにこする准一。


「まあ、でも調停も飽きました。流石に自粛しますよ」

=====================



「私はね、殺人コーディネーターであって、殺人はしません」

「では、殺人が出来るやつを呼んでやりたまえ」

横柄なクライアント。

風村は、今回の依頼を断る気でいた。


「あくまでもその偽装工作をやるのです。手配もしません」

目の前の人物は、製材会社の社長。規模は中小企業と呼べる程度。


風村は大手上場企業の会長ともやりあっている。横柄な依頼人には慣れっこではあったが、この依頼には問題があった。


(なにをどうやっても、依頼人への疑念を晴らすのは不可能だ)


依頼人、仲野真一は土地の買収をしようとしていた。

だが、その地権者は徹底抗戦。

絶対にその値段では譲らないと、家族が団結し抵抗していた。


その土地には、仲野の工場から排出された廃棄物が不法投棄されていた。

最近になって、その廃棄物の中に仲野の工場由来なのが分かる証拠も出てきてしまったのだ。



まだ地主は役所に訴えていない。

その証拠を突きつけて、交渉しているのだ。


土地を買い取っても、例え自分の土地であろうとも、不法投棄は不法投棄である。

バレれば大変な事になる。


その口止め料も含めて交渉していたのだが、ケチな仲野は、相場の二倍程度しか提示しなかった。

その結果が今。



「私に頼むぐらいなら、その地権者にもっと払うべきです。その方がいいですよ。殺人依頼なんていくらかかると思うんですか?」

「いくらだ?100万でも足らんのか!?」

「……いや、それ、私の依頼料にもなりません」


ダメだこりゃと天を仰いだ。

=====================



「准一、殺人事件だ。容疑者はいるのだが、風村と接触している。推理してくれ」

署長が准一を呼び出す。


早速真剣な顔で書類に目を通す。

だが


「うーん」准一は頭をかくと


「風村は依頼を断った。なので、容疑者は仕方なく自分でやった。だからこんな、ウンコみたいなアリバイ工作をやらかしてる。以外に正解なんて無いんじゃないかな?」


「風村の仕事ではないと」

「容疑者と接触したんでしょ?なら、基本は容疑者が疑われないようにやる。でも風村がこんなバカな工作する訳がない。次、犯行は違う誰かで、容疑者が全て被ったように見せかける。しかし、だとすると、あまりにも工作が幼稚すぎる。どちらにせよ、有り得ない」


「風村の仕事ではないよ。あの容疑者は本物」

「ありがとう、准一」


准一は外に出て欠伸をする。

「最近面白い事件ないなー。暇だし、ナンパしようかな?」

=====================



「へー。それは凄いねぇ」

「でしょ!マジなん!」

あっさりとナンパに成功した。

相手は、准一好みの、長髪の少女。


しばらく談笑していると


「おや?」署長から電話


「どうしました?」

『いや、ごめんよ。実は容疑者の仲野が、風村に殺人教唆されたと供述していてね』

「はあ?」間の抜けた声

『一応、話は聞かないといけないんだ。准一も立ち会うかい?』

「もちろん。いつですか?」

『これから連絡とるんだ。おって連絡する』

「必ず行きますよ」


電話をきり溜め息をつく。


「まあ、いいや。それよりもさぁ、パフェ食べ終わったら買い物行かない?」

「うん♪行く」

准一はナンパの続きをすることにした。

=====================



「馬鹿に関わったら、最悪か、それなりに悪いかの二択しか選べないのは辛いねぇ、准一くん」


風村は警察から連絡を受け即座に警察に来た。


「これは私達の事務所で使っている議事録です。証拠としては弱いですがね」


風村の表向きの仕事は、遺産、金銭関係のトラブル解決。

「今回もそれで呼ばれたのですがね、金払いが酷い。私に頼むぐらいなら、もっと地権者に金を出した方がいい。と言ったら、私の依頼料まで値切り始めまして。そこで話は打ち切りですよ」


「殺人教唆だそうだが」

「教唆が成立する会話をした記憶はありませんね。録音などの証拠も無いのでしょう?そもそも殺したって解決しませんよ」

お手上げをして。


「あの地権者達が死ねば、不法投棄の話は確実にバレますからね」




「んで、准一の判断は?」

「風村は断った。終わり」

「結論変わらずと」

「じょあ帰りますよ」

調書室では携帯を切っていたので、電源を付けると


「え!?琴音!?」

メールが来ていた。

「なんだろ、珍しい。セッ○スオッケーって話かな?」

開くと


『殺された名取家の親族は知らないか?』


「名取家?ああ、仲野に殺されたやつか。親族?なんだろ?」

署長室に行き


「署長、被害者の親族っているんですか?」

「ああ、いるよ。だが可哀想に、老人と幼子だ。家族会議で勢揃いしたところを狙われたからね。残ったのは、動けないお爺ちゃんと、その曾孫」


「なるほど」


『寝たきりお爺ちゃんと、その曾孫だって』

返信。

そしてソファーに座る。


「どうしたの?」

「いや、返信待ち」

「なんのこっちゃ」

会話していると


『紹介して』


「えーー」

いくら琴音のお願いでも無理なものは無理なことがある。

被害者の家族の紹介なんて、警察経由では無理だ。


「用件がわからないと、無理だよ、っと」

返信。すると


『あの山には宝がある。私は遺族に依頼をされて、行く準備をしていたんだ』

「な!?なに!?」

「どうした!?准一!?」


「署長!まずいかもしれない!あの山には違うなにかがある!推理のし直しだ!」

「な!なんだと?」


「琴音、会って話してくれ。紹介はする。必ず」

返信すると

『分かった。どこに行けばいい?』

素直だ。本当に重要な用件なのだろう。


「署長、会議室借りますよ」

「ああ」


「いつもの署で待ってるっと」


返信して、准一は溜め息をついた。

「話が面倒になりそうだなー」

=====================



琴音は風村からメールを見て、色々納得していた。

「ああ、それは焦るか」


准一の焦りはメールからもうかがえた。


今回のケースは色々面倒だなぁと思いながら、琴音は警察に向かった。



「まあ、分かりやすく言うとね、准一、あれは風村が絡んでる」


「まじかー」

頭を抱える准一。

「ただし、詳細は知らない。それと、名取の仕事は私に直接来た。風村の紹介ではない」


「そっかー。それで、琴音は遺族と会ってどうするの?」


「依頼は成立していない。だが、聞くとあの山は産廃を抱えたヤバい案件になる。だから宝もあるぞとびっくりさせようと思ったんだけど」


「残念だけど、寝たきりお爺ちゃんと、六歳児だよ。びっくりしないんじゃないかな?そもそも産廃の話分かんないだろうし」

「がっくり」

琴音は心の底から悲しそうに机に倒れ込んだ。


「准一は風村との推理合戦でしょ?わたしはそれでも遺族に会ってくるよ」

「いや、僕は今回は早々に白旗だ。風村の仕事だと考察しても全然分からないよ。僕は風村が関わってないに全賭してたしね。琴音につき合うよ。どっちにしろ単独では会えないからね」


「まあいそぎよい。じゃあ行きましょうか?明日とかでもいい?」

「分かったよ。よろしくね」



翌日

「失礼します。早森琴音と申します!本日は、亡くなった皆様のご意志により、依頼を果たして参りました!」

琴音は元気よく挨拶するが


「…………」

お爺ちゃんは放心状態。

息子達が全員殺され、残されたのは寝たきりの自分と孫一人という事実に、完全に心が折れた。


「くー。くー。」

そして、少年は一人で寝ていた。


「不用心すぎない?」准一。

鍵が開けっ放しだったのだ。

「デイサービスが出入りしているのでは?今はたまたま席を外しているだけで」

「ああ、なるほど」


「起きるまで待ちましょう」


その後デイサービスの人が来て、色々話をすると


「お爺ちゃんは介護施設に、この少年は……」

「施設でしょうね」

少し悲しそうな顔を浮かべる琴音。


「そうだね。僕と琴音の子どもって事で養ってもいいけど」

「はいはい。……あ、起きましたね」


「うにゅ。誰だー。お前らー」

「はい!私は早森琴音と申します!隣にいる脇役は名前を憶えるだけ無駄ですので省略します!今日はあなたのお父さん、お母さんの依頼を果たすために来ました!」

「おーー!!!すごい!!!お願いします!!!」


なんかノリの良い少年。


「はい!ではこちらを見てください!依頼は宝探しです。山に宝が埋まっているのです!」

「ねえねえ、宝って、おもちゃ?キラキラのおもちゃ?」

「キラキラですよ!ピンピカ!キラキラ!」

「いえええええ!!!!」


「……なんだ、この子」

准一はこのノリについていけない。

あと、琴音が随分優しい気がする。


「見に行きますか?」

「うん!行く!行く!」


「え?今から行くの?遠いよ?」

「タクシーですよ。私は金はいっぱいありますから」

「タクシーのりたーい!」


「ええーっと」

「わきやく、いっしょにきていいぞ!」

「ああ!もう!なんだこのノリ!」

結局准一も同行することになった。



「すげー!本当にキラキラだ!ヤバイ!カッコイい!」

「はい!当然です!わたしにかかれば宝探しなんて楽勝ですよ!」

琴音は楽しそうに高笑いしていた。


「ことねー。見つけたらかえろーよ。彼六歳なんだから、急いで帰らないと寝る時間だよー」准一が疲れたように言うと


「さすが准一です。そうですね、帰りましょう」

「わきやく、良いこと言うな!」

「ああ、はいはい」



タクシーの車中

「ひさしぶりに気分が良いです」

「それは良かった」

少年は寝ていた。


「准一、あなたなら風村がなにをしたのか、そろそろ気付いた筈です」

「ああ、やっと気付いたよ。あれは全部が仲野の犯行じゃないんだな」

「だと思います。まあわたしは深く考えてませんから」


「しかし、あれだ。僕はまだかなわないなぁ」

「イレギュラーですよ、あれは」

そして

「あと、さっきの話面白そうですね」


「うん?さっき?」


「ええ。前向きになりました。この子は面白い」


「???」

クビを傾げる准一。


タクシーが少年の家につく直前


「え?もしかして、僕と琴音の子どもが彼って話?」


「相手は私でなくてもいいですが、彼が施設は悲しいですね。苛められますよ。こんな性格」

悲しそうな顔をすると


「ああ、叔父貴を結婚させてでもいいですね。相手は金積めばなんでもいい女が一人ぐらいいるでしょう」


「ま、待って、僕がいいなぁ。琴音」

「まあ、少し考えましょう」


琴音は慈愛の眼差しを送り

「この子はきっと風村や准一、私のような人間ですよ。ぶっ壊れている。施設や学校にはそぐわない人間です」

そして


「わたしの弟子にしようかと思います」

琴音はにっこりと笑った。

結局風村はなにをやったのか、なぜ少年だけ残されたのか

などの謎の解明は次回以降の話となります。

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