みては、いけない
ある満月の晩、とある山奥で、1人の男:木口仁基がピンライトを片手に獣道を歩いていた。時刻は既に深夜2時。こんな時間に、よりにもよって人里から遠く離れた深い深い山の奥を歩く彼には勿論理由があった。
この山の奥―それも、人の目の届かぬ場所に、かつて何十年も前に隔離病棟が置かれていた。そこでは一度かかったものなら治ることなく、死に至る謎の病にかかった者たちが強制的に収容されていた。病棟に軟禁された者たちは、二度と外を見ることなく、皆例外なく苦しみと共に息絶えていった。病棟はやがて、人権問題云々の影響により、閉鎖した。
閉鎖から間もなくして廃墟と化した隔離病棟は、一時期の間、地元の悪ガキ達の溜まり場となった。誰にも見られない場所だから、環境の不気味さを気にしなければ何事も好き勝手し放題だった。
だが、ある8月の日、事件が起こった。
四人の少年たちが、例の隔離病棟へと肝試しに行ったきり、行方不明となってしまった。四人全員が、である。有志の村人6名が日の差す明るい時に捜索に当たったところ、何でも廃墟の地下に通ずる赤い扉が開かれていたのだという。その地下は、かつて隔離病棟として機能していた時に、病に冒され死んだ者たちを安置する場所として使われていた。それ故なのかは不明だが、"山奥にある隔離病棟の地下は、呪われている。"という妙な噂が広まった。何もこれといった超常現象は起こってはいないはずなのに、何故か忌み嫌うかのように、近くの村に住む住人たちは噂したのだという。
扉が開かれた地下の先は、無限の闇が広がっていた。まだ日が差す時間なのにもかかわらず、まるであの地下だけが、永遠の闇が棲みついているかのようだった。廃墟の地上部をいくら探しても少年たちは見つからなかったので、考えられる最後の場所はその地下しかなかった。
村人6名のうち、3名が地下へと入っていった。残りの3名は、ただ、待った。捜索に出た者たちが、少年たちが連れてくるのを。
しかし、いつまで経っても出てこない。1時間、2時間、3時間―――ついには、日が沈みかけ、日差しが消えた時間になってでも彼らは戻ってくることはなかった。3人は諦め、一度村へ戻ることにした。
翌日、また同じ時間に3人は例の廃墟へと向かった。廃墟へ着くなり、3人はまた例の地下の扉の前へと向かった。しかし、昨日までは開いていたはずの扉は閉ざされており、扉の前には膝を抱え、俯く1人の男。その男は、昨日、あの扉の先へと入った3人のうちの1人だった。その姿は生気を失っており、衰弱していた。初めはその男であると気付いた者は、誰もいなかった。そして、たった一日での男の変わり様に、3人はただ、怯えることしかできなかった。ようやく1人がその弱った男に声をかけると、男はただ、今にも途絶えそうな声で、ひたすらつぶやき続けた。
―――みては、いけない。"アレ"をみては、いけない。―――と。
3人はその男をなんとか村に帰したものの、男は弱り続け、蝋燭の火が静かに消えるように、息絶えていった。男は最期の時まで言葉を口にし続けた。―――「みては、いけない。」、と。
その一件があってから、村の住人はおろか、悪ガキすらも近寄らなくなった。その後も、村の外からやって来る恐れ知らずの者たちが何人も廃墟へ訪れては、地下へと進んでいったが、誰一人として帰ってくるものはいなかった。木口の親友もまたその帰らぬうちの1人となった。
木口は人一倍、好奇心旺盛な男であった。しかしその好奇心は、不運にも"危険"に向けられていった。いま、木口が山奥を歩いているのは、親友が失踪を遂げた例の廃墟へと続く道なき道であり、親友の捜索が目的である。しかし、奥底にあるのは、危険への欲求。―――"みては、いけない"ものを、見たい―――不幸にも、危険に魅入られてしまった心の衝動であった。
しばらく山奥を歩くと、廃れたコンクリートの建物が見えてきた。―――ついに木口は着いたのだ。例の廃墟に。みてはいけないものが潜む、禁断の地に。
木口は廃墟の中に入り、ピンライトを翳した。しばらく辺りを歩いていると、何やら下へとつながる階段を見つけた。階段を下るとそこには、錆びれたコンクリート色の壁と見比べると不自然なほど赤い扉。―――木口は、例の地下の扉を見つけた。みてはいけないものが潜む闇へつながる扉は、何十年も前につくられたものとは思えない程、鮮明な赤だった。死んだ建物であるにもかかわらず、まるでこの扉だけが生きているようだった。
木口は、扉を開けた。目前に広がるのは、闇。ピンライトをかざしても、なけなしの光すらも吸い込む、黒い闇。危険を求めている木口ですら、うっすらと恐れをなした。しかし、怖いもの見たさという感情に囚われてしまった木口には、この先へと進む以外に選択の余地は無かった。
木口は、ただ1人、闇へ突き進んだ。
