表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/143

第86陣時と時の狭間にて

 身体に痛みが走らない。死んだからなのだろうか?


(いやそれにしたって、瞼が軽い)


 一度閉じた目を開く。するとそこに待っていたのは、先程の剣。だけどそれは俺の目の前で止まったままだ。


「何が起きたんだ?」


 どうやら時間が止まっているらしく、マルガーテの動きも止まっていた。


「ようやくあなたに巡り合えました、光の魔法使いよ」


 どこからか聞いた事がない声が聞こえる。


「誰だ?」


「敵ではないのでご心配なく。ただ、あなたを助けるなら今しかないと思い、時を止めさせていただきました」


「時を止めるって、魔法が使えるのか?」


 未だに声しか聞こえない謎の存在。だが時を止められるほどの魔力を持っているという事は、かなりの実力を持ち主。俺も時間の概念を少しは動かせるものの、ここまでハッキリと人の動きを止める事はできない。


(敵でもなさそうだし、頼っても大丈夫かな)

 しかし一つ疑問なのは、それが何故今俺の目の前に現れたのか、そして何故俺を知っているのか。


「確かにこれは、あなたが言う魔法という力かもしれません。しかし私はこの力を天の力、天力と呼んでいます」


「てんりょく? 何だよそれ」


「実際使ってみればわかります。この力はあなたが使うに相応しい力。きっと使いこなせるでしょう」


「俺が使うに相応しいって、お前は一体何者なんだ」


「通りすがりの神様、とでもお呼びください。それでは」


 それを境に声は聞こえなくなった。


(一体何だったんだ今のは)

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 ともあれ死を回避する事ができた俺は、何故か止まっている時間の中を動けるので、とりあえず目の前の刃をどこかへ捨てる。そこまではいいのだか、


(これどうやって戻すの?)


 時間の元の戻し方も教えてもらわずに、声は消え去ってしまったので、この後どうすればいいかを聞いていない。実際に使ってみれば分かるとは言っていたけど、どうするのだろう。


(とりあえず時よ戻れ!)


 当てずっぽうでそんな事を頭の中で考えてみる。特に呪文とか無さそうな説明のしかただったし、試せることは試してみる。すると、俺が思ったように時間が再び動き出した。


「あれ? 何であなた避けられているんですか?」


 マルガーテの第一声は、先程と違うことが起きていることに対する、当たり前の反応だった。


「残念だけどマルガーテ、俺だってこんな所で倒れたくないんだよ」


「束縛の魔法もかけたのに、これは予想外です。ざんねんですけど、ここは手放すしかないみたいですね」


 流石にこの展開は予想していなかったよか、この場から退こうとするマルガーテ。だがまたとないチャンスを俺は、逃さずにはいられない。


「師匠の仇、取らせてもらう」


 太刀を抜き、全力で斬りかかる。だがそれを、マルガーテは何と素手で受け止めた。


「なっ!」


「あなたが私に挑むにはまだ早いと、前にも言ったはずです」


 だが俺も、前のままではいない。もしその天力と言うのが、考えたことを具現化させる力なら、もう一撃いけるはずだ。


(この太刀を大きくしてくれ)


 そう考えた直後、太刀の大きさが倍増する。


「す、すげぇ」


「な、どうして突然そんな事が……」


「俺だっていつまでも弱いままじゃないんだよ!」


 倍近くの大きさになったそれは、マルガーテの手では抑えられるような大きさを超え、そして彼女の腕を切断した。


「きゃぁぁ!」


「悪いなマルガーテ、これで終わりだ」


 ここが好機と言わんばかりに、俺はもう一撃を加えようとする。だが決着がつかんとした途端、何故か俺の身体の動きが止まる。


「なーんてね、残念だけどあなたに私を倒す事はできません。何故なら……」


 そこからどんどん力が抜けていき、ついにその場でに膝をついてしまう。


「あなたにはもう一つ、特殊な魔法をかけさせてもらったからです。と言う事でさようなら」


「おい、待てマルガーテ!」


 あと一歩なのに、身体が動かない。何で……。


「ちくしょぉぉ!」


 俺の叫びも虚しく、マルガーテは目の前から消えていった。

 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 その後自力でノブナガさんの元に戻ろうとした俺だが、異空間から抜け出すとそこは全く知らない森の中だった。


「どこだここ?」


 どこかの領地であるのは確かだが、果たしてそこがどこなのかは分からない。


(マルガーテも逃したし、最悪だなおい)


 とりあえず歩き出す。しばらく歩けば誰かしらには会えると思ったが、場所が森なだけあって人の姿すら見えてこない。


(まずいな)


 ここがもし織田軍の領地でなければ、敵に遭遇してしまう可能性がある。ただでさえマルガーテとの戦いで疲弊しているのに、続けざまの戦いは勘弁してほしい。


「あれ? そこにいるのは……ヒスイ?」


 どこからか声が聞こえる。その声の主が誰なのかすぐに分かった俺は、とりあえず一安心。


「その声ネネか?」


「そうでですよ。お姉様から行方不明だって聞いていたんだけど、どうしてこんな所に?」


 木の上から姿を現わすネネ。


「マルガーテの手から逃げてきたんだよ。てか、そういうお前はどうしてここにいるんだよ」


「お姉様達があなたを探しているので、その手伝いを仕方なくしていたんです。でも、見つかったならよかったんですけど」


「けど?」


「今あなたを捜索中に面倒事に巻き込まれてしまいまして。大変不本意なんですけど、助けてくれませんか?」


「相変わらず一言多いな。まあ仲間だから当然助けるけど、何があった?」


「今私の元々住んでいた里の忍びに追われているんです。追っ手を払うのを手伝ってくれませんか?」


「忍の追っ手?」


 何でまたそんな面倒な事を、このタイミングで巻き込まれるんだよこいつ。

 だがネネに言われて改めて気づく。明らかにこちらに向けられた殺気が、近づいてきていることを。


「とりあえずここにいるのも危ないから逃げるぞ」


「は、はい」


 しかもその数はかなりのもの。これかなりマズイんじゃないのか?


(この殺気、かなりやばいぞ)


 とりあえず俺は、ネネを連れてその場から逃げることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