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第120陣未来をかけた戦い

 最初は勇者に憧れていた。だけど魔法使いという形で異世界に送られて、勇者をサポートして少しだけ有名にだってなった。だけど元をたどれば素質がなかった俺は、確実に彼女を守るためには力が不足していた。


 だから力を欲した。


 大切な人を守るための力を。


 それがたとえ禁忌だと言われても。


 サクラを守るためなら俺は、悪にでもなる。


 そう覚悟をしていた。


 カクゴヲシテイタンダ。


「サッキー、私の声が聞こえないの?」


「うぁ、ぁ」


「駄目だサクラ、完全に理性を失っている」


「なら私が助けないと。サッキーを」


 その先に待っている絶望を知らないで、俺は……。


「私を助けてくれた分、ちゃんとお返しするねサッキー」


 俺は……。


 ■□■□■□

「ノブナガ様」


「分かっています、そろそろ決着をつけなければならない時が来たようですね、マルガーテとも」


 安土城を囲む黒い物体たち。まだ動きをみせないが、こちらが動けばすぐにでも攻めてくる様子なのははっきりしていた。ヒスイ様もまだ動きがないものの、きっと戦いは避けられない。


「ヒスイ、情けないですよ。私の弟子ながら闇に堕ちてしまうとは」


「ノアさん、ヒスイ様は本当に」


「あの様子を見る限り間違いありません」


「救い出す方法はあるんでしょうか?」


「ある事はありますが、それはあなたが辛い思いすることになりますよ」


「どういう事でしょうか?」


「戻れないくらいに染まってしまっている場合、殺す以外の選択肢がないって事ですよ」


「え?」


 私がヒスイ様をこの手で殺す?


「他にの方法はないんですか?」


「それはあくまで最悪な場合の話ですが、最終的には決断しなければならないって事です」


「そんな……」


 そんな事できるわけがない。私の刀は大切な人を殺すためのものではなく、大切な人を守るためのもの。そんな最悪の場合なんて考えたくもない。


「……サクラは命を懸けてヒスイを救いだしたんです。もし殺さずに救いたいなら、ノブナガさん、あなたもそれなりの覚悟が必要です。私もできる限りの力は貸しますが」


「ちょっと、それだとノブナガ様かヒッシーが死ぬって事なの? 私そんなの嫌だよ」


「ヒデヨシさん……」


「ノブナガ様が死ぬくらいなら、私が命を懸けてでもヒッシーを……」


「やめてください、ヒデヨシさん!」


 私は思わず叫んでしまっていた。今のこの事態に焦っているからか、それとも苛立ちからなのか分からない。ヒデヨシさんは何も悪くない。


 悪いのはここでしっかりとできない私だ


「まず死ぬとは限らないんですから、落ち着いてください」


「でもそこまでしないとヒッシーが……」


「誰も失わずに助け出します、ヒスイ様を」


「そんな無茶な。生身の人間が助け出すなんて無理ですよ」


「私は諦めていませんよ、ノアさん。ヒスイ様の目の前でもう誰も失わせませんから」


 ここを統べるものとして、織田家の人間として強い人間でいなければならない。どんな絶望的な状況でも、私は決して諦めない。


「その頼もしさ、流石はノブナガだな」


 その私の思いに答えるように声がする。


「シンゲンさん、まだ傷が癒えていないんですから、休んでいた方が」


「こんな状況で大人しくしてられるか。協力するぜ」


「シンゲンさん……」


 ボロボロの体を引きずりながらそういうシンゲンさん。今この状況で敵味方も関係ないけど、流石にその体で戦ってもらうわけにはいかない。彼女自身だってそれを理解しているはずなのにどうして……。


「ノブナガ様、どうしますか?」


「あの怪我で無理をさせるのは私としては嫌なんですが、本人が本気なら手伝ってもらいましょう。その代わり、私が前線に立ちますので、その援護をしていただきます」


「どんな形だっていい。手伝わせてくれ」


「ではシンゲンさんも含めて、これから始まる戦の作戦会議を今から始めましょう」


 ■□■□■□

 ノアさん曰く状況は非常に芳しくなかった。動きはないものの。安土城は今多くの闇に囲まれている。この状況を打開する方法は、たった一つ。


「この闇の中心、マルガーテを直接叩く事です。城の防衛、マルガーテまでの道作り、そしてヒスイの救出、これらを全て同時に行う必要があります。数を見る限り長期戦は難しいですし、なるべく短時間で決着をつけます」


 今の状況を整理したノアさんが大まかな作戦の概要を説明してくれる。問題はその作戦をいかに確実に成功させるかが鍵になってくる。


「私はヒスイ様を最初に救い出して見せます。マルガーテの相手はその次になりますが、それまでの時間稼ぎが必要になるのですが」


「マルガーテの相手は、私に任せてくれませんか」


 そう名乗りを上げたのはヒデヨシさんだった。その理由については私はあえて彼女に尋ねず、ただ一言。


「必ず生きて戻ってこれますか? ヒデヨシさん」


「皆で必ず生き残ると約束しましたから、必ず生き延びて見せますよ」


「信じますよ、ヒデヨシさん」


 それは私のヒデヨシさんに対する信頼だった。今までいくつもの戦を彼女と共に潜り抜けてきた。その度に私は彼女にそう尋ねて、ヒデヨシさんはその想いにちゃんと答えてきてくれた。


 だから私は信じる。大切な家臣を。


「じゃあオレはそこまでの道を作り上げればいいんだな。よし、任せとけ」


「ノアさんは城の防衛を頼めますか?」


「任せてください。ここを守ることくらいは簡単な仕事です」


「ではこれで全員の準備は完了しましたね。でほそれぞれの配置が終了次第、決戦を始めますよ! 必ずヒスイ様を、この世界の未来を取り戻しましょう」


『おー!』


 始まる、最後の戦いが。


 この世界の未来、私達の未来をかけた戦いが。


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