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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第4陣未知の力

 歓迎会とは言っても、先程も言った通り空気が盛り上がれるようなものではなく、何というか親密の空気の中で行われていた。


「じゃああの力は、まほうって言うんですか?」


 主な話題はというと、やはり俺が使った魔法についてだった。


「はい。簡単に魔法について説明すると、何もない空間から火や水といった物質を生み出すことができる力って感じです」


「無から物質を……ですか。それはちょっと興味あります私も」


魔法について一から説明していると日が暮れてしまうので、大雑把に説明するとこんな感じになる。

これも師匠の受け売りなんだけど、どうやらノブナガさんには通じてくれたらしい。


「なるほど、その魔法を使えば、無から私とヒデヨシ様との愛を生み出すことができるんですね」


「どんだっけ曲がった解釈しているのよ!」


 別の方に解釈している人がおられるけど、そこはあえてスルーしておく。それよりも俺からもノブナガさんに一つ聞いておきたいことがあった。


「そういえば俺からも一つ聞いてもいいですか?」


「何でしょうか?」


「いきなりこの隊に入って聞けるような立場じゃないですが、現状織田軍はどのような状況におかれているのですか?」


 それはこの年代における、織田軍の状況だ。歴史上千五百八十二年に本能寺の変が起き、そこで織田信長は命を落とすことになっていて、それまでに大体の天下統一は終わっていたはずだ。

 そして信長亡き後にそれを豊臣秀吉が継ぎ、天下統一を果たすというのが正史になっている。果たしてこの織田軍の状況はどうなっているのだろうか。


「今の私達の軍の状況は、正直に申しますと芳しくありません。武田軍と上杉軍の圧倒的勢力に押されつつあります」


(やっぱり良くないんだ)


 俺を即隊長に就任させるあたり、やはり状況はあまり良くないらしい。しかも武田軍と上杉軍と言ったら、かなりの強者だ。

それでもその中で織田信長は天下統一を果たすのだが、それはあくまで正しい歴史の中での話であって、ここではそうなるのかは怪しい。


(もしかしたらノブナガさんの死を回避することもできるかもしれないな)


「現状は厳しいかもしれないですけど、ヒッシーがきっと力になりますよ。ノブナガ様」


「確かにヒデヨシさんの言う通りですね。ヒスイ様のその力があれば、きっと私達の軍を勝利に導いてくれます」


 ヒデヨシの言葉に対して、そう返すノブナガさん。どうやら俺は考えている以上に彼女たちに期待されてしまっているらしい。


「そ、そんなに期待されても、ちょっと困りますよ」


それだけ期待されてしまうと、俺としては少しむず痒い気持ちにさせられる。魔法は使えても、上杉謙信や武田信玄といった武人に実力として勝てるか不安ではある。


いくら特別な力が使えても、それに頼りすぎないで戦う素の自分としての実力は、ノブナガさん達に到底及ばない。


「でもやってくれるんだよね、ヒッシー」


「まあな。約束は破る気はないし」


 それでも一度やると決めたからには、諦める気は無い。


「流石ですヒスイ様」


 あの時だってそうだったように、最後までそれを貫き通す。そうすればいつかそれが報われると俺は思っている。


(その為にも躊躇わず使おうこの魔法を)


 食事をしながら、改めて俺はそう決意するのであった。


 ■□■□■□

 そんな感じで歓迎会は、一種の食事会みたいな形で終了し、お風呂(釜風呂だった)も済ませ部屋に戻り、あとは寝るだけになった。


(ふう、散々な一日だったな……)


 思わずため息がこぼれてしまう。今日一日だけで沢山の出会いがあったわけだけど、なんだかデジャヴを感じてしまう。


(初めてあの世界に来たときもそうだったな。いきなり魔物に襲われたり、助けてもらったりして……)


とにかく全てが新しくて濃密な一日。


(でも何故か夜は、やけに落ち着くんだよな)


けど必ず訪れる静かな時間。その時間だけは戦いのことも、色々なことも全て忘れていられる。


(睡眠って本当に大事なんだな)


「やっほーヒッシー、遊びに来たよー」


余計な邪魔が入らなければの話ではあるけど。


「あのなあ、入ってくるならせめて一言声かけろよな」


 一声もかけずに勝手に入ってきた やつ(ヒデヨシ) は、そのまま俺に飛びついてくる。俺はそれをすんでんの所で避ける。


「それに良い子はさっさと寝なきゃ駄目だろ」


「何をー。私だってまだまだ起きれるもん」


「子供扱いされている事は突っ込まないんだな」


「誰が子供よ!」


「ツッコミ遅!」


 とまあ、くだらないやり取りはこの辺にして、俺は早く眠りたいので、意地でもヒデヨシを撤去しようと試みる。


「なあ俺は今日疲れたから眠いんだ。自分の部屋に戻ってくれないか?」


「うん分かった」


「物分り早いなお前。最初からそうしておけば」


「明日になったら戻るね」


 前言撤回


「人の話聞いてたか? 俺は今すごく眠いんだよ。だから、今部屋に戻ってほしいんだけど」


「えー何で。これからが遊び時じゃん」


「今何時だと思ってんだよ」


 ちなみに現在の時間は間もなく日付が変わる時間だ。そんな時間から遊べだなんて、いくらなんでも鬼すぎる。


「明日気が向いたら相手してやるから、今日は寝かせてくれよ」


「嫌だ」


 何度説得しても、ひっついて離れない。


(どうにかして帰ってくれないかな)


 いよいよ眠気が限界に訪れた俺は、彼女をこの部屋から出す方法を咄嗟に考える。そして一つだけ思いついた。


「じゃあ帰らないって言うなら、あいつを呼ぶか」


「あいつって誰?」


「勿論ネネに決まってるだろ。さあどうする?」


「そ、それだけは勘弁して。帰るから、帰るから」


 効果は抜群らしい。


(今度から使えそうだなこの言葉)


 ネネを呼ばれることを恐れているヒデヨシは、何も言わず部屋を出ていこうと扉を開く。


「あ、お姉様見つけました」


 だが外では俺が呼ぶより先にネネが来ていた。一体こいつは、どこから嗅ぎつけているんだ?


「ヒッシー、最初から私を……」


 予想外の遭遇に、体をガチガチにしながらこちらを睨むヒデヨシ。だがその間に俺は布団を敷いて、既に眠りの体制に入っていた。


「あ、寝ないでヒッシー!」


「おねーさまー」


「ちょっと、こっち来ないでよネネー」


「待ってくださーい」


 何としても掴みかかろうとしているネネを、かわして部屋を出て行く。それをものすごいスピードでネネは追いかけていった。


(許せヒデヨシ)


 こうして俺の夜の平和は守られたのであった。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

夜も更け、城が静粛に包まれた頃


 一人部屋である作業をしていた私は、今日やって来た桜木翡翠という魔法使いの事を思い出していた。


(不思議な力を持つ人もいるんですね)


 女子ばかりが住んでいるここも、充分不思議だけど彼はそれ以上の存在だった。


(これで織田家も安泰、天下も取れればいいんですけど)


「ノブナガ様、まだ起きていられたんですか?」


「ミツヒデこそ、今日は戦で疲れているでしょうし早く寝たほうがいいですよ」


私の部屋の近くに自分の部屋があるミツヒデが静かに私の部屋に入ってきた。彼女は今日の戦も含めて一日働き詰めで疲れているはず。


「私はいいんですよ。ノブナガ様より早く眠るわけにはいきませんから」


「私はもう少し起きていますから、休んでください。また次いつ敵がやって来るか分からないですから、備えることも含めて休んでください」


「それはノブナガ様にも言えることなのですが……分かりました」


「あ、待ってくださいミツヒデ」


私の指示を受けて部屋を出て行こうとするミツヒデを私は呼び止める。


「何でしょうか?」


「ミツヒデは彼のことどう見ています?」


「サクラギヒスイの事でしょうか? 彼の使う魔法という力は未知数なのでまだ信用するのには早いかと」


「やっぱりミツヒデはそう考えているんですね。貴女らしいといえば貴女らしいのですが」


「ノブナガ様はどう考えているんですか?」


「私は……彼を信じてみようかと思っています」


私はミツヒデにありのままを伝える。偽るつもりはない。確かに彼女の言う通りまほうは未知な力かもしれない。

けどもしその未知の力をものにできれば、あるいは……。


「ノブナガ様がそうお考えならば、私はそれに従います。しかし気をつけてください」


「何をですか?」


「きっと彼は何か隠し事をしていますよ」

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