表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/143

第50陣魔法使いの帰還

ここからは今までのように話をくっ付けるのではなく本編に沿いながら今までになかった部分のストーリーを追加しながら、書き下ろしして上げていくことにしました。なので旧版と少し違った内容を楽しんでもらえると嬉しいです


「愛しています」


 あの世界を離れる直前、微かに聞こえた師匠の告白。けどその意味を彼女に聞くことはきっともうできない。


(禁忌の魔法が人の命を削る、それなら師匠は......)


 俺以上にその魔法を使っている彼女がどうなるのかは考えなくても分かってしまう。


 本当は振り返って、彼女に言いたかった。


 今までありがとう、って。


 なのに何も言えなかった。彼女はそれを隠して俺を送ってくれた。


「し、しょう......」


 駆け出しながら溢れる涙を止めることができない。


(俺は師匠に助けられてばっかりだ。それなのに何も返せなかった......)


 駆け抜けながら沢山の思い出が蘇ってくる。彼女に魔法を教えてもらったこと、サクラの件で心が壊れかけた俺を助けてくれたこと。そして一年前、世界を跨いで助けてもらったこと......。


(俺、貴女に出会えて、魔法を教えてもらえて、幸せでした。だからどうか、どうか......)


 安らかに眠ってください。


 ■□■□■□

 ノブナガさんとの城下町巡りも一通り終わり、気づけば夕暮れ。


「もう外が暗くなるのに、どこへ向かうんですか?」


「それは着いてからのお楽しみです」


 私はノブナガさんたちに連れられて山の中を歩いていた。私に見せたいものがあるらしいのだけど、それが何なのかは伝えられていない。


「ヒナッチもきっと喜ぶ所だよ。ヒッシーもお気に入りだったし」


「翡翠も?」


「ほら着きましたよ」


 ノブナガさんに言われ、いつの間にか開けた場所に到着したことに気がつく。


「うわぁ......」


 そして目に入った景色に私は思わず声が漏れた。


 辺り一面に広がる草原と、満天の星空。


 きっと日本にいた頃では見ることができなかったであろう景色に、私は感動すら覚えた。


「ねえ、綺麗でしょ? ヒナッチも気に入った?」


「うん。これは翡翠もも気に入るのも分かる」


「ここでヒスイ様とこうやって星空を眺めたんです。折角ですからサクラ様も一緒にどうですか?」


 そう言うとノブナガさんは草原の上に寝そべり、同じくヒデヨシも寝そべった。


「じゃあ私も折角だから......」


 断る理由もないので私も同じようにすると、さっきよりも広く綺麗に星空が視界に映った。


「ヒスイ様がこの世界を離れる少し前」


 しばらく星空を眺めていると、ノブナガさんが口を開いた。


「ヒスイ様とこの星空を眺めました。その時に彼は私達に誓ってくれたんです」


『いつかまた必ず会える』


 と。


「そしてその後、こうも言ってくれました」


『俺はノブナガさんのことが好きです。一人の女性として』


「だから私は彼を待ち続けているんです。いつか絶対に約束を守ってくれるって信じて」


「それは......なんというか幼馴染として少し申し訳ないです」


「いいんですよ、好きな人の為ならいくらでも待ちます」


 どうやら彼は私が知らないところで、とんでもない罪を作っていたらしい。そんなことを好きな男性に言われたら、誰だって待ち続ける。


 誰だって......。


「え? ノブナガさん、もしかいて翡翠のことを」


「......はい」


 顔を見なくても分かるくらい恥ずかしそうにノブナガさんは言った。


「本当ヒッシーは罪な男だよ。私の気持ちも分かっているくせに」


 続いてヒデヨシがそんなことを告白する。


「え? え?」


 えー!


「聞いてよヒナッチ。ヒッシーって」


「それ以上はストップだ、ヒデヨシ」


 さらに話を広げようとしたところでストップが入る。それはこの三人以外の......男の声。そしてその声に私......いや、私達は聞き覚えがあった。


「ひ、ヒスイ様?!」


「すいませんノブナガさん、待たせてしまいました」


 ■□■□■□

 三十分前。


「あ、あ、あ、あなた、どうしてここに?!」


 いつもの安土城にネネの声が響き渡った。


「久しぶりだなネネ。元気にしてたか?」


「元気にしてたか?じゃありませんわよ! あれから一年経っているのに、何の連絡もなしに来たからビックリしましたわ!」


「悪い悪い。連絡する時間も方法もなかったからさ」


「ひ、ヒスイさぁん?!」


 続いてネネの声を聞いてやって来たリキュウさんが現れる。なんと彼女は俺を見つけるなり抱きついてきた。


「ちょ、り、リキュウさん」


「会えるのを心待ちにしていましたぁ。是非今からお茶でも」


「い、いや、それは後にしてくれませんか。それより聞きたいんですけど、ここにサクラっていう女の子来ませんでしたか?」


「サクラ? ああ、彼女ならノブナガ様とぉ、一緒にお昼から出掛けていますよぉ」


「ノブナガさんと? どこに」


「確かお姉様と一緒に城下町を案内するとかで。夜には見せたいものがあるから楽しみと言っていましたわ」


「夜に見せたいもの?」


 それが何なのかは分かる。時刻は夕方前なので今からいけば間に合いそうだ。


「もしかして今から追うつもりですの? 帰ってくるのを待った方が」


「いや、今から会いに行ってくるよ。間に合いそうだし」


「あ、ちょっと」


 俺は二人を置いて安土城を出る。


(すれ違いになる前に急がないと)



「全く相変わらずの男、ですわ」


「でもぉ、ちゃんと約束、守ってくれましたよ?」


「まあ、それくらいは評価してあげますわ」


「少しは素直になった方がいいんじゃないですかぁ」


「余計なお世話!」




 そしてようやく三人に追いつくと、何やら不穏な会話が聞こえた。


「ヒッシーも罪な男だよ、私の気持ちも分かっているくせに」


 三人はあの星空をながめながら、俺のことを話していたらしいが桜に在らぬことを暴露されそうだったので、そこでようやく三人の会話に割り込んだのだった。


「ヒスイ、様?」


「すいませんノブナガさん、ずっと待たせてしまいました」


ということで五年ぶりに新しいエピソード混じえてみましたがいかがだったでしょうか?

新装版はくっ付けるだけにする予定だったのですが、読んでくれる方が意外といて感想等も貰えたので、今回このような形をとりました

これからもこの作品を楽しんでもらえると幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