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探偵は同じ顔の前で高笑う

吉野原准一は、最近お気に入りができた。


「じゅんちゃん。一緒に帰ろう?」

校門の前、准一の通う学校とは別の制服を着た少女が待っていた。


周りの視線が厳しいが、そんなことも気にせず

「ああ。スミレ、帰ろうか」

准一はスミレと呼んだ少女の手を取り一緒に帰った。



「じゅんちゃん。今日はどこ行く?」

「カフェ行こうか。パフェ食べる?」

「うん♪」


2人はべったりくっついて歩くが、2人とも容姿が優れているせいか、羨望と嫉妬の眼差しを向けられている。


そんな中

「……?」

突然准一が立ち止まる。


目の前にはボサボサ髪の少女と、髭を生やした中年の男性。


すると准一は

「いや、ごめん。行こう」

「う、うん」

2人は手を繋いで立ち去った。



「じゅんちゃん。ここ、美味しいねぇ」

パフェを美味しそうに食べるスミレ。

「美味しそうに食べるね。うれしいよ」

にこにこする准一。


「じゅんちゃん、土日空いてる?」

「ごめん、土日は仕事で警察行かないと」

「大変だね。今度ね、おじいちゃんとおばあちゃんに会って欲しいの。だってね。赤ちゃん出来てから挨拶じゃびっくりしちゃうでしょ?」


「うん、警察に行かなくて良い日もたまにあるからそのとき伝えるよ」

「うん♪」

横に座っていたスミレは准一にすり寄って


「じゅんちゃん、きょう、このあと、いこう♪」

「いいよ」

スミレの頭を撫でて、准一は微笑んだ。

=====================



「なんだあれ、幽霊か」

気味悪そうに言う風村。

「好きな男に気に入られる為ならばなんでもするんでしょうね」

琴音はことなげもなく言う。


「そこまでやるもんかね…」

「彼女にとっては准一は宝なのでしょう。なにをしても得たいのかと」

琴音は微笑んで

「私としては全然オッケーですよ。いっそ結婚しねーかな?と思いますし」


「結婚ねぇ……そう言えば准一君は子供何人いるんだ?」

「強制認知の訴訟を三件抱えてるのは知っています。調停考えたら何件あるんですかね?」


「……まだ17だろ?彼」

「知り合って1年半ですけど、毎月彼女変わってるから、15人ぐらいは孕ませてるのでは?認知は未成年でも出来ますからね」


「……警察に雇われてるんだから、誰か教育しないのかね?」

「だから、悪いんだと思いますよ。准一は警察みたいなモラルでガチガチなところで仕事してるから、あんなにも自由に憧れてるんです。その結果が女孕ませるのに繋がる理由はさっぱり分かりませんけど」


