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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第6陣かつての彼女に姿重ねて

 色々な意味で悲惨だった朝を終えた俺は、ノブナガさんと共に昨日の試験で使った闘技場みたいな場所へ来ていた。


「あの、ここで何をするつもりで?」


「私とちょっとお手合せをと思いまして」


「え? いきなり?」


「この目で見てみたいんです。ヒスイ様の魔法の力を」


 昨日のを見て触発でもされたのか、ノブナガさんがそんな提案をしてきた。


「そうは言われましても、ちょっと無茶がありますよ」


 だけど俺は少し躊躇ってしまう。見た目は結構落ち着いた性格をしているノブナガさんだけど、名はあの織田信長だ。実力はかなりのものだと考えたっていい。


「私も手加減はしますから、どうかお願いします」


 そんな俺の考えを察してか、ノブナガさんはそんな事を言う。


「手加減する前提なんですね……」


(それはそれで嫌だな……)


 男としてやるからには全力でやりたい気持ちがあるだけに、少しだけ複雑な気分だ。


「どうかお願いしますヒスイ様」


 ノブナガさんにまた頭を下げながら頼まれる。流石にそこまで頼まれて断れなくなった俺は、


「うーん、ちょっと怖いけど分かりましたよ。ただし条件があります」


「条件?」


「俺は全力で行きますので、ノブナガさんも全力でお願いします」


 全力で戦う事を前提で了承することにした。


「全力でいいんですか?」


「そうしないと楽しくないんで」


「そこまで言うなら分かりました。こちらも全力で行きます」


 俺とノブナガさんはそれぞれ練習用の剣を構えて対峙する。


(こうして対峙しているだけでも感じる気迫。やっぱり本物なんだな)


 本物なら俺も本気でやるまで。自分が強くなるためにも、俺は本気で彼女に挑みたい。


「では行きますよ」


「いざ」


『勝負!』


 先に動き出したのはノブナガさん。素早く俺の懐に入ってきて、横に剣を振り抜く。


「っと、いきなり容赦ないですね」


 俺はそれをとっさの反応で受け止める。あと一歩反応が遅ければ確実に斬られてた。しかしこれは手合わせなので、ノブナガさんもそこは少しだけ手を抜いているらしい。


「今のを初見で受けきるなんて流石ですね」


「俺もだてに修行を積んではいないので」


 俺は受け止めた剣を、ノブナガさんの剣ごと半円を描くように百八十度回転させ、ノブナガさんのバランスを崩させる。


「やっぱり男の方は力がありますね」


 俺はその状態からノブナガさんに蹴りを入れて離れる。


「折角のノブナガさんの要望ですから、使わせてもらいますよ魔法」


 俺は魔法を詠唱する。巨人の時に使った攻撃の魔法じゃない。俺が使うのは、


「剣に炎が……」


「魔法ってこうやって無機物に纏わせることができるんですよ。付加魔法(えんちゃんと)って言います」


「えんちゃんと?」


「例えばこうやってエンチャントした状態で剣を振ると」


 俺は炎を付加させた剣を振る。すると振った形をそのままに、炎を相手に向けて飛ばすことができる。


「なっ、炎が……きゃあっ」


 流石に予想にしてなかった攻撃だったのか、ノブナガさんはそれを避ける事は間に合わず当たってしまう。


(あ、やばい)


「ノブナガさん、大丈夫ですか?」


 流石に心配になった俺はノブナガさんに声をかけるが、何と当たったと思っていた炎をノブナガさんは自分の剣で斬っていた。


「魔法を切った?!」


「ふふっ、流石に今のは私も驚きましたよ。けど私も腐っても武人ですから、簡単には負けませんよ?」


 この人本当にただの人間か?


 ■□■□■□

 その後の手合わせは予定よりも大幅に伸び、俺とノブナガさんはヘトヘトになってしまっていた。


「はぁ……はぁ……。ノブナガさん、ちょっと休みませんか? 朝からこれはちょっと辛いです」


「ヒスイ様が……強いから悪いんですよ。私も思わず本気になっちゃったじゃないですか」


「それは……お互い様ですよ」


 まさか魔法を普通の人間に斬られるとは思っていなかった俺は、改めて織田信長という人間のすごさを実感させられた。


(いや、いくら織田信長でも魔法は斬らないよな)


「ヒスイ様、最初の以外に魔法を使いましたか?」


「こっそり使っていましたよ。筋力増加と俊敏強化とか色々と」


「私からはなにも見えませんでしたよ?」


「これらは自分自身にかけるものなので、目に見えることはないんですよ」


「へえ。魔法にも色々あるんですね」


 感心するノブナガさんだが、感心したいのは俺の方だ。たった一本の剣で、魔法に臆する事なく挑む姿。


 つい彼女の姿と重なってしまった。


(お前とそっくりの人間を見つけちゃったよ、サクラ)


 かつて旅を共にした勇者サクラ。彼女もまた、何事にも臆する事なく真っ直ぐに挑む一人の強い少女だった。


(本当にそっくりだよノブナガさんが……)


「私本当は沢山の魔法を見たかったんですけど、ちょっと残念です」


「そんな事を言われてましても、魔法を使う余裕どこにもなかったですよ」


「じゃあ余裕があれば使ってくれるんですね?」


「え、あ、いやそういうわけじゃ」


「今度はヒスイ様が余裕で魔法を使えるくらいのレベルで戦いますから、もう一戦お願いします」


「ひえ」


 まさかのもう一戦を申し込まれ、戸惑う俺をノブナガさんがからかっていると、ミツヒデが慌てた様子で闘技場に入ってきた。


「ノブナガ様、敵襲です! 急いで出陣の準備を」

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