(九)
あな憎らしや。
半神風情がしゃしゃり出て、人間どもを救った気でおる。
神を気取ったとて我らには到底届かぬものを。なんと愚かな。
ゼウスの蒔いた種がまたも我を苦しめる。
他の女神に飽き足らず、人の女に情けをかける物好きめ。
我が辛苦をあの者も味わうが良い。
我を愛すると誓った男が余所で子を成すなどと、戯れ言にすらなりはせぬ。
一つの裏切りに飽き足らず、子孫を経て再び我を裏切った。
醜い血じゃ。
壁で囲った城なぞ築き、ミュケナイ王を名乗りしペルセウスめ。
奴の子らはその権力を争うが良い。醜い血で醜い血を洗うが良い。
二度目の裏切りの子アルケイデス。
ゼウスは奴をミュケナイ王にせんとしたが、そうはさせぬ。
我の他から生まれたゼウスの子などあってはならぬのに、王位に就かせたらばその命を認めることに等しいではないか。ペルセウスだけでも十分な恥だというのに、これ以上の恥の上塗りは我慢がならぬ。
醜い血脈は繋いではならぬ。
アルケイデスの子は絶えよ。
妻と子と笑い合う日々など望むに価せず。
己の罪を悔い、苦しむが良い。
我が負うたのと同じだけの深さの傷を、その魂に負うが良い。
さすれば二度と、人間どもの中で生きていくことはできぬであろう。