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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第16陣貫きたいもの

 くノ一


 その名前に俺は当然聞き覚えがあった。それはヒデヨシも同じらしく、その名前を聞いた瞬間少し驚いていた。


「という事はもしかして、お前忍者なのか?」


「うん。そうだよ。すごいでしょ」


「いや、確かにすごいけどさ。何でその忍者が魔法を覚えたいだなんて言うんだ?」


 彼女の忍者としての能力は、先程の闇討ちでハッキリしている。一つ間違えれば俺は死んでいた。

 その実力を持つ彼女が、何故それを求めるのか。彼女の答えは、


「だって格好良かったんだもん」


 シンプルイズザベスト


「格好いいって、別に大層なものじゃないぞ? さっきのだって簡単な魔法だし」


「じゃあどういうのが格好いいの? ヒッシー」


「何でお前が聞くんだよヒデヨシ」


「いや私もちょっと気になったからさ」


「だよねー。気になるよね」


「なんで仲良くなっているんだよ?! あとお前はさっさと帰れ!」


 とても数刻前まで戦をしていた雰囲気とは思えないくらい、和やかなムードが漂う戦場。

 どちらの兵もどう動くべきか分からず立ち尽くしているし、もはや夜戦とは呼べない状況になっている。




「うーん、仕方がないな。今日は帰らないとお館様に怒られるし、ボク帰るね。また来るよ」


「さっさと帰れ。そして二度と来んな」


「ヒッシー、そこまで言わなくても……」


「何で俺は一度殺されかけた人間に、魔法を教えなければならないんだよ。そもそも誰かに教えられるようなものじゃないから」


「えー、つまらないの。折角面白いものを学べそうだったのに」


 肩をすくめながら兵を連れて歩き出すくノ一。というかそもそもくノ一って女忍者の総称だから、彼女の本名は違うのではないかと思う。まあそんなのはどうでもいい話なんだけど。


「俺達も帰るか」


「そうだねヒッシー」


 くノ一達の姿がある程度見えなくなったところで、俺はヒデヨシに言う。

 時間が時間なだけあって、かなり眠い。それにノブナガさんがいない日はまだ始まったばかり。この先に備えて体力も回復させておく必要がある。


「魔法かぁ……私もできたら教えてほしいな……」


「やめておいたほうがいいぞ」


「どうして?」


 その問いには答えない。俺は知っているからだ、

 ゼロから魔法を得ようとして散っていった人達の苦しみが。


 ヒデヨシに同じ道を歩んで欲しくない。ただそれだけだ。


 それがたとえあのくノ一だとしても同じだ。


「どうしたのヒッシー」


「あ、いや、なんでもない」


 魔法というのはそれほど危険を伴うものだった。


 ■□■□■□

 色々と予想外な結果で終わった夜中の戦いから一夜明け、疲れているはずなのに意外と早く起きてしまった俺は、気晴らしにリキュウの元を訪ねていた。


「へえ、昨日そんな事があったんですかぁ。新人クンも大変ですねぇ」


「本当色々な意味で大変だよ。こんなのどかな時間を過ごせるのも今くらいだしきっと」


「朝にこうしてお茶を飲んでまったりとした時間を過ごすのも悪くないでしょ? こういう時間を私は大切にしたいんですぅ」


「確かに何が起きるかわからないからな」


 相変わらず苦いお茶を飲みながら、静かな朝をリキュウさんと共に過ごす。こんな風景も、いつなくなってしまうか分からない。

 戦いというのはそういうものだし、戦国時代でなくても常に戦いの中で生きるものは同じ感覚だろう。俺はそれを過去に一度経験しているから、よく分かる。


「でも毎日ここで過ごしていて、退屈になったりしないのか?」


「全然退屈なになんてならないですよぉ。むしろ毎日色々な発見ができて、楽しいくらいですから」


「色々な発見?」


「はい。毎日茶葉を変えたりしながら、色々なお茶を作っているんですよぉ。ですから、毎日新しいお茶が出来るんですぅ」


「なるほど。確かにそれは色々な発見ができそうだな」


「はい。いつか新人クンが気に入るお茶もきっと見つかりますよ」


「俺あまりお茶好きじゃないのですけど……」


「何か言いましたか?」


「あ、いえ。な、なんでもありません」


 相変わらず笑顔が怖いですリキュウさん。


「私はどんなにこの時代が戦だらけの時代になってしまっても、この道を貫きたいんですよぉ」


「自分の道……」


「ここがずっと安全でないのも分かっているんです。ノブナガ様もいついなくなってしまうかも。それでも私は茶だけは絶対手放したくないんですぅ」


「リキュウさん……」


 相変わらず気の抜けた口調なものの、リキュウさんの言葉にはしっかりとした意思があった。


 きっとさっき俺が言った言葉に対しての答えなのだろう


 何が起きるかなんて分からない。けど貫きたいものが彼女にはある。だから退屈したり、飽きたりする事はないんだと。


(流石は茶聖か……)


 そんな彼女が俺は少しだけ羨ましく思えた。


「俺もリキュウさんと同じであったんだ。何があっても貫きたいものが」


「あった?」


「もう貫き通せなくなったんだ。ずっとずっと前に」


 何故なら俺はその貫きたい意思をもう失ってしまっている。


 だから羨ましかった。


「なら今からでも見つければいいんじゃないんですかぁ?」


「今から?」


「新人クンにはまだ難しい話かもだけど、戦い続ければきっと見つかると思いますよぉ」


「新しく、か……」


 お茶を啜って考えてみる。今もし俺が見つけられるとしたら、それは……。


「先は長いですし、ゆっくり考えましょう」


「あ、ああ」


 ノブナガさんの事かな……。


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