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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第36陣 Boy meets girls again

 ミツヒデに決闘を申し込まれた翌日、俺は早速その話をノブナガさんに話した。


「ミツヒデって昔からそういう所があるんですよ。度々私も困らされていて」


「でも流石に今回のは……」


「私も予想外でしたね。決闘まで申し込んでくるなんて」


「だったら何とかしてくださいよ。俺決闘とかするタイプではないんですよ」


「その割りには一人で戦ったりする事とかありますけど」


「それはそれですよ。何でよりにもよって、仲間と戦わないといけないんですか」


「お気持ちは分かりますけど、こればかりは私にも……」


 ちなみに決闘は三日後の昼。あの闘技場で行われる事になっている。全て誤解だといえば終わる話なのだろうけど、もしこれで険悪になってしまったら……。


(それこそ歴史通りになってしまう。それなら……)


「えーヒッシーとミツヒデが決闘するの? じゃあ私も混ぜてよ」


 そしてここにもう一人、今回の件を全く理解してない人がいた。


「混ぜてって、決闘はそういう物じゃないんだけど」


「だって楽しそうじゃん。私まだ納得いってないもん。ヒッシーとノブナガ様が結婚する事」


「だからどうしてお前も人の話を聞かないんだよ」


「あ、でもここでヒッシーに決闘を申し込むのは変だよね。仕方ないか」


「そうやって最初から諦めてくれれば……」


「私ノブナガ様に決闘を申し込む事にする。それで勝って、今度こそヒッシーと結婚する」


「「だからどうしてそうなるんだ(ですか)!」」


 ヒデヨシの思わぬ矛先に、当のノブナガさんは勿論のこと、俺も同時にツッコミを入れてしまう。

 たった一つの誤解がまさかこんな形になってしまうなんて、俺もノブナガさんも果たして予想していただろうか。


(いや、もしかしたらこれも誰かが仕組んで)


「うーん、でも普通に戦っても私に勝ち目がないから……」


「ないなら、決闘する必要なんて」


「料理対決にしましょうノブナガ様」


 本当にこうなる事まで予想できるのか?


「料理対決……いいですね。それ」


「どうしてそこでノブナガさんも乗り気なんですか!」


「だって面白いじゃないですか。私ヒデヨシさんの料理食べたことありませんし、是非ヒスイ様も御一緒に食べ比べて欲しいんです」


 しかもノブナガさんもノリノリだし。


「そう言われましても……」


 こういうのって審査するのは俺という事になる。つまりどちらかを選べという事だが……。


「あれ? これ俺何一つ得しないような……」


「勝負はヒッシーが決闘する同じ日でいいですか?」


「了解しました。それで受けて立ちましょう」


「だから俺の話を……」


 頼むから誰か聞いてくれ。


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎

 ノブナガさんと俺が結婚するという嘘から始まり、誤解が決闘を生み挙げ句の果てには料理対決という、どうみても俺の逃げ場がなくなってしまった。


(俺の言葉が悪かったのか?)


 付き合ってほしいと言いはしたが、それはただ迷惑かけたお詫びを込めての事だった。

 それをノブナガさんが勘違いして、それが噂になって決闘という形にまで派生した。


(周囲の視線が怖い)


 翌日城下町に散歩に出かけた俺は、周囲からの明らかな奇異な目に少し恐怖を覚えていた。


(これでミツヒデに勝って、向こうが認めたらどうなるんだよ)


 勝てる自信は正直ある。けど勝ったら勝ったで今よりも周囲の目が痛くなるのは間違いない。


「はぁ……何でこうなるかな……」


 深いため息を吐きながら歩いていると、広場の方で何やら騒がしい気配がした。


(あれ、この流れどこかで見たような……)


「この前の戦は私が勝ったんだから、これで私の七十一勝七十敗。いい加減領土をよこしなさいよ」


「馬鹿言えケンシン。この前の戦いは私の勝ちなんだから、そっちの領土をよこせ」


「嫌よ。誰があんたみたいな減らず口女に渡すもんですかシンゲン」


「それだったら、私もあんたみたいなのっぺらぼう女に渡したくないわよ!」


 やっぱりまたこの流れか。


(何でこんな所で喧嘩するかな)


 ここは敵の本拠地だっていうのに。


(相変わらず血気盛んだなこの二人は)


 また巻き込まれるのが嫌だった俺は、こっそりその場を立ち去ろうした。


「あ、そこにいるのはいつかの」


「化け物男」


 だがすぐにバレてしまった!


「誰が化け物男だ! とりあえず迷惑だからこっちに来い!」


「え? ちょっと何を」


「おい、何をして」


 見つかってしまった以上無視ができない俺は、喧嘩をやめさせる為に近くの団子屋に二人を連れていった。


「すげえ、あの二人を引っ張っていったぞ」


「流石ノブナガ様の結婚相手」


 去り際に余計な言葉を聞いた気がするが、嫌がる二人を引っ張り無理矢理団子屋に突撃。

 店主もいきなりの登場に驚いたものの、ちゃんと三人分の席を用意してくれた。


「二人っていつも喧嘩しているのか?」


「別に私は好きでしているわけじゃないのよ。シンゲンがいつも喧嘩を売ってくるから悪いのよ」


「ケンシンが苛つかせるような事を言うから悪いんだろ」


「いちいち喧嘩するなって」


 団子を食べながらもなお喧嘩をする二人。殴り合いにならないだけまだ平和だ。


「ていうか二人とも敵軍同士なのに、どうしてそんなに二人きりなれるんだ? そもそもここ、織田軍の領土だし」


「自分達の領土でこんな醜い争いはしたくないのよ」


「醜いかは別として、それはケンシンに賛成だな。それにノブナガに借りがあるから、いつかは返さないといけないし」


「そうそう。だからいつ攻めるかもしれないか分からないから、油断しない方がいいわよ」


「肝に銘じておくよ」


 こっちが説教するつもりが逆に警告される始末。この二人本当に仲がいいのか悪いのか分からない。


「あ、そういえばお前あのノブナガと結婚するんだってな」


「え、あ、それは」


 突然話題が例のデマに切り替わる。


「式の日決まったら教えろよ。祝ってやるから」


「それだけは勘弁してください」


「どうしてだ? 祝い事は敵同士でも、盛大に祝ってやるのがマナーってものだろ」


「そうよ。結婚は祝ってなんぼなんだから」


「言葉だけありがたく受け取っておきます」


 そもそも嘘の話なので本当に勘弁してください。


「何だよつまらないな。折角奇襲かけようと思ったのに」


「余計に呼べるか!」


 祝い事が呪い事になりかねないだろ、それ。

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