ピンライトの光を点けているのにもかかわらず、何も見えない暗闇の中を、静かに歩き続けた。だが、何も標になるものが無いのは苦痛だったので、木口は地面に光を当て、それを頼りに歩き続けた。
しばらく歩くと、地面に何かが溜まっていることに気づいた。それは、得体の知れない、黒い液体。そしてその先は行き止まりであることもわかった。その液体は壁にも垂れていた。木口は、壁に光を当て、液体が垂れている元となる方へと上げ続けた。
そして、木口は、見てしまった。
「こ、これが…………」
「こ、これがその……"みては、いけない"……モノなのか……!!!!」
木口はただ一人、静かに、熱狂した。みてはいけないし、見ることすら避けられ続けたものを、ついに見つけてしまったのだ。
木口は、来た道を戻ることにした。
その時である。
(๑╹ω╹)
「な、何だッ?!」
見たことのない謎の何かが、木口のそばへと近づいた。
謎の何かは、木口に何かをする訳でもなく、しばらく沈黙を続けていた。
(๑╹ω╹)
(๑╹ω╹)
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘいㄘい
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘいココ〒゛ナ二し┣ンねン
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘいコンな夜中にコンな┣コ〒゛ナ二し┣ンねン
「え、いや、あの、その………………ちょっと、肝試しをしに…………」
(๑╹ω╹)
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい勝手に肝試ししとンの力
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい誰も許可得ずに勝手に肝試ししとンの力
(๑╹ω╹)<ㄘい
(๑╹ω╹)<ココㄘいㄘい住ん〒゛ンャヶど
(๑╹ω╹)<ココㄘいㄘい住ん〒゛るトコロやねンケド
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘいナ二ㄘいㄘいの住んどるトコで肝試ししとンねン
「…………ぇ、えっと…………ココは……あなたが、住んでる……所、なんですか?」
(๑╹ω╹)
(๑╹ω╹)<言ったコ┣聞けばわかるや口
(๑╹ω╹)<ココㄘいㄘい住んドンねン
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい、自分ン家に勝手に肝試しされ夕ラ嫌ヤ口
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい勝手に知らンヤツから肝試し謂う〒自分ン家あがってキ夕ら嫌ヤ口
「…………まぁ、確かに、嫌ですけど………」
(๑╹ω╹)
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい
(๑╹ω╹)<そンならㄘいㄘい最初から肝試しすンなや
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい勝手に肝試し来らレ〒不快ヤッ夕ゾ
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘいは勝手に肝試し入られてストレスを感じ夕〒゛
(๑╹ω╹)<ストレスや〒゛、ストレス
(๑╹ω╹)<体に悪いンや〒゛
「……そ、そう、でしたか。……あの、何か、勝手に入ってしまってすみませんでした。…………それじゃあの、明日も普通に会社行かなきゃならないので、これでもう帰りますね…………」
(๑╹ω╹)
(๑╹ω╹)
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい帰る謂うン力
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘいこのまま帰えられる謂うン力
帰られへン〒゛
その刹那、木口は何かに縛り付けられたかのような状態になった。手も足も、動かすことができない。木口は、パニックになってしまった。
「な、何すんだよ!?や、やめてくれ!!ここから出してくれ!!」
木口の叫びは空しく、そのまま、何かに引きずられるように、闇の奥へと消えてしまった。
この後、木口の姿を見た者は、誰一人も居ない。そして、廃墟にはまた、静寂が戻った。
今夜もまた、忘れられた廃墟は、新たな獲物を、静かに、待ち待ち続けているのだ。
(๑╹ω╹)
(๑╹ω╹)
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘい終わりや思ッ夕ン力
(๑╹ω╹)<ㄘいㄘいココ〒゛終わり迎える思ッ夕ン力
(๑╹ω╹)<終わらヘン〒゛
(๑╹ω╹)<今度は
オ
マ
工
や