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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第15陣闇討ちvs闇討ち

「とにかく気をつけてくださいね、きっと私の留守を狙った襲撃は絶対にありますから」


「襲撃もそうですけど、他にも色々と気をつけます」


 ヒデヨシはまだ戦力になる。問題は他の二人。この四人で果たして三日間を乗り切れるか不安しかない。


「私もいざという時には戻ってきますが、基本はヒスイ様に任せますから、しっかりとお留守番頼みましたよ」


「城の安全は保証しますけど、俺の体の安全は保証しかねます」


「そこはしっかりしてくださいよ。まあもしも何かあったら、私がお灸を据えますから」


「何かが起きてからじゃ遅い気がします。というか絶対何か起こしますよあの二人なら」


「それはそうかもしれませんけど」


(せめて否定してくださいよ……)


 そんな会話をしている内に、城の入口に到着する。そこには既にミツヒデがいて、もういつでも出発できる状態だった。


「じゃあ俺はこの辺で」


「城を頼みましたよヒスイ様」


「任されました」


「それでは行ってきます」


「行ってらっしゃい」


 こうして俺の魔の三日間が幕を開けるのだった。


 ■□■□■□

 ノブナガさんを見送ったあと、早速ヒデヨシとネネを部屋に呼び、これからの三日間について話し合いをする事にした。


「いいかお前達、これから三日間俺達三人でこの城を守っていくんだぞ。分かっているよな?」


「勿論分かっているよ。ヒッシーがいれば何とかなるだろうし」


「なんでも他人任せにしようとするな! お前もちゃんと働いてもらうからな」


「えー、面倒くさい」


「そんな事言っている場合じゃないだろ!」


「たとえ城がどうなろうとも、私はお姉様がいればそれだけで充分です」


「お前はもっと問題外だネネ」


 こいつら本当に今までこの城を守ってきた武将なのか? 特にはネネは最初から戦う気が見えない。


(おいおい、これをどうやってまとめればいいんだよ俺は)


 ノブナガさん、俺は約束を守れそうにないです。


「もうヒッシーは我が儘なんだから」


「それはお前だけには絶対に言われたくなかったよ!」


「まあ! お姉様を侮辱するなんてあなたはダメ人間ですわ!」


「戦おうともしないダメ人間にダメ人間って言われたのは俺初めてだよ……」


 ヒデヨシの言葉に傷ついた俺を、さらにネネが追い打ちをかける。いや、本当にどういう性格しているんだよこの二人。


(本物の秀吉が聞いたら、多分たまげるぞ)


「と、とにかく。お前たちにはしっかり働いてもらわないと、後でノブナガさんに怒られるぞ」


「怒られるってどんな風に?」


「それはお前、あの人の事だから……」


 どんな事をされるか少しだけ想像してみる。あの人は一見優しそうに見えるが、リキュウ以上に何か腹黒いものを感じる。


「笑顔で拷問とかしそうだな」


「ね、ねえヒッシー、私真面目に働こうかな」


「わ、分かればよろしい」


 どうやらヒデヨシも俺と同じような事を考えたのか急に震えだしてそんな事を言った。


「お姉様がそう言うなら、わ、私だって真面目になります」


 ネネも別の意味で納得してくれたらしく、とりあえず俺達は三人で協力する事にはなった。

 しかしその初日から早速事件が発生するとは誰も思っていなかった。


「た、大変態、大変だよヒッシー!」


「何か最初の言葉だけ変だった気がするけど、どうしたんだよそんなに慌てて。またネネに追い掛け回されているのか?」


 ノブナガさんが出発してから幾らかの時間が経った後、慌てた様子でヒデヨシが俺の部屋に入ってきた。


(というか大変態ってなんだよ)


「そうじゃなくて! 敵襲だよ敵襲!」


「敵襲だって!? 嘘とかじゃないんだよな」


「こんな所で嘘をついたって意味がないよ」


 ヒデヨシが持ってきた知らせは、俺が最も危険視していたノブナガさんがいない間の敵襲。

 ある程度は覚悟はしていたとはいえ、まさかこんなにも早い時間に敵がやって来るとは思っていなかった。


「で、肝心の相手は何軍だ?」


「それが敵陣が遠くて何軍か把握できてないの」


「遠くてって、まだ攻めてきてはいないのか?」


「うん。城下町から結構離れたところに敵と思わしき兵が見えたって伝令が来たから、それをそのまま伝えた」


「なるほどな。時間的には今は夕方で、攻めて来る気配なし。でも遠くで陣取っている。という事はつまり……」


「つまり?」


「ヒデヨシ。今のうちに睡眠を取っておけ」


「え? どうして?」


「どうやら今宵は夜戦になるかもしれない」


 ◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎


 それから更に時間が過ぎ、外は既に真っ暗になっていた。常に敵軍の見張りをつけているのだが、それらしい動きは未だに見えておらず、俺達は緊張感が抜けないままその夜を過ごすことになった。


