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魔法を戦国時代に持ち込んだら何か無双した  作者: りょう
新装版 第1章乙女だらけの戦国時代
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第12陣Sword & Date 後編

「では参ります!」


 俺に木刀を渡してすぐ、ノブナガさんは動き出した。彼女は俺の嫌なことを受け止めるとか、何だとか言っていたけど、


(それはできないですよ、ノブナガさん)


 彼女は真っ直ぐに俺に迫って来て、突きを放ってくる。その素早い突きに、一瞬反応が遅れたが、俺は剣で弾く事に成功する。


「流石の反応速度です。ですがまだ私の攻撃は終わっていませんよ」


「なっ!」


 突きを弾かれ、完全に無防備になった背後に一撃を与えようとするが、何と彼女は突きの態勢から竹刀を素早く首の後ろを回し、背後からの一撃を防いだ。

 だが彼女の攻撃はそこでは終わらない俺の竹刀をその態勢から弾くと、そこから大きく竹刀を横に一回転振る。弾け飛ばされ次の態勢にうつるのに時間がかかってしまった俺は、その一撃をもろ脇腹に食らってしまい、横に飛ばされてしまう。


「ぐっ、前回より本気出してませんか?」


「前回はひどい目に遭わされましたかね。油断すると、すぐに負けちゃいますよ?」


 今の一撃でその場に座り込んでしまった俺を追撃と言わんばかりに俺の頭上に竹刀を振りかざそうとする。


「そちらこそ、油断すると痛い目に合いますよ」


「え?」


 俺はそれを避けるために相手の目くらまし用の光属性の魔法を使用。ノブナガさんの目の前にで光が弾け、咄嗟に彼女は目を瞑ってしまう。


「きゃっ!」


 可愛い声とともにそこから一歩退くノブナガさん。ちょっと卑怯な手かもしれないけど、彼女が本気を出すというなら俺もそれに答えよう。


「行きますよ」


 俺はこの前と同じ原理で竹刀に魔法を宿らせる。流石にこの前みたいに燃やすというわけにはいかないので、今回は氷系統の魔法。これでただの竹刀は氷のように冷たく硬い一つの刃となり、彼女に鋭い痛みを与えられる。


「氷刃・一の太刀」


 ただし、今回はあくまで手合わせなので、威力は弱めで。


「う、ぐ、やはり魔法というのは不思議な力ですね」


「何も知らない人からすれば卑怯な手に見えてしまいますからね。でもその魔法と渡し合えているノブナガさんも充分すごいですよ」


 ノブナガさんは氷の刃を受けきると、何事もなかったように立ち上がった。


「褒めてくれて嬉しいですよ。ですが先程も言った通り、私はこの刀でヒスイ様の想いを受け止めます。もっと来てください!」


「言われなくてもいきますよ!」


 いつの間にか熱が入っていた俺は、朝のことなんかすっかり忘れてノブナガさんとの手合わせを心の底から楽しんだ。


 ■□■□■□

「夢、ですか?」


「はい。時折見てしまうんです。自分が思い出したくないあの瞬間が、全て悪夢になって」


 手合わせ後

 俺はノブナガさんに今朝の原因について、かいつまんで説明した。


「だからこればかりはノブナガさんにはどうする事も出来ないんです。俺自身が何とかしないいけないことなので」


「そう、だったんですね」


 ノブナガさんはそれ以上何も言ってこない。俺もそれ以上何も答えなかった。


(ノブナガさん、すいません……)


 俺は心の中で彼女に謝罪した。きっとノブナガさんは俺のことを心配して、あんな事を言ってくれて、こうして俺に話す機会を与えてくれたんだと思う。


 けど俺はその想いに応えられなかった


「あのヒスイ様」


「は、はい?! どうしましたか?」


 急にノブナガさんに声をかけられて俺はビクってする。気がつけば城下町まで戻って来ていて、その入口でノブナガさんが心配そうにこちらを見ていた。


「この後ご予定とかありますか?」


「特にはないです。ここでの生活にもう少し慣れたら、出かけたりしたいですが」


「では私とデートしましょう」


「え?」


 今何て?


「ですからデートしましょう。私に手合わせに勝ったご褒美です」


「で、で、で」


 デートォォォォ。


 あまりに突然過ぎる申し出に、俺はかなり戸惑いながらも断れなく、ノブナガさんとデートへ。

 昨日のヒデヨシといい、二日も連続で女性とデートするなんて、


(もしかしてこれはモテ期か?)


「あ、あのノブナガさん。そんなにくっつかなくても」


 しかもノブナガさんは俺の手を取ってくっついた状態で歩くものだから、すごく目立つ。

 何せ俺の隣にいるのは超有名人の織田信長だ。目立たない方がおかしい。


「大丈夫ですよヒスイ様。私はこうしてるのも嫌いじゃないですし、変な噂が立っても構いません」


「へ?」


 ノブナガさんから出た言葉に思わず変な声を出してしまう。噂が立っても構わないだなんて、それってつまり……。


「何て冗談ですよ」


 まあそうだよな、普通に考えて。


「とにかくヒスイ様は気にしなくていいんです。折角のデートなんですから楽しみましょう」


 俺に体重を預けながら、そんな事を言われて俺の心臓が高鳴る。


(か、可愛すぎる)


 これが織田の総大将だなんて、信じられない。


「そ、それでどこか行きたいとこあるんですか? さっきから歩いてるだけですけど」


「特に目的地は決まっていないです。何だったらお菓子屋さん巡りしますか? 昨日のヒデヨシさんみたいに」


「それはマジで勘弁してください」


 ヒデヨシと俺だけの秘密のつもりが、どうやらバレバレだったらしい。


「私からしてみれば皆さんの行動は筒抜けですから。隠し事はよくないです」


「そういう本人が、黙って出かけている件に関してはどうですか」


「それは私だけが許されることなんです。一々文句言わないでくださいよ」


「おっと、まさかの職権乱用ですか」


 ちょっと言葉が違うけど。


「それにこういった時間が、いつまでもあるとは限らないですから」


「え?」


「私達は常に戦っているんです。いつ誰が命を落とすか分からない中で、一日一日を誰かと過ごすことはとても大切なことだと私は思います。特に私達みたいに常に戦にでている人達は」


「ノブナガさん……」


 織田を率いる者だからこそ重みのある言葉。こんな時代だからこそ、生きている今を大事にしたい。それは皆の命を背負っているノブナガさんだからこそ出て来た言葉なのかもしれない。


(いつ何が起きるか分からない、か)


「もうバレて怒られても知りませんからね」


「その時はヒスイ様に全て任せます」


「まさかの全部人任せですか!」


 だから俺も、こんな美人と休日を過ごすのもいいのかもしれない。


「あ、ちなみにですけど」


「はい?」


「今日のことバレたら、多分ミツヒデが一番許さないと思うので気をつけてくださいね」


「き、気をつけます」

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