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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第46陣師との思い出

 散々な目にあった昼食を終えて、闘技大会再開。準決勝戦の相手は、予想はしていた通りノア師匠だった。


「まさかこんな所で師匠と戦えるなんて、俺嬉しいですよ」


「そう言っておきながら、私と戦う気満々だったじゃないですか」


「まああれから大分経っているから、俺の成長した姿を見てほしいというのが、一番の理由だったりするんですけどね」


 お互い真剣な眼差しで対峙する。こうして師匠と再び手を合わせるのは、二年ちょっとぶり。果たして俺は彼女に勝てるのだろうか?


「私の可愛い弟子相手ですから、手加減をしたいところですけど」


「全力で来てくださいよ師匠」


「分かりましたよ。では」


『勝負!』


 ■□■□■□

「光の剣よ、参れ」


 師匠が最初に使った魔法は、無数の剣を呼び出してそれを敵目掛けて放つものだった。どうやら最初から本気で来るらしい。


「やっぱりその魔法ですか。だったら俺だって」


 それに対抗して、俺は太刀を鞘から抜いて集中させる。そして横に一振り、大きく振った。そして剣の軌道に沿って炎が発動し、やって来た刃を全て焼き払った。


「その魔法、ここに来て覚えたんですか?」


 少し驚いた様子で師匠は尋ねる。


「ノブナガさんの太刀使いを見よう見まねして、そこに魔法を乗せたんですよ。だからこうやって……」


 俺はそれに答えながら太刀を縦に振りかざし、魔法を加える。それによって炎を纏った斬撃が師匠へと向かう。


「なるほど、確かに成長していますが」


 それをも簡単に受け止める師匠。でも俺はそれを囮として放っただけで、既に次の一手を放つために師匠との間合いを一気に詰めていた。


「戦いというのは、先の手を読むんですよヒスイ」


「え?」


 だがそれをも予想していたかのように、俺の足元に魔法陣が発動。まさに近接の為のトラップ。慌てて魔法陣から離れようとするが、間に合わずに光の鉄槌を喰らってしまう。


「くっ……」


 直撃を喰らってしまった俺は、そのまま地面に倒れ込んでしまう。


「もう少し手加減するべきでしたかね」


 勝負あったかのように言う師匠。いや、勝負ありなのかもしれない。


(やっぱりすごいや、師匠は。でもまだ俺は……)


 それが昔の俺なら、の話だけど。


「まだ……終わってませんよ、師匠」


「あれを直撃で受けて、立てた人はほとんどいないんですけど。やはり成長しましたねヒスイ」


 何とか残っている力を使って立ち上がった俺を、嬉しそうにそう言う師匠。そう、俺はあれから成長したんだ。


 そう、あれから……。


 ■□■□■□

 ノア師匠は主に光属性の魔法を使う魔導師で、世界でも名高い魔法使いの一人だった。噂ではかつて世界を一度救っているとか。


『本当は弟子とか苦手なんですけど、国の命令ですし、仕方ないですね』


 出会った頃、師匠はそんな事も言っていた。でもその言葉とは裏腹に、特訓にはかなり厳しい人で、地獄のような毎日を俺は過ごした。


 でもそんな師匠は、どんな時でも優しかった。


『師匠ぉぉ』


 特にサクラが亡くなった直後は、今にも壊れてしまいそうな俺を支えてくれたのは彼女だった。


『ヒスイ、あなたはよく頑張ったじゃないですか。だから胸を張らなきゃ駄目ですよ』


『でも俺……俺のせいで……サクラが』


『ヒスイのせいではないですよ。そういう運命だったんですよきっと』


「運命だなんて、そんな……」


 厳しいように思えたその言葉も、彼女なりの慰めだったのかもしれない。だからこそ悲しくて、俺は涙が止まらなかった。


『師匠、俺……格好悪いよ。こんなんで世界を守っただなんて……』


『どこが格好悪いんですか? 世界の為に頑張ったあなた達の姿を見た沢山の方々が、決してそれを成し遂げたあなたを格好悪いとは思いません。むしろ今そうしているあなたの方が格好悪いです』