「ねえヒッシー、さっき言ったことが本当なら、もうそろそろ動きがあってもいいと思うんだけど」


「そうなんだけど、あっちだって偵察をこっちに送ったっておかしくないはずなのに、その気配すら見えない」


「そうなんだよね。でもだからと言って油断できないから」


「油断できないのは分かるんだけどさ、その状態で寝るの辛くないか?」


 今現在俺とヒデヨシは城下町の出入り口付近にある小さな小屋で敵の襲撃に備えていた。城の守備の方はネネに任せてある。

 彼女が戦っているところなんて一度も見たことがない上に、あまりやる気が見えない。だから俺もこの配備には反対したのだけれど、


「私達がその前になんとかできるから大丈夫だよ」


 ヒデヨシが半ば強引ではあるが正論な事を言ってきたので、結局この配備に。確かにネネを前線に出すよりは、大人しく城にいてくれた方がまだマシだ。


(ヒデヨシの事だから、どうせネネと一緒にいるのが嫌なんだろうなきっと)


 ネネと一緒にいたくないという一心で出した作戦なのだろうけれど、ベストではあるので俺はそれ以上の事は言わなかった。


「ん? この鎧の事言っているの? 平気平気。もうすっかり慣れているから」


「その体で?」


「その体で、って失礼だよ! 私だって真剣に生きているんだから」


「悪い悪い。からかうつもりはなかったからさ」


「ふーんだ。ヒッシーの嘘つき」


 拗ね始めるヒデヨシ。ちょっと俺も失礼なことを言った事を言ってしまった事を反省した。


(真剣に生きている……か)


 以前ノブナガさんが言っていた通り、いつ死ぬか分からないのがこの時代。その中で小さい体ながらも一生懸命に戦っている彼女を、俺はちょっとだけ馬鹿にしてしまっていた。


「悪かったヒデヨシ。お前だって真剣なんだよな」


「当たり前だよ。私は一人の戦人として生きているんだから、常に真剣なの!」


「じゃあその真剣なのを今見せてくれよ」


「え?」


「どうやら敵軍が動き出したみたいだからさ」


 外に目をやると、遠くに灯っていた光が微かに動き始めたのが見え、それとほぼ同タイミングで、伝令が俺達の元へやって来た。


「伝令! 敵軍が動きを見せ始めました」


「よし、こっちもさっき伝えた通りの作戦で動くぞ。城の兵にも伝えてきてくれ」


「はい!」


 伝令を城へ向かわせ、俺とヒデヨシも外に出て出入り口の門のど真ん中に立つ。


「さてとヒデヨシ、前回は全く活躍しなかったから今回は頼んだぞ」


「活躍できなかったのはヒッシーがほぼ原因なんだけどね」


「まあそんな事気にするな」


「あ、誤魔化した。ずるいよヒッシー」


「さあ行くぞ!」


「うん!」


 こうして俺の二度目の戦は、ほぼ日付が変わると同時に、火蓋が切られる事になった。


 ■□■□■□

 今回俺が組んだ作戦は前回のような地の利を活かしたようなものではなく、いたってシンプルな作戦だった。


 火や光の魔法による敵の誘導からの闇討ち


 前回と若干似てはいるものの、この暗闇の中ならより目立つ事のできる作戦だ。


「でもやっぱりヒッシー、それって単純すぎないかな。相手からしてみればこっちの姿も丸見えだし」


「今回はそれを使った作戦なんだから心配するなヒデヨシ。何とかなる」


「そうだといいんだけど」


「しかも敵はご丁寧に明かりを持たずに動いている。突然どこかが明るくなったら必ずそっちへと向かうはずだ」


「うーん、何か私は嫌な予感がするんだけどな」


「とりあえず今は動くしかない。俺はもう始めるから、頼んだぞヒデヨシ」


「あ、ちょっと待ってよヒッシー!」


 ヒデヨシをその場に残し俺は、早速城から城下町から離れたところに向かう。

 その移動の間にも、火の魔法を使ってあえて俺の行動が目立つようにする。これなら敵だって俺の方に向かってくるだろ絶対に。


「けどその考えがお見通しだったらどうかな」


「え?」


 移動途中、突然暗闇の中から声が聞こえる。慌てて俺はそこに光を向けるが、そこには誰もいない。一体どこに……。


「ここだよ、織田軍の新人君」


「なっ!」


  突如背筋が凍りつき、動けなくなってしまう。


「どうやらボクの闇討ちは大成功みたいのようだね」


 謎の人物に背後を取られ、身動きがとれない状態になってしまった俺は、とりあえず落ち着いて現状を打破する策を考える。


(こっちの作戦を読んでたか……!)


 向こうは俺たちの作戦を読んだ上で、光を使わずに闇討ちをしてきた。


「あれ? どうしたのかな。もしかして予想外だった?」


「ああ。全くもって予想外だったよ」


「君は僕達を城から離そうとしていたけど、そんなの最初から僕は読んでいたんだ。だから今頃は城の方は大変なことになっていると思うよ」


「何だと!」


(ヒデヨシがやばい!)


