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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第13陣流星

 それからどれくら彼女に付き合わされたのかさっぱり覚えていない。城に戻った頃にはかなり疲労していたし、部屋に戻ったらすぐに眠ってしまいたい気分だった。


(この一週間、ハードすぎる)


 タイムスリップから始まって、初めての戦。そして二度に渡るデート。その濃すぎる内容に、流石の俺も体力が限界だった。


(これでおまけに四日後にはノブナガさんがしばらく不在だろ……)


 戦死より過労死する方が近いかもしれない。


「ヒッシー、起きている?」


 ようやく自分の部屋へと戻ってきた俺は、もうそのまま寝ようとしたが、部屋の外からヒデヨシの声が聞こえる。


「もう疲れたから、寝るけど何か用?」


 俺は立ち上がらず(というか立ち上がれない)布団にうもれたまま適当に答える。


「えー、まだ夜なのに」


「夜だから眠いんだよ」


「私はそんなのお構いなしだよ!」


「自分勝手だ……ぐはっ」


 目を瞑っていた為彼女が勝手に入ってきた事に気がつかず、背中に重たい一撃を喰らってしまう。


「どうだヒッシー、これで目が覚めたでしょ」


「殺す気か!」


 布団から起き上がると、そこには何が面白いのか爆笑しているヒデヨシがそこにいた。


「もう本当にヒッシーはひ弱だね」


「お前が容赦なさすぎるんだよ。おかげで目が覚めたじゃないか」


 眠気が吹き飛ぶほどのヒデヨシからの一撃に、俺は少しだけ怒りを覚える。


(こっちはヘトヘトなのに勘弁してくれよ……)


「それならよかった。実はヒッシーについてきてほしいところがあるの」


「ついてきてほしいところ? こんな時間から?」


「この時間だからこそなの。昨日付き合ってくれたお礼だから行こう!」


「こんな時間に外に出て怒られないか?」


「大丈夫。皆も一緒だから」


「何だ皆も一緒なのか」


 それなら問題はないかもしれないけど、皆してどこへ行こうとしているのだろうか?


(皆も一緒って事はノブナガさんもなのか?)


「それでどこに行くんだ?」


「この前戦った山だよ。あそこで今日流星群が見れるの」


「流星群?」


「そういう事だから早く行こうヒッシー。皆待たせているから」


 そんな事考えている間に無理やりヒデヨシに引っ張られ連れて行かれる。まだこの時代にやってきて一週間も経たない俺に対して、ここまで積極的に接してくれるのはすごくありがたいけれど、何か色々と強引すぎるような気がするのは俺だけだろうか。


「お、おい、引っ張るなって」


 何というかこういうイベントって、様々な前提があった上で成り立つもので、こう最初から好感度が高いチートみたいな感じではない。そいういのは小説とかゲームの中でしかないものだと思っていたけど、自分自身がこうして体感するとすごく恥ずかしい。


(でもまあ、悪くはないか)


 ギスギスした関係よりは何万倍もいい。


「痛い痛い、引っ張りすぎだ」


「ヒッシーがボーッとしているのが悪い!」


 形が色々間違っている気もするけど。


 ■□■□■□

 ヒデヨシや他の皆(ノブナガさんとネネも加え)と一緒にやって来たのはこの前の戦で使用したあの山の一番上。

 さほど高くない山なので、十分くらいで到着し、何故か皆そこに寝そべって空を見上げていた。


 俺もそこに一緒に寝転がって空を見上げる。


「うわぁ、綺麗な星空だな」


 そこに広がるのは満点の星空

 都会とかと違って、余計な光もない自然の中で見る星空は段違いだった。


(空ってこんなに綺麗だったんだ)


「流星群はもう少し時間が経った頃に見れるらしいですよ」


「ノブナガさん詳しいんですね」


「書物に書いてあったんですよ。何年に一度この時期に綺麗な流星群が見れるって」


「書物に書いてあったという事は、昔から見れたんですか」


「そうみたいですよ。あ、流れ星」


 会話の途中でノブナガさんが指差してそう言った。それとほぼ同タイミングで、沢山の流れ星が夜空を駆けていく。どうやら思ったより早く流星群がやって来てくれたようだ。


「うわぁ、すごく綺麗」


 最初にヒデヨシが感想を述べる。


「確かにすごく綺麗だな」


 綺麗な夜空に駆ける星達。流星群なんて縁のなかった俺には、今見ている光景は新鮮で思わず見入ってしまっていた。


「ヒスイ様、これが流星群というやつですよね」


「はい」



 そこからの会話はなく、皆がその光景に集中して眺めていた。こんなもの見せられたら、誰でも黙ってしまう。


「でもそれよりもお姉さまの方がもっと綺麗です」


 折角いい雰囲気になっていたのに、ここでその空気を壊す真打ちの登場。


「い、いきなり何を言うのよネネ。き、気持ち悪いじゃない」


(そう思うならヒデヨシも反応しなきゃいいのに)


「だって事実じゃないですか。私にはどんな物よりもお姉様が一番綺麗なものだと思っていますから」


「わ、私はいつからあんたのものになったのよ!」


「生まれる前からお姉様は私のものです」


「本当にあんた何者なの……」


 ネネの斜め上の解答に、流石のヒデヨシも呆れてものも言えなくなっている。いや、呆れる気持ちは分かるけど、何で今そのやり取りをこの場でするんだよ。


「本当楽しそうですね二人共」


「ノブナガさんも感心していないで止めてくださいよ」


「私はヒッシー一筋なんだから、邪魔しないでよ!」


「そしてヒデヨシ、お前も変な事言い出すな。絶対に俺に飛び火する」


「なるほど。やはり私の敵はあなたで間違いなかったようですね」


「だから違うって!」


 結局このふざけたやり取りは、流星群が流れ終わるまで続き、ようやく収まった頃には既に空はいつもの夜空になってしまっていた。


(何の為に来たんだよ今日……)


 これが織田らしさ? なのかな。


 ■□■□■□

 しかし更なる地獄が待っていたのはその帰り道。何とヒデヨシとネネが疲れてしまったのか、その場で爆睡してしまい、俺とノブナガさんで背負って帰ることに。


「本当世話焼ける二人だな」


「賑やかでいいじゃないですか」


「うるさいだけですよ」


 まあ、その分ノブナガさんと二人きりで話ができるからちょっとラッキーな気分だ。


「ヒスイ様今日は私の手合わせに付き合ってくれてありがとうございました」


「別にお礼を言われるほどじゃないですよ。むしろデートできた俺の方が幸せだったりしますから」


「え?」


「あ。いや、そういう意味じゃないですよ。こ、コミュニケーションが取れてよかったなって思って」


 つい出てしまった本音を隠すように俺は誤魔化す。


「私も一緒です。ヒスイ様とああして二人きりで出かけられて幸せでした」


「思いっきり目立っていましたけどね」


 ノブナガさんがそれでよかったなら別にいいけど。


「今日は沢山思い出できて私幸せです。いつかまた、こういう日があってもいいですよねきっと」


「そうですね。ただ、また手合わせから始めるのは勘弁してください」


「ふふ、それは考えておきます」


 デートの度に手合わせしていたら、こっちの体がもたない。


「あ、それで手合わせで思い出したことがあるんですけど、一ついいですか?」


「手合わせで? 俺から出せそうなまともな答えはないと思いますけど」


「ヒスイ様、最初の手合わせの時より動きが大分違ったのですが、もしかして成長しましたか?」


「いや、そんな事ないですよ。ノブナガさんについて行くのがやっとです」


「それでも充分かと思いますよ」


 思い返すと、俺はついこの前今川の総大将ヨシモトと戦って勝利した。もしかしたらそれでほんの少しは成長したのかもしれない。


 ほんの少し、だけど


「つまりヒスイ様は成長したって事ですね」


「え、いやそうじゃなくて……」


「やっぱりすごい人ですねヒスイ様は「8


 満面の笑みでそういうノブナガさんに、俺は思わずドキッとしてしまう。何というかこの笑顔を見ると、言いたかったことも忘れてしまう。


「さ、二人を起こしてしまう前に城に戻りますよ。どっちらが先に到着するか競争です」


「いや、俺は別に競争するつもりは……って早!」


 人一人背負っているとは思えないほど軽々しく走り出すノブナガさん。俺も慌ててそれを追う。


「って重! 絶対甘いもの食べ過ぎただろヒデヨシ」

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