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探偵はコーヒーショップで高笑う

早森琴音は基本的には事前調査で、依頼人が求めている宝の位置を把握する。


地図や家屋の見取り図があれば、そこから想定するが、そうでないケースも非常に多い。


図書館や資料館で手にはいるならば琴音本人。

ネットで手に入るならば山本美香にお願いする。


しかし、それすら入手困難なら?

その場合に、事前に現地に行き探索と情報収集の確認をお願いできる人物がいる。

それが市川和夫だった。



「おお、琴音ちゃんからの依頼か」

砦の宝探しの時に重機を運転していた和夫。

彼は、一人親方と呼ばれる建築業作業者だった。


琴音との出会いは、風村からの紹介。

信頼できる人物と琴音に紹介したのだ。


和夫は娘のような琴音を溺愛しており、彼女の依頼には必ず応えていた。


メールを見ながら

「うーん。また凄いところだな。まあいけないことはないか…お、もう振り込み来てるな。早いなぁ相変わらず」


ネットバンキングで残高を確認する和夫。

風村探偵事務所から依頼の前金が振り込まれていた。


和夫はそれなりに忙しい。

いついけるかも分からない。

だが、それでいい。いけるときに行ってくれ。と琴音は毎回依頼と同時に前金を渡していた。


「まあ明後日空いてるから行きますか」



和夫は車で指定された場所に着く

「……これは酷いな」

まともに立ち入ることもままならない。


ここは廃集落。

今から30年前に、住民がすべて立ち去った、山間の場所だ。


「30年でこんなに崩壊するもんかね…家屋跡なんて分かりやしない」

カメラで周辺をとり、メモをとる。


「……だよな。おかしくないか。たかが30年だぞ?家屋跡ぐらいあるだろ?場所違うのかな?」


琴音からの指示と見合わせるが、間違いなくここだ。

問い合わせようかとも思ったが、ここは携帯のエリア圏外だ。連絡も取れない。


「いや、まて。これは道で…うん。集落の跡だ。場所はいいんだ。家屋跡が不自然にないんだ」



クビを傾げながらも、ひたすら写真とメモを撮る。

家屋跡らしきものは全く見つからない。

ちらほらと道の跡などは見つけていたが

「あ!!かまど!」かまどを発見した。錆びているのか、黒茶色になっている。

「やっぱり集落はあったんだろうな。しかし…」

人工建造物があまりにも少なすぎる。


周りを見渡す。

見慣れない草花が多く生えていた。

気になるので何枚か写真を撮る。


「うーん、これでいいのかな?まあダメならまた来ることにしよう」

和夫は暗くなる前に見切りをつけて戻った。



学校の図書室。

琴音は和夫から提出された資料を並べながら頭を抱えていた。


「あ、あぶな……」

琴音は、その写真と情報で、ここになにがあるのかの把握は出来た。

しかし


「和さんに後で謝ろう。下手をしていたら…」

独り言を言うと


「また綺麗な写真ね?風景写真?」

図書室を管理している根尾先生が来る。

「綺麗……」琴音はクビを傾げると


「先生には、この景色が綺麗に見えますか?」

「ええ。田舎なのかしら?自然豊かで素敵ね」

その写真には生い茂った草花が写っていた。


「自然豊か……」

琴音は意表をつかれたように、写真を見返していた。

「早森さんは綺麗と思わないの?」

興味深そうに教師は聞いた。すると



「わたしは、こわいです」



琴音は風村といつものコーヒーショップで会っていた。


「空振りです」

琴音は資料を投げる。

「また珍しい。どうしてだい?」


「宝を探してると思って色々調べたら、そうではなかった、と。まあたまにはそんな事もあります」


「和さん動かした件か」

苦笑いする風村。


「よくある廃集落。集落があった事実は地図やらで確認できました。ただ、現状が分からなかった」

琴音は淡々と言う。


「ここに探し物らしく、なんども出入りしているのが、御堂光一さん。なにを探しているのかと気になり、調べ始めたのですが、ネットによくいる、廃墟マニアもここは入っていない。本も同様です」


「廃集落なんて、いくらでもあるし、全部を網羅するわけがないから、そうなんだろうな。と私も深く考えず、和さんに探索をお願いしました。これがその写真」


「……?集落跡地?家屋の跡がどこにもないぞ?普通はなんかしらの跡は残るだろ?」


「和さんが見つけたのは道や、かまど。辛うじて、ここに集落があったのでは?ぐらいはみつけましたが、肝心の家屋の跡がありません」

琴音はため息をつき。


「ここまで無いのは不自然。出る時に焼き払ったんでしょうね」

「ふむ。しかし、それにしても……」

違和感がある。



「御堂光一氏のお父様はこの村に関わりがあった。住んではいなかったようですが、わたしは、氏のお父様がこの廃集落跡地になにか宝を隠していて、光一氏はそれを探していたのかと思ったのです」


「違うのか」

「探していたわけではない。取りに来ていただけです」


天を見上げる琴音。



「一面に生えているこの草花、全部ヤバいやつです。誰もいなくなった集落を家屋ごとすべて燃やして、そこに目的の植物を栽培した。あまりにも整然と畑のようにすると、ばれるとヤバいから、自然な感じにはしたんでしょうが、違和感はでますね。和さんもわざわざ何枚も草花を撮ってきてる」


「大麻ぐらいは可愛いものですが」

写真を指差し

「コカインの原料のコカ、モルヒネがとれるアツミゲシ、アルカロイド・デバインが取れるハカマオニゲシ」

顔が引きつる風村


「そっち系だけじゃないですよ。トリカブト、ドクウツギ、ドクゼリと、日本三大有毒植物制覇。他にもイチイとかもいるし。まあ多いのは栽培が禁止されているやつですね。まあ、よくこんなに集めたなぁと感心するのと、こいつらよくまとめて育てられるなと」


「気候がちょうどいいのか?」

「このあたりは、山間でもあんまり寒くならないからですかね?なんかの奇跡な気もしますが。そんな手入れしなくても、ちゃんと自生するんだ。と感心します」



「御堂光一氏にばったり会ってたらどうなっていたか?口止め料とかではないんでしょうね。殺されていたかもしれない。和さんに申し訳ないですよ」



そして、思い出したように

「この写真、私の学校の先生が見て、自然豊かで綺麗と言いまして」


「綺麗、か」


「意表をつかれて驚いたんですが、綺麗かも知れませんね。最初は恐ろしかっただけなんですが。毒と麻薬に囲まれた集落跡地。確かにそう思って見ると綺麗かも知れませんね」


琴音は笑いながらコーヒーを飲んだ。

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