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藤林編3



「リセット」


一番の問題は動けないこと。摺り足で歩いてブルドーザーのように人形達を突破するのか。それともソックスで人形達を踏んづけて歩くか。この状況でも「祟り」という二文字が藤林の脳に貼り付けられている。ふと、藤林は思った。


藤林(スイッチを消してみたらどうだろう)


暗所の中ここまで来たのだ。スイッチを消してしまえば、もしかしたら摺り足で人形にぶつかることもなく進めるんじゃなかろうか。三択。

藤林が選んだのは三番だった。スイッチを消す。慣れかかった暗闇も今はそうでもない。リセットされた。それも0からではなくマイナスのスタート。藤林は摺り足で数cm進む。人形は、いなかった。正確にはいるかもしれないが、とりあえず進めたのだ。



「藁」



若干のパニックに陥ったとはいえ、明るい内になんとなくこの通路の状況を理解した。自分の後ろ側。分かれ道で行かなかった先には取っ手付の扉が二つ。トイレと洗面所だと思われた。そして自分のすぐ右と進んだ先の前と左にそれぞれ扉があった。両側は襖だった。正面はこの家には似つかわしくない、いかにも重そうな鍵穴付きの真っ黒な扉があった。今は暗闇で分からないが多分そうだったはずだ。


藤林(左の襖を開けよう)


藤林は壁に沿って進み、襖を静かに開けた。しかしやはりそこは闇。藤林がこの部屋を選んだ理由は壁に沿ったところだったからだけではない。家の構造上、この部屋が藤林が始めにいた部屋の真下だったからである。すなわち音の正体がこの部屋ではないと思ったからだ。

そのまま左壁づたいに部屋の様子を伺う。あまり広くなく、足の感覚から畳が敷かれているだろうと考える。藤林は小さめのタンスか何かの家具に爪先をぶつけた。


藤林「痛!」


ゆっくりとした動きでなければ確実に突き指していただろう。そして家具の上、藤林の目線くらいの高さにある何かに触れた。ゆっくりと触ってみると形で分かった。この大きさは、藤林が欲していたそれだった。


藤林(懐中電灯…!)


懐中電灯を手に取った藤林。しかしスイッチを押すのにはためらった。また足元に人形が現れたり、明かりを遮る何かが目の前に立っているかもしれない、と。


藤林(ああ、怖いなぁ)


藤林は手で光射部分を押さえながら出来るだけ目を細めた。スイッチを押すとわずかな手の隙間から漏れる極小の光が闇を割く。次第に手を避けていき、少なくとも自分の周囲には何もないことを確認。そうと分かった藤林は懐中電灯で照らしながら部屋を散策する。とはいえ、あくまで壁づたいになるべく明かりも小さくだ。扉の反対側には押入れらしき戸があったが開けなかった。


藤林「!!」


部屋を一周近くして、扉が見えた辺りで壁に不気味なわら人形を発見した。何本もの錆び付いた釘を打ちつけられ壁に刺さったわら人形は真っ赤に染まっている。まるで赤い洋服を着ているようだった。その心臓部にキラリ、と光るものがある。それは釘ではなかった。



「既知」



藤林「あっ、鍵!」


懐中電灯に照らされた銀色の鍵がわら人形に埋め込まれている。瞬間、この鍵の用途を理解した。この部屋の隣には真っ黒な扉があったはずだ。その扉を開けるための鍵なのだろう。藤林はわら人形から鍵を引き抜く。

ススス、という音がした。鍵を引き抜いた音ではない。この音はついさっきも聞いたことがある。襖を開ける時の音だったはずだ。その音は藤林の後方からだ。


藤林「は!?」


振り向くと、部屋の中心のちゃぶ台が照らされる。座布団が三枚あった。この部屋にはちゃぶ台と小さめの家具しかないようだ。しかしそのちゃぶ台の先、押入れのちょうど手前に足があった。

人間の二本足である。足首から上は白い着物でも着ているようだ。藤林は恐る恐る、徐々に懐中電灯の光を上へ上げていく。

すると。


藤林「ぎゃあああああっ!!」


それを見た瞬間、ゾッとした。ぼとん、とそれが落ちたことでさらに恐怖する。

叫びながら部屋を出ると、すぐ左手の黒い扉に体をぶつける藤林。がむしゃらに鍵を差し込もうとするがなかなか上手く入らない。心拍数のリズムが乱れる。半狂乱ながらも鍵がはまった扉を、体重をかけながら開けようとする。ガチャリという開錠音と共に藤林は中へと入った。

混乱状態の藤林。焦点さえあっていなかった視界に光が差し込む。この感覚は知っている。知っているからこそ安心した。


藤林はこの閉鎖を攻略した。


目の前に広がった光は色を変えた。黒色だった。闇ではなく黒。またも床に仰向けになっている。未だに恐怖を完全に拭いきれてないが、まただな、と藤林は閉鎖を受け入れる。閉鎖は続いていた。



「セカンドステージ」


難易度★★★

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