第五話
ラッキースケベを入れるのに失敗したあたりでした、これは。
尿意を感じて秋森は目を覚ました。まだ暗く、目覚まし時計の針は二時頃をさしていた。和室を出て廊下に入ったところで、秋森は階段を降りる足音を聞いた。高梨新菜が降りてくるところだった。裾の長いタンクトップを着て、太股から下は何も着けていなかった。
「トイレ?」
高梨新菜が廊下に降りてきて言った。
「長くはかからないよ」
秋森の答えに、高梨新菜は微笑んだ。どこか彼女らしくなかった。
高梨新菜が先にどうぞと言ったので、秋森はトイレに入って用を足した。万年床に戻ろうとしたとき、高梨新菜が言った。
「私が先に死んだら、セインは怒るかな」
秋森は高梨新菜の顔を眺めた。両手を体の前で組み合わせて、遠くを見るような目をしていた。眠いだけかもしれないが、やはり彼女らしくなかった。
「俺にはわからないよ」
秋森はそれだけ言うのが精一杯だった。高梨新菜が声を上げて軽く笑った。
「そんなに簡単に思い出してはくれないか。おやすみ、秋森隆一郎」
秋森は、おやすみと返して和室に戻った。高梨新菜は何を言いたかったのだろうか。少しだけ気になったが、考えるだけ無駄だという気がして、秋森の意識はゆっくりと眠りに転がり落ちていった。二十年前の秋森なら、さっきの高梨新菜の格好だけで目を血走らせたかもしれない。秋森はもうそれほど若くなかった。