「期待の新人だなんて聞いていたけど、どうやら考えはまだまだ甘いみたいだね。策の裏の裏をかかなければ、この世界では生きていけないよ? まあ、今もう死ぬことになるんだけどね」


「くっ!」


 迂闊だった。そもそも何軍か分からない時点で考えるべきだったんだ。そこに敵将と思わしき人物がいないってことを。


(ノブナガさんがいなければ、大将すら必要ないって事か)


 どうやら俺達はいきなり絶体絶命のピンチに陥ってしまったらしい。


(でもだからと言って諦めるなんて事は出来ないよな)


 確かに今の状況はあまり芳しくない。でもヒデヨシは諦めてなんかいないだろう。どんな時でも真剣に生きている彼女なら、何とかしようと頑張っているはずだ。だったら俺だって……。


「さてと、じゃあ時間も惜しいからトドメ刺させてもらうね」


 剣を俺に突きつけたまま、別の剣を抜く音が聞こえる。どうやらもう一つの剣で、俺の心臓でも刺すつもりなのだろう。だったら……。


「俺だってそう簡単に終われない!」


 俺は相手に背を向けたままで相手の視界を奪うことのできる光の魔法を発動させる。それと同時に、俺を中心として周囲が強烈な光に包まれた。


「な、い、いきなり光が!」


 思わぬ反撃に驚いたのか、相手は小さな悲鳴をあげると共に一歩下がる。それを見計らって俺は、すぐに太刀を鞘から抜いてその勢いを利用して半回転。背後にいた謎の敵に一撃を加える。


「きゃァァ!」


 相手が一歩下がった影響で大した一撃を与えた手応えは感じなかったが、確実に一撃は加えられたはず。

 俺は火の魔法を使って、辺りをちょっとだけ照らした。そこにいたのは、微かに傷を負ってその場に座り込んでいる銀色の短髪の少女だった。


「な、何今の!急に光が出てきたと思ったら、眩しくなって……。気付いたら斬りつけられてて……。 僕あんなの見たことないよ」


「それは見たことないだろうな。というか俺と一部の人間にしか分からないだろうからな」


「き、君は一体何者?」


「俺か? 俺はヒスイ。魔法使いさ」


「マホウ……ツカイ?」


 意味不明な言葉を言われてキョトンとする少女。まあ、分かる方がおかしいもんな。


「だから俺だって簡単には負けられ……」


「か、格好いい! そのマホウというやつボクに教えて!」


「は?」


 ちょっと何言っているか分からないです。


 ■□■□■□

 謎の少女に突然の申し出を翡翠が受けているその頃、ヒデヨシは敵を何としても城下町に入れないように防衛していた。


(もう、やっぱり駄目だったじゃんヒッシー)


 本来の作戦ならヒデヨシは今頃敵の本陣にたどり着いているのだが、彼女を待ち受けていたのは城に向かって攻めて来る沢山の敵兵。

 多少の援軍がいるとはいえど、このまま真っ直ぐ敵陣に向かったところで敵将はいないと思われるので、結局彼女が城を防衛することになってしまった。


(でもこれだけの数が攻めて来ているという事は、ヒッシーには敵将が向かっているのかな?)


 そうだとしたらこっちより彼のほうがピンチだ。今すぐにでも援護に向かいたいが、なにせ数が数なので、強行突破しようにもかなり手間取る事になってしまった。


(不意打ちでも食らったら、いくらヒッシーでも……)


 この暗さの中だから、いつどのタイミングで敵が攻撃を仕掛けてくるのか読めない。

 だから闇討にでもあったら、いくらマホウという不思議な力があったとしても確実に負けてしまう。


(ううん、きっと大丈夫、ヒッシーならきっと)


 だがヒデヨシは彼を信じていた。この前の戦いだってそうだったけど、彼は予想外の展開にもすぐに対応していた。だから今回だってきっと……。


「ヒッシー……大丈夫だよね?」


 思わず戦いながらヒデヨシは、彼の名前を呼んでしまった。


「呼んだかヒデヨシ」


「え?」


 まさかそれに本人が返事をするとも知らずに。


「ヒッシー、どうしてここに?」


 ■□■□■□

「えっと、つまりこの子がヒッシーの弟子になりたいって言っているの?」


「ああ。俺は勿論お断りなんだけどな」


「そんなこと言わないでよー。ボクは真剣なんだよ」


 あの後この少女を俺は引き剥がすことができず、ヒデヨシの所までズルズルと連れてきてしまった俺は、事情を彼女に説明した。

 説明したと言っても、俺自身ほとんど理解できていないので、とりあえず本人に色々と聞いてみることにした。


「まずお前、名前何て言うんだよ」


「ボク? ボクはくノ一って名前なんだ」

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