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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第10陣Sweety Date

 今川軍との初めての戦いから早三日。少しずつここでの生活に慣れ始めた俺は、何故か昼頃にヒデヨシに呼び出されていた。


「ごめんヒッシー、お待たせ」


「呼び出した本人が遅刻してどうするんだよ」


「ちょっと色々準備していて遅れちゃった」


「別に構わないけど、どうした? 急に呼び出すなんて」


「実はヒッシーに付き合ってほしいことがあるんだ」


「俺に?」


 一体何に付き合わされるというのだろうか?


「今から城下町に行って、甘いものを食べつくそうと思うんだけど、一人じゃ寂しいからヒッシーにも付き合って欲しいの」


「甘いものを食べ歩き?」


「そうだよ。題して『安土城下町、甘いもの食い倒れツアー』ていうところかな」


「何だその今考えましたみたいなレベルのツアー名は」


 というか食い倒れって、どれだけ食べるつもりなんだ?


「ヒッシーだって甘いものは嫌いじゃないでしょ?」


「まあ嫌いではないけど」


「なら付き合ってよ! この前の戦のお疲れ様会だと思って。勿論全部私のおごりだから」


「うーんそこまで言うなら……」


 ここまで言われたら断りにくい。二人だけで行くというのが何とも言えないけど、ヒデヨシの奢りなら付き合ってあげてもいいかもしれない。


「じゃあ早速だけど、レッツゴー」


「あ、おい、待てよ!」


 こうして俺は、ある意味ではデートという形でヒデヨシと甘いもの巡りを始めるのだった。


 ■□■□■□

 まず一軒目は城下町に入ってすぐのところにある菓子屋さんみたいな場所。そこで俺はカステラを一つ注文し、ヒデヨシは大量の金平糖を注文。


「一軒めなのにその量って、どれだけ食べるつもりなんだよ」


 ヒデヨシの元に運ばれてきた皿一杯の金平糖を見て俺が言う。


「全然平気だよ。甘いものは別腹って言うでしょ?」


「いや、言うけど」


 別腹どころかまだ俺達は何も食べてないんだけど。


「ん~美味しい」


 そんな俺の考えを無視して、幸せそうに金平糖を頬張るヒデヨシ。こういうところはやっぱり女の子らしさが出ている。


「ヒデヨシってもしかして、甘いもの好きなのか?」


「もしかしても何もそうだよ? そうでなきゃツアーなんてやろうとは思わないもん」


 身長とか見て考えると、やっぱり甘いもの好きなのは間違っていないのか。やはり子供って、お菓子好きな子多いよな。


「なんか今すごく失礼なこと考えていたような気がするのだけど」


「ん? 別に何も考えていないぞ。お前が子供みたいだから甘いものが好きなんだなって納得していただけだよ」


「それが失礼だよ! 私子供なんかじゃないもん」


「はいはい。ごめんなさい」


「絶対謝る気ないでしょ?」


「そうか? これが精一杯の謝罪お気持ちなんだけど」


「そんな謝罪の仕方あってほしくないよ!」


 一件目からハイテンションなヒデヨシ。それをからかうのが中々面白いことに気がつき始めた俺は、カステラを食べるのを忘れて彼女の反応を楽しむのであった。


 ■□■□■□

 それから三十分ほどその店にいた俺達は、ちゃんと頼んだものを完食して店を出た。


「なあヒデヨシ、お前結局全部食べたけどお腹いっぱいじゃないのか?」


「ううん。まだ三件は回れると思うんだ」


「マジかよ。俺だったらあれだけ食べてお腹いっぱいになるよ」


「もうダメだなヒッシーは。まだ一軒目何だよ?」


「まだ俺も平気だけどさ。あと三軒以上回るのはちょっと辛くないか?」


「あ、途中でお昼休憩も挟むから心配しないで」


「お昼休憩?! だったら尚更他回れないだろ」


「でもお昼食べてきてないし」


「いや俺も食べていないよ? けどいくらなんでもそれは、無理があるだろ」


「じゃあもう解散しちゃう? せっかく楽しいのに」


 シュンとしてしまうヒデヨシ。こっちが当たり前のことを言っているのに、申し訳ない気持ちになってしまう。


「い、いや、次に行こうぜ。俺もまだ食べられるし」


「ありがとう! ヒッシー」


 ほんの数分前まにあれだけの量を食べたとは思えないくらいに軽快なステップで次の場所へ向かうヒデヨシ。俺はそのあとを追いながら、ふとある疑問が浮かんだ。


「なあヒデヨシ」


「ん? どうしたのヒッシー」


「お前どうしてそんなに食べられるのに背が伸びないんだ?」


 それは本当にふとした疑問だった。失礼なのは分かってはいるけど、これだけ食べれるんだからもうちょっと背が高くてもおかしくないはずだ。

 それにあの大きなハンマーを平気で持っていられるのだから、筋肉だってあるはずだ。なんというか彼女は謎が多すぎる。


「どうしてなのかな。私も分からないからヒッシー教えて」


「やっぱり年齢詐称とかしているからか?」


「なんで年齢詐称?! 私そんな事しないよ!」


「本当は子供だったりするんだろ?」


「そうじゃないもん! 私こう見えて二十歳過ぎたばかりだもん!」


「え?」


 それはちょっと変じゃないか?


「どうしたのヒッシー? そんなに私が二十歳なのが変なの? それってすごく失礼だよ!」


「いや、そうじゃないけどさ」


 そういえばどうして俺は疑問に思わなかったのだろうか? 今の年と彼女達の年齢に矛盾がある事を。実際の歴史の通りに考えると、今の年だと豊臣秀吉は既に五十を越えている。


(この歴史、ちょっとおかしくないか?)


 やっぱり俺が知っている日本の歴史とこの時代は、まったく別物なのだろうか。


 ■□■□■□

 その後ヒデヨシに三軒ほど店を連れ回され、ついにお腹の限界がきた俺はギブアップ。

 彼女もどうやら理解してくれたらしく、夕方前には城に戻ることになった。


 だが、戦いはまだ終わっていなかった。


「え、えっとヒデヨシさん、これは一体……」


「帰るとは言ったけど、ツアーが終わったとは私言ってないよ」


「いや確かに言っていないけど、俺お腹一杯なんですけど」


「私はまだまだ食べれるよ?」


「いや、それはお前の事情だろ!」


 夕食後、再びヒデヨシに呼び出された俺の目の前に出されたのは、恐らく今日回ったお菓子屋さんで買ったであろう大量のお菓子達。


「ヒッシーは貧弱だなもう。私はまだまだ平気だというのに」


「俺はお前と違ってそんなに食べられる体型じゃないの。お前のその体型で食べられるっていうのが結構不思議ではあるけど」


「サラッと酷いこと言ったから、ヒッシーの食べる分更に追加ね」


「だから食べられないって!」


(というか食べるの手伝うの前提なら、買い込むなよ……)


 いくら言われようが食べれないのには変わらないので、結局俺の分もヒデヨシが食べることに。

 本来なら俺はもうここにいる必要がないのだが、何故かヒデヨシが部屋に帰してくれないので、彼女がお菓子を食べ続ける姿を見ながら、適当に雑談をしていた。


「そういえばヒッシーが住んでいた世界にも、お菓子ってあるの?」


「勿論あるよ。お前が今食べているものだって普通にあるし」


「へえ。じゃあヒッシーじゃ甘いもの食べ放題なんだ」


「食べ放題ってわけでもないけどな」


 そういう店は確かにあるけど、俺自身そこまでお菓子を食べないので、そういう店にすら行ったことがない。


「もぐもぐ、ヒッヒーはおはし、あまひたへないの?」


「全部食べ終えてから話せよ。何か言っているか分からないぞ」


「ほこは、ひかいひてよ」


「理解して欲しいならさっさと飲み込めよ」


 結局そんな調子がずっと続き、気がついたら日付が変わる直前。流石に眠くなった俺は、まだ食べ続けるヒデヨシを置いて先に部屋に戻ったのであった。


「うーん、お腹いっぱい。でもまだ食べれる」


「あまり食べすぎるなよ。太るからな」


「それ禁止! 気にしてるから言わないで!」


 ■□■□■□

 部屋に戻った俺は、そのまま布団にダイブしたのはいいものの、なかなか眠りにつけずにいた。何故なら昼に浮かんだあの疑問を思い出し、どういう事なのか考えていたからだ。


(最初から変だとは思っていたけど、もっと単純なところにおかしな所があったなんてな)


 まず出会う武将が本来の性別とは真逆な時点でおかしいのは分かっていたが、今がもし千五百七十年だとしたら、色々と年齢が合わない。


(やっぱりここは俺の知っている戦国時代じゃないのか?)


 なら歴史通りに何もかもが起きる可能性は低い。つまりノブナガさんがもうすぐ本能寺の変で亡くなる可能性も低くなる。


(今のミツヒデはノブナガさんを慕っている。なら歴史だって大きく変わる可能性が……)


 俺の魔法だってある。もし何かあったら、この力でノブナガさんを、織田軍を守り抜いてみせる。


(もう後悔なんてしたくない。何も守れない自分になるのだけは絶対に……)


 繰り返さない


 繰り返させやしない


 絶対に

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