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獅子譚  作者: 毛野智人
9/20

(九)

 あな憎らしや。

 半神風情がしゃしゃり出て、人間どもを救った気でおる。

 神を気取ったとて我らには到底届かぬものを。なんと愚かな。

 ゼウスの蒔いた種がまたも我を苦しめる。

 他の女神に飽き足らず、人の女に情けをかける物好きめ。

 我が辛苦をあの者も味わうが良い。

 我を愛すると誓った男が余所で子を成すなどと、戯れ言にすらなりはせぬ。

 一つの裏切りに飽き足らず、子孫を経て再び我を裏切った。

 醜い血じゃ。

 壁で囲った城なぞ築き、ミュケナイ王を名乗りしペルセウスめ。

 奴の子らはその権力を争うが良い。醜い血で醜い血を洗うが良い。

 二度目の裏切りの子アルケイデス。

 ゼウスは奴をミュケナイ王にせんとしたが、そうはさせぬ。

 我の他から生まれたゼウスの子などあってはならぬのに、王位に就かせたらばその命を認めることに等しいではないか。ペルセウスだけでも十分な恥だというのに、これ以上の恥の上塗りは我慢がならぬ。

 醜い血脈は繋いではならぬ。

 アルケイデスの子は絶えよ。

 妻と子と笑い合う日々など望むに(あたい)せず。

 己の罪を悔い、苦しむが良い。

 我が負うたのと同じだけの深さの傷を、その魂に負うが良い。

 さすれば二度と、人間どもの中で生きていくことはできぬであろう。

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