「よく殺されないと、感心するよ」

「殺しませんよ」蔑む表情を浮かべて


「准一のテクニックの虜になってるわけですから、殺したら出来ないじゃないですか。認知訴訟で争っている娘とも、普通にやってるみたいですし」


呆れたように言う風村

「お互い幸せなら、それで良いんだが」


薄く笑う琴音

「5人が自殺してるから、葛藤はあるんでしょうけどね」

=====================



「じゅんちゃん、これで、赤ちゃんできたかな?いっぱい出してもらったし、きっと大丈夫だよね?」

「ふふふ。なんでそんなに心配なの?」

「だって、ずっとしてるのに、この前も生理だったの」


「僕は基本的に子供で悩むことないから」

そして薄く笑うと

「身体の相性が悪いのかな?」

「そ、そんな」

「それか、スミレの身体の問題かな?」

「……わ、わたしの…」


「赤ちゃんできたら、認知してあげるし、すみれの肉親にも挨拶するよ。だから頑張るんだよ」

にこにこして


「ああ、念のため言うけど、他の男漁ったら捨てるから」

「し、しない。しないよぉ……」スミレは泣きながら

「……で、でも。なんで、出来ないの…?」



スミレは深刻な顔で産婦人科から出てきた。

「なぜ子供が出来ないのか?私の身体に問題があるのか?」

と聞きに来たが、当然

「そんな欠陥はない」だった。


「身体の相性?じゅんちゃんは他の娘とは赤ちゃん出来てるし…」


なにをやってでも准一を手に入れたいと、最終手段まで行って、手に入れたのだ。

後は赤ちゃんが出来ればいい。

そうしたら、認知も、結婚もしてくれると言うのだ。

後はスミレの問題。なのに


「なんでぇ…?なんで…出来ないのぉ…?」

スミレは道端で泣いていた。

=====================



所長室に呼ばれる准一。

週末に行われた殺人事件の推理をしていたのだが

「そう言えば、最近いつも来ていた女の子を今日は見ないね」

「ああ、そろそろいいかなと思いまして」

「そろそろ?」

「ええ」


「所長、遠藤一郎、桃花夫妻の殺人事件、その犯人の逮捕状を出す準備をしてください。明日出頭させます」



その日の夜、准一はスミレに連絡し、明日なら空いているから挨拶してもいいよ、と伝えた。


少しため息をついて

「うーん。もうちょっと遊びたかったけど潮時だよね」

=====================



その日、不機嫌な琴音を引き連れて准一はスミレの家に着ていた。


「なんでお前がいるんだ」

「いやー。運命の神様っているんだなーって」

にこにこしながら准一が話す。


「この家でしょ?琴音の依頼人」

「准一が手を回したのか?」

「いやいや、ほんとうに偶然。僕はここの孫娘に会いに来たの。ほら、一回会ってるでしょ?」

「誰の事だ、心当たりが多すぎる」


「会えば嫌でも思い出すよ」



そして

「じゅんちゃん!いらっしゃい!あのね!お祖父ちゃんは他のお客さん来るから……え?」

スミレの顔が凍りついた。


「なるほど。嫌なのを思い出した」


「じゅ、じゅんちゃん、こ、このひと…」

「知ってるだろ?僕のポケットの写真を参考に顔を作り替えたんだ。彼女が、君のオリジナルた」


まったく同じ顔をした、琴音と、スミレ。


スミレは顔を作り替えた。整形で。

准一に取り入るが相手にされない。


ある時、准一がポケットに入れた少女の写真を見つけ、なんとなく探るうちに、あの顔が好みだと知った。そして整形した。



「整形しただけならばまだ良いんだけど」

憂鬱気に琴音は髪をかきあげると

「刑務所に送り込むぐらいなら、責任とって結婚しろよ」准一を睨む琴音。


「あ、全部分かっちゃうんだ」

「こんな名家の両親がそんな無謀な整形許可するわけないでしょ」

ため息をつき


「依頼人の息子夫妻が亡くなり、自分達も老い先短い。一人残った孫娘に遺産を残してあげたい。そのために昔、先祖が残した宝物をさがして欲しいって依頼だったんだけど」


「いやー、泣ける話だ」


「実は娘が両親殺してました。理由は惚れた男と結ばれる為です、とかさ。私の依頼理由が無くなって仕事無くなるから。准一が責任とって結婚という形で全部おさめろ」


「いや、子供できたら諦めようと思ったんだけどさ」

二人の会話の前に沈黙していたスミレの目が見開く。


「……わ、わたし、が、あか、ちゃん、が」

「スミレさん、この性悪グズゴミ男の口車に乗ってはいけませんよ。そもそも付き合って3ヶ月で、出来る、出来ないの話するのがおかしいし、おおかた、行為の後とかに後ピル飲ませてるんですよ。こいつ本当にウンコですからね」


ウンコ呼ばわりして、准一を指す琴音。

准一はほがらかに笑って


「ああ、さすがに琴音は騙せないか。だってさ、あんな適当な殺人がバレないわけないじゃん。刑務所行くのに妊娠と言うのも辛いかなぁと思ってね」


「現に3ヶ月ばれてないんでしょ?」

「いや、日本の警察の行く末が心配だ。そら、こんな高校生に頼るよね」

笑う少年。


そして

「スミレさん、殺人はこのゴミウンコに教唆されてやりました、とか証言してくれません?しばらく私が平和になります」 


すると

「じゅ、じゅんちゃん、ぴ、ぴるって、本当?」

「うん、ごめんね。理由はさっき言ったとおりだけど」


「じゃ、じゃあ。出てきたら、赤ちゃん産んで、いい?」

「いいよ」

「うん♪分かった♪自首するね♪」

「待って、意味分かんない」

呆れた顔をする琴音。


「わたしが悪いの。ちゃんと償えば、じゅんちゃんの赤ちゃんできるの、だから大丈夫」


琴音は「なに言ってんだ、こいつ」という顔をしながら

「まあ、自殺されるよりマシです。お幸せに」


そして家の中に入る。

「准一、警察はまだにしてください。私の依頼が終わってからね」

「うん、スミレとセッ○スして待ってるから」


「スミレさん、気が変わってこいつ殺しません?」

=====================



琴音は依頼通り、屋根裏部屋で宝を見つけ出し笑っていた。

上機嫌のまま玄関に戻ると半裸の准一がいた。 


「露出狂、逮捕されろ」

「いやいや、屋内だから」

本当にしていたらしい。


「琴音がいなかったら、自殺に誘導しようと思っていたんだ。懲役も辛かろうと思ってね」

「死んだ5人、みんな、あなたの為に殺人をしている」

「殺人とは凄いものだよ。まともな人生が送れなくなる」


准一はスミレの部屋を見上げて

「まあ、あそこまで狂ってたら大丈夫かな?ってね」


「あの顔はあのまんまですか」

「帰ってくる頃には崩れてるよ。整形とは繊細なものでね。既に僕から言わせると、綻びが出てきてる」


准一は伸びをして

「琴音とデートしてる気分が味わえてよかったんだけどなー。また整形してくれる女の子探すかな」


「私に良いアイディアが」

「お、なに琴音?」

「あなたが私の顔になれば良いんです。そして鏡を見て自分に絶頂するのが、一番世界平和のためになりますよ」

「なるほどー。検討するわ」


そして

「琴音はそっくりさんに嫌悪感とかないの?」

「ありませんよ。容姿にこだわりはありませんし、顔のそっくりさんがいようが、私は私」

琴音はにっこり笑って

「むしろ同じ顔に申し訳ないと思いますよ。なにしろわたしは」



「そいつが死のうが、その横で高笑うぐらい、性格が最悪ですから」

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