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請負人 「翔」  作者: 超月 聖
6/8

それがあたしの人生

物語への介入部分を削除しました。

まだ早い。

アスファルトの道から、生け垣にこそりと忍び込んだ。

(ここ、涼しくていいなぁ。)

そう思って、ふと見ると、そばの駐車場にこの家の主が、車で入って来た。

あたしは、そのままそいつを見る。

 

しかし、その車から降りた人間は、あたしを見て「にゃあ。」と言って家の中に入っていった。

(変な奴。)あたしはそう思いながら、此処に留まる。


「庭に、お客さんが来てるよ。」家の中から声がする。

 すると、カーテンが少し開き、その間から女があたしを見ている。

 でも、直ぐにカーテンの奥に消えた。

(ここにいてもいいって事かな?)

(ん~、やっぱ移動しよう。)

 日頃の経験から、同じ場所に居続けるのは駄目だと学習していた。

 そう思い、居心地のいい場所から移動することにした。


 隣の家の前で立ち止まり庭を見る。

(ん~。人工芝はやだな。)そう思って次の家の前に行く。

 

(庭が狭いや。)庭のほとんどが駐車場になっている家を見て思う。


(やっぱ。さっきの家の生け垣に戻ろうか?)と思い後ろを見ると、カーテン越しにあたしを見ていた女が、道に出てあたしを見ていた。

(まずい。)

 あたしは、近くの草むらに走り入った。


「あ~。逃げちゃった。」その女が言葉を発したが、あたしは逃げ切った事に満足した。


 誰も追って来ない事に安心して、あたしは毛づくろいを始めた。

 自分の身体をぺろぺろと舐めて、身を清めるのは大好きだ。

 あたしの匂いが、あたしを包む幸福感を感じる。


 その夜、不思議な夢を見た。

 人間のあたしが、誰かに怒られている。

 でも、怒られている内容が、あたしには関係ない事だった。

 言い訳をすると、更に別の関係ない内容でののしられた。


(何だろう、この理不尽。)

 あたしは、それでも、この仕打ちを我慢した。


 しかし、次の日も同じ内容でののしられる。


 でも、仕事が無くなる恐怖で、あたしは貝になる。


(あたし、何も悪くないよね。)

(なんで、あたしが怒られるの?)

(なんで?)


 そして、ある日、あたしは爆ぜる。



 あたしを罵っていた物が、赤い物を周りにまき散らして床に転がっていた。

 あたしは、手に持ったカッターナイフをそれに何度も打ち付ける。

(なんだ、これで良かったんだ。)


 そこに、男が存在した。

「あんた。誰?」



「遅かったか。」

「?」

「本来なら、君が道を外す前に来るはずだった。」

「君の魂に呼ばれたが、色々遅かったようだ。」

「すまない。」

(何だろう。知らない人に謝罪されてしまった。)


 


「君は転生する。」

「はぁ?何言ってるの?」

「君の魂がそれを望んだ。」

「判らないよ。」

「君の魂に、転生を望まれたが、今の君に確認できない状況になっている、だから君の魂の望みを優先させてもらう。」


自分の身体が暖かな光に包まれるのを感じた。

自分の暗い思いが浄化されるのを感じる。


「なんだ、こんなに簡単な事だったんだ。」

「誰も憎まない。」

「誰も敵と思わない。」

「誰もあたしと関係ない。」


 あたしの身体が、光に包まれる。

「ああ、気持ちいい。」




 ふと気づいたとき、目の前の箱にくぎ付けになった。


 目の前の箱には、御馳走がある。

「アジの骨に、イワシの骨と内臓。」

「やた、あたしの大好物。」

 獲物を狙う、目の前の他の猫を威嚇してその獲物を口にする。

 物陰に獲物を引き込むと、それを食べ始める。

「美味しい。」

 そう思いながら、獲物を食べる、

「そうか、それが君の姿か。」

 目の前の影が言う。

 ビクッとするが、敵意が無いので、そのまま獲物を食べる。


 そして、その姿が薄れていった。


「これでよかったの?」

 何だろう?、多分あたしの心が、あたしに問う。

「いいよね。」

「本当に?」

 更に問われる。

「しょうがないじゃない。」

「それが、駄目なんだ。」

「あたしの頭の中で、あたしが議論する。」

「でも、今は今日を生き帯びるのが精いっぱい。」

 


その言葉に、あたしは反論できない。

目の前の朝食を食べ終えると、お昼ご飯の調達に向かう。

そう、それが今のあたしのすべて。


あたしは、悪くないよね.

あたしのすべてを否定されたんだから。

あたしは、精いっぱい生きた。

何が悪かったんだろう?



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