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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第7陣高らかに宣言す

「昨日戦をしたばかりなのに、もうですか。ちなみに今日はどちら様ですか?」


「今川軍です」


「また性懲りもなく……」


 ため息をつきながらそんな事を言うノブナガさん。手合わせが終わった直後の敵襲。俺もノブナガさんも若干疲れている。


(というか敵襲ってことは……)


「ヒスイ様、行きましょう」


「行くってどこにですか?」


「そんなの勿論戦場に決まっているじゃないですか」


「俺もですか?」


「当たり前じゃないですか。ヒスイ様の大切な初陣ですよ」


「俺の初陣……」


 その言葉を聞いて急に俺の緊張感が高まる。まだここに来て二日目。慣れてないことの方が多い。

 更に勇者と旅した時と違って、今度は俺が前に立って戦う立場の人間だ。


「大丈夫ですよヒスイ様」


「え?」


「私達は簡単には負けません。ヒスイ様はヒスイ様がやりたいように戦ってください。私達はそれを全力でサポートしますから」


 かつて自分が言った言葉と同じようなことをノブナガさんに言われる。


(そうだ、今度は俺がサポートされる側なんだ。なら、信じて背中を預ければいいんだノブナガさん達に)


「加減は一切無し、全力で返り討ちにしていいんですよね?」


「勿論。敵をアッと驚かせてください」


「はい!」


 ■□■□■□

 出陣前

 魔法以外で身を守るためにと防具一式と、ノブナガさんから直々にある物を渡された。


「これって太刀ですか?」


「はい。私が最近まで使っていたものです」


「え? そんなものを俺が使っていいんですか?」


 この太刀にどこか見覚えがあるなと思ったら、昨日初めて彼女に会った時、腰につけていたものだ。最近というよりは昨日までと言ったほうが正しいのかもしれない。


「実は先ほどの手合わせは、ヒスイ様がこの太刀を使う価値のある人間かを試させてもらう為でもあったんです。あの付加魔法というのもこれで活用できますよね?」


「使えますけど……こんな大層なものを俺が使っていいんですか?」


「使っていいんです。ヒスイ様は私が認めた人なんですから」


「ノブナガさん……」


 さすがは天下をとる直前まで登り詰めた人間。実力もさることながら、優しさと判断力を兼ね備えている。

 多分試したというのもこじつけで、最初からノブナガさんは俺にこれを託すつもりで……。


「分かりました、大事に使わせてもらいます」


「はい!」


 俺の返事に対してノブナガさんは満面の笑顔でそう返してくれた。


「ヒッシー、ノブナガ様の大切な太刀なんだから大事に使ってよね」


 その会話に乱入してきたヒデヨシ。彼女は俺の防具よりも少し軽めのを装備していて、その手には身長には合わないくらいの大きさの武器を持っていた。


「ヒデヨシ、お前が持っているそれって……」


「これ? これは勿論私専用のハンマーだよ。これを振り回して、敵を一気に掃討するんだ」


「ちっこいお前が、このハンマーを振り回す? 全く想像できないんだけど」


 それよりも先に重さで潰れる彼女の姿の方が想像できる。武器を振り回すというより振り回されそうなイメージが湧いている。


「もう失礼だなヒッシーは。まあ戦場に行けば私の実力分かるよきっと」


「あくまできっと、なんだな。そこは自信持てよ」


 ヒデヨシが持つこのハンマー、見た感じだと四十キロくらいはあると思われる。これで敵を叩けば一撃で沈められそうだが、彼女にそれができるのか疑問だ。


「ヒデヨシさんの実力は間違いなく本物ですから、楽しみにしてみるといいかもですよ」


「期待しないで待っています」


 そんなヒデヨシとの話を終えたところで、改めてノブナガさんは俺達の前でこう宣言した。


「さてそろそろ出陣です。今回はヒスイ様の初陣ということで、指揮は彼に任せようかと思います」


「え、ちょっとそんな話し聞いていませんよ?!」


 さっきからノブナガさんが一切着替えずにいた理由って、もしかして俺に指揮をとらせる為だったというのか。


「ヒスイ様ならきっとできます。私信じていますから。あなたの実力」


「いや、いくらなんでもそれは……」


 さっきも似たようなことを言われたけど、もしかして信じてるって言えば俺が頷くって思われてないか?


「頑張ってください」


「頑張れヒッシー」


 その通りなんだけどさ。


「分かりました。自信は少しありませんが、指揮を取らせてもらいます」


(不安しかないけど、やるしかないか)


 ■□■□■□

 今回俺達が出陣したのは、安土城から少し離れた先。地形は山岳地に近い形だ。どちらかというと敵陣が山岳地に構えており、ご丁寧にあの頂上から攻めて来ているようだ。


(地形から考えればこちらが明らかに不利。攻め込まれる前に決着をつけないと駄目そうだな)


 敵陣がある山を眺めながらどう攻めるか考えていると、ヒデヨシが隣にやってくる。


「どうヒッシー、何かいい作戦浮かんだ?」


「浮かんでたらこんなに悩むと思うか?」


「そうだよね」


「敵が山の頂上に陣を構えているとするなら、向こうの方が明らかに有利。俺たちも下手には責められない」

 

 見た目はそんなに高い山ではないのだが、木々などで敵の目を欺きやすい上に、広さもあるからどこから攻めて来るか読みにくい。


「とりあえず目には目を作戦で、こっちも地形を活かして急襲をかけるか」


「どういう事?」


「つまり今回俺は敵の目をこちらに向けるように、派手な演出をする。その間になるべく敵に見つからないようヒデヨシが行動して、敵の本陣に急襲をかける、という事だ。勿論お前一人じゃ心細いだろうから、他の兵も連れて襲撃してくれ。できるか?」


「容易い御用だけど、ヒッシー一人で大丈夫?」


「まあ何とかなるさ。初陣くらい派手にかましてやる」


「分かった。ヒッシーを信じる」


 魔法を使って派手に演出すれば、嫌でも敵はこちらに目を向ける。


「作戦は以上だ。これより我が織田軍は、今川軍を倒しに行く。皆出陣だ!」


『おー!』


 こうして俺の初めての戦いは、派手な雷の魔法と共に幕を開けた。雷を落としたのは山の頂上。敵の本陣。

 普通なら遠距離で打つ魔法にも限界はあるが、これくらいの事なら余裕でできる。


「昨日よりすごい威力だねヒッシー」


「今日は本気だからな」


「私も頑張らなと」


「頼んだぞヒデヨシ」


「ところであの雷、大将に当たってたりしてないよね? そうすると陽動とか意味がなくなると思うんだけど」


「あ」


 驚かすことを考えるあまり、そこまで考えていなかった。


「じゃあ行ってくるねヒッシー!」


「ぬかるなよ、ヒデヨシ!」


 ヒデヨシが山の中へと入っていたことを確認した後、俺は改めて現状を確認する。


「な、どうして雷が?!」


「至急救護班を呼べ! かなりの被害がでている」


「ヨシモト様も心配だ」


 思わぬ攻撃に慌てる山の麓にいたであろう今川軍の兵士達。急襲するつもりが、逆手に取られたことによってその姿を隠すことを忘れてしまっている。


(よし、やるか!)


 俺は鞘から太刀を抜き敵兵の前に立ち宣言をする。


「おいお前ら、今何が起きたか理解できてないだろ」


 俺はあえて全員に声が届くように叫ぶ。すると全員がこちらに目線を向け、各々何か言い始める。


「誰だお前」


「太刀を構えているぞ。まさか織田の新入りか?」


「新入りが一人で挑むのか?」


「まさか」


 確かに普通は有りない話だ。だが俺にはそれをできる。


「俺は織田軍新隊長、桜木翡翠だ。よくその名前を覚えておけ。俺は魔法使い桜木翡翠だ!」

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