 そんな俺を彼女は優しく受け止めてくれて、泣きじゃくる俺に優しい言葉をかけてくれた。


『確かに犠牲は大きかったかもしれません。それでもあなたはこの世界を救った。それだけで充分じゃないですか』


『師匠……』


 今となっては俺もサクラの事から完全に立ち直れたけど、恐らく師匠の言葉がなかったら、自分の世界に戻ることすらしていなかったかもしれない。


 あの言葉があったから俺は今ここにいる。


 あそこで少しでも立ち直れていなかったら、俺は弱いままだった。


「師匠には感謝しています。俺をここまで成長させてくれた事を」


「成長なんかさせていませんよ。ヒスイが自分で乗り越えて、自分で強くなっただけです。私はその背中を押してあげただけにすぎませんよ」


 俺は近距離でありながらも再び太刀を持ち直す。師匠もそこから動く気はないようだ。


(つまりこの状態で一撃を与えたほうが勝ち、か)


 状況的に一振りで相手に与えられる俺が有利。だけど師匠は、その状況ですら一転させる力がある。果たしてどちらがこの状況を制するのか。


「今日こそ俺が勝たせてもらいます!」


「さあ、来てください、ヒスイ!」


 その言葉と共に、両者の一手が放たれて……。


 ■□■□■□

「あーあ、折角の決勝戦は中止かぁ」


「いやぁ、俺もまさかそうなるとは思わなかったよ」


 あれから数時間後。俺はヒデヨシや師匠、そしてノブナガさんと共にリキュウさんの離れにいた。


 ちなみに準決勝戦はどうなったかというと、両者ともダウンするというなんとも驚きの決着となってしまった。


(でも正直、師匠が勝ってもおかしくなかったんだけどなぁ)


 お互い一撃を放ったのだが、自分の攻撃は当たっていなかったような気がした。だけど師匠の一撃を受けた俺は、気を失い気がつけばここに寝かされていた。


「私感心しましたよ。ヒスイも強くなりましたね」


「そういう師匠だって、あれから全く衰えていないじゃないですか。俺なんかまだまだですよ」


 分かってはいたが師匠の腕は全く衰えていなかった。年は聞いたことはないけど、そこそこの年齢はいっていると俺は(勝手に)思っている。それだというのにあの実力。師匠はやはり師匠のままだった。


「私本当はノブナガ様と二人の内どちらかが、戦っているところを見てみたいんですけどねぇ」


 お茶を出しながらリキュウさんが言う。先程まで大会に出ていたのに、疲れた素振りすら見せていない事に俺は少し驚く。


「あ、それ私も。一応流れ的にはノブナガ様が優勝って事になってるけど、折角だから二人の内のどちらかに戦ってもらいたいかも」


「そんな無茶な事言うなよヒデヨシ。ノブナガさんだって疲れているんだから、もう終わりでいいだろ」


 ヒデヨシの意見に俺はそう答える。


「私はヒスイ様ともう一度お手合わせをしたいです」


 けどの言葉に反対したのは誰よりもノブナガさんだった。


「私はもう一度ヒスイ様と太刀を交わらせたいんです。もう時間もないのですから、よろしくお願いしますヒスイ様」


 もう時間がない


 今ここにきて俺はようやく自覚する。


(明日にはこの世界を離れるんだよな、俺)


 大会が盛り上がったせいで忘れてしまっていたが、今日がこの世界で過ごす最後の夜。明日の昼頃にはここを出るとの事らしいので、もう時間は残されていない。


 次いつまた彼女とこうして会えるか分からない。だったら最後くらい、彼女と……。


「分かりましたノブナガさん。俺その勝負引き受けますよ」


「本当ですか?」


「はい。ただ、その代わり」


「その代わり?」


「皆には申し訳ないけど、ノブナガさんと二人きりで戦わせてください」


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