乱暴なお客様
ティーポットからは、心地よいノイズが響く。
時間通りに通信は始まったが、5分経った今もノイズしか聞こえない。
「今日お帰りになる予定だけど、何かあったのかしら」
退屈なので、思いついたことをそのまま口にだすが、少し空しくなるだけだった。
私の名前は、チョコ。このお屋敷で住み込みのメイドをしている。
基本的には、館の清掃、買い出し、お客の接待兼腕試し、ご主人様達のお手伝い等を任されている。
ご主人様は二人居て、同列の立場に居る。お二人共、私の救世主だ。
一人が人食いのボーン様。私の名前を付けて下さった方で、細身で長身の少年だ。お客様が言う「ゲーム」とはボーン様の事だが、何故そう呼ばれているかは分からない。
もう一人が吸血鬼のビセラ様。私を見つけてくれた方で、赤い骨格の白い羽を持った背の低い少女だ。いつも笑顔でふわふわ浮いている。
お二人は幼馴染で、昔の友達を探している最中らしい。そのためお屋敷には私だけということもよくあり、今が正にそうだ。
「繋がってる?偽物じゃないよね」
「はい、繋がっていますし本物です」
ようやく、机の上のティーポットから声が聞こえた。
「これから戻るから、温かいお茶を用意しといてね。ビセラが凍えちゃってさ」
「承知しました。それと、目的の物はありましたか